ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

子供って美味しいの? の巻き。

では、本編どうぞっ。



第二十七話 大皿の上で

 

 ――三人は玉座の裏側から回ると、おやぶんゴーストと相対する。

 

 

「お前がここのボスねっ! 観念なさい!」

 

 

 ビアンカが前に踊り出て、【いばらのむち】を手に威勢よく啖呵を切った。

 

 

『っ、そうよそうよ! あんたなんかアベルとビアンカに伸されちゃうんだからっ』

 

 

 アリアはアベルの後ろから、ぴょこっと顔を出して便乗する。

 アベルのマントを掴む手が震えているにも関わらず、キッとおやぶんゴーストを睨みつけていた。

 アベルは「ぷぷぷっ」と吹き出してしまう。

 

 

「ほほう……、ここまで来るとはたいしたガキ共だ。褒美においしい料理を作ってやろうじゃないか。さあ、こっちに来なさい」

 

 

 何故か、親分ゴーストはアベルとビアンカを優しく見下ろし、笑顔で手招きをする。

 アリアの姿は見えていない様子で、アベルとビアンカだけを見ていた。

 

 

「……あれ? 何か思ってた感じじゃないな……もっとこう……悪~い感じなのかと思ってたんだけど……」

 

「…………そ、そうね……。何だか拍子抜けしちゃうわね……爽やかな笑顔だし……」

 

「ご褒美くれるって」

 

「えー……、でも、こいつがお化け達のボスなんでしょ……?」

 

 

 アベルとビアンカがこそこそと話し始める。

 おやぶんゴーストはにこにこしながら待っていた。

 

 

「どうする?」

 

「……そうね……」

 

 

 アベルとビアンカの二人は、おやぶんゴーストって意外と良い奴なんじゃ? などと、迷ってしまったのだった。

 そして話し合い、答えは出なかったが警戒心は緩んでしまったようで、先程までの威勢は無くなっていた。

 

 

「さあ、おいで。とぉーってもおいしい料理を作ってあげるよぉ?」

 

 

 おやぶんゴーストは目一杯、優しい笑みを浮かべて両手を広げる。

 

 

「……アリアはどう思う?」

 

『……アベル、気を付けて。妖しさ満載だよ……?』

 

 

 アベルに訊かれ、アリアは警戒心を露わにする。

 

 

「えっ、そうかな。あのおじさん優しそうだよ? ね、ビアンカ?」

 

「そうね……。実は悪い奴じゃないのかも……」

 

 

 ぐ~……きゅるるる。

 

 

 アベルかビアンカかはわからないが、突然腹の虫の音が聞こえた。

 

 

「っ、わ、私じゃないわよっ?」

 

「っ、僕じゃないよ!?」

 

 

 アベルとビアンカはお腹を抱える。

 実は二人共お腹が空いていたのだった。

 

 

「さあ、ここへおいで……」

 

『アベル! ビアンカちゃん、ダメっ!』

 

 

 おやぶんゴーストに手招きされ、アベルとビアンカは「じゃあ少しだけ……」とおやぶんゴーストの傍へと寄って行ってしまう。

 アリアがアベルのマントを引っ張って止めるが、敵わなかった。

 

 

 

 

「……ただし、お前等がその料理の材料だがな!」

 

 

 

 

 アベルとビアンカ、ついでにアリアもが、おやぶんゴーストのすぐ目の前まで近づくと、突如三人の足元の床が消えたのだった。

 

 ――足元には深い闇の空間。

 

 

「……へ?」

 

「え……?」

 

『アベル! ビアンカちゃんっ!?』

 

 

 アリアは咄嗟に二人の手首を掴む。

 アベルとビアンカは一瞬顔を見合わせたものの、階下へと落下していった。

 

 

「うわぁ~~!」

 

「きゃあ~~~!!」

 

 

 二人の悲鳴が聞こえる中――。

 

 

『っ、……飛べ、飛べっ!(背中の翼、お飾りじゃないんでしょ!?)』

 

 

 このままでは落下してみんな大怪我をしてしまう!

 

 

 アリアは全力で背中の羽を動かす。

 小さな翼ではあるが、アベルが飛んでいたのを見たと言っていたのだから、飛べるはずなのだ。

 

 

「っ、アリア何して……!」

 

「っ、アリア私の手首掴んでるっ!?」

 

『っ、掴まってて……! ビアンカちゃんも見えないと思うけど掴まって!』

 

 

 バサバサバサバサッ。

 

 アリアは翼を高速で羽ばたかせる。

 すると、風を捕まえ僅かに落下速度が緩やかになった。

 

 

「っ、ビアンカっ、掴まってて!」

 

「わっ、わかったわ!(これがアリアなんだ……!)」

 

 

 アベルとビアンカはアリアの腕にしっかり掴まる。

 けれど、おやぶんゴーストの居る部屋へと戻って行く気配はなかった。

 

 

『ごめぇぇん! 重くて、上がらな~いっ!』

 

 

 バサバサバサバサッ!

