ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

レヌール城攻略エピローグ2です。

では、本編どうぞっ。



第三十話 パパスの快復

 ――ビアンカがレヌール城の階段を下りていると……。

 

 

「二人共待ってよー!」

 

「二人共待ってよーって……、あら? アリア、もしかして隣に居るの? ……この辺?」

 

『いるよ~! っ、そうそう! よくわかったねぇ!』

 

 

 アベルが走って来る中、アリアはビアンカの隣を歩いていた。

 ビアンカはアリアが見えないながらも、何となくいる場所がわかるらしく、手振りで大体のアタリを取る。

 アリアはわかってもらえたのが嬉しいのか花が綻ぶような笑みを浮かべた。

 

 

「ビアンカ、アリアが見えるの!?」

 

「ううん、見えないけど……、何だかこの辺が温かい気がして」

 

 

 ビアンカがアリアの翼に触れる。

 感触はないらしいが、何となくいる(・・)と温もりは感じるようだ。

 

 

「うん、そこにアリアが立ってるよ」

 

「本当!? やっぱりアリアっているのねっ!」

 

 

 アベルの言葉にビアンカは破顔一笑する。

 

 

「えぇ……まだ疑ってたの……?」

 

「っ、だって……、見えないんだもの……。けど、握手したし、腕掴まったし、タッチしたし? ……これはもう信じるしかないわよね……」

 

「ぶつかったこともあるけどね」

 

「そうなの?」

 

 

 呆れ顔でアベルが告げると、ビアンカが「ごめんごめん」と詫びた。

 

 

「……あれは多分たまたまだったと思うけどね。……あっ!」

 

 

 説明していたアベルだったが、突然大きな声を上げる。

 

 

「ん?」

 

『ど、どうしたの?』

 

 

 ビアンカとアリアが様子を窺う中、アベルは口を開いた。

 

 

「アリアも気付いてないと思うんだけど、僕さっき気付いたことがあったんだ!」

 

『え? 気付いたこと?』

 

「ん? 何?」

 

 

 アベルの言葉にアリアとビアンカは首を傾げた。

 

 

「僕がアリアに触れていると、アリアは他の人にも触れることが出来るみたい」

 

『えっ……』

 

「そうなのっ!?」

 

 

 アベルの言葉に二人は目を見開いた。

 そうして、ビアンカは「早速実験してみましょ!」とアリアを真ん中に、アベルと手を繋いでもらい、自分もアリアに手を繋いでもらうのだった。

 

 

「おぉ~! 本当だぁ~! ふふっ、何か嬉しいなっ!」

 

『わ、私も……(何か気恥ずかしいけど……。ビアンカちゃんの笑顔が尊い……!!)』

 

 

 ビアンカが嬉しさに可愛い笑顔を振り撒いてくれるので、アリアはもじもじしてしまう。

 

 

「ね! よくわかんないけど、感触はわかるよね?」

 

「うんうん。わぁ……、これ、髪? さらふわね……。で、えっと、背中に翼が付いてるんだっけ……? あ、本当だ。鳥の羽みたいな感触……! さらさらして……いや、上の方はふわふわ?」

 

 

 ビアンカは手探りで、アリアの髪や背中の翼を弄り倒す。

 

 

「あ、ここは……? すべすべしてて気持ちいい~!」

 

『ちょ、ちょっとビアンカちゃん、擽ったいよ、ひゃはっ、そこダメっ! 脇腹はっ、あはははっ! きゃはははっ!!』

 

 

 アリアは脇腹を弄られ、身を捩った。

 脇腹が弱いらしい。

 

 

「…………っ、だめだよビアンカっ!」

 

 

 アベルは咄嗟にアリアの手を放す。

 すると、アリアの感触がビアンカの手から消えてしまった。

 

 

「あっ……。……もぅ、アベルのケチ。アリアの服なのか腕なのかわかんないけど、すっごく触り心地良かったのに……(さらすべでずっと触ってたかったわ……)」

 

「っ、アリアが苦しそうだったから……」

 

 

 ビアンカに可愛く睨まれて、アベルも困り顔で睨み返す。

 

 

『ひゃははっ……! ……っ……はぁ……』

 

