新生アリアちゃん。
では、本編どぞ。
あれからアベルとアリアは馬車を追い掛け仲間達と合流し【森深きほこら】へと向かっていた。
◇
――時は少しだけ遡る。
修道院を出発する前に、アベルはアリアの記憶が戻ったことを馬車のメンバーに告げていた。
「アリアちゃん!」
「スラりん、あとで揉み揉みさせてね!」
「うん、いいよ! って、ピキーッ、今揉んでるよぉ!(マッサージ気持ちいぃ~♪)」
「あぁ~ん、この感触癖になるぅ~!」
仲魔達の内、スラりんはアリアの変化がよくわかっていない様子でアリアに身体を揉まれている。
アリアは楽しそうにスラりんの身体を摘まんで伸ばしてを楽しんでいた。
ドラきちは……。
「ドラきち君。よく眠れたかな?」
「うん、ぐっすり! アリアちゃんは?」
「うん、まぁ、そこそこ?」
……ドラきちもアリアの変化に抵抗感はない様子。
コドランも同様で、
「コドラン」
「グルルン!」
アリアに名前を呼ばれると嬉しそうにパタパタと翼を羽ばたかせ寄って来た。
キャシーはというと。
「ふんっ、記憶喪失だったんですってね。戻って良かったわネッ!」
「ええ、お陰様で! キャシーちゃんもありがとうね!」
アリアはにこにことキャシーにお礼を告げる。
「っ……そ、そんな笑顔を振り撒いてアタシが受け入れるとでも思ったノ!?」
「ん? んふふふ~! キャシーちゃん、君、カワユイねぇ……。髪飾りがとってもチャーミングよ。口紅も似合ってる! 素敵な色ね!」
「マッ! あなた見る目があるじゃナイ!」
「今度町を一緒に歩こうよ。キャシーちゃんとお買い物したいなっ♪」
「そ、そぉ? しょうがないワね~、じゃあいい感じの町に着いたら付き合ってあげてもいいわヨッ」
「ふふっ♪ やったね~♪」
……キャシーとは何故か心が通じ合ったようだ。
そして、マッシュはというと、
「はぁぁ~(なんや、えらい変わってしもたんやなぁ……。まぁ、ええ、ええ。嬢ちゃん可愛いから許したろ)」
「…………ね、マッシュ。記憶ない間は思い出せなかったんだけどね。……アレ、シイタケだよね」
「!? はぁあぁぁ~~(大正解や……! よおわかったなぁ……)」
アリアが原木に生えるキノコを指差し告げると、マッシュは何度も頷き……
「はぁあぁ~……(あとは、頼んだでぇ……。ワイはモンスターじいさんの所へ行ったろ……)」
マッシュはアベルの傍へとやって来る。
「アベル、マッシュがモンスターじいさんの所に行くって」
「え? あ、そうかい? ……悪いね」
――キャシーを送ろうと思ってたんだけどな……。
アリアに云われ、アベルは仕方ないかとマッシュにモンスターじいさんの所へ行ってもらうことにした。
「……アリア、マッシュの言ってることやっぱりわかるんだ?」
「え……。あっ、本当だ! うん、そうみたい! 私、すっごーい!」
マッシュを無事モンスターじいさんの元へと送ると、アベルに指摘されアリアは初めて気付いたかのような態度を取る。
そして、彼女は腰に手を当て自画自賛してしていた。
「ププッ! 自分で すごいって言っちゃうんだ……」
「へっへーん。だって凄いでしょ!? 凄いって思ったら自分であろうとも褒めなきゃ! 自分で褒めなきゃ誰が褒めてくれるっていうの?」
「はははっ! うん、すごいすごい。アリアすごいね!」
アベルは腰に手を当てたまま胸を張るアリアに、笑いながら柏手を送る。
「あっ、何その投げやりな感じ! も~! これからアベルの凄いとこ見たって褒めてあげないよ?」
「っ、投げやりじゃないけどっ!? 僕は本当に……」
「あはははっ、まあ、いっか。あっ、ピエールサーン!」
カラカラと笑いながら、アリアはアベルの言葉を遮ってピエールの元へと行ってしまった。
「……アリア……?」
――アリア、僕の言うこと遮るの多くない……? 気の所為……?
