言っちゃった!
では、本編どぞー。
◇
“……アベル、この世界はゲームの中の世界なの”
「そう、ゲームの中の…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………え?」
アリアの一言に、アベルが固まる。
「あなたはこのゲーム……ドラゴンクエストVの主人公なの。ゲームがクリアされる度、いえ、リスタートを切る度、あなたは人生を繰り返している……んだと思う」
「え、ちょ……、まっ……」
――え、何? アリアが言ってることが わからない!!
アベルは理解が追い付かなかった。
それでもアリアの話は始まったばかりである。
「……あなたの性格が時々変わるのは……、多分色んなプレイヤーがいる所為ね。プレイヤーの性格が反映されているんだと思うわ」
「っ…………??(プレイヤー? ドユコト?)」
――確かに僕は時々強気だったり、弱気になったりはするけども……。
アリアの説明だと、自分は誰かの性格を模しているように聞こえる。
けれど、人間なんて時として強気になったり弱気にもなったりする。
そんなものじゃないのか……?
アベルはそんな風に思った。
「……こんな話をしたら、あなたも混乱すると思うし、話せるかわからなかったけど……、アベル」
「っ、な、何……?」
まだ理解が追い付かないアベルだったが、アリアに呼ばれ反射的に返事する。
「……あなたの知ってる未来はどこか変わった……?」
「え……?」
「あなたはさっき、私を“初めて”だと言った。昔、私に協力してくれって言ってたよね? 未来を変えたかった? 私が居て、何か変わったの……?」
「……憶えてたんだ……」
――昔、僕はアリアに一縷の望みをかけていた。
それは叶わなかったけれど……。
アベルは目線をテーブルに置いた手に落とした。
「…………変わってないのね?」
「……うん、大筋は変わってない……、というか……ゲ、ゲームって何?」
アリアがアベルの様子を窺い静かに確かめると、アベルは首を縦に下ろす。
そしてまだ理解が追い付かない
「ゲーム……? ゲームって言うのは……、うーん……何て説明すれば……」
「……僕が主人公でって……アリアよく言ってるけど……」
「……あ、本!」
チラッとアベルが窺うと、アリアは人差し指を立てて明るく笑う。
「本?」
「うん、例えばだけど、本の物語の主人公って言えばわかりやすい?」
「えっと……、……うーん、例えということなら……なん、……となく?」
「そっか、よかった。それで、あなたはその物語の主人公というわけ。主人公は本を読んだ人の分身だから、あなたは読む人によって色んな性格になるし、物語は同じ展開が進むよね?」
アベルが腕組みしながら唸ると、アリアは説明を続けた。
「っ……!? それって……、じゃあ僕のこの繰り返している感覚っていうのは……!」
「……うん。誰かがあなたとして生きたということの記憶から来た感覚なんだと思う。あなたはあなたであり、
「っ……。そんな……。僕が……そんな……」
――僕がゲームとかいう中の人間……?
何度も何度も、繰り返され、何度も何度も、父さんの死を……!?
それに気付くことなく、僕は
憤りにアベルの身体が震える。
何千、何万と数えきれない程、繰り返した人生。
それらは総て自分の知らない
……アベルは俯いてしまった。
「……でも、アベル。今のあなた、多分違うと思うの」
「…………っ?」
アリアの一言にアベルは顔を上げる。
「……だって、あなたはその繰り返した人生の記憶を持っている。そんなこと……ゲームの主人公が知り得るはず無いもの(そんなことしたらゲームバランスが崩れちゃうわ)」
「ぁ……、…………けど、今まで知ってる未来が変わったことが無くて……」
アベルは眉尻を下げ「はは……」と乾いた笑いを浮かべた。
そんなアベルにアリアは穏やかに目を細める。
「……未来……変えちゃおうよ」
「え……」
瞳を瞬かせるアベルの手をアリアは取ると、それを優しく両手で包み込んで真っ直ぐにアベルの瞳を見据えた。
「……私が存在している理由はまだ よくわからないけど……、もしかしたらアベルの未来を変える為に来たのかもしれないよ?」
「っ、それは……、……僕は昔、君に依存して、あんなことになって……」
アベルはゲマの蛮行に言い淀んでしまうが、アリアは違った。
「あんなことって……、あ、翼のこと?」
「あ、ああ……。君の翼をあいつに……」
「あははっ、やだ、アベル。気にしなくていいって言ったよ? 私、元々翼のない人間だったのよ? たまにバランス崩すけど、それ以外は問題ないよ?」
アベルの気まずそうな顔に、アリアは何でもないことのように笑う。
「っ……アリアって優しいね……。って、人間……!? 天空人なんじゃ……?」
アリアの手の温もりに心地良さを覚えつつ聞いていたアベルだったが、目を見開いた。
「昔、話したでしょ? 前世の話。私、ここに来る前は現実世界に居たんだよ」
「現実世界って……、ここも現実なんだけど……?」
「ん? ぁ、うん、まあ、今はそうね。ここからは私の話。聞いてくれる?」
「う、うん……」
アリアがアベルの手をぎゅっと握り締める。
――手が……気持ちいいな……。
アベルは握り返したい衝動に駆られたが、解かれたら嫌なので我慢した。
「なんと! この世界は現実世界で作られたゲームの世界なのです! そして私は元の世界で死に、この世界に何故かやって来たっていう~」
重要なことなのだとは思うが、アリアが明るくサラッと言ってのける。
……のでアベルは。
「…………あ、うん。前も聞いた。……けど、ちょっと変わってる……かな……?」
あっさりと容認したのだった。
「あはは……、反応うっすいね……」
「うん……、なんかもう……驚きもないっていうか……アリア笑顔だし……」
――アリアが笑顔で話すから重く受け取れないんだけど……何でだ?
アベルは彼女の微笑みに癒され、ゲームだどうのはどうでもいいかなと思い始めていた。
「そっか……。そんなあっさり受け入れてもらえるとは思わなかったな……」
――アベルって結構柔軟なのね……。
アリアはあっさり受け入れてくれたアベルに、やっぱり主人公なのだなと感心してしまう。
……のも束の間。
「……で、この世界がアリアが前に居た世界で作られたの……?(それってやっぱり天界なんじゃ……?)」
「あ……、その反応は半信半疑ね?」
アベルの態度にピンと来て、アリアは椅子から立ち上がり身を乗り出した。
「っ……、話がぶっ飛び過ぎてて……、咀嚼が追い付かないよ……」
――ち、近い……っ!! 好い匂いっ!!
急に距離が縮まり、アベルの胸が“きゅうっ”と締め付けられる。
「……そうだよね、ごめん」
アリアはシュンとして再び腰を下ろした。
あまりに突飛なことを言われると思考停止しちゃったりすることもある!?
アベルの情報吸収力がスポンジ過ぎる件。
いや、絶対理解してないよね。
伝え方って大事だなって……真剣な話の時に明るく言っちゃあダメですね……w