 

 脇腹弱いのって、前から変わらないなぁ……。

 

 

 などと、アリアは転生しても変わらないものってあるのねと気付いたのだった。

 

 

「折角だから、手を繋ぎながら帰りましょ?」

 

 

 ビアンカの提案で三人は再び手を繋ぎ、笑い合いながら階段を一階まで下りて行った。

 

 玄関ホールまでやって来ると、ビアンカが振り返る。

 

 

「お化け退治をしたらこのお城、すっかりおどろおどろしさが消えたね。まるで空気まで入れ替わっちゃったみたい」

 

「そうだね、怖い感じはもうしないかな」

 

『…………うん』

 

 

 そうして三人はレヌール城を出る。

 

 

『…………、私。そんなんじゃないから』

 

 

 レヌール城が見えなくなる場所まで歩くと、アリアは振り返って小さく呟いて、唇を噛み締めた。

 

 

「…………?(何のこと……?)」

 

 

 アベルは意味が解らなくて、首を傾げる。

 

 

 

 ――そうして、捕らわれの子ネコの為のお化け退治が終わり、三人はアルカパへと戻って来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 レヌール城のお化けをアベルが退治したという噂は、その夜のうちに広まった。

 そして夜が明け……てはいなかった。

 

 

「すぅすぅ……むにゃむにゃ……アベル……」

 

 

 宿に戻ると、パパスが健やかな寝息を立てていた。

 額などに汗もなく、顔色も随分と好い。

 そして、枕を抱きかかえ「アベル……可愛いなぁ、私の息子は可愛いなぁ……いい子だいい子だ……」となでこなでこしている。

 

 

「…………ふふっ」

 

 

 アベルのこと大好きなのね……と、アリアは眠るパパスを微笑ましく見下ろしていたが……、

 

 

「……もう熱はないのかな? 明日の朝には元気になってるといいんだけど……どれどれ……。…………うん、もう下がってるね」

 

 

 アリアはアベルに触れながら、パパスの額に手を当て熱を測った。

 すると、平熱なのがわかり「ふぅ」と安堵の溜息を洩らす。

 

 

「良かった……。って、ちょっと恥ずかしいよね……、父さん……」

 

「ふふっ、アベルが大好きなのよ(こんな可愛い子じゃそう思うのもわからなくもないかな)」

 

 

 アベルが照れたように頬をカリカリと掻くと、アリアは目を細めた。

 

 

「にしても、ここを出る時は結構咳してたと思うんだけど……もう大丈夫なのかな……?」

 

「薬が効いたのかな……?」

 

「ん……? 道具屋さんのやつ飲ませたの?」

 

 

 道具に触れても、父さんに触れないのにどうやって……?

 

 

 アリアの言葉にアベルは首を傾げる。

 

 

「ううん、実は……これ」

 

 

 アリアは腰にぶら下げた小さな袋の中から紙袋を取り出し、中身を見せる。

 

 

「……? 何、これ……?」

 

「……抗菌薬。それと、解熱剤に、痰切りと咳止め。本当は誰かに分ける物じゃないんだけど……」

 

「っ……??? え、何、それ……? よ、よくわかんないけど……不思議な包み紙だね……。こ、これが薬なの……?」

 

 

 アベルは“抗菌薬”と書かれた錠剤を掲げて見上げる。

 

 銀色の光沢のある紙と、ガラスのような透明感のある柔らかな素材の紙(?※)の間に白く丸い錠剤がはめ込まれていた。

 それが規則正しく横に二列、縦に複数個並んで入っている。

 

 解熱剤も、痰切り、咳止めとやらも包み紙(?)の色は違うが、どれも同じような形、大きさの錠剤だった。

 

 もちろんアベルに包み紙に書かれた文字は読めてはいない。

 その珍しい包み紙にアベルは目を瞬かせて一つ一つ眺めていた。

 

 

「うん。…………私の袋に入ってたの」

 




※PTP包装シートのこと。錠剤やカプセルをプラスチックとアルミで挟んだシート状のよくある薬の包装。調べたらそういう名前だそうだ。無駄知識がまた一つ増えた。

さて、現代の魔法薬が出てきましたwww

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