ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

ラインハット、最終話です!

では本編!



第二百七十七話 親友との別れ

 

 

 

 

 

「よっ! アベルやっと起きたな! 昨日は飲み過ぎちまったな~」

 

「ははは。皆さんお揃いで……(僕が一番最後だったのか……)」

 

 

 高貴な衣装で身を包んだヘンリーが、頭を片手で抱えつつ苦笑いを浮かべアベルに語り掛ける。彼も二日酔いらしい。

 

 アベルはアリアと共に王の間へとやって来ていた。

 

 王の間にはヘンリーを始め、デール、太后、大臣、マリアの面々が揃っている。

 アベルは頭の後ろを掻いて軽く会釈した。

 アリアもアベルと少し距離を置いた隣に並んで目礼すると、集まった面々が目を細めて返してくれる。

 

 すると役者が揃ったと玉座に座るデールが口を開いた。

 

 

「アベル。兄上と共によくぞ母上のニセ者を倒してくれました。心から礼を言いますぞ。あのままだとこの国がどうなっていたか……。まったくボクは王さまとしては失格ですね。だからアベルさんからも頼んでくれませんか? 兄上が王さまになるように」

 

「王さま。その話はお断りしたはずですが」

 

 

 デールがちらっと玉座の傍、左隣に控えているヘンリーを一瞥してからアベルに訴えたのだが、黙って聞いていたヘンリーがアベルの返答を聞く前に横槍を入れる。

 

 

「しかし兄上……」

 

「子分は親分の言うことを聞くものですぞ。もちろんこの兄も、出来うる限りり王さまを助けてゆくつもりです」

 

 

 デールが瞳を伏せるとヘンリーがニッと悪戯な笑みを浮かべ、胸の前に拳を当てる。

 

 

 ――王なんかになっちまったら自由が無くなるだろっ! 手伝ってやるからんな顔すんなよなっ!

 

 

 ヘンリーはデールを真っ直ぐに見据え力強く頷いた。

 

 ヘンリーからしてみれば奴隷から解放され、漸く得た自由を“王”などという枠組みに嵌められて再び囚われたくはない。

 

 デールも眉根を寄せたが渋々頷き返した。

 ……ちょっと頼りない。

 

 

「……というわけでアベルとはこれ以上旅を続けられなくなっちゃったな。いろいろ世話になったけど、ここでお別れだ」

 

 

 デールに身体を向けていたヘンリーが、今度はアベルに向き直って笑顔を見せる。

 

 

「ヘンリー……」

 

 

 ――知っていたけど、やっぱり少し淋しいな……。

 

 

 ラインハットの事件が終わればヘンリーと別れることになる……。

 

 記憶が降りていたアベルは知っていたが、いざその時になるとやはり淋しいものだなと、眉間に皺を寄せてしまった。

 

 目の奥がじんわり痛む気がする。

 

 

 ――っ、な、泣いてなんかいないんだからね……っ!!

 

 

「プハッ! んな泣きそうな顔すんなって! 親分が居なくなっても、お前なら大丈夫だ」

 

「っ、泣いてなんかいないよっ!? 僕が泣くわけないだろっ!?」

 

 

 ヘンリーが吹き出すと、アベルは否定して無理矢理笑顔を作る。

 

 

「お前に買ってもらった武器や防具はその ふくろに入れておいたからな。じゃあ、元気でやるんだぜアベル」

 

 

 アベルの元にヘンリーがやって来て乱暴に肩に腕を回し二人は抱き合う。

 十年間、苦楽を共にした友との最初で最後のハグだ。

 

 互いの目頭に熱いものが込み上げるが、二人はそれを零さないようグッと堪えた。

 

 

「っ……ありがとな、アベル。……アリアと上手くやるんだぜ? 結婚式には呼んでくれよな?」

 

「っ……結婚式って……、……そっちこそ、マリアさんと上手くやるんだよ……?」

 

「ああ……競争だな……! 先に結婚した方が後から結婚した方に一つ命令出来るってことにしようぜ」

 

「競争って……、そういうもんじゃないよね……?」

 

「へへっ、いいじゃんいいじゃん。オレ実はずっと、お前に子分らしいことをしてもらいたかったんだよ」

 

「なんで僕が負ける前提なんだよ……」

 

 

 アベルは“ふぅ”と息を吐いた。

 

 

 ――そりゃ、アリアとはまだ恋人同士でもなんでもないけどさ。ヘンリーだって同じだろう?

