混乱すると、色々あるよねえ……。
では、ほんぺんぺん。
「…………………………、はれぇ……? アベルぅ……? 何かぐるぐるするぅ~……(飲み過ぎた後みたい~~……)」
「っ、アリア、混乱が治るまで休んでて!」
身体をフラフラとさせるアリアをアベルは寄り添い床に座らせ、じっとしているようにと指示を出す。
その二人の後ろで、ヘンリーとピエールが「アリアが混乱したぞ!」「早く倒さねば!」と【ニセ太后】そっちのけで、【わらいぶくろ】に切り掛かっていた。
「ん……? うん……。ねえ、アベルぅ……」
混乱中のアリアは、自分から離れようとするアベルの服を引っ張る。
「っ、なにっ? 今、戦闘中だから……」
アリアに引き留められて嬉しいが、今は戦闘中。
とはいえ、アリアを振り解くことは出来ず、アベルは【ニセ太后】の動向が気になり いつでも動けるようにと そちらへ顔だけ向けていた。
「すき」
「え(なに? 今なんて……?)」
アリアの口から、なんか出る。
アベルは【ニセ太后】から視線をアリアに移した。
すると、アリアはアベルの首に腕を回して抱きつき……、
「すき……アベルだいすき。すき。すき。スキ…………、離れないで……?」
「っ、アリアサンッ!!??」
――どうしちゃったんだ……!? 当たってるんですけどっ!?
アリアの柔肉と甘い香りに包まれアベルは目を見開く。
いったいどういうことなのか、アベルまで混乱してしまいそうになった。
「おいアベル! 次はどうすんだ!? あいつ力溜めたぞ! アリアとイチャついてる場合じゃないぜ!」
「アリア嬢ぉ~!」
ヘンリーとピエールは【わらいぶくろ】を仕留め、【ニセ太后】と睨み合っている。
ピエールの声は涙混じりだ。
【ニセ太后】は【きあいため】をして次の攻撃に備えていた。
……というのに、アリアはというとアベルに抱きついたまま求愛している。
「すき、すき、すきすきすき……、だいすきなの……、アベル……。ねえ、わかるでしょ……?」
「……っ、わ、わかったから……。……ぼ、僕も好きだから……」
アリアに“すきすき”と熱烈な告白をされ、アベルは顔を真っ赤に染めていた。
――うれしいけど……、今じゃないよねっ!!
アベルもどさくさ紛れに告白してしまう。
「本当? うれしい……」
アベルの言葉にアリアは腕を伸ばし、うっとりと満面の笑みを浮かべた。
「っ……、アリアはここで待機ね! すぐ倒して来るから!」
「……うん!」
アベルは名残惜しいが 目をぐるぐる回しているアリアを剥がし、その場に置いて【ニセ太后】の元へと向かう。
“僕とアリアの愛のパワーをくらえっ!!”
アベルの攻撃は【ニセ太后】を打ちのめしたのだった。
・
・
・
「ぐぅぅぅ……! クソッ、クソッ!! はぁ、はぁ、はぁ……」
【ニセ太后】の身体は酷く傷つき倒れ、床に拳を力なく打ち付ける。
まだ息はあるが、もう立ち上がることはないだろう。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……(これが終わったら……)」
――アリアと二人きりの旅……!!(ピエールも居るけど)
アベルは戻って来た【やいばのブーメラン】を見もせずキャッチし仕舞うと、先を考え笑みを浮かべた。
「はぁ、はぁ……もうあいつは動けないな!」
「はぁ、はぁ……。中々骨が折れましたね……」
ヘンリーとピエールも限界だったのか、床に座り込み武器を手放していた。
「クソッ……! これで終わりか……!」
【ニセ太后】は頭に載せた冠を取ってアベルにぶん投げる。
「っ!?」
アベルは ひょいと避けたが、後ろには混乱したアリアが……。
「あっ、しまっ……!」
アベルが「しまった」と言う前に、コンッ、とアリアの頭に【ニセ太后】の冠が当たってしまった。
「あぃたっ……! ……………………ん? ……あっ! もう倒しちゃったの!? すっごーい!!」
冠が頭に当たったことによりアリアの混乱が解け、アリアはずたぼろの【ニセ太后】を見る。
ふと、【ニセ太后】と目が合った。
「……お前は……! 似てると思っていたら、本人か……! いつも誰かの背後に居たから気付かなかった……! クソッ……! 女ぁ! お前だったんだな……! アイツに貸しを作りたかったのに……! クソッ、クソッ……!」
【ニセ太后】は最期の力を振り絞り、身体を引き摺ってアリアの方へとにじり寄る。
「へ……? わ、私が何……?(うわっ!? 何か寄って来た……!)」
アリアが
「……アベル……」
アリアはアベルの背を見つめる。
「……アリアを知っているのか……?」
「はっ……、お前、知らないのか……? その女は……てん…………ッ、ブフォッ……ゴホッゴホッ……! ……フッ。オレさましか知らないということか……」
アベルが【ニセ太后】を鋭く見下ろし訊ねるが、【ニセ太后】は話し途中で血を吐き出した後、鼻で笑った。
「何っ!? どういうことだ!?」
「愚かな人間どもよ……。オレさまを殺さなければこの国の王は世界の王になれたものを……。ぐふっ!」
アベルは膝をつき、【ニセ太后】の胸倉を掴む。
すると、【ニセ太后】は捨て台詞を吐いて霧のように消えてしまった。
「っ……!?」
――アリアは“てん”……し? ……天使っていうのは知っているけど……?
既に知っているが、何だかそれだけじゃない気がして、アベルは不安に駆られる。
「アベル……」
「アリア……」
二人は互いに見つめ合うが、アベルの頬が徐々に赤くなっていった。
「あっ、えと……、その。僕も同じ気持ちだから……」
アベルは戦闘中のアリアの告白を思い出し、照れ臭くなって頭の後ろを掻く。
「……ん……? 同じ気持ち……? 何が……? アベル顔赤いけど、どうしたの……?」
「……え?」
アリアはアベルを見上げるが、何の事かわからないのか首を傾げていた。
そんな彼女の態度にアベルは面食らってしまう。
「私が混乱している間に倒しちゃうなんて、アベルはすごいね! エライエライッ!」
アリアは背伸びして、アベルの頭を撫でた。
「……えっ、えっ……?(なに、この反応……)」
――アリアまさか……。
タラリ。とアベルの頬を嫌な汗が滴り落ちる。
「アリア嬢! ご無事ですか!?」
「混乱から戻ったみたいだな!」
ピエールとヘンリーがアベル達の傍にやって来てアリアを窺った。
「うん! ピエール君もヘンリー君も無事かな? ニセ者退治、無事にできてよかったね! 私、混乱してる間なんかやらかしてた? 憶えてないんだけど、迷惑掛けてたらごめんねっ」
アリアがピエールとヘンリーの様子を見ながら怪我をしているので回復呪文を掛けつつ、戦闘中の話を訊ねる。
ピエールとヘンリーはアベルをチラッと見てから告げた。
「……いえいえ! 何も!」
「……そうそう! 迷惑なんてなんも掛かってないぜ!」
二人の声は明るかった。
……混乱中の出来事を……、アリアは……、憶えて……、いなかったのだ……。
「ぅ…………」
アベルは頭を抱える。
「ぅ……? アベルどうし……」
「ぅわぁぁああああ――――――――!!!!」
アリアがアベルの手に触れようとすると、【はぐれメタル】も顔負けのスピードでアベルが部屋から飛び出して行った。
「あっ、アベルっ……!!??」
――いったいどうしちゃったの……?
アベル君、可哀想……w