進化の秘法とはなんぞや。
では、本編どぞ!
昨晩いつの間にか仲直りをしたアベルとアリアは、ヘンリー達と共に朝早く【森深きほこら】から旅の扉を経て【ラインハット城】へと再びやって来ていた。
「いよいよだな。あっ、ちょっと待て」
「ん?」
城の二階へ上がるとヘンリーが、かつてデールと王妃が居た部屋に入って行く見知らぬ学者風の白髪白髭の年老いた男を目にし、前を歩くアベルのマントを引く。
「あいつ……誰だ……? あんなヤツ、昔居たかなぁ?」
「……さあ? 気になるなら話を聞いてみればいいんじゃないかな?」
アベルは立ち止まって、男が入って行った扉を見た。
アベルも実はちょっと気になっているのである。
「……デールの所に急ぎたいとこだけど……ちょっとだけ!」
「ははっ、僕は構わないよ」
「アベルお前わかってんなぁ~!」
ヘンリーが手を合わせると、アベルがヘンリーに付き合うよと言ってくれるので(アリア達も特に断る理由もないので了承)、ヘンリーはかつてのデールが居た部屋の扉を開け、話を聞いてみることにした。
部屋に入ると、男はアベル達が入室して来たにも関わらず、何か考えごとをしている様子でこちらに気が付いていない。
言っていることはよくわからないが、椅子に腰掛け口元で何やらブツブツと独り言を呟いていた。
「……おい、あんた誰だ?」
「…………ん? わたしか? わたしはデズモン」
ヘンリーが声を掛けると、男が席に着いたまま顔を上げた。
思案の邪魔をしたので少々不愉快そうだ。
「デズモン…? 知らない名だな。誰に呼ばれてこの城にいるんだろう……」
ヘンリーは隣に立つアベルにコソッと話し掛ける。
デズモンはヘンリーの言葉が聞こえているのか いないのか、どちらにしてもさっさと人払いをしたいのだろう、興味がなさそうに口を開いた。
「わたしは生き物についての研究をしておる。人は、生き物はなぜ今の形になったのか? もっと強い存在になれぬのか? かつて、その謎を解く秘法があったと聞くが……、それは神の技だったのかも知れんな……」
デズモンはそれだけ云うと また考えごとに集中し始めてしまった。
そしてブツブツと再び独り言を呟く。
秘法がどうの、人を強くするにはどうのと、脳内で仮説を立て思索しているようだ。
アベル達はそれ以上追求しても何も話してくれなさそうだと判断し、部屋を後にした。
「まさかニセの太后が、もっと強い存在になるために 研究させていたのか?」
閉じた部屋の扉を眺め、ヘンリーは腕を組み少し考えてみる。
――研究ったって……なぁ……。ニセ太后の奴、何考えて……。
「強い存在……、秘法……か……」
「……進化の秘法……?」
アベルも腕組みして呟くと、アリアがぽろっと零した。
「えっ? 進化の秘法……? 何それ、アリア何か知っているのかい……?」
「知ってる~! って言いたいところなんだけど……。私も言葉しか知らなくって……」
――ドラクエ4でそんな言葉を見た気がしたけど……ドラクエ4はまだクリアしてないからねっ! っていうか、4と5は繋がっているの!?
アベルが目を丸くして訊ねるが、アリアは申し訳なさそうに眉を下げる。
顔には出さないが、内心は4と5が もしかして繋がっているのでは? と興奮していたアリアだった。
ドラクエ4で【進化の秘法】という
4をクリアしていればアベルの役に立てていたのかもしれない。
「ん? 言葉だけ?」
――どういうことだ?
