ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

お茶にしましょ~。

では、本編。



第三百四話 ティータイム

 

 アベルの鼻からフーフーと興奮したような吐息が漏れていた。

 

 ラインハットを出てから二日間滞在したオラクルベリーでは同じ部屋に泊ったわけだが、記憶を取り戻してからのアリアは【安眠枕】を(いた)くお気に召したようで、毎晩愛用し夜はぐっすりなのである。

 アベルが何か話し掛けても“すぴーすぴー”と無垢な顔で心地良さそうに眠っていた。

 

 アベルは特に他意はなくアリアにぐっすり眠って欲しいから【安眠枕】を贈ったのだが、まさか、ちょっとやそっとじゃ起きない程、眠りの効果があるとは思わず つい眠るアリアに触れそうになってしまっていたのだ。

 

 そんな時、危険を察知したピエールが立ちはだかり止めに入ってくれたが、ピエールもずっと起きているのも辛いだろうと自分の中の衝動を抑えるため、オラクルベリーでは一晩中カジノに居たのだった。

 明け方近く本当に眠くなって宿に戻ってからアリアを見ないようにして眠ったものである。

 

 だが、ここポートセルミには気を紛らわせることの出来るカジノなんて便利なものはない。

 オラクルベリーで使えた手はここでは使えない。

 

 今夜は逃げ場がなさそうだ。覚悟を決めるしかない。

 いや、今夜……だけではない。

 

 そう、今夜からは彼女と二人きりの夜を過ごすのだ(ピエールが常にいるが)。

 好きな女と毎晩同じ部屋で休む……、そう思うだけでお年頃のアベルは興奮してしまう。

 

 ヘンリーが居た時は我慢出来てい……………………なかったかもしれないが、眠るアリア本人に直接触れたりなどはしていなかった。

 ヘンリーとピエールという双璧に護られ、アリアは今まで穏やかに休めていたわけで、ヘンリーという双璧の一つが崩れ去った今、自己を止めるのはピエールと自らの強い意志のみ。

 

 理性と本能の本当の戦いの日々が始まるのだ。

 

 アリアはアベルの苦労など知ったことではない。

 ただただ、無防備に【安眠枕】で今夜もぐっすり眠るのだろう。

 

 ……そう思うと、少し恨めしい気がしたアベルだった。

 

 

「えっ? スカートも刺激強い!?(いつも見てるのに!?)」

 

「っ……アリア嬢……、その……、スカートも一緒に……捲れております……」

 

 

 アベルってそんなに純情だったっけ……、と訊いてみたのだが違ったらしい。ピエールにそれとなくツッコまれてしまった。

 

 ピエールの兜の下からは赤い鮮血が僅かに見える。

 彼は鼻血を出したようだ。

 

 

「へ……? あっ、や、やだ、ごめん……。そんなつもりじゃなかったの……」

 

 

 ――う、わぁああああっっ!! ……なんてことを……!! 私、痴女じゃん!!

 

 

 アリアはスカートとエプロンを下ろし、俯く。

 頭の中ではパニックになっていた。

 

 

 ――十六歳の美青年と、可愛らしいスライムナイト君に自らパンツ見せるとか……何考えてんのっっ!? 頭おかしいでしょ!! 私しっかりしてよ!!

 

 

「ご、ごめんなさい……。反省します……」

 

 

 アリアはアベル達に背を向け、調理台へと戻った……。

 

 

「…………はぁ……(アリア……)」

 

 

 ――僕、この先こういうのに耐え続けられるかな……。いつか襲ってしまうんじゃ……。

 

 

 股の間に押さえで置いた手に硬い感触がして、今致すわけにいかずアベルは何もできないまま治まるのを待つ。

 

 マントを脱いでいるからか、アリアの剥き出しの肩が色っぽく見えた。

 お茶を準備する彼女の背を見ていると、後ろから抱きしめたい衝動に駆られる。

 

 仲魔達がいるとはいえ、仲魔を考慮しなければ好きな女と毎日二人きり。

 彼女はいつも無邪気に煽って来る。

 

 

 ……今回の旅はとんでもない苦行のような気がした。

 

 

「はい、お待たせ~」

 

「……っ、うん」

 

 

 それから少し待っているとお茶をトレーにのせ、アリアがベッドに持って来る。

 茶葉の香りが部屋に漂って、やっと一息つくことが出来そうだ。

 

 

「アベルなに食べる?」

 

 

 アリアはベッドの上にトレーを置くと、先程アベルが置いた菓子を隣のベッドから持って来て並べる。

 

 

「……な、なんでもいいよ……」

 

「そう? なら日持ちしないケーキを先に食べちゃおっか」

 

