ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

竜の神さま今何してる~?

では、本編どぞー。



第二百九十一話 この世界は竜の神さまが治めている

 

「そうなの?」

 

「うん」

 

 

 アリアが不思議顔で目を瞬かせるとアベルは目を細め頷く。

 

 

「ふーん……? ……よくわかんないけど、アベルがすごいのはわかったよ」

 

「うん、僕すごいんだ。もっと褒めてよ。僕アリアに褒められるの好きだ」

 

 

 そう言ってアベルはアリアの髪を一房手に取って指に絡め弄んでみせた。

 我ながら大胆な行動だと思ったが、自分のパーソナルスペースにいつも勝手に侵入して来るのはアリアなのだからしょうがない。

 

 

 ――間接的なら、好きって言ってもいいよね……!

 

 

 今のアリアにはつい甘えたくなる。

 そして、彼女はそれを受け入れてくれるだろうという安心感。

 

 また依存してしまうのでは……と不安にもなるが、記憶喪失中の儚げな彼女とは違う明るく頼もしい彼女にアベルは嵌り込んでいた。

 

 

「好きって……もぉ……。……ふふっ、はいはい。アベルはすごいね~!」

 

 

 アベルの要望に応えるようにアリアが手を伸ばし、アベルの頭を撫でる。

 

 

「ムッ。その褒め方じゃない……」

 

「あら、わがまま~。アベルは悪い子ね」

 

 

 要望通りに褒めたというのに、アベルが頬を膨らませるのでアリアは今度は彼の頬に手を添える。

 と、アベルはその手首を取った。

 

 

「……子ども扱いはやめてくれ」

 

「……そんなつもりはないよ……? 褒めてって言ったから褒めただけ。……好きなんでしょ?」

 

 

 アベルが真面目な顔でアリアを見下ろすと、アリアもさっきまで笑顔だったのに瞳を伏せがちに小さく囁いて妖艶に口を歪める。

 その仕草が妙に色っぽく思えて、アベルは息を呑んだ。

 

 

「っ……!? ……ああ、す」

 

 

 そしてアベルは訊かれるままに答えてしまいそうになる。

 ……ところが、

 

 

「あっ、そうだ。さっきここのシスターから面白い話を聞いたの! アベルも聞いてみて! シスター!」

 

 

 アリアは急に身体を反転させ、教会奥に居たシスターを呼んだのだった。

 

 

「アリア」

 

「ほら、行こ行こ!」

 

 

 アベルの手をやんわりと解き、アリアはシスターの方へと歩いて行ってしまう。

 

 

「……アリア……」

 

 

 アベルは自分から去って行くアリアの背を見送り、解かれた手を見下ろした。

 アリアの手首は細く、いとも容易く掴めるというのに いつも簡単にすり抜けていってしまう。

 

 近付いたと思ったら離れていく。決して自分には留まってくれない。

 彼女が一体何を考えているのか、アベルには解らないことだらけだ。

 

 

 ――いつか、振り向いてくれたりするのかな……。それとも、僕が諦めるのか……?

 

 

 ……旅は続く。

 

 

 出来れば二人が同じ気持ちになれたらいいのだが、アリアの気持ちはアリアのものだから、アベルが知るわけもない。

 どちらにせよ、長い旅の間に互いにとって良い関係になれたなら、それが一番いいのかもしれない。

 

 アベルはアリアが誘惑さえして来なければ諦めもつくのに……とちょっと恨めしく思いつつも好きな女から構われて嫌な気はしなかった。

 

 

 惚れたら負けだと、アベルはアリアの後について行く。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

「古い書物によるとこの世界は巨大な竜の神さまが治めているそうです。それが真実なら、なぜ竜の神さまは魔物たちを ほっておくのでしょうか……」

 

 

 アリアの後を追ってアベルはシスターの話を聞いていた。

 

 

 ――……この世界は竜の神によって統治されている……。

 

 

 シスターは手元の古びた本を大事に抱きしめ憂いの顔をする。

 

 西の国でも魔物の数が増え、狂暴化しているそうだ。

 つい最近も、名前もない小さな集落が魔物に襲われ壊滅したとのこと。

 ポートセルミは比較的大きな町のため今の所被害はないわけだが、このまま魔物の狂暴化が進めばいつかはここも……。

 そして、それはここだけに留まることはなく、いずれは世界中に広がって行くだろう……とシスターは危惧しているようだ。

 

 

「竜の神さまか……」

 

 

 シスターの話を聞き、アベルは顎に手を添え考えてみる。

 そして記憶が降りて来ないかなと探ってみるが、何も降りてこなかった。

 

 

 ――ホント、肝心な時に役に立たないなぁ……!

