ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

私、外から来たの。

では、本編どぞー。



第三百八話 外から来たから

 

「外……」

 

 

 ――アリア嬢は外の世界から来た女性……。

 

 

 その“外”が示す世界は一体どういうところなのだろう?

 

 ピエールは疑問に思ったが、アベル同様、今自分の居るこの世界のことも咀嚼がまだまだ追い付いていない。

 ただ、アリアが特別な人物なのだということだけは理解していた。

 

 

「…………アベルが今、私のことを好きでいてくれるのはとっても嬉しい……。でも……、私はヒロインじゃないから……いつかお別れしなきゃいけないでしょう……?」

 

 

 アリアの表情が哀し気に雲る。

 

 

「アリア嬢……。ですがそれはまだ先の話で……(ヒロインとはいったい……??)」

 

 

 ピエールはアリアの言葉の一部が不明なものの、アベルがいつ結婚するのか大体わかっている(・・・・・・)ので、それはまだ先だと教えてやった。

 

 

「…………先……、どれくらい先……? 私、あとどれくらいアベルと一緒に居られるかな……?」

 

 

 アリアは手を組み、ピエールを見下ろす。

 目は伏し目がちで哀し気だ。

 

 

「アリア嬢……。それで……哀しそうなお顔をされていたのですね……」

 

「…………別れが決まってるのに付き合うなんて器用なこと……、私には出来ないよ……。アベル、いつかビアンカちゃんかフローラさんと結ばれるんだもの」

 

 

 アリアは足元に転がっていた小石を拾って、海に投げる。

 小石は音もなく海の底に沈んでいった。

 

 

「アリア嬢……」

 

「…………でも、アベル……段々アプローチが激しくなって来てる気がするし……、本当言うと辛いの。あんなに優しくされ続けて平気で居られるほど私無感情な女じゃない。ピエール君の言う通りだよ、私アベルのことが好き……」

 

 

 ほんのり色付いた頬を掻き掻き、アリアは自分の素直な気持ちを告げる。

 

 

「…………やはり……」

 

「……っ、ゲームの主人公にガチ恋するとか、頭おかしくて自分でもどうかしてると思うんだけどねっ!」

 

 

 ――本当、頭おかしいよねっ!!

 

 

 アベル格好良いし、優しいし、ちょっと えっちだけどあの瞳に見つめられると身体が何故か反応しちゃうし……本当、どうかしてる……。

 あれ以上押されたら、私逆らえなくなりそう……。

 

 

 アベルを思い出すとアリアの頬は熱くなってしまった。

 

 

「が、ガチ恋……ですか……?」

 

「…………私、アベルが結婚する時 絶対泣いちゃう……。笑っておめでとうって言いたいからアベルの今の気持ち、受け入れられないよ……」

 

 

 ――これ以上アベルを好きになりたくない……!

 

 

 アリアは俯いて両手で顔を覆う。

 そんな彼女にピエールは、

 

 

 “私が……! 私が居ります……!”

 

 

 そう伝えようと思ってはいたのだが……、

 

 

「…………っ、結婚はまだ一年以上先の話なのです……!」

 

 

 ……アベルを想うアリアには言えなかった。

 アベルもアリアも互いを想っているのに、諦めろとはピエールには言えなかったのだ。

 

 いつか別れが来るとしても、今は二人互いに想い合っている。

 

 

「い、一年以上……? てことは……アベルが結婚するのは彼が十七歳か、十八歳になったらってこと……?」

 

「……もし、アリア嬢が主殿を受け入れたなら、未来が変わるかもしれませんよ……!?」

 

 

 ピエールはもしかしたらと、アリアに告げてみた。

 

 

「っ、けど、人生の大筋は変わらないってアベルが……」

 

「……主殿がお好きなのでしょう……?」

 

 

 ――そう、今まで何も未来が変わった様子は無い。

 

 

 ピエールはわかっているが、アリアに訊ねる。

 

 

「…………っ、好きだよ。大好き……。でも、彼は私のものにはならないんだもの……」

 

「…………どうか、ご自分の気持ちを押し殺さないで下さい。未来がどうであれ、今のお気持ちを大事にされて下さい」

 

 

 未来が変わろうと、変わらずであろうと今が大事なのだ。

 心苦しそうにアベルが好きだと零すアリアをピエールは応援したくなった。

 

 アベルも もはや包み隠さず一途にアリアを慕っている。

 そんな二人には出来るだけ長く楽しい時を過ごして欲しい。

 ピエールは心からそう思う。

 

 

「ピエール君……」

 

「まだ一年あるのです。よく考えられて……、このまま辛い想いで一年過ごすのか、主殿と楽しい一年を過ごすのか。アリア嬢の選択次第ですよ」

 