アベルは何か知ってるようなアリアの口振りが気になってしまう。
「……あれは……違うお話だから……」
「違うお話……? ですか?」
アリアが髪の毛をくるくると指に巻き付けるとマリアが首を傾げた。
「あっ! 何でもないのっ! 強い存在になる……進化する秘法なら、進化の秘法かなって、そう思って言ってみただけっ」
「なるほどな……、アリアさん。そいつが昔あったのかもしれないな。今そんなのがなくて良かったぜ……」
「ですわね」
顔の前でアリアが慌てて手を振り振り、口にしてみただけだと主張するとヘンリーとマリアが納得してくれる。
「だ、だよね……」
「…………?(アリア……?)」
納得してくれた二人の前で、アリアは耳に後れ毛を掛けると気まずそうに笑った。
アベルはアリアの発言が気になって仕方なく、彼女をじっと見つめる。
「…………ん? どうしたの?」
「……あ、いや……」
ふとアリアと目が合い、アベルは頭の後ろを掻いた。
「んじゃ、そろそろ行くか」
ヘンリーの声掛けにマリアが「はい」と賛同し、二人は先に王の間へと向かう。
ピエールもアベル達に「行きましょう」と声を掛け先に歩いて行った。
「……アリア、行こうか」
「あ、うん。ね、アベル」
アリアはアベルの前に歩み出ると振り返る。
「う、ん?」
「……さっきのことも、ここの問題が片付いたら、知ってる範囲で話すね?」
「え? あっ、うん。教えてくれるんだ?」
「うん、もちろん! アベルだけ特別だよ?」
アリアは人差し指を口元に当て、ウインクをする。
「っ……!(僕だけ特別って!?)」
彼女のあざとい仕草にアベルは まんまと顔を赤く染めてしまった。
「うふふっ。お友達特別キャンペーン! 今ならアリアちゃんの秘密の話を二人きりで! どうですか? したいですか? したい人はこの指とーまれっ」
「んなっ!?(二人きりでっ!?)」
アリアが畳み掛けるように、今度は人差し指と中指の二本、指を立ててアベルの前に突き出すとちょきちょき。不敵に笑う。
アベルは目を見開いてしまった。
「……なーんてね? ふふっ、冗談だよ~っ、行こっ!」
アリアはくるっと反転し、アベルに背を向けヘンリー達を追って行った。
「っ、じょ、冗談かぁ……。はぁ……(指握っておけば良かった……)」
アリアの可愛い悪戯に、アベルは項垂れてしまう。
――友達って……あんなに誘惑して来るものなのかな……!?
「はぁ~~……」
アベルは長い溜息を吐いて、アリアの後を追った。
◇
アベルが項垂れている間、アリアはさっさと隣の部屋へと入り……
「っ……(やっちゃった……!)」
顔を両手で覆って俯いていた。
自分のしたことに今更恥ずかしくなり、猛反省中。頬が熱い。
――アベル、可愛くてつい構いたくなる……!!
「もぅ……、バカ……。私はヒロインじゃないっちゅーの……!」
鼻の奥がツンとして、じわり。涙が滲んだ。
すんっ! と鼻を一啜りして顔を上げる。
「……あれ? アリア……? 先に行ったんじゃ……?」
「っ、あっ! やっと来たね、待ってたんだよ? 行こ行こ!」
アベルが隣の部屋にやって来て、背を向けるアリアに声を掛けると彼女は振り返って明るい笑顔をみせた。
「う、うん……」
「アベルがラーの鏡を持っているんだもの。ヘンリー君達も多分上で待ってると思うなっ」
「……じゃあ、一緒に行こうか」
「うん」
アベルとアリアは二人並んで王の間に続く階段を上って行く。
「…………こうして、一緒に歩くのって久しぶりだね」
――外じゃ こんな至近距離で歩かないもんなぁ……。
アベルはチラッと隣を歩くアリアを見て口角を上げた。
「…………そうだね。アベル随分背が高くなっちゃったから、何だか変な感じ」
アリアはアベルを見上げる。
「ははっ……。アリアは小さいままだもんね」
アベルは自然と上目遣いになるアリアに思わず触れたくなって、ぽんぽんと彼女の頭を撫でた。
「っ! いや……、これでも伸びたんだよ……?(アベルの背が高過ぎなんだよ……)」
――何で気安く撫でるの……!? そんなことされたら、困るんですけど……。
アリアはやんわりアベルの手を退けるが、アベルは構わず手の平を下に向け、自分の鎖骨辺りの高さとアリアの頭の先辺りを水平に移動させ比べると、アリアの頭に手を置いて再び撫でる。
「マリアさんより小さいもんなぁ……(なのに、出るとこは出てるっていう……)」
つい、アリアの胸元に目線がいってしまう。
人と比べるのは おかしいとわかっているが、身長が近いマリアの胸に比べると、サイズ感が見ただけでも段違いなのだ。
――どうして、そこだけ成長してるんだ!?
訊いたところで本人もわからないだろうが、訊いてみたいと思ったアベルだった。
「っ、ほんのちょっとだけでしょ? 子どもじゃないんだから身長弄りなんてしないでよ……」
「……うん……、それはわかってる……。っ、子どもじゃないよね。アリアは立派な大人だよ……」
「? ……アベル?」
「……っ、階段踏み外さないようにね」
アベルは逃げるように慌てて階段を上がって行く。
「踏み外さないよっ!?」
アリアもアベルを追い掛け、二人は王の間へと向かった。
アリアはドラクエ4の知識はそれほどありません。
プレイ途中で転生してしまったので……。
どこまで進んでいたのかは不明瞭ってことで。
さて、いよいよラインハットもクライマックスですね!