 

 

 アベルは苛立ちに頭を抱えた。

 

 

「竜の神さまがこの世界を治めている、か……(竜とか格好いい……!! さすがはドラクエねっ!)」

 

 

 アベルが真剣な顔をしているというのに、アリアは瞳をキラキラとさせる。

 

 

「……神さまはいったい、何してるんだろうね(アリア何だか楽しそう……?)」

 

 

 ――アリアってたまに空気読めないとこがあるよね……。

 

 

 憂うシスターの手前そうは思ったが、アリアにすっかりお熱なアベルには それすらも愛おしく感じてしまった。

 

 

 ――浮世離れしてるというか何というか……、そこがまたいいんだけど……………………っっ。

 

 

 すっかりアリアに夢中な自分が恥ずかしくなってアベルは“コホンッ”と咳払いを一つ。

 

 そんな話をしていると、祭壇で旅人へ祈りを捧げていた神父がシスターを呼ぶ。

 

 

「シスター、新規のお客様の応対をお願いします」

 

「あ、はい。ただいま。では、私はこれで……」

 

 

 シスターはアベル達に会釈し、教会へ新たにやって来た旅人の応対をしにそちらへ行ってしまった。

 港町故か、ここの教会は人の出入りが激しいようだ。

 

 

 シスターが去って行くと、咳払いしたアベルの様子など気にも留めないアリアがぽつりと呟く。

 

 

「ね~。神さま どこかで遊んでたりしてね」

 

「えっ!? さ、さすがにそれは無いんじゃないかな……」

 

「……そうだよね。神さまだもの、何かお考えあっての放置プレイなのよね」

 

「放置プレイ……って言い方………………プッ! あははははっ!」

 

「……ふふっ、いつか神さまを見つけたら訊いてみないとね!」

 

 

 アリアの言葉にアベルが吹き出すと、アリアも破顔した。

 

 

 ――ゲームの流れからして、主人公に過酷な旅をさせるためなんだと思うんだけど……、にしても もうちょっとしっかりして欲しいわね……。

 

 

 神さまさえ しっかりしてくれていたら、魔物が跋扈(ばっこ)することは無いんだもの……。

 アリアはゲームの中だとはいえ、今は現実。世界の人々が苦しんでいると思うと文句の一つも言いたくなったのだった。

 

 

 二人は教会を後にし、歩きながら話す。

 

 

「アリアは知らなかったの?」

 

「ん? 竜の神さまのこと?」

 

「うん、天界に居たんでしょ?」

 

「あ、うん、知らない。私が知ってるのはこの間見た夢の中の母親と、面倒を看てくれた女の人が居たことだけ」

 

「そっか……」

 

 

 アベルに訊ねられたものの、アリアは“自分(アリア)”のことは相変わらず殆ど掴めていない。

 そう伝えるとアベルは眉をハの字にしていた。

 

 

「……もうちょっと色々思い出せたらいいなって思うんだけどね~」

 

「……何か思い出したら教えてくれる?」

 

 

 弱り目で微笑むアリアをアベルが窺う。

 

 

「ん? どして?」

 

「……どうしてって……知りたいからに決まってる。僕は君のことを何でも知りたい。どんな些細なことでもいいから、思い出したら教えておくれよ。そうしたら何か君のチカラになれると思うんだ」

 

 

 大きな宿屋の目の前までやって来ると、アリアが首を傾げた。

 すると、アベルは隣を歩くアリアを真っ直ぐ見つめて真摯な瞳で伝えて来る。

 

 

「……アベル……。……………………――だね」

 

 

 アベルに見つめられアリアの瞳が一瞬揺れ動いたが、直ぐに俯いて小さく何か呟いて、歩いて行ってしまう。

 

 

「う、ん……? 今なんて……?」

 

「…………何でもないよ……。あっ、あそこに誰か倒れてる!」

 

「えっ、あっ……」

 

 

 アリアの声を聞き取れなかったアベルも彼女を追い掛けるが、アリアは宿屋の一番右の扉前で倒れている男性を見つけ指差した。

 

 大きな宿屋には扉が三つもあり、左と右の扉は普通の扉で、真ん中の扉は大きいサイズだ。

 港のドックで船乗りに教えてもらった劇場とやらの出入口なのだろう。

 

 アベルが「アリアはここで待ってて」と彼女をその場に残し、倒れている男性に駆け寄った。

 




アベルの想いはアリアに届いているのかいないのか……。

竜の神さまは……トロッコで遊んでますよね。知らんけどw
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