ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

29 / 750
いつもありがとうございます、はすみくです。

打倒、おやぶんゴースト! の巻き。

では、本編どうぞっ。



第二十八話 圧倒

 

「ビアンカ頼もしい~!」

 

 

 アベルもパチパチパチと手を叩き、ビアンカを持ち上げる。

 

 

「さあ、そろそろ到着ね!」

 

 

 ゴゴゴゴ……ガチャン。

 

 

 ビアンカがそう云うと、大皿を乗せたテーブルは上昇を止め、ワイヤーの動きが止まった。

 一階に到着したのだ。

 

 止まったテーブルは骸骨達の食卓だったようで、四方をカタカタと嬉しそうに歯を鳴らす骸骨達が取り囲んでいた。

 

 

「おお~こりゃ旨そうだ!」

 

「やっとご馳走が出たぞ!」

 

 

 先程一階を通過する際に見送っていた骸骨達が、一斉に襲い掛かって来る。

 

 

『っ、ガイコツぅぅーー!! いやぁああああっ!!』

 

 

 アリアは青ざめた表情で涙を流し、鼻水まで垂らす。

 

 

「あはははっ!! アリア鼻水出てるよ!」

 

『ヒイッ! 何で笑ってるのぉぉぉっ?』

 

 

 アリアを見えないはずの骸骨達が、たまたまなのか彼女の方へと向かって来るので、アベルは笑いながら【ブーメラン】で殴り倒すと、骸骨は崩れ去る。

 

 

 グガゴゴッ……!

 

 骸骨は崩れた身体で、何か言いたそうにアリアを見上げていた。

 

 

『ひえぇ……!(アベル強過ぎでしょ!!)』

 

 

 アリアは足元に崩れ落ちて行く骸骨を見下ろす。

 

 

 クケケケ……。カカカカカッ……。

 

 

 骸骨はアリアと目を合わせ、笑って消えていった。

 

 

『っ、今……(目が合った……!?)』

 

 

 アリアは一瞬どきっとしたものの、次から次へと骸骨達がやってくるので、再び悲鳴を上げた。

 

 

「っ、アリアっ! そこに居ると邪魔だから下がってて! 泣いてていいからっ!」

 

「っ、メラッ! ……えっ、アリア泣いてるの!? 大丈夫だから後ろに下がってなさいねっ!」

 

 

 アベルとビアンカが骸骨達と戦い出したのだった。

 

 

 数分後……――。

 

 

 

 

 

 

「……ふう……。アリア大丈夫?」

 

「怪我とかしてないかしら?」

 

『……はい、何とか……』

 

 

 骸骨達の一部はおばけキャンドルへと姿を変え、アベルとビアンカを襲っていたのだが、二人はあっさりと倒してしまった。

 

 

『はー……、すごいね二人共……(あっという間に倒しちゃった……)』

 

 

 アリアは感嘆しながら、涙でぐしゃぐしゃになった顔を拭った。

 

 

「うん、大丈夫そうだね。じゃあ……」

 

「そうね、あいつをやっつけましょう!」

 

 

 ちらりとアベルがビアンカを見ると、ビアンカは深く頷いた。

 

 

『ぉぉ~、ツーカーだねっ』

 

 

 アベルとビアンカが歩き出すと、アリアはその後ろについて行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 再び、玉座の間――。

 アベル達が部屋に戻って来ると、丁度おやぶんゴーストが玉座から下りて、部屋を出て行った。

 

 

「どこに行くんだろう?」

 

「追い掛けましょう! もう許さないんだからっ!」

 

 

 おやぶんゴーストが出て行った扉にアベル達も向かい、外へと出る。

 そこはバルコニーだった。

 

 おやぶんゴーストは忙しなくうろうろしながら、何か考え事をしている様子で、後からやって来たアベル達にはすぐに気が付かなかった。

 

 仕方なく、声を掛ける。

 

 

「城の人達を解放するんだっ!」

 

「さあ、観念なさい! もうあなたの部下は居ないわよっ!」

 

 

 アベルとビアンカは武器を構えながら、おやぶんゴーストを睨み付ける。

 

 

「なんと! ガイコツ共はお前達を食べ損ねたようだな……。では、このオレ様が食ってやろう!」

 

 

 おやぶんゴーストは漸く二人に気付いて襲い掛かって来るのだった。

 

 

「ルカナン!」

 

「くらえっ!」

 

 

 ビアンカが守備力を下げる呪文【ルカナン】を使うと、すぐさまアベルが【ブーメラン】を勢いよく投げつける。

 その攻撃はドカッ! と鈍い音を立ておやぶんゴーストにしっかりと中り、おやぶんゴーストは【ブーメラン】が当たった箇所を庇う。

 

 

「お次はこれよっ! マヌーサ!」

 

「くらえっ!」

 

 

 ぎゃあっ!!

 

 

 おやぶんゴーストの悲鳴が聞こえる。

 急所に入ったのか、苦悶の表情を浮かべていた。

 

 おやぶんゴーストも反撃を繰り出すものの、突然幻惑に襲われその攻撃は空振りに終わる。

 

 

「もう一回、ルカナンっ!」

 

「くらえっ!」

 

 

 ぎゃああああっ!!

