ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

ポートセルミを出発します。

では、本編~!



第三百九話 出立

 

◇

 

 

 

 

「……ア、アリア……、お、おはよう……」

 

 

 まだ夜が明けて間もない早朝、アベルは眠るアリアに声を掛けていた。

 少し緊張したような、それでいて嬉しそうな笑顔を彼女に向ける。

 

 

「ん…………、ぁ……、おはようアベル。まだ……夜が明けたばかり……?」

 

 

 ――あぁ、今日もアベルの顔が眩しい……。

 

 

 窓の外はまだ朝靄の中だがアリアにはアベルが眩しく見えた。

 アベルの優しい笑みにアリアも顔を綻ばせ、挨拶を交わす。

 

 

「うん、……早めに出ようって言ってたでしょ?」

 

「あ、そうだったね……。準備、するね」

 

 

 アリアが目覚めたのを確認するとアベルは荷物の整理をして、ターバンを巻きつける。

 アリアも身体を起こして顔を洗うと、身だしなみを整える為に鏡の前へと向かった。

 

 

「……ふわぁ……。ぁふ……。昨日遅かったからちょっと寝不足……」

 

 

 鏡台の前に腰掛けると、口元に手を当て欠伸を噛み殺す。アリアはリップクリームを取り出し、唇にぬりぬり。

 眠っている最中に乾いた唇に潤いが戻った。

 

 

「え……? 遅かったの?」

 

「ぁ、うん……。何か、眠れなくて……(ピエール君とお話してた……とは言えないかな)」

 

「安眠枕を使えば良かったのに」

 

 

 アベルは身支度が終わったのか、アリアの背後にやって来て鏡越しで会話を続ける。

 ピエールが二人の背後でスラりんを揺すり起こしていた。

 

 

「だってアベル、オラクルベリーで殆ど眠ってなかったじゃない? ゆっくり眠ってもらおうと思って」

 

 

 アリアは髪に櫛を通し髪を整える。

 大した手入れをしていないのに艶々と輝く髪に“さすがはゲームね……”と納得してしまった。

 

 

「僕なら安眠枕が無くても眠れるのに……」

 

 

 ――あ、アリアの髪……触りたい……。

 

 

 アベルはつい、アリアの髪に触れたくなり手が伸びそうになるが グッと堪える。

 

 

「……ホントに?」

 

「っ……ほ、ホントに……!」

 

 

 アベルの発言にアリアが振り返ってアベルを見上げた。

 上目遣いで見つめられると、アベルの声が上擦ってしまった。

 

 

「……安眠枕、これからはアベルが使うといいと思うな?」

 

「なんで……。アリアにあげたのに……」

 

「…………アベルが寝不足になったら困るでしょ?」

 

 

 アリアがアベルに【安眠枕】を勧めるが、アベルは顔を俯かせ小さく呟く。

 

 

「…………っ、けど、僕にも事情ってものが……」

 

「ん……? ……事情って何……?」

 

「っ……教えない」

 

 

 アベルはプイッとそっぽを向いてしまった。

 

 

「…………変なアベル……。…………よっし。準備オッケ~!! 行こっか!」

 

 

 髪を整え終えるとアリアは立ち上がり、アベルに振り返ってにっこりと微笑む。

 と、思わずアベルの口から零れた。

 

 

「…………っ、今日も可愛いね……(本当、アリアは毎日可愛い……)」

 

 

 アベルの口を衝いて褒め言葉が飛び出す。

 どうせアリアはそんな言葉に動じないだろう……と思ってはいたのだが。

 

 

「……なっ!? や、やだ……またそういうこと言う~……!」

 

 

 意外にもアリアは頬を染めてアベルから視線を逸らしたのだった。

 

 

「ぇ……」

 

 

 ――何、この反応……!? アリア照れてるのか……?? ていうか照れてる仕草も可愛いんだけど……!?