「…………私の選択次第……?」

 

 

 ピエールの言葉にアリアは首を傾げた。

 

 

「ええ、アリア嬢。貴女がどちらを選ぼうとも、私はずっと貴女の傍におりますから」

 

 

 ――貴女が悲しみの闇に囚われても、きっと救ってみせましょう。

 

 

 ピエールはアリアを見上げて彼女の手を優しく握った。

 

 

「ピエール君……。……ありがとう……、よく……考えてみるね……」

 

 

 アリアも手を握り返し、何度か頷く。

 

 

「……明日は早い。そろそろ戻りましょう」

 

「…………うん」

 

 

 ピエールが先導し、アリアが後ろに続く。

 アリアはぽつりと、ピエールに聞こえないように小声で呟いた。

 

 

 

 

「……記憶なんか戻らなければ良かったのに……。そしたら、何も知らないままアベルを好きでいられたのに……」

 

 

 

 

 ザザーン、ザザーン。

 寄せては返す穏やかな波の音が聞こえる。

 

 アリアの小さな呟きは波の音に掻き消されたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そうしてアリアとピエールは宿に戻って来る。

 

 

「……ふふっ、よく寝てる……(寝顔可愛いなぁ……、あ、睫毛長い……)」

 

 

 ――子どもの頃も可愛かったけど……随分凛々しくなっちゃって……。

 

 

 ホント、格好良くなっちゃって……参っちゃう……。

 

 

 部屋に戻って来たアリアは穏やかに眠るアベルを覗き込んでいた。

 ターバンを巻いたまま眠っているので、アリアは窮屈そうだなと取り除いてやる。

 

 

「…………アリア嬢……」

 

「……ぁ。ふふっ、今日の話はアベルにはナイショね? 数日中に答え出すから」

 

「…………ええ」

 

 

 アリアが口元に人差し指を添えて優しく微笑むので、ピエールは静かに頷いた。

 

 

「…………おやすみなさい、アベル」

 

 

 ちゅ、とアリアはアベルの額に口付ける。

 アベルは眠っているにも関わらず、薄っすら口角を上げた。

 

 

「っ……、アリア嬢……(貴女は本当……時に大胆ですね……!)」

 

「…………おでこにキスくらい、大目に見て……?」

 

 

 ピエールがちらっと見やると、アリアがやんわりと微笑む。

 

 

「……主殿が知ったらそれだけでは済まないと思いますよ……」

 

「え……? 何で……?」

 

「…………いえ……、何でもありません……」

 

 

 ――貴女が眠っている時、主殿が貴女に何度触れようとしていたことか……!

 

 

 いつも私がお守りしているのですよ……! とピエールは言わないが、今日はアベルが大人しく眠っているので ぐっすり眠れそうだとアリアのベッドの脇に腰を下ろした。

 

 

「おやすみなさいませ」

 

「…………おやすみなさい」

 

 

 アリアは静かにベッドに身体を横たえると両手で顔を覆う。

 

 

 ――さっきピエール君にはっきり言ったら余計自覚しちゃった……。私、アベルのことすごい好きなんだな……。

 

 

 チラッと隣のベッドのアベルを見る。

 アベルは口をだらしなく開けて涎を垂らし、眠っていた。

 幸せな夢でも見ているのか時折口角を上げている。

 

 

 ――何、あの無垢な顔……。可愛過ぎでしょ……。どんな夢を見ているの……?

 

 

 アリアはアベルの寝顔につい、笑みが零れてしまう。

 幸せな夢を見ているといいなと願う。

 

 

「はっ!? ……んもぉ……。私重症だわ……(見惚れちゃってた……!)」

 

 

 ハッとして、アベルから背を向けアリアは目を閉じた。

 

 明日からはカボチ村へと向かうのだ。

 今夜の答えはすぐに出さなくていい。まずはカボチ村の依頼をこなさなくては。

 

 アリアはそう思っていたが、アベルがアリアに合わせてくれるとは限らない。

 次にこの宿で休む時、二人の関係が今と違ってしまうとは、この時のアリアとアベルは気付いていなかった。

 

 

 そして、夜が明けた……!

 




アリアが自分の気持ちを話したのって初めてでしたっけ……?
いや、でもお気付きだと思っていました!
アリアはアベルのことめっちゃ好きですよ!
いつからかは知らんけども(知らんのか)

ただ、アラサーだし、原作ヒロインじゃないし、悩める乙女心という所ですね~。
はよくっつけやw

三百話超えてるし、ちょっといい加減くっついていいんじゃないかなと思う今日この頃。
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