 

 アリアはクリームたっぷりのケーキを取り出し、手掴みでアベルに渡した。

 

 

「…………これ……(かなり崩れてしまってるけど……)」

 

「崩れちゃったね。ふふっ、手掴みはちょっと行儀悪いけど、お皿無いしここじゃしょうがないよね?」

 

 

 形が崩れたクリームたっぷりのショートケーキを手渡され戸惑うアベルにアリアが二本の指先についたクリームをちゅっ、ちゅっと舐め取る。

 薄桃色のぷるっとした唇が窄められて指が離れるとクリームが少し残った。

 

 

「ぁっ……、……っ」

 

 

 何気ない仕草にも関わらず、アリアの唇に白いクリームが付着すると、それだけでアベルの胸は高鳴ってしまった。

 やっと治まったというのに、またしても頬や身体が熱くなってくる。

 

 

「んっ、甘ぁ~い! いやぁ、まさか異世界でショートケーキが食べられるとは思わなかったよ~。私はタルトにしよっと。ピエール君はどうする?」

 

 

 アリアはそんなアベルの気持ちはわからないのだろう。クリームの甘さに上機嫌に目を細めると、今度は菓子の山から自分好みの菓子を探していた。

 

 

「あっ、私は、け、結構です……」

 

「そう? 美味しいのに……」

 

 

 ピエールもアリアの仕草を眺めていたらしく、しどろもどろで手を左右に振って断りを入れる。

 と、アリアが目当ての【フルーツタルト】を見つけて嬉しそうに破顔した。

 

 

「…………アリア嬉しそうだね」

 

「ん? うんっ! こんな所でスイーツが食べられるなんて思わなかったから。ありがとう、アベルっ」

 

「どういたしまして」

 

 

 嬉しそうな彼女の顔にアベルは優し気な瞳で口角を上げる。

 アリアは「いただきます」とにこにこしながら告げると【フルーツタルト】を一口齧った。

 

 

「ん~~っ!! おいしいぃぃっ!! 何これ……甘みと酸味のバランスがすごくいい……! あの女の子が作ったのよね……!? 名パティシエなの!? レシピ欲しい……!」

 

「…………フッ……(アリアって美味しそうに食べるよね……)」

 

 

 【フルーツタルト】を(かじ)ったアリアの瞳がキラキラ輝いて大絶賛すると、アベルは彼女の幸せそうな顔に自分も幸せな気分になる。

 そうしてアベルも一口、ショートケーキを齧った。

 

 

「あ……、おいしい……甘い」

 

 

 アベルの口の中にふわふわしっとりのスポンジと、濃厚な甘い生クリームの味が広がる。

 脳が喜んでいる気がした。

 

 こんなもの、旅の途中で食べた事など今まで一度もない。

 何だか不思議だなとタルトを齧るアリアをチラッと見た。

 

 

「でしょ~! 美味しいよねっ! こっちも食べてみる?」

 

 

 アリアはアベルの視線に気付き、手にした齧ったタルトをアベルの前に差し出す。

 

 

「え?」

 

「ショートケーキも食べたいなっ、これ一口あげるからアベルのも一口ちょうだい?」

 

「っ…………あ、うん……ど、どうぞ……?」

 

 

 アリアに言われるままにアベルはショートケーキを差し出した。

 すると、アリアは ぱくっと躊躇(ためら)いなくアベルの齧った部分から齧りつく。

 小さな噛み跡がショートケーキに残り、アリアの唇に白いクリームが再び付着すると、彼女はペロっと唇に付いたクリームを舐め取った。

 

 

「っ! …………っ、おいしい……?」

 

 

 ――僕の齧った後……そのまま食べた……! 何だろう……なんか……イイッ……!!

 

 

 やっぱりアリアは食べ物で釣ることが出来るのでは……などと考えてしまうアベル。

 ショートケーキを口にした彼女の顔は幸せそうだ。

 

 

「ンッ! おいしいっ! ありがとう! じゃあ、こっちもどうぞ! はい、あーん」

 

「っっ……!」

 

 

 アリアが【フルーツタルト】を差し出すので、アベルは顔を赤くしながらアリアの齧った箇所目掛け、大きな口を開けて齧る。

 

 アベルが鼓動を逸らせながら咀嚼するが、味なんてわからなかった。

 けれどアリアの齧った【フルーツタルト】だと思うとそれだけで最高のタルトだと感じて口角を上げる。

 

 

 ――こんな美味しくて甘いものを、僕は今まで食べたことがない。

 




キャッキャウフフwww
このどうでもいいイチャイチャの下りwww ええんかな……?
なんかすいません……楽しいです……w
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