アベルはアリアの態度に修道院で感じた違和感が間違いじゃないような気がして、理由がわからず胸がざわつく。
一先ずピエールの元へとアベルも彼女を追いかけた。
「おお! アリア嬢! 記憶が戻られたのですね!」
「えっと、ピエールサン……、ごめんね。私、十年前のピエールサンのこと憶えてないの」
「なんとっ!? なんとぉ…………そうなのですかぁ…………ぁぁ……」
アリアの記憶が戻ったことに喜んでいたピエールだが、ピエールと出会った時のことを憶えていなかったアリアは素直に謝罪する。
すると、ピエールはガクッと項垂れ落ち込んでしまった。
「ピエールサン……。私は私だし……、あっ、残りの記憶は何かのきっかけで思い出すかもしれないから……そんなに落ち込まないで……?」
項垂れるピエールの肩にアリアが手を置くと、優しく告げる。
「…………アリア嬢……」
――美しい……。当たり前ですが姿形は変わっていないのですね……。
ピエールが顔を上げると、アリアは心配そうに眉を下げていた。
「あの……、ピエールサンのこと、ピエール君って呼ぶね? いいかなぁ?」
「へ……? あ、か、構いませんが……」
アリアが申し出ると、ピエールはアリアをぼーっと見上げていたのだが……。
次の瞬間。
「ふふっ、ピエール君っ! 新生アリアちゃんを改めてよろしくねっ!」
ブイッ!
ピッとアリアは目の横にピースサインを横に向け持って来ると、ウインクをし弾ける笑顔を見せたのだった。
「ぁ……、かっ、カワイイ……」
ズッキューン♪ ピエールの胸はアリアの笑顔に いともたやすく射抜かれる。
「…………、ふふっ♪」
アリアはにこにこと微笑み、ピエールに挨拶を済ませた。
――今のは……ちょ、ちょっと恥ずかしかったかな……。あ、アラサーがやるには痛いけど……。見た目年齢十七だし、許してもらえるよね……。
表向き笑顔を崩さないものの、内心ドキドキなアリアだった……とさ。
そんなわけで、アリアは仲魔達に挨拶を終えると、修道院を後にしたのだった。
◇
……時は現在に戻る。
「……あの、さ……」
ヘンリーがおずおずと発声した。
森深きほこらを目指していたアベル達だったが、アベルとアリアが口を利かなくなり、その影響が戦闘にも出ていた。
アベルの命令をアリアは無視。声も掛けずに勝手に行動するので苦戦を強いられてしまう。
それでも、周辺の魔物よりアベル達の方がいくらか強い為、何とか勝利を収めていたが度重なる戦闘に疲弊。
アベル達はこのままラインハットに行くわけにいかず、急遽森深きほこらの側で身体を休めることにした。
「……何があったわけ……?」
「別に……。ヘンリーごめん、明日は必ず」
気付けば辺りは暗くなり、今日はここでキャンプだ。
アベル達は火を起こして暖を取る。
ここなら ほこらのすぐ側だから魔物がやって来ることもないだろう。
アベルの隣にヘンリー、向かいにピエール。アリアとマリアはキャビンで休んでいた。
「いや、まぁ、うん。それはいいけど……。喧嘩でもしたのかい?」
「喧嘩っていうか……。アリアが僕の言うことを聞かないから……」
「あ~……、そういえば、確かに動きがおかしかったな。ピエールとも連携取れてなかったみたいだったし……」
ぱちぱちと焚き火の薪が爆ぜる中、ヘンリーはここに来るまでの間の戦闘を振り返る。
今日のアリアは動きが悪かった。
いつもの呪文二回攻撃が一回しか出来なかったり、呪文が不発だったり。戸惑っているように見えた。
ヘンリーはマリアが気になっていてアリアのことはアベルに任せっきりで、
「……呪文も何度か失敗してたし……」
「……だな」
「……僕の言うことなんか聞きたくないのかな……」
「さぁ……。どうだろうなぁ……(マリアとお喋りしたいなぁ……)」
アベルが膝を抱え落ち込むので、ヘンリーはチラッと馬車の方へと視線を流した。
今はもう暗くなってしまったが、キャンプはもう少し早い時間に始めており、女の子二人には馬車のキャビンで横になってもらっている。
と。
キャビンからマリアが降りて来たのだった。
アベルとアリア初喧嘩……?
↓たまに書かないと忘れる現在のパーティー
パーティー>アベル・アリア・ヘンリー・ピエール・マリア(Guest!)
馬車の中>スラりん・ドラきち・コドラン・キャシー
out:マッシュ(モンスターじいさん送り)