 

 

 結婚は勝負事ではないのだが、アベルは負けたくないと思う。

 

 

「……アベル、頑張れよ」

 

「……ヘンリー、君もね」

 

 

 こっそり呟き合い二人は離れると、互いにガシッと腕相撲のように手を握り合ってから前腕を打ち付け合った。

 

 

 

 

「「…………ああ!」」

 

 

 

 

 二人は晴れやかな笑顔で頷く。

 ヘンリーはアベルから離れ元居た玉座の傍に立ち、アベルとアリアを優しい瞳で見つめた。

 

 

「兄弟仲良く国を治めてくれれば、この国も安泰じゃ!」

 

 

 不意に大臣がヘンリーとデールの並ぶ姿に喜びも一入で、うんうんと何度も首を縦に下ろしている。

 

 その隣で太后の口からもお礼の言葉が。

 

 

「そなたには本当になんと言ったらよいか……。お礼の言葉もないぞよ。すべては わらわの思い上がりから出たこと。今度という今度は それが骨身に堪えたわ。これからは出しゃばらず、陰ながら王を助けてゆくぞよ。安心してたもれ」

 

 

 反省しているのか、太后はアベルを安心させるように告げる。

 太后の様子に昔 高飛車で傲慢だった彼女の面影は見られず、アベルは複雑な気持ちを抱えつつも、これでヘンリーが命を狙われることはもう無さそうだと安堵したのだった。

 

 

 アベルがそんなことを思っていると、

 

 

「ヘンリー君とはお別れかぁ……、淋しくなるなぁ……」

 

 

 アリアが淋し気に微笑み呟いていた。

 

 

「……へへっ、悪いね。アリアさん」

 

 

 笑顔でさよならをしようと、玉座の隣でヘンリーが笑って頭を掻いている。

 アリアも同じ気持ちなのか、朗らかな笑顔でヘンリーの傍に寄って行くと手を差し出した。

 

 

「ううん、今までありがとう! ヘンリー君と旅が出来て楽しかったよ」

 

「オレも! いつか記憶が戻ったら名前を呼びに来ておくれよ」

 

「ええ! きっと呼びに来るわ!」

 

 

 差し出されたアリアの手をヘンリーが握る。

 

 

 と。

 

 

「…………、アリアさん」

 

 

 ヘンリーは握ったアリアの手を急に引き、彼女を抱き寄せた。

 

 

「わっ……!?」

 

「「あっ!」」

 

 

 咄嗟の出来事にアリアだけでなく、アベルとデールも同時に目を見開く。

 ヘンリーはアリアに軽く片腕を回し、彼女の耳にこそこそと囁いた。

 

 

「アリアさん、……アベルのこと、頼んだぜ?」

 

「はは……、うん、頼まれたよ」

 

「……あいつの気持ちわかってるんだろ? あいつを幸せにしてやっておくれよ」

 

「っ……それは……」

 

 

 ――それは私が出来ることじゃない……よ?

 

 

 囁やかれた声にアリアの口から出かけたが、ヘンリーがすぐに離れてしまって言えなかった。

 

 

「っ、アリアっ!」

 

「っ、アベル……」

 

 

 ヘンリーが離れると同時、アベルが駆け付けアリアの手を引く。

 アベルは眉間に皺を寄せ不快そうな顔をしていた。

 

 

「兄さんっ! 何てことを……!」

 

 

 デールも憤るが、ヘンリーに「友達との別れのハグぐらいいいだろ」と押し通される。

 なので、自分も……とデールもアリアに声を掛けた。

 

 

「っ……、アリアさんっ!」

 

「ん……?」

 

「っ、ボク、頑張ります。頑張って国を立て直します。だから、また いつかきっとこの国に遊びに来て下さいね……! 昨日気に入ったって言っていた美味しいモモガキ、ご用意しておきますね!」

 

 

 ――その時、もしも まだボクにチャンスがあったなら、きっとあなたをボクのお嫁さんにしてみせる……!

