ポートセルミに来たら福引きをしましょ~。
では、本編どぞ!
◇
宿屋、受付――。
明日の朝早くここを発つことにして、今日は早めに休もうとアベル達は部屋を取ることにした。
「ようこそ旅の宿に。ひと晩80ゴールドですが、お泊まりになりますか?」
受付嬢がアベル達の人数を確認し、宿泊代を請求する。
馬車の仲魔達は宿には泊まらないが、食事の世話をしてくれるので代金はしっかり請求されるのだ。
ガラガラガラガラ……コン、ころり。
カウンタ―の奥の方でたくさんの小石か何かが詰まった箱が回る音がする。
そんな中……、
「はい、あの…………――――」
アベルは受付嬢に二言三言訊ね、それから80ゴールドをカウンタ―上のカルトン(コイントレー)にのせた。
「ではお二階一番左のお部屋をお使い下さいませ。それでは ごゆっくりお休みください」
受付嬢が階段の方へと掌を上に向け教えてくれる。
ガラガラガラガラ……コン、ころり。
またカウンタ―の奥から同じ音が聞こえた。
耳を澄ませると、箱から小石……ではない……何か、小さな玉が転がり落ちるような音である。
「アリア、部屋が取れたよ」
「っあ、うん」
アベルが隣にいるアリアに声を掛けると、アリアはぼーっと何かを見ていたらしくハッとしてアベルの方へと視線を移した。
「何見てたの?」
「福引……」
アリアは宿屋カウンタ―の奥にある福引所を見ていたらしい。
アベルがそちらに目を向けると、旅人なのだろうか、そこには鎧を纏った男がガラポン抽選器を回していた。
ガラガラガラガラ……コン、ころり。
抽選器から黒い玉が飛び出て来る。
さっきから聞こえていた音はこの音だったようだ。
「おや、残念じゃったのう。黒玉は はずれじゃよ。また いつでも来るがええぞ」
福引所のお婆さんがニカッと白い歯を見せると、鎧を纏った男は「十回も回したのに……」と残念そうに肩を落として宿を出て行った。
「……当たらなかったみたいね。運次第なのかな」
――あの抽選器、お洒落なデザインだけど現実世界と同じ~! 温泉旅行とか当たるのかな?
アリアは何が当たるのだろうかと興味津々である。
「ああ……、そういえば……福引券を町で貰ったっけ。あと……、ヘンリーにも
「え? ううん、私はいいよ。アベルがやってみて?」
アベルは【ふくろ】の中から【ふくびき券】を二枚取り出して、アリアに渡そうとするが、彼女は首を横に振った。
「そう?」
「うん、私見てる。見てるの好きなんだ(はずれたら申し訳ないし……!)」
「わかった」
アベルは福引所に向かい、お婆さんに【ふくびき券】を見せる。
「いらっしゃい~。ここは福引所だよ。お前さんの福引券は全部で2枚じゃな
。福引券1枚で、福引き1回じゃがやっていくかえ?」
「はい。じゃあ、これ」
「では、始めていいぞよ~」
アベルが【ふくびき券】を1枚渡すと、お婆さんが抽選器を回すように勧める。
アベルは抽選器のハンドルを回した。
ガラガラガラガラ……。
抽選器の中の玉が軽快な音を奏でる。よく混ざっているようだ。
「当たるといいね」
「そうだね」
ガラガラガラガラ……コン、ころり。
黒い玉が抽選器から飛び出しトレーに転がる。
「「あ」」
アベルとアリアはトレーに落ちた黒い玉をじっと見下ろした。
「おや、残念じゃったのう。黒玉は はずれじゃよ。お前さんの福引券は1枚じゃがもう1回、福引きしていくかえ?」
お婆さんが目を細め嬉しそうに云う後ろで、アリアが「残念~」と渋い顔をしている。
「はい、じゃあこれ!(今度こそ!)」
「では、始めていいぞよ~」
アベルはもう一度挑戦! と【ふくびき券】をお婆さんに渡して再び抽選器を回す。
今度はさっきよりも余計に回してみた。
ガラガラガラガラ……ガラガラガラガラ……コン、ころり。
――今度こそ!
