ども、はすみくです。
いや~二次楽しいわぁ!
パパスのアベルに対する愛は深いのです。
では、本編どうぞっ!
船が遠ざかりアベル達が桟橋を歩いて行くと、待合所が目に入る。
そこにはお腹がふっくらしたおじさんが居て、
「あっ! あんたはパパスさんっ!?」
パパスとアベルに気が付くと、慌てて駆け寄って来た。
「やっぱりパパスさんじゃないかっ! 無事に帰って来たんだねっ!」
お腹がふっくらしたおじさんはパパスの元気な姿に弾ける笑みを浮かべてパパスの腕を掴んだ。
「わっはっは。痩せても枯れてもこのパパス、おいそれと死ぬものか!」
パパスも見知った人物だったのだろう。
明るく笑い飛ばして力こぶを彼に見せつける。
(知り合いなのかな……?)
アベルは二人を見上げて様子を見ていたが、
「アベル。父さんはこの人と話があるのでその辺で遊んでいなさい。とりあえずお前にこの地図を渡しておこう」
アベルがつまらなそうに見えたのか、パパスが荷物の中から不思議な地図を取り出し、手渡してくれる。
「父さんの昔の友達が特別に作ってくれた大切な地図だ。なくさないように大事に持っておくんだぞ。あまり遠くに行かないようにな」
「うん、わかったよ」
パパスに言われて、アベルは言われた通り
――
そんなことしてる場合じゃないから……。
アベルの足は港の出口へと向かっていた。
先程甲板で見た、空を漂う少女の後を追おうというのだ。
「すっかり時間が経ってしまって追いつけないかもしれないけど……、まだ近くに居るかも……」
アベルは港を飛び出した途端、青色のぷよぷよした魔物……【スライム】三匹に襲われたのだった……。
◇
「……大丈夫か? ほら、……ホイミ」
「父さん……。うん、大丈夫」
【スライム】三匹の姿が消え去って行くと、パパスは怪我をしたアベルに
……先ほど、アベルが港を独りで出て行ったことに気付いたパパスは、すぐさま後を追い、【スライム】に襲われている息子の元に駆け付けていた。
パパスが背中に背負った剣を抜くと、あっという間に【スライム】をなぎ倒していく。
そして、その戦闘の中、アベルも一匹だけではあるが【スライム】を倒すことができたのだ。
「アベルは強いなぁ。スライム一匹倒してしまうとは……、さすが父さんの息子だ」
「えへへ……」
パパスは感心したように目を細めると、口角を上げてアベルの頭を撫でる。
褒められたアベルも嬉しいのか鼻の下を人差し指で擦った。
「しかし、まだまだ表の一人歩きは危険だ。これからは気を付けるんだぞ。父さんの後ろについて来なさい」
「はぁい」
「この先にサンタローズの村がある。今回はしばらくそこで過ごそうと思っている」
「サンタローズ……僕知ってるよ」
「お! 憶えているのか! まだ小さかったから憶えていないと思っていたんだが……。さすが私のアベル! 偉いぞ~!」
パパスは満面の笑みでアベルを抱き上げ、頬擦りをする。
「わっ! と、父さんっ! お髭がもじゃもじゃだよ~!」
「わっはっは! いいではないか、いいではないか!」
……すりすり。
パパスは嫌がるアベルに尚もしつこく頬擦りをかました。
息子が可愛くて仕方がないらしい。
「っ、くすぐった……あっ、父さん、魔物だよっ!」
「おっ!? 息子とのらぶらぶタイムを邪魔するかっ!! 容赦せんぞ!」
アベルは背後に魔物が近付くのを察知してパパスに伝えると、パパスはすぐさま臨戦態勢に入る。
……そうして、またもあっという間に魔物を一掃し、アベルと共に村へと向かった。
「天使……こっちには飛んで来てないみたいだなぁ……」
――方向は合ってると思うんだけどなぁ……。
村へと近付き、先程見た天使を探して上空を見てみるが、それらしき少女の姿は無く、アベルは項垂れながら溜息を吐いた。
◇
……しばらく歩いていると、サンタローズの村が見えて来る。
「アベル、サンタローズだ」
「あ、うん……、サンタローズだね……懐かしいな……(天使、結局見つけられなかったな……)」
――しょうがないか……。
アベルは“ふぅ”と息を吐いた。
「そうだろう?」
パパスは満面の笑みで訊いて来る。
「うん……」
懐かしい。
とても。
――前に来た時は……村がぼろぼろ…………じゃないな……。
……あれは…………、いつのことだったっけ……?