 

 アリアは懸命に翼を羽ばたかせるも、二人の体重を持ち上げる力はなく、三人はゆっくりと落下していった。

 

 

 

 

 

 

「あっ、ここはさっき通った一階ねっ!(この真上が玉座の間だったのね!)」

 

「アリアー! 大丈夫~?」

 

『ぅぅ……っ、重すぎて、右にも左にも着地出来ないよぉ……』

 

 

 ビアンカが落ちながら周囲を眺めて、現在地を把握するが、アベルはのんびりした様子でアリアを見上げていた。

 アリアは何とか方向転換を試みようとはするももの、非力なために身体はどんどん落下していく。

 

 三人の身体はゆっくりゆっくり落ちて行き、一階を通り過ぎる際には多くの骸骨達に手を振られた。

 

 

「カカカカッ。ごちそうだぁ~!」「ごちそうだぁ♪」

 

 

 カカカカッ。

 

 

 骸骨達の笑い声なのか歯がかち合う音、そして喜びに踊る者までいる。

 

 

『ギャーっ!! ガイコツが踊ってるぅ! 理科準備室じゃないんだからやめてよねー!』

 

 

 三人の足元には玉座の間同様、再び闇が口を開けていた。このまま落ちれば地下まで降りてしまう。

 アリアは一階の床を通過する際に、狂喜乱舞する骸骨達を見ながら悲鳴を上げていた。

 

 

「りか……? ……あはははっ!! 何言ってんのアリアー? 面白いなぁ!」

 

「っ、アベル何が面白いの? 全くあなた緊張感が無さすぎるわよっ」

 

 

 アベルが悲鳴を上げるアリアを見上げて、からからと笑うと、ビアンカが注意をしたのだった。

 

 結局そのまま地下まで降りてしまい……。

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ふぇっ~くしょいっ!!』

 

「はっくしょん!」

 

「くしゅんくしゅん。うわっ、しょっぱいっわねっ」

 

 

 三人の頭は粉まみれになっていた。

 塩や、コショウ、ソースといった調味料が大量に振りかけられ、三人共何とか避けてはいるものの、塩コショウは風に乗ってやってくるのでさっきからくしゃみが止まらない。

 

 地下室までゆっくりと落下した三人だったが、漸く降り立った場所は大皿の上であった。

 おやぶんゴーストの云う通り、料理の材料となったようだ。

 

 

「はっくしょんっ! ……どうする?」

 

「くしゅん、くしゅん。隙を見て脱出ね」

 

『ぶぇっくしょんっ!! ……ぅぅ……目が痛い……。ソース臭い……』

 

 

 くしゃみをしながらもアベルとビアンカは相談し、アリアは……。

 羽を器用に動かしながら、次から次へと振りかけられる調味料を掃っていた。

 足元にはソースの海が出来ており、三人の服はデロデロ。

 

 

「おお~、いいニオイがしてきたな……。こんなもんでいいだろう。よし! 上げろ!」

 

「がってんだ!」

 

 

 動く骸骨が大皿の傍で出来具合を確認すると、上の階へと送るレバーをもう一人の骸骨が下げる。

 すると、大皿は下にあるテーブルと共に、上の階へと吊り上げられていった。

 

 

『っくしょん……ぁー……終わった……? あれ? 何か足元動いて……』

 

「うん、さっきの一階に送られるみたいだね」

 

「私達食べられちゃうみたいね……」

 

 

 ゴゴゴゴゴ……。

 

 

 テーブルが吊り上げられていく中、アベルとビアンカは先程振りかけられた調味料を涼しい顔で払っていた。

 

 そして、ビアンカは【いばらのむち】にも積もった調味料を払うべく、大皿にそれを打ち付ける。

 ビチャン、パラパラパラと調味料が舞うと共に、一部付け合わせの食材が大皿の外へと弾き出された。

 

 

『食べられちゃうなんて云うわりには、二人ともやる気満々だね……』

 

「まぁ……。僕達強いからね」

 

 

 アベルはついでに、アリアの頭に積もった塩の山を払う。

 

 

『あ、ありがと……』

 

「こっちが料理しちゃうんだからっ。あ、そうだ、アリアって私からは見えないけど、モンスターからも見えないの?」

 

 

 ビアンカからアリアは見えないので、アベルに訊ねてみる。

 

 

「うん、何か見えるモンスターもいるみたいだけど、さっきの奴は見えてなかったみたいだよ」

 

 

 アベルはアリアの居る方へと目を向ける。

 

 

「そっか、なら安心ね」

 

『え……?』

 

「加勢出来るようならしてくれるとありがたいけど、すり抜けちゃうんじゃ無理よね。アリアは私達の後ろにいてくれたらいいからね」

 

「うん、そうだね」

 

 

 ビアンカがアベルの視線の先へと目を向け、力強く頷いた。

 そこにはアリアが居て、大きな瞳をぱちぱちとさせている。

 

 

「お姉さんに任せなさいっ!」

 

 

 どんっ、とビアンカは自分の胸を拳で叩いて、ドヤ顔で笑みを浮かべた。

 

 

『っ、お姉ちゃん……!!』

 

 

 いや、私本当は二十八歳なんですけどね……!!

 

 

 とは情けなくて言えなかったアリアだった。

 




アベルは緊張感のないマイペース。
ビアンカは頼れるお姉さん。
アリアは……愛すべきポンコツってことで。

落下したら怪我しますよね!?
と、着地しても特に何も言われていないっていう。
多分、後々落下しても大丈夫ってことが判明してアリアさんびっくりするんだろうなぁ。

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感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!

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