そうは思ったが、たった二枚で大当たりが出る程世の中は甘くないのである。
「あ、白!」
アリアが抽選器から零れ落ちた玉を見て声を上げた。
「はい~、おめでとさん。白い玉が出たので5等じゃ。賞品の福引券1枚を持っていきなされ」
ほいっ、とお婆さんから【ふくびき券】を渡される。
一応当たったのだが、元に戻っただけだった。
「福引券が戻って来た!」
「ふふっ、よかったね! もう一回出来るよっ」
手元に戻って来た【ふくびき券】を手にすると、アリアが優しく微笑んでくれる。
「ああ、今度こそ! ……お婆さん!」
「お前さんの福引券は1枚じゃがもう1回、福引きしていくかえ?」
「はい! これっ!」
「では、始めていいぞよ~」
アベルは再び抽選器を回した。
ガラガラガラガラ……ガラガラガラガラ……
コン、ころり。
回したはいいのだが、ここからまさかの……。
◇
◇
◇
ガラガラガラガラ……コン、ころり。
もう何度目なのだろう、トレーには白い玉が飛び出していた。
「はい~、おめでとさん。白い玉が出たので5等じゃ。賞品の福引券1枚を持っていきなされ……はぁ、はぁ……お前さんの福引券は全部で1枚じゃな
。福引券1枚で、福引き1回……はぁ……(もうこれで何回目じゃ!?)」
福引所のお婆さんが疲れの顔を見せる。
アベルが最初に抽選器を回し始めてから30分以上が経っていた。
「っ、もう一回!」
アベルは当たった【ふくびき券】お婆さんに差し出す。
お婆さんは何とも言えない表情でそれを受け取り、さっさと回すように促したのだった。
先程からアベルは白い玉ばかりを出し続けているのである。
「……すごい、ねえ……(運がいいんだか悪いんだか……)」
「ですね……。こんなこと以前はなかったと思うのですが……」
「あはっ、そうなんだ?」
アリアはじっと見ていたのだが中々終わりが見えず、待ちぼうけ……とアベルの後ろでピエールとスラりんと話をしていた。
「ピキー! アリアちゃんボクの上に座ってていいよぉ!」
「ありがとう、スラりん。でも大丈夫だよ。もうすぐ何か当たりそうな気がするし」
アリアはスラりんにボクの上にどうぞと云われるが、背
「そうなの!? アリアちゃんわかるの!?」
「ううん、当てずっぽう!」
なんて話をしていると、
コン、ころり。
何度目かな、今度こそ! だったのだが、出たのは……。
…………白い玉!
「……………………、……………………、……………………はい~、おめでとさん。白い玉が出たので5等じゃ。賞品の福引券1枚を持っていきなされ…………(もう諦めとくれ!)」
お婆さんは手をぷるぷると震わせ【ふくびき券】をアベルに差し出したのだった。
「……………………っ、白い玉しか入ってないんじゃ……!?」
「そんなわけあるかっ! 始めに黒い玉が出たじゃろうが! 何回 白い玉を出せば気が済むんじゃっ!」
念のため確認するようにアベルがお婆さんに訊ねるが、お婆さんはキレ気味で唾を飛ばす。
「っ……、もうい」
アベルはこれで最後だ! とばかりに【ふくびき券】を差し出そうとしたのだが。
「ね、アベル、私ちょっと休みたいなっ、ピエール君もスラりんもお疲れみたい」
アリアがアベルの肩をツンツンと挿して、背後で待ちぼうけしているピエールとスラりんへと視線を移す。
ピエールとスラりんは先程の稽古で疲れていたのか壁に背中を預け転寝をし始めていた。
「あ……っ、そうだね。……今日はもうやめにします……、明日朝また……」
「…………そうじゃな、そうしておくれ……」
アベルは福引を諦め、部屋に行くことにしたのだった。
ゴールドカードゲットしたけりゃ、とにかく回せ!
道具屋で薬草を買いまくれ!
と思ったのですが、残念ながらこのお話ではゴールドカードは当たりません……。
何故なら今後アイテム購入時の金額を計算し直すのが面倒だからです!www
Theご都合。すまぬ、アベル。