ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

町中に魔物が……。

では、本編どぞ。



第二百九十三話 山賊ウルフ

 

 

 

 

 

 酒場に入りカウンターへと行こうとすると、山賊風のガタイのいいガラの悪い二人の男に囲まれ、(うずくま)っていた農夫の男がアベル達の居る方へと駆けて来る。

 が、農夫はすぐに追い掛けて来たガラの悪い男二人に捕まってしまった。

 

 

「ひー、お助けを!」

 

 

 農夫は膨らんだ布袋を大事そうに抱え、叫び声を上げる。

 農夫の顔や身体には暴行を受けた痕跡が見えた。

 

 酒場には他に人が数人いるが、遠巻きに見ているだけで助ける者は誰もいないようだ。

 

 

「お助けはねえだろ! オレ達はおめえの頼みを聞いてやろうってんだぜ。だからさっさとその金を渡しな!」

 

 

 布袋にはお金が入っているらしい。

 ガラの悪い男が農夫の布袋に手を掛けるが、農夫はなんとか これを死守する。

 

 

「何だろう……?」

 

「カツアゲ……!? アベル、助けてあげた方が……」

 

「うん、だね。アリアは危ないから下がってて」

 

「えっ、大丈…………、……うん、わかったよ」

 

 

 農夫達の様子を見ていたアベル達だったが、どう見ても恐喝だったので助けることにし、アベルはアリアを背に匿った。

 アリアは断ろうとしたが、素直にアベルの背に隠れる。

 

 

「んにゃ! あんた等は信用できねえだ。この金は村のみんなが村の為に……」

 

 

 農夫は弱腰ながらも気丈に振る舞い、殴られ腫れ上がった目蓋から涙を流しながらも布袋から手を放そうとしない。

 

 

「強情なおとっつあんだぜ! ん?」

 

 

 農夫の襟ぐりに掴み掛り再度殴ろうと ガラの悪い男が拳を振り上げる。

 と、その拳をアベルが掴んでいた。

 

 

「その人を放せ」

 

「何だよお前は? オレ達とやろうっていうのか?」

 

 

 ――な、なんでぇ……腕が動かねえ……!? こいつ……!

 

 

 アベルの力が強いのか、男の腕がぷるぷると震えている。

 振り上げた拳は徐々に強制的に下ろさせられると、解放された。

 

 

「別に? 無駄な争いは好まないんだ。大人しく帰った方がいい」

 

「ほう? 見て見ぬ振りかい? けど気に食わねえなあ。おめえの その人を小バカにしたような涼し気な目がなっ!」

 

 

 アベルが冷ややかに告げると、男が不愉快そうに顔を歪めて背に背負っていた長剣を引き抜く。

 

 その刹那。

 

 

 シュバッ!

 

 

 と、水平に空を切る音がアベルの頭上から聞こえた。

 アベルは即座に身体を仰け反らせ、男達の剣技を(かわ)していたのだった。

 

 その後も男二人から剣技を繰り出されるがアベルはスイスイと(かわ)していく。

 

 

「っ、アベルかっこいいっ!! ぁっ、ごめんっ」

 

 

 ――あぁ、もうアベルってば何であんなに格好良いのっ!?

 

 

 大男二人の攻撃を難なく(かわ)すアベルに、アリアの口からつい本音が漏れた。

 戦いの邪魔をしてはと慌てて口を両手で覆う。

 

 

「っ……! ど、どうも……」

 

 

 ――アリアが格好いいって言ってくれた……!

 

 

 アベルは攻撃を避けながらチラッとアリアが無事か確認する。

 アリアは大男二人がアベルに斬り掛かった時点でピエールが背後に匿ったようで安全なことが分かり安心した。

 

 

「にゃろ……ちょこまかと……!」

 

「チッ、しょうがねえ……こうなったら真の姿で戦うしかねえか……」

 

 

 男達は中々当たらない攻撃に苛立ち、こうなったらしょうがないと目を閉じる。

 すると、その姿が魔物に変わっていった。

 

 片目に眼帯をした二足歩行の狼の魔物【山賊ウルフ】(実は神の塔の近くで遭っており何度か戦ったことがある)。

 

 

「魔物っ!?(町中だよっ!?)」

 

 

 アリアは慌てて武器を構える。

 

 まさか、魔物が変身していたとは。

 変身を解くと魔物本来の強さが戻る。アベル一人で戦っても勝てるとは思うが怪我は必至。

 

 アリアはアベルの傍へと駆け出した。

 ピエールも同様に駆け出し、スラりんも続く。

 

 

「主殿に加勢致します! アリア嬢は私の背後に!」

 

「あっ、うん!」

 

 

 アベルの元へと駆け付けるとアリアはピエールの後ろで魔力を集中させる。

 

 

「アリアっ! メラを二回頼むっ」

 