 

 

 デールは希望に満ちた瞳でアリアを見つめる。

 デールの言葉にヘンリーが「ははは……」と乾いた笑いを浮かべていた。

 

 

「デール君……いえ、デール王。身体に気を付けて頑張って下さいね! いつかまたきっと!」

 

 

 アリアはアベルが不愉快そうな顔をしている横で、両手拳を握って胸の前で「ファイト!」とエールを送った。

 その後で彼女はアベルを窺う。

 

 

「……も~、アベルったら、何て顔をしてるの……?」

 

「別に……」

 

 

 アリアがアベルを見上げると、アベルはふいっと視線を逸らした。

 

 

 ――アリアは無防備過ぎる! ヘンリーにも、デール王にも優し過ぎる!

 

 

 アベルが逸らした視線の先で、丁度デールと目が合ってしまう。

 

 

「本当にアベルさんにはお世話になりました。これからは兄と共に人々が幸せに暮らせる国を作ってゆくつもりです」

 

 

 デールはアベルと目が合うと、頭を下げたのだった。

 デールの隣にいたヘンリーも深く頷く。

 

 

 するとヘンリーが「あ!」と何か思い出したように話し出した。

 

 

「国が元に戻って間もなくビスタの港にも また船が入ってくるはずだ。お前はそこから さらなる旅に出るつもりなんだろ。あっ、そうだ! オレ、こんなものも あのドレイ時代に拾って持ってたんだ。ちょっとクシャクシャだけどお前にやるよ」

 

 

 ポケットからクシャクシャの紙を取り出し、アベルの傍にヘンリーが再びやって来て彼の手にそれを握らせる。

 アベルはヘンリーから【ふくびき券】を受け取った!

 

 

「早く伝説の勇者が見つかるといいなっ。元気でな、アベル、アリアさん」

 

 

 ヘンリーは「頑張れよ」と、アベルとアリアの肩をそれぞれ軽く叩くと、元居た場所にわざわざ戻った。

 何故かといえば その隣にはマリアが居たからである。

 ちらちらとマリアの横顔を眺めてはヘンリーの口角が上がっている。

 

 

 ニヨニヨ。

 

 

 “マリアは可愛いなぁ~~!!”とでも思っているのだろう、だがその視線は少々気持ち悪い。

 

 

 アベルは“ヘンリー気持ち悪くない!?”と思ったが、特にツッコまないでおいた。

 アリアは“ヘンリー君て本当マリアさんが大好きなんだなぁ……”と目を細めている。

 

 そんなマリアはヘンリーの視線には気付かず、今回の事件の行く末を無事見届けられ ほっとした顔をしていた。

 

 

「……ああ」

 

「……うん。……あ、そういえば、マリアさんはどうするの? 修道院まで送った方がい」

 

 

 遅ればせながらアベルとアリアは頷くが、アリアがマリアはどうするのかと訊ねようとすると、彼女の方が先に話し始めた。

 

 

「アベルさまやヘンリーさまと旅が出来て、とても楽しかったです。私はまた修道院に戻るつもりですから、ここでお別れですね。アベルさまはお母さまを助けるために伝説の勇者さまをさがす旅とか。どうか、お気をつけて。ご無事を祈っておりますわ」

 

 

 マリアはアベルを見つめ、目を細めていた。

 そしてマリアは歩き出し、アリアに近付くと彼女を抱きしめ二人はハグを交わす。

 

 

「…………アリアさん、わかっていますわよね……?」

 

「ぅ……。ぅ、うん……?」

 

「……うふふ、どうか――……――……ね」

 

「ぅ、うん……」

 

 

 マリアも、アリアに こそこそと耳打ちしたのだった。

 その声はあまりに小さくて、すぐ隣に立っていたアベルには聞き取れなかったが、小さく頷くアリアの頬がほんのり赤くなっている。

 

 どうしたのだろうとアベルは思ったが、女の子同士のハグはまあいいかと余裕の笑みで目を細めておいた。

 

 

 そうして、アベルとアリアはヘンリー達に別れを告げ、ラインハットを後にした。

 




長かったラインハット編。
漸く幕を閉じました。

今回かなり長くなっちゃいました。スミマセン。

次回から二人旅が始まりますね~!(ピエール君がいるけど)

さあ、これからイチャコラしていきますよ~。
妄想が過ぎるけどスミマセン。テヘテヘ。

アベルとアリアの仲はどうなって行くのでしょうか。
結婚相手は一体誰になるのやら。

今後はすこーしアダルトな展開になる予定です。
え? 今までもちょいちょいそうだったって?

フヘヘ。

とはいえR15なので、まぁ、そんな感じで……。
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