ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

30 / 749
いつもありがとうございます、はすみくです。

レヌール城攻略エピローグです。

では、本編どうぞっ。



第二十九話 安らかにお眠り

「へっへっへっ。ありがたい、あんた立派な大人になるぜ……。お嬢ちゃんも庇ってくれてありがとな!」

 

 

 アベルの許しを貰うと、おやぶんゴーストはアリアをチラ見して消えていった。

 ちなみにビアンカはアベルとおやぶんゴーストのやり取りの間、バルコニーから夜景を眺めていたのだった。

 

 

『…………アベル……(何でがっかりした顔をしているの……?)』

 

 

 アリアはアベルの瞳が憂えてるように見えて、気になる。

 

 

 おやぶんゴーストの、「お嬢ちゃんも庇ってくれてありがとな!」の言葉はビアンカに向けられたものだと思ったのか、アリアは気に留めることはなかった。

 

 

「ビアンカ」

 

「……あ、終わった?」

 

「うん、もうここから出て行くって消えた」

 

「そっか。良かった! やったわね! …………」

 

 

 ビアンカが両手を掲げる。

 

 

「っ、アリアも!」

 

『へ? あ、はい……?(こう……かな?)』

 

 

 アベルに云われ、アリアも両手を挙げる。

 すると、アベルがアリアの片手を繋ぎ、もう片方の手はビアンカの手に向ける。

 

 

「アリア、私の手にタッチしてねっ」

 

『わかった!』

 

 

 パンッ! と。

 

 

 アベルとビアンカがハイタッチとばかりに、手を叩き合わせたので、アリアもビアンカの手をタッチしたのだった。

 

 

「これで王様も王妃様も安心出来るかな……?」

 

「きっとそうよ! 私達すごいわよねー、アリアっ!」

 

 

 ビアンカはアリアが居る方向を見て、微笑む。

 相変わらず目線は交わらないものの、位置は大体合っていた。

 

 

『私達って、いやぁ……、私何にもしてないんだけどね……はは……』

 

 

 アリアは頭を掻くのだった。

 そうして何となく視線を上へと移すと、高貴な身形で身体の透けた男女が屋上から下りて来る。

 

 

『……あっ、アベル!』

 

「ん……? あ」

 

「あっ、王様と王妃様……!」

 

 

 アリアの声にアベルとビアンカが上を見上げると、その二人がこの城の王と王妃だとわかった。

 

 

『っ、さっきのお化けっ!?』

 

 

 アリアは目を見開いて身構える。

 

 

「え……。アリア、大丈夫だよ。二人はここの王様と王妃様で……」

 

『っ、でもっ、私っ! ……っ……、………………』

 

 

 アベルはアリアに説明をするが、アリアは何とも言えない、思い詰めたような顔で黙り込んでしまった。

 

 

「アリア……?」

 

 

 アベルは疑問に思ったが、王と王妃は三人を屋上の墓の前へと連れて行く。

 三人を連れて行く王と王妃は、アリアを訝し気に見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 エリック王とソフィア王妃の墓の前へと三人は降ろされると……。

 

 

「よくぞやってくれた、心から礼を言うぞ」

 

「本当にありがとう、あなた達のお陰でゆっくり眠れそうです。お城の者達も安らかな眠りに就いたようですわ」

 

「さあ行こうか、お前」

 

「はい、あなた……。さようなら、あなた達のことは忘れません」

 

 

 王と王妃の幽霊は、穏やかに目元を緩め墓の中へと消えていった。

 ただ、最後にチラリとアリアに冷たい視線を残して……。

 

 

『…………っ、違う、私そんなんじゃない……』

 

 

 その視線に気づいてボソッと呟き、アリアは俯いてしまう。

 

 

「……アリア……?」

 

 

 アリアの様子が気になってアベルは訊ねようとしたのだが、

 

 

「よかったわね。これからは二人幸せに眠り続けるはずよ。でもこのお城に住みついたゴースト達も許せないけど……。罪のないお城の人達を襲った魔物はもっと許せないわね!」

 

「あ、うん……」

 

 

 ビアンカが話し始めてしまったので、頷くしかなかった。

 

 

『……ん? あ……、何か光って……』

 

 

 俯いていたアリアだったが、視界の端にきらりと光ったものが見えて、顔を上げた。

 同時、ビアンカも気付いたらしい、

 

 

「あら? 何かしら? 綺麗な宝玉ね。きっとお礼よ。ねえ持ってゆきましょう」

 

 

 ビアンカは金色に光るオーブを手にして、アベルに渡す。

 

 

「…………あ、うん……」

 

 

 アベルは手渡されたゴールドオーブを見下ろす。

 

 

 また(・・)だ!

 毎回毎回このオーブ……。

 

 このオーブは一体何なんだろう……?

 

 金色に光って綺麗だけど……。

 

 

 何に使うものなのかは、今のアベルには皆目見当がつかなかった。

 

 

「それにしても本当に綺麗な玉だね。宝石みたい! お化け達がこのお城を荒らしてたのってこれを探していたからなのかな?」

 

 

 ビアンカがアベルの持つゴールドオーブを覗き見て告げる。

 

 

「え……。あ、そうかもね……。綺麗だし……。アリアはどう思う?」

 

『へ……? わ、私? あ、うん……、私はよくわかんないや。お家の玄関に飾っておくといいんじゃないかな?』

 

 

 アリアに訊くも、思いも寄らない意見が返って来る。

 

 

「これを玄関に飾るの……?(すごく珍しいものだと思うんだけど……)」

 

『……あ、でも高価そうだから盗まれちゃうかな……?』

 

「……ぷっ。うん、盗まれちゃいそう。飾るよりは仕舞っておいた方がいいかもね」

 

『うん、……そうした方がいいかも』

 

 

 アベルは一先ずゴールドオーブを袋に仕舞うのだった。

 

 

「さあ、じゃあ帰りましょうか! 戻って服も洗わなくちゃ……ソースでどろどろ……って、……あれ? 私達の服が綺麗になってるよ? 王様達がソースの汚れを取ってくれたのかな? えへへ、助かっちゃったね」

 

 

 ビアンカは自分の服を見下ろし、綺麗になっていると、一回転してみせる。

 

 

「本当だ……!」

 

 

 アベルも綺麗になった服を見下ろし、感心していた。

 

 

『……私のも……。綺麗にしてくれたんだ……』

 

 

 アリアの服も綺麗になっていて、アリアは王と王妃の墓に手を合わせたのだった。

 その間にビアンカは歩いて行ってしまったが、すぐに追い掛ければ間に合うだろう。

 そんな時ふと、アベルがアリアの祈りに口を挟む。

 

 

「…………アリアのお祈りって……」

 

『……ん?』

 

「珍しい形だね。指組まないんだ?」

 

『え? あ、ああ……。和式……的な……?』

 

「わしき……?」

 

『……ふふっ、アベルに言ってもわからないよ。ただ、こういう習慣なだけっ!』

 

「えぇ!? そんなこと言わないで教えてよー!」

 

『ほらっ、ビアンカちゃん行っちゃったよ? 追い掛けよっ!』

 

 

 アリアは走り出す。

 後ろからアベルも追い掛けたのだった。

 




少しだけ謎を残し……、次へと参ります。
その内打ち明けられたらいいなーと思っています。

----------------------------------------------------------------------

評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。