ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

サンタローズに寄り道していきます。

では本編どうぞ。



青年期・前半【サンタローズ~ビスタの港】
第二百七十八話 寄り道、サンタローズ


 

「あっ、見えて来た!」

 

「アリア……、本当に行くのかい……?」

 

「行くよ! 確認させて。前に来た時は記憶が無かったからかもしれないでしょ?」

 

 

 アベルとアリアはラインハットを出て、二日程オラクルベリーに滞在したのち、サンタローズ近くを歩いていた。

 

 何故かと言えば、アベルの自宅地下で【妖精の国】への道が開かないかを確かめる為だ。

 馬車の前をアベルとアリア、後ろをピエールとラインハット周辺で仲間になったサボテンの魔物【ダンスニードル】の【ダニー】が歩いている。

 

 

「……無理だと思うけど……」

 

 

 アベルはそんなことより さっさとビスタの港に入って、船に乗りたかった。

 もしも自宅地下に妖精の道が開いてしまったら……?

 

 

 ――アリアとお別れになるかもしれないじゃないか。こんな中途半端なままお別れなんて絶対嫌だ……。

 

 

 そんなアベルの気持ちなど知りもしないアリアの足はサンタローズに向かっていた。

 

 

「そんなことわからないでしょ? ポワン様はいつでも戻れるようにしてくれるって言っていたんだもの。ベラちゃんにも会いたいし!」

 

「そうだけど、アリアは呪いを解く旅に出たんだよね……?」

 

「……そうだけど、本当にダメなのか試したいの。ダメなら諦めるから! お願い、ね? ダメ?」

 

 

 アベルの問い掛けにアリアは手を合わせて可愛く首を傾げる。

 

 

「っ……道が開いたら……?」

 

「……んー……、そうねえ……」

 

「……僕とお別れすることになるよ?」

 

「…………、…………そうだね」

 

 

 アリアも解っているのだろう、アベルの言葉に瞳を伏せて頷いた。

 

 

「……君はそれでいいの? 妖精の国に行ったら呪いはそのままなんだよ?」

 

「ぅ…………」

 

 

 何箇所回ればいいのかはわからないが、世界各地の教会を回らねば呪いは解けないのだ。

 妖精の国の教会だけで解ける程甘くはないだろう。

 

 アベルに指摘されアリアは黙り込んでしまう。

 

 

「妖精の国に行ったら、毎日呪いに怯えて暮らすんだよ……? 怖いよね……? 辛いよね……? 苦しいよね……?」

 

 

 アベルは呪いの恐ろしさをこれでもかという程説明した。

 アベルの力説にアリアの顔が ふっと弛む。

 

 

「…………プッ。そんな脅さなくても……」

 

「っ、僕は、アリアの呪いを解いてあげたい、それだけなんだ」

 

 

 ――自宅地下室に行きたくない……。アリアと離れたくない……。

 

 

 とはいえ彼女が寄りたいと云うのだ。寄らないわけには行かず、アベルは渋々サンタローズに足を向けていた。

 

 

「ね、アベル……。私、道が開いても旅を続けるよ?」

 

 

 ふとアリアが手を後ろに組んで、前のめりにアベルを窺うように覗き込む。

 

 

「え……? 妖精の国に行くんじゃ……?」

 

「行かないよ。道が開いたら、ポワン様に旅をすることにしたからって一言言いたいだけ。せっかく近くを通るんだし、伝えて行こうかなって思っただけなんだ。だからね、アベルが心配する必要はないのよ?」

 

「あ……、そ、そうなんだ……。…………そっか……」

 

 

 ――そっか! …………よかったぁ……。

 

 

 はぁ、とアベルの口から安堵の溜息が漏れた。

 それを見たアリアの瞳が優し気に綻ぶ。唇も弧を描いていた。

 

 

「ふふっ、アベルって可愛いっ」

 

「っ……か、可愛いって何それ……(男に言うセリフじゃないでしょ……)」

 

「私はアベルと一緒に居るよ?」

 

「っ、そ、そうっ。ふーん、そうなんだ」

 

 

 アリアに上目遣いで見つめられ、アベルは動揺してしまうが平静を装う。

 自分を窺う挑発的な笑みにアベルはつい見惚れてしまった。

 

 

 ――アリアって、何でこんなに可愛いんだろう……。

 

 

 真っ直ぐ自分を見つめて来るアリアのアメジスト。艶のある唇は穏やかに端が上がり、身体が前のめり だからかつい胸元に目がいってしまう。

 

 アベルは頬が熱くなるのを感じた。

 

 

「…………道が開くか開かないかで、私決めるから」

 

 

 ふと、アリアの顔が柔和な顔から無表情に変わり、前のめりだった身体を元に戻す。

 

 

「……え?」

 

「……全部話すのはそれから。だから、もう少し待っててね」

 

「アリア……?」

 

 

 ――待っててというのは、アレのことかな……?