 

 

 アリアはおずおずとアベルを見上げながら髪を耳に掛ける。

 思っていた反応じゃなく、アベルの頬は熱くなってしまった。

 

 

「ぁ……、えと……」

 

「……そ、そういうこと女の子に簡単に言っちゃダメなんだから……気を付けてねっ(私本当はチョロいんだからね……!!)」

 

 

 アベルが頭の後ろを掻くと、アリアはアベルの胸の真ん中辺りをツンと軽く突く。

 

 

「え、ご、ごめんなさい……?」

 

 

 アリアに触れられた甘い感触にアベルは頭の後ろに置いた手を下ろした。

 そして、アベルはそのままアリアの手を取ろうとするのだが、

 

 

「ん、許す! さっ、行きましょう!」

 

「……っ、アリア……!」

 

 

 アリアはさっさと部屋を出て行ってしまったため、アベルは慌てて追い掛けたのだった。

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 朝靄の中、アベル達は早々にポートセルミを後にする。

 昨日出会ったツインテールの少女と、黒髪の少年の姿は早朝ということもあってか出会えず、アリアは「鮭(しゃけ)おにぎり また食べたかった……」と残念そうに嘆いていた。

 

 あの二人も旅をしている様子だったので、またどこかで会えるかもしれない。

 

 そうしてアベル達はポートセルミを出て、南下していた。

 新しい大陸にやって来たからか見慣れない魔物も多く、アベル達は戸惑いつつも何とか魔物を倒しながら南下を続ける。

 

 昨日酒場で聞いていた通り、魔物に遭遇する度に時間を取られ思う様に先に進めていなかった。

 

 

 “マホトーン……!”

 

 

「あっ、しまっ……!」

 

 

 ポートセルミを出たのは早朝だったというのに、もうすぐ夕方だ。

 もう何度目だろうか。魔物の群れと遭遇し、アリアが緑色のローブを纏った魔物【まほうつかい】に呪文を封じられてしまう。

 

 いや、呪文だけではなかった。

 

 ラインハットで戦った【わらいぶくろ】の【マホトーン】よりも【まほうつかい】の呪文は強力だったのだろう、呪文封じをまともに食らってしまったアリアは声を出せなくなってしまった。

 【マホトーン】は効き目に応じて呪文を封じるだけでなく言葉をも封じてしまうようだ。

 

 

「アリアっ!」

 

「っ……!(ごめんアベル!)」

 

「……アリアは下がってて! ここは僕が……!」

 

 

 アベルはアリアを背に隠し、【やいばのブーメラン】を投げつける。

 【まほうつかい】はアベルの一撃に倒れて行った。

 

 

「……大丈夫? 怪我……してない?」

 

 

 【まほうつかい】は倒し終えたものの、まだピエールとスラりんが別の魔物と戦闘中である。

 アベルがほぼほぼ体力を削ったので、あと一息。

 残りは二人に任せることにして、アベルはアリアに問い掛けるが、彼女はまだ【マホトーン】中で、話すことが出来なかった。

 

 アリアは身振り手振りでアベルに何かを必死で訴えているが、口をパクパクさせているだけなので何を伝えたいのかわからない。

 

 

「…………っ(何か一生懸命に伝えようとしてる……カワイイ……)」

 

 

 アベルは必死に訴えるアリアを見下ろし、頬を染めた。

 

 

(アベルっ! 何赤くなってるの……!! まだ戦闘終わってないってば……!! あぁっ! ほら、【まほうつかい】が立ち上がっちゃったよっ!?)

 

 

 アベルの背後で、倒されたはずの【まほうつかい】が ゆらりと立ち上がる。

 アリアは咄嗟にアベルの腕を引いて抱きしめた。

 

 

「っ、ア、アリアっ!? ぁふん……っ!!」

 

 

 ――大胆だね……!

 

 

 急に腕が柔らかい肉に包まれ、アベルはどぎまぎしてしまうが、アリアは必死で後ろを見るように訴える。

 

 

(もぉっ! アベルのバカっ! 後ろっ!!)

 

 

 アリアは首を横に振り振り、アベルの背後を指差したのだった。

 




アベルは夜、アリアに眠ってて欲しいみたいです。
こっそりしたいことがあるみたい。ハテ? なんだろな。

とりあえず、交代で寝ればいいんでね?
ってことで落ち着きましたとさ。

マホトーンの扱いについてなんですけど、二段階にしました。
呪文封じるのみと、呪文封じ+話せなくなる。
術者の魔力の強さによって変化するということで……。
呪文封じるのみだと効果が切れるのも早めで、話せないとちょっと効き目が長めって感じ……?

喋れないと色々イタズラ出来ますね……!(何をするつもりなのか……)
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