ポートセルミの教会は混んでいる。
では、本編どぞ。
「じゃ、じゃあ……僕はその辺で時間を潰して来るよ」
「うん、ごめんね」
教会に着くと先客が何人がおり、アリアが順番を待つというのでアベルは渋々ながらスラりんをアリアの元に置いて町で情報収集することにした。
◇
「……アリア、大丈夫かな……」
閉じられた教会の扉を眺め、アベルは後ろ髪を引かれているのか動き出そうとしない。
そんなアベルの背を叩き、ピエールが声を掛けた。
「主殿は心配性ですなぁ! ただ順番待ちをしているだけですよ?」
「心配性って……そりゃ、そうでしょ! 神父は男だし、アリアが背中をまた見せでもしたらと思うと……」
「……主殿は助平ですな……。そんなことばかり考えておられるとは……はぁ。情けない……」
ピエールが首を横にふりふり溜息を吐くと、アンドレに歩き出すよう指示を出す。
アンドレが動き出すと、アベルも続いたのだった。
「っ……! ち、違うよっ!? 違うけど…………やっぱり、そういうのは嫌なんだよ……」
「え?」
「……しょうがない時もあるとはわかってるけど……、僕以外の男に肌を見せるとか……やっぱり嫌だ……」
歩きながらアベルは眉間に皺を寄せ、ムスッとした顔をする。
「ははは……、主殿は独占欲がお強いのですね。……ですが、アリア嬢は主殿の恋人ではございません。彼女がどうするのかは彼女の自由ですよ?」
「ぐ……! そうだけどっ……! ならせめて僕の目の前で脱いでくれれば……あ。……うん! そうだよ。それでも嫌だけど、それなら僕も納得も出来る!」
ピエールの指摘にアベルは顔を顰め何かに気付くと、拳をグッと握って肘を引いた。
名案だというように瞳が輝く。
「……助平」
ぼそっとピエールにツッコまれてしまった。
「ぅっ!」
アベルの胸にグサリとピエールの言葉が刺さる。
「……アリア嬢が脱いだとされるのはサンタローズでのみですよ? 呪いを解くのに脱ぐ必要はございません。現にアルカパでも、ラインハットでも脱いで おられなかったではありませんか」
「……そ、そっか……そうだったね……。はは……、思い込みって怖いね。僕と離れている間、アリアが何をしているのか気になってしまってね……」
ピエールの説明にアベルは恥ずかしかったのか頬をぽりぽりと掻いた。
「……主殿はアリア嬢にぞっこんなのですね」
「っ! わ、わかる……?(何で皆わかるんだ……!?)」
「……………………ええ」
アベルの頬が朱に染まると、ピエールは少し沈黙してから頷く。
――そして、アリア嬢も……??
ピエールから見たアリアは記憶が戻ってもアベルに対する感情は以前と変わらない気がしていたが、本当の所はどうなのだろうか。
アベルとの距離感は縮まっている気がするが、二人の間に以前のような甘い雰囲気が消えた気がする。
アリアのアベルに対する態度はまるで弟に接するようで……?
ピエールは、それとなく聞き出せたらいいなと思うのだった。
「……そっか……。でも……、好きって言っちゃいけないって言われてるからなぁ……」
アベルはシュンとして目を伏せる。
――“好きって言ったら一緒に旅しない!”なんて言われたら言えないよ……。
僕の気持ちは既にバレているけど、本当ははっきり好きだと言ってしまいたい。
アリアだって僕を嫌いじゃないはずなのに……想いを聞いてくれるだけでいいのに。
それ以上は望まない、知っていて欲しい。
いつ死ぬともわからない危険な旅なのだから……。
と、アベルはそう思っているのだが、惚れた弱味か彼女が望まないなら黙るしかなかった。
「言っちゃいけない……? どういうことです?」
ピエールは不思議に思い訊ねる。
「…………さあ……。アリアが何を考えているのかは わからない。ただ……、僕に幸せになって欲しいんだってさ。ホント、わけがわからないよね」
「主殿……」
「さあ、情報を仕入れようか。伝説の勇者の手掛かりを探さないとね! あっ、すいませーん!」
アベルは一瞬俯いたかと思うと、次には顔を上げて傍を歩く鎧を着た戦士の男に声を掛けに行った。
ピエールも後を追う。
「……旅人か?」
「はい。さっき船でここに着いて」
戦士の男がアベルとピエールを見て訊ねるので、さっきポートセルミに来たばかりだと伝えた。
すると戦士の男が口を開く。
「噂に聞いたのだが、ラインハットという国が世界を征服するつもりらしい。しかし、いつまでも攻めて来ないところをみると、デマだったようだな」
「……ラインハット! そうですそうです。その噂デマですよ!」
戦士の男から思わぬ話を聞いて、アベルは親友の国の噂を消すため訂正しておいた。
「なんと、噂を知っていたか。やはりデマか……。近頃じゃ魔物が狂暴化しているからな。魔物達との戦いもあるというのに、人間同士で争っている場合ではないものな」
アベルの言葉に戦士の男はうんうんと深く頷く。
そして「じゃあな」と軽く手を挙げ去って行った。
「……ラインハットが無事デール王達の手に戻って良かったですね」
「そうだね……」
戦士の男を見送りつつ、アベルはピエールの言葉に相槌を打つ。
すると、
ドンッ、と。
アベルの背中に鈍い痛みが走った。
「っ……?(誰かにぶつかった……?)」
「あんた知ってますか?」
「えっ!? な……、い、いいえ……?(なんのこと……?)」
アベルが振り返ると恰幅の良い中年男性がぶつかったのだとわかる。
男性が突然“知っているか”と訊ねて来るが、主語がないから何のことだかわからない。
とりあえず何のことか わからないのでアベルは首を横に振っておいた。
アベルの様子を見て、男は続ける。
「昔は一度行った城や町にいつでも戻れる呪文があったらしいですよ。そういう呪文が使えたら本当に便利でしょうなあ」
「は、はぁ……、そうですね……」
「いやね、そんな呪文があれば、色々商売もしやすくなるってものだなと考えていたんですよ。ぶつかって すみませんでしたね」
「あ、いえ……、こちらこそ……」
男は道具屋か何かを営んでいる人だったのだろうか。
また腕組みしながら「他に何か便利な呪文はないものか……」等々、ぶつぶつ独り言を云いながら去って行った。
「移動呪文か……。あったら便利だよね」
「…………そうですね」
「今はもう、無いのかぁ……」
アベルは少し残念に思いつつ他に歩いている人も居ない為、直ぐ近くに見える道具屋に寄ることにした。
そして道具屋で必要なアイテムをいくつか調達すると、「お礼に ふくびき券を差し上げましょう。そのふくろに入れておきますね」と店主に【ふくびき券】を貰う。
買い物を済ませ、今度は埠頭へ行くことにする。
埠頭を回って戻って来ればアリアの用事も終わっているだろう。
せっかくの機会なので、埠頭を歩きながらアベルは船でアリアが云っていたことをピエールに伝えることにした。
「ピエール」
「はい、なんでしょう?」
「この世界は……ゲームの中なんだってさ」
「は……?」
突然出た謎の言葉にピエールはアベルを見上げる。
「アリアの説明によると………………――――………………――――」
アベルは静かに語り始めた。
移動呪文の一文は、アリアが一緒にいたら「あ、ルーラのこと?」って言ってそうw
そして、アベル。ピエールに話すっていう。
ピエールが裏切ったらえらいことになりそうですね。
“裏切りのピエール”……とかなんかカッコイイッ!!(そうか?)