アベルの脳裏に一瞬だけ、目前に広がるサンタローズと違う
アベルは今のサンタローズを見渡した。
サンタローズの入口では、目を丸くしてパパスとアベルを見ている門番がいる。
その人は村に近づくパパスとアベルの傍へと歩み寄って来て……、
「やや! パパスさんでは!? 二年も村を出たままいったいどこに……!? ともかくお帰りなさい! おっとこうしちゃいられない。皆に知らせなくっちゃ」
門番はビスタの港で会ったおじさん同様、目を細めて微笑むと近くの階段を上がり、村の中へと走って行った。
『おーい! パパスさんが帰って来たぞーっ!!』
サンタローズは北に連なる山々に程近い村で、高台を利用し、民家がいくつか建っている。
村の周りは森で囲まれており、北の洞窟からくる清流が村の中心を流れていた。
……入口は一箇所しかなく、村の内部に入るには川沿いを行くか、入口近くの高台に続く……先ほど門番が行った階段を上がらなければ侵入できず、元々の地の利なのか、守りやすい構造をしている。
アベル達が階段を上がり、高台に出ると大きな声が聞こえてくる。
その声にちらほらと、村人が家から出て来ていた。
「さぁ、家に行こうか。しばらくは村に居るつもりだ。村の中は安全だからアベルも好きに遊びに行っていいぞ」
「……うん! 楽しみだなぁ」
パパスの言葉にアベルが満面の笑みを浮かべると、パパスも釣られて破顔した。
アベルはパパスの後ろについて村を歩いて行く。
『パパスさん! あんた生きてたんだね! おや、その子があの時の? 大きくなったね坊や。パパスさん、夜にでもうちの酒場に寄っておくれよ。みんなあんたの旅の話を聞きたがるはずだ!』
『パパスさんや、よく帰って来たのう……』
『よっ! パパス! やっと帰って来たな! あんたとはケンカばかりしてたけどよう、いなくなるとさびしくて……――』
『やあ、本当にパパスさんだ! …………――』
『これはパパス殿。よくぞ無事に戻られました。きっと神様があなた方親子をお守りしてくれたのでしょう。と、堅苦しいことはやめにしましょう……。わ~い! パパスさんが帰って来た! うれしい~! わ~い、わ~い!』
途中村人達に話し掛けられて、父パパスを慕う人々の姿に父はすごい人なのだなぁとアベルは誇らしい。
自宅傍でシスターが歓喜に飛び跳ね、喜ばれると、やっとのことで目的地へと辿り着こうとしていた。
……だが、喜んだ村人はシスターで終わりではなかった。
まだもう一人、パパスとアベルの帰りを待ちわびていたようで、自宅の玄関前にはどこかで見た事のある男性が目を輝かせ立っている。
「だっ、旦那さま! お帰りなさいませ! このサンチョ、旦那さまのお戻りをどれほど待ちわびたことか……」
そう、サンチョだ。
夢の中で出てきた男性だ。
……と、アベルはにっこり微笑んだ。
「さあ、ともかく中へ!」
サンチョは玄関の横に立ち、扉を開けてパパスとアベルを中に入るように促す。
……けれども、何か引っ掛かる。
サンチョの傍……というより、玄関扉の傍に何かいる。
アベルからはサンチョが壁になっていてよく見えないが、ちらちらと淡い色の布袋のようなものが見えるのだ。
そして布袋(?)の上に白い羽の塊が見えた。
――布袋……? 小麦でも入れているのかな……?
いや、羽があるから……【にわとり】でもとってきたのかな……?
それにしては綺麗な布みたいだけど……。
……時折吹く風が布袋(?)を揺らして、アベルは不思議に首を傾げる。
「……ん?(何だろ……空気も
アベルは違和感を覚えながら父の背中を見上げるが、父の背中はいつも通り逞しく立派である。
けれども、
……
そうして、父の後ろに付いて、サンチョの開けてくれている玄関を潜ろうとしたとき、
「……えっ……!?」
アベルは小さな手で口元を覆った。
アベルの視線の先、玄関扉の傍、サンチョの股の間に
パパスはアベルが大好きなのです。
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読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!