ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

クラリスちゃんとお話をしよう。

では、本編どぞ。



第二百九十六話 楽屋

 

 

 

 

 

「…………で、情報収集ってやつね。ふーん……」

 

「っ……、はい」

 

 

 アベルとアリアの前には、踊り娘の【クラリス】という美しい女性が椅子に腰掛けている。

 あれからアベルは突然舞台に上がり「この裏に!!」と舞台裏の楽屋へとやって来ていた。

 

 アリアは“隅々まで調べないと気が済まないなんて……これも宿命か……”と悟りを開いたかのように、ウンウンと何度か頷きアベルに付き合う。

 

 

「私達のステージは夜からなのよ。見たかったら夜に酒場に来てね」

 

 

 クラリスが愛らしい笑顔をアベルに向けていた。

 

 

「っ、はい」

 

「……………………はーい」

 

 

 アベルは軽く頷いただけなのだが、アリアは黙り込んだ後でつまらなそうに返事をする。

 

 

「っ……?(アリア……?)」

 

「ほらほら、次はあのお姉さん達に話し掛けるんでしょ?」

 

「え? あ、うん……?」

 

 

 アリアの様子が変だなと思いつつアベルは彼女に促され、今度は化粧台の前に座る踊り娘達に声を掛けることにした。

 化粧台の前に座る踊り娘は手前と奥に二人居る。

 

 

「こんにちは、お姉さん、僕達旅をしていて……」

 

 

 先ずは手前の踊り娘にアベルは声を掛けた。

 

 

「あら、カッコイイお兄さん。あたしに会いに来てくれたのかしら?」

 

「え? あっ、いや……」

 

 

 踊り娘がアベルに振り向き微笑み掛けると、アベルは目を瞬かせる。

 

 

「冷たい人ね。こういう時はウソでも“はい”って言うものよ。でもそんな可愛い彼女の前じゃ言えないわよね。うふふっ」

 

 

 踊り娘がアベルの後ろに立つアリアに気付いてそう云うと、片目を“ぱちん”と閉じて、ウインクした。

 

 

「あっ……あはは……、はい。彼女が可愛いので言えないです」

 

「っ……もぉ、アベルったら……」

 

 

 アベルがチラッとアリアを見てから、後ろ頭を掻き掻き頷くとアリアは頬を赤らめる。

 化粧台の鏡越しにそれが見えて、アベルはちょっぴり嬉しくなった。

 

 すると、奥の席に座るもう一人の踊り娘の声が聞こえて来る。

 

 

「今日はどうもお化粧の のりが悪いわあ。でも、あたしの場合素顔がいいから気にならないけどね」

 

 

 踊り娘はチラッと、アベルとアリアに視線を移した。

 彼女は素肌が自慢なのか、にっこりと微笑んでいる。

 

 確かにきめ細かい健康的な素肌だ。

 自慢したいだけある……、と。

 

 

「本当……お姉さんお綺麗ですね!(さすがは踊り娘ぉおおっ! めっちゃ可愛い!!)」

 

 

 アリアは踊り娘の傍に寄るとまじまじと彼女を見下ろした。

 先程話をしたクラリスの方が可愛いが、この踊り娘も中々のもの。

 

 

「ん……? あら……、あなたもとっても綺麗……、どこの“おしろい”使ってるの?」

 

「え? あ、私保湿用リップクリームだけで、“おしろい”は使ってなくて……」

 

 

 これです、とアリアは鞄から無色のリップクリームを取り出し、踊り娘に見せた。

 

 

「っ、お化粧してないの……!? リ、リップクリームだけですって!?(負けたわ……)」

 

 

 透明感のある白い素肌に踊り娘は目を見開き、アリアの頬をぺたぺたと触る。

 

 

「あ、あの……?」

 

「っ……綺麗ね、あなた……ホント綺麗……。すごい……! こんな子が居るなんて……人間じゃないみたい……」

 

「は、はぁ……(お姉さん、あなたの方が可愛いよ……!? ってそういや私、人間じゃないんだよね~……)」

 

 