 

 

 アリアは昨日、何かを自分に話そうとしていた。

 過去のこと、天界のこと……。他にも……?

 その全部を話すと。

 

 

 歩きながら話すのかと思っていたが「歩きながら話す話じゃない」と云われ

アベルはまだ訊けていない。

 

 自分もアリアに言いたいことがある。

 どこか落ち着ける場所で、ゆっくり話が出来たらいいんだけど……と、アベルは自分が何度も人生を繰り返していることをアリアに話す機会を窺っていた。

 

 十年前の時のように打ち明けるのが遅れて取り返しがつかない事態になるのはもう御免だ。

 

 全部ではないが、記憶を取り戻した彼女ならきっと、受け止めてくれる。

 アベルはそんな気がしていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 サンタローズに着くと、ついこの間別れたばかりなので、ちょっと気恥しさもある。

 シスター達には内緒で自宅地下室へと向かった(ピエールとダニーは馬車で待機中である)。

 

 

 焼け落ちた自宅の地下階段を二人で下って行く。

 一階や二階はもう影も形も面影が無いほどだが、地下は火災を免れたのか経年劣化はしているが、問題なく行き来出来た。

 アリアの後ろにアベルは黙ってついて行く。

 

 地下室に入るとアリアが口を開いた。

 

 

「こないだ来た時は、私泣いちゃって……ごめんね~……、びっくりしたよね」

 

 

 地下室の中央で、あはは……と、アリアは恥ずかしいのか頬を掻いていた。

 記憶喪失中の行動は全部憶えているらしい。

 

 

「……別に……。……泣き虫なアリアも悪くなかったよ? 泣きたくなったら僕の胸……じゃなくて、ハンカチを貸してあげるよ」

 

「っ……、アベルってば優しーの! も~、そういうの、言っちゃダメなんだから……」

 

 

 アベルが“あの時のアリア、綺麗だったなぁ”と思い出し笑顔で告げる。

 本当は胸を貸してあげたいが、ハンカチに留めておいた。

 

 そんなアベルに、アリアは……。

 

 

 ――アベルって、これ、素で言ってるの……!?

 

 

 気まずそうに笑ったのだった。

 

 

「……何で?」

 

「……なんでも! ……っと、じゃあ、道を開いてみますか!」

 

 

 アリアの言葉にアベルは首を傾げる。

 するとアリアは両手を挙げ大きく広げた。

 

 

「開き方知ってるの!?」

 

「ううん、知らない」

 

 

 アベルが目を瞬かせ訊ねるが、アリアは首を横にふりふり即答する。

 

 

「えぇ……、何か知ってるのかと思ったよ…………プッ!」

 

 

 アベルは呆気に取られるが、その後で笑いが込み上げた。

 

 

「はははっ……!」

 

「……こういうのは、試してみないと……!」

 

「試すってどうやって……。ベラも居ないのに……」

 

「…………ひらけー、ゴマー!!」

 

 

 アベルが首を捻る中、アリアは【道を開く呪文?】を唱えた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……しかし、何も起こらなかった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんの! 開けゴマー! ひらーけごーま! ひーらけゴマー? …………――! ……――! ……――! ……――!」

 

 

 アリアは何度か【道を開く呪文?】を唱えるのだが、地下室には何の変化も見られなかった。

 

 

「…………反応、ないね?(結局全部“開けゴマ”だったけど、開けゴマって何なんだ……?)」

 

「はぁ、はぁ……だ、ねぇ~……(……うーん、我ながらちょっと恥ずかしいな)」

 

 

 何度も同じことを叫ぶアリアの後ろでアベルはいつの間にか腰を下ろし、冷静にツッコミを入れる。

 と、アリアは息も絶え絶えで、やっと両手を下ろした。

 そして恥ずかしさに顔を覆う。「私アラサーなのに……!」小さな呟きはアベルには届かず……。

 

 

「……諦めたら?」

 

「……だねっ!」

 

「諦めるの早っ!」

 

 

 アベルが彼女の後ろで三角座りに頬杖を突きつつ零す。

 と、アリアは振り返って素直に頷くので、アベルはついツッコミを入れてしまった。

 




アベルの自宅は二人にとっては思い出の地なわけで。

オラクルベリー滞在記は気が向いたら書きまーす。
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