 

 

 おやぶんゴーストが頭を抱え、蹲ってしまう。

 何とか反撃をしつつも、時に空振り、ビアンカのメラをぶつけられフードが燃える。

 

 

「あっ、つるつるっ! 明る~い!」

 

 

 アベルがおやぶんゴーストの露わになったツルツル頭を指差した。

 闇夜でも月の光を反射するその頭は眩しいくらいだ。

 

 

「もういっちょ! メラっ!」

 

 

 ビアンカは容赦なく畳み掛ける。

 

 

「くそっ、何だお前等っ、何でこんなにつよ……っ!?(ってか髪の話をするなっ!!)」

 

 

 おやぶんゴーストも何とか手を伸ばして攻撃しているのだが、アベルとビアンカはそれを受けても平気な顔で攻撃の手を止めなかった。

 

 それどころか、もう……。

 

 

『っ、一方的ね……』

 

 

 つよっ!

 

 

 アリアはぼーっと二人の戦いを眺めていた。

 

 その内、おやぶんゴーストは護りに徹していたのだった。

 子供とはいえ、この二人、めっちゃ強いのである。

 

 

「っ、このオレ様が……っ!(負ける……っ!?)」

 

 

 おやぶんゴーストは身を小さく屈めて、降参とばかりに両手を挙げる。

 

 が、

 

 そんなことがわからないアベルとビアンカは、攻撃の手を緩めたりはしなかった。

 

 

「くら……」

 

『ちょっ! アベルっ、ダメ! もう白旗挙げてるっ』

 

 

 アリアは途中から一方的に痛めつけられる おやぶんゴーストに同情してかアベルの手を取った。

 

 

「へ……? あ、ビアンカもストップ!」

 

「メラッ! ……えっ、ストップ?」

 

 

 ビアンカは既にメラを唱えて放っていた。

 ボワッ! と火の玉がおやぶんゴーストにぶつかり弾ける。

 

 

 ギャアッ!!

 

 

 おやぶんゴーストは真っ黒こげになってしまうのだった……。

 

 

 

 

 

 

「たっ、……助けてくれー! この城からは出て行くから! オレ達が出て行けばこんな何もない城にはもう魔物もやって来ないはず! オレ達ゃ魔界のはみ出し者で、ただ、楽しく暮らせる所が欲しかっただけなんだよ。許してくれるだろ? な? な?」

 

 

 ぶすぶすと、焼け焦げながらおやぶんゴーストがアベルに縋り、許しを請うてくる。

 

 

「…………えー……」

 

 

 結局また(・・)それ云うの……?

 

 

 アベルは縋って来るおやぶんゴーストを憐れむように見下ろした。

 

 

『……アベル?』

 

「アベル、どうするの? ……私ならもう、大分すっきりしたし、いいよ?」

 

 

 アリアとビアンカがアベルの様子を窺ってくる。

 

 

「そう……? じゃあ……、……やだ」

 

『なんでやねんっ』

 

 

 アベルが拒否するので、アリアはついツッコミを入れてしまった。

 

 

「……なんでやねん……? 何それ……面白い……。そんなこと言われたの初めてだ。アリア、君って不思議だね……」

 

 

 アベルは瞳をきらきらとさせながらアリアを見つめる。

 

 

『いやいやいや……。ここは許してあげなよ……(何で見つめてくるの……)』

 

 

 アリアは「うーん」と頭を抱えたのだった。

 

 

「そんなこと言わずに頼むよ、坊ちゃん!」

 

 

 おやぶんゴーストは再びアベルに懇願する。

 が、アベルは。

 

 

「やだ」

 

 

 即答していた。

 

 

『アベルっ』

 

「そんなこと言わずに頼むよ、坊ちゃん!」

 

 

 おやぶんゴーストは再びアベルに懇願する。

 が、アベルは。

 

 

「やだ」

 

 

 またもや即拒否。

 

 

「そんなこと言わずに頼むよ、坊ちゃん!」

 

 

 おやぶんゴーストも譲らない。

 

 

「やだ」

 

 

 アベルも譲らない。

 

 

 ……という問答を何度か繰り返した。

 

 

 

 

 

 

『も~、アベルってばっ!(何この“いいえ”を選んだら先に進まない的展開!)』

 

 

 いい加減許してあげなよと、アリアはアベルのマントを引っ張る。

 

 

「そんなこと言わずに頼むよ、坊ちゃん!」

 

「……はぁ、もうしょうがないなぁ……」

 

 

 結局、どっちを選んでも一緒なんだな……。

 どうせだったら、僕の許しなんか取らずにさっさと目の前から消えてしまえばいいのに……。

 

 

 アベルはがっかりして、最後には「わかったよ、許してあげる」と言ってあげたのだった。

 




子供は容赦ないのです。

アベルちょっとぶっ壊れ掛けてるかもwww

----------------------------------------------------------------------

評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。