 ぶにゅっと頬を挟まれ、口を窄めさせられるが、アリアは踊り娘のお姉さんが可愛いので好きにさせておいた。

 

 

「あぁ、すっごいモチモチしてるぅ……、あたしもこんな肌がよかったな~……」

 

「あははは……」

 

 

 踊り娘はアリアのもち肌がよほど気に入ったのか一向に放そうとしない。

 

 

 ムニムニ、ムニムニ。

 プニプニ、プニプニ。

 

 

「…………(うーん……大して気持ち良くないマッサージだなぁ……)」

 

 

 頬を(いじ)られながらアリアは早く終わらないかなと待っていた。

 と、そこへ。

 

 

「…………っ、あの、そろそろ解放してもらっても……?」

 

 

 ――アリアのほっぺ、僕だって触りたい……!

 

 

 これまで黙って見ていたアベルが割って入る。

 

 

「あぁ……気持ちいい……あら、ごめんなさい。あまりに触り心地が良くって……。お詫びにそこのタンスに入っている物をあげるわ。だから許してね」

 

「あ、いえ……、私は大丈夫ですよ」

 

「うふふっ、また遊びに来てね」

 

 

 アリアがにっこりと微笑むと、踊り娘も優しく笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頬っぺたを触らせるだけでタンスに入っている物をくれるなんて太っ腹ね」

 

 

 踊り娘と別れ、アリアは近くのタンスを調べる(タンスは三(さお)ある)。

 

 しかし何も見つからなかった……。

 

 

「このタンスじゃないのかな? 隣……?」

 

「……触らせなくたって貰えるのに」

 

 

 アリアが隣のタンスを調べるが、その隣にも特にこれといったものはなかった。

 アベルが何故だか不機嫌そうに頬を膨らましている。

 

 

 ――アリアの頬っぺた、僕だって触りたい。

 

 

 アベルはアリアの頬を触りたかったらしい。

 同性同士でも妬いてしまったようだ。

 

 

「ん……? あっ……ふふっ。まあ そうなんだけど、無断で拝借はちょっと気が引けるというか……」

 

 

 ――泥棒みたいでね……。私にはそんな勇気ないや……。

 

 

 アリアは ぽりぽりと頬を掻いたのだった。

 

 

「? そう?」

 

「ふふふっ、アベルはいいんだよ?」

 

 

 アベルが不思議顔で首を傾げるので、アリアは優しく目元を細める。

 

 

 ――アベルは主人公だから許される……! 多分。

 

 

「……ふーん……。何かよくわかんないけど…………(調べてみるか)」

 

 

 アベルは残り一(さお)のタンスに手を掛ける。

 

 

 と、急に脳内に話し声が響いた。

 

 

 

 

 “アベルはタンスを調べた!”

 

 “なんと絹のエプロンを見つけた!”

 

 “アベルは絹のエプロンを手に入れた!”

 

 

 

 

「っ……!? 何、今の」

 

 

 アベルは片手で頭を抱える。

 もう片方の手には【絹のエプロン】が握られていた。

 

 

「ん? どうしたの?」

 

「あっ、いや。頭の中に……声が……」

 

 

 ――前にもこんなことが どこかであったような……?

 

 

 アベルは脳内に流れた声に瞳を瞬かせる。

 そういえばこの感覚も不思議だなと思うのだった。

 

 

 ――……っ、ゲーム……だから……?

 

 

 そう思うと、ストン。

 

 町の人々から時々感じる違和感も、何かを調べた時に脳内に流れる声も。何もかも。

 不思議だなと思う反面、様々な事柄が腑に落ちる気がした。

 

 

「頭の中に声……? あ、絹のエプロンをゲットしたのね! お姉さん、これ貰って行きますね」

 

 

 アリアは首を傾げたものの、先程の踊り娘に断りを入れる。

 

 

『はーい、どうぞ~』

 

 

 踊り娘は優しい笑顔で手を振ってくれた。

 その後は特に調べるところもなさそうなので、アベル達は楽屋を後にした。

 




蓋を開けてみればクラリスとは殆ど会話せず……w

踊り娘のお姉さんと張り合わせてみましたよ、と。
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