「はいっ! メラッ、メラッ!」

 

 

 アリア達が駆け付けると、アベルは早速指示を出した。

 アリアの火の玉が二匹の【山賊ウルフ】にそれぞれぶつかる。

 

 「あちぃっ!!」と【山賊ウルフ】達は自分達の毛に燃え移った炎を叩いて消していた。

 

 

「ピエールは攻撃、スラりんも!」

 

「了解しました!」

 

「は~い!」

 

 

 ピエールとスラりんもそれぞれ【山賊ウルフ】に攻撃を繰り出す。

 ピエールの剣技が一匹の【山賊ウルフ】を捉え、向こうも長剣で応戦するがピエールの方が一枚上手なためか、あっさりと倒れてしまった。

 

 スラりんはというと、体当たりで攻撃したが今一歩ダメージが足らなかったのだろう【山賊ウルフ】は踏ん張る。

 

 

「はぁ、はぁ……なんでえ……何でこんなに強いんだよ……ゼェゼェ……」

 

 

 アベル達に勝てる気がしない、このままではやられる……と、【山賊ウルフ】はどうにか現状を打破するために画策する。

 

 

 ――よし、一番弱そうなあの女を狙うか! あの女を攫って金を手に入れるってぇ手もあるな!

 

 

 【山賊ウルフ】は次の攻撃に備え、魔力を集中させていたアリア目掛けて走り出した。

 ピエールとスラりんが攻撃に回ったため、アリアは現在無防備なのである。

 

 【山賊ウルフ】のスピードならアリアまで近付き、傷を付けることくらいは出来そうだ。

 そして、アリアを人質にすれば上手く逃げ(おお)せ、金も手に入れることが出来て一石二鳥。

 

 そんな画策をしたわけだったが……。

 

 

「あ(れ……?)」

 

 

 ドサッと、

 

 

 アリアに辿り着く前に【山賊ウルフ】は倒れてしまった。

 倒れた【山賊ウルフ】の後ろで【やいばのブーメラン】を握り、蔑むような冷たい瞳でそれを見下ろしているアベルの姿がある。

 直接殴りつけたのか、【山賊ウルフ】から流れた血が【やいばのブーメラン】を伝ってアベルの手を汚していた。

 

 

「……っ!?」

 

 

 ――アベル……目がめっちゃ怖いぃ~……!

 

 

 アリアはアベルの蔑むような瞳にこくりと息を呑んだ。

 

 “この子、怒らせちゃいけない子だ……!”と、普段優しくて大人しい人を怒らせてはいけない……。

 聞いたことはあったが、本当な気がした。

 

 

「大丈夫?」

 

 

 倒れた【山賊ウルフ】から目線を逸らしアリアを見ると、アベルの瞳がふっと優しく緩む。

 

 

「あっ、うんっ! アベルは?」

 

 

 アベルのアリアに向ける瞳はいつも優しい。

 アリアは平静を装いアベルに訊ねた。

 

 

 ――アベル……。何でそんなに優しい目で私を見るの……? そんな風にされたら、困るのに……。

 

 

 アリアの胸がきゅんと疼く。

 そんなアリアにアベルが近付いて来ると、血で汚れた手を布で拭いながら彼女の様子を頭の上から爪先まで注意深く眺めた。

 

 

「僕は平気。怪我してないよね……?」

 

「よかった……。うん、どこも怪我してないよ」

 

 

 アベルに全身を凝視され気恥ずかしさを感じつつ、アリアは目の前の優しい瞳の青年を見上げる。

 

 

「うん、僕も……。君が無事でよかった」

 

 

 アベルはそう云って爽やかな笑顔をみせたのだった。

 

 

「っ……」

 

 

 ――あぁ、もぉっ!! その笑顔……反則なんだから……っ!

 

 

 アリアはその笑顔に釘付けになってしまい、息を詰まらせる。

 昔からアベルの笑顔には何か惹きつけるものがあるのか、アリアは動けなくなってしまった。

 アベルはそんなアリアの様子に目を瞬かせる。

 

 

(……あれ? アリアの頬が赤くなってる……?)

 

 

 記憶喪失中に何度か見たことがあるこの表情。

 これはいったい……?

 

 

 アベルは自分をぼーっと見上げるアリアに“ひょっとして……!?”と淡い期待を抱いた。

 

 

 と、

 

 

 それはさておき、アベルの背後で先程倒れた【山賊ウルフ】が起き上がる。

 

 

「っ!?(アリアが危ないっ!)」

 

 

 ゆらりと立ち上がる【山賊ウルフ】の気配に、アベルは咄嗟に目の前のアリアを抱きしめていた。

 




人間に擬態する魔物が後を絶ちませんねぇ。
モシャス使えるのかな? 全く、どうなってるんだか。
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