魔法使いは被ってしまうのです……。
では、本編どぞ。
「……え? あ……。…………大丈夫だよ。仲間になりたいみたいだよ?」
アベルが背後を見ると、先程倒した【まほうつかい】がペコペコと頭を下げ恐縮していた。
ピエールとスラりんが魔物の群れを倒し終え、アリアの【マホトーン】の効き目が切れる。
「……へっ…………あっ、声が出る……!!」
アリアは自分の咽喉を撫で「あー、あー」と発声し、調子を確かめた。
「マーリンと申します。どうぞ私を仲間に……」
【まほうつかい】の【マーリン】は胸の辺りに片手を持って来て、恭しく頭を垂れ丁寧に挨拶をしてくる。
さっきまで敵対していたというのに、随分礼儀正しい。
「だって。アリアどうする?」
アベルはアリアに仲間にするか訊ねていた。
「何で私に聞くの……」
「ん? 何となく?」
アリアが首を傾げると、アベルも首を傾げて笑顔を見せる。
「…………断る理由ないよね? ……よろしく、マーリン。さっきのマホトーン効いたよ~! 喋れなくなっちゃったもの」
「はははっ、すみません。よろしくお願いします」
アリアはマーリンに手を差し出した。
するとマーリンはその手を取り、握手する。
マーリンから強い魔力を感じたアリアだった。
「だと思った! アリアわかってるね!」
「……マーリンが居たら私、必要なくなるんじゃ……」
アベルがにこにこと嬉しそうに破顔するのだが、アリアはマーリンの底知れぬ魔力に自分は不要なんじゃと気後れしてしまう。
――マーリンって【まほうつかい】だから、呪文色々使えるよね……。私も色々使えるけど……、能力が被るから私は馬車行きかな……。
体力的にマーリンの方が丈夫そうだなと感じたアリアは、二軍落ちを覚悟した。
そんなアリアにアベルは慌てて口を挟む。
「いやいやいや! そんなことないよっ!? アリアは必要だよっ!?」
――君は僕の癒しだからね……!
馬車で時々休んでもらうのはいいが、ずっと馬車に居られるのは顔が見れないから嫌だ! と、アベルはアリアの手を取った。
手を繋いだら不味かったかなと一瞬思ったが、アリアはアベルの手を包む。
「ほ、本当に……? 私、アベルと一緒に歩いてていいの……?」
「えっ!? もっ、もちろんだよっ!?」
――なに? 何でそんな可愛いこと言っちゃうの……!? 何か今日はやけに素直じゃないか……!?
アリアがアベルを見上げ不安そうに告げるので、アベルは目を瞬かせた。
すると、
「……そっか……。よかったぁ……」
アリアは手を引っ込め、ほっとしたように俯き微笑む。
「あ、アリア……? よかったって……、何で……」
「あっ!」
アベルが気になって訊ねようとすると、アリアが急に顔を上げた。
「っ!? な、何……?」
「馬車、もういっぱいだけど……誰を送るの……?」
アリアは馬車のキャビンで新しい仲間に興味津々のキャシー達を見つめる。
不意に目が合うとキャシー達はアベル達に手を振っていた。
「あ……、えっと……。…………マーリン、仲間になってもらって早々で悪いけど、モンスターじいさんの所に行ってもらってもいいかな?」
「ええ、構いません」
アベルは仲間になったばかりのマーリンにモンスターじいさんの元へ行くようにと伝えると、マーリンも快諾する。
「ぁ……っ、いいの……?」
「え? いいよ?」
アリアが訊ねると、アベルは何の問題もないよと云う様に はにかんだ。
「っ……アベル……(優しいんだから……)」
――こういうことばっかりするから、好きになっちゃうんだよ……!!
アリアはちょっぴに泣きそうになってしまい、乱暴に目蓋を擦る。
「アリア……? どうしたの……?(何か哀しそう……? 何で……?)」
アベルはアリアが泣いた気がして気になってしまった。
「っ、何でもないっ。目にゴミが入っただけ……!」
「えっ!? 見せて! 取ってあげる!」
アリアの目にゴミが入ったなんて、一大事だ! とでも言わんばかりの勢いでアベルはアリアの傍に寄って行く。
「っ、いいよっ、もう取れたよっ!!」
――わっ!? 急に近寄らないで……!!
突然目の前に迫ったアベルにアリアは頬が熱くなってしまった。
アベルを遠ざけるように彼の胸を押す。
「本当に!? またアルカパの時みたく目が赤くなったら痛いでしょ……!? 僕に見せてごらんよ……!」
「っ……大丈夫だってば……、もぉ……。アベルってば過保護……!!」
「本当に……?」
「っ、しつこいのは嫌いよっ!」
アベルがしつこいので、アリアはプイッと顔を背けた。
「あっ、ご、ごめっ……!!」
「…………本当に大丈夫だから。心配しないで……? アベルちょっと心配し過ぎだよ……? 目にちょっとゴミが入るくらい、どうってことないでしょ……」
「っ……それは無理だよアリア……」
アリアの言葉にアベルは苦笑いを浮かべてしまう。
「ぇ……」
「……大丈夫だって言われたって、他でもない君のことだし、どうしたって心配になってしまう……」
――気にするなって言われたって、気になっちゃうんだよ……。自分でもどうかしてると思うけどね……。
アリアがアベルの方へと視線を戻すと、アベルは彼女と目を合わさずに気まずそうに頭の後ろを掻く。
アリアはそれを黙って見ていたのだが。
「…………っ、アベルって……心配性なのね……! ねえ、そろそろ日も暮れるし、今日はキャンプ……ね?」
「…………うん、そうだね」
話題を切り替え、アリアがキャンプが出来そうな場所を探し始めるので、アベルはマーリンをモンスターじいさんの元へと送って黙って彼女について行く。
――アリア、君、僕のこと嫌いってわけじゃないよね……? なのに、どうして受け入れてくれないんだ……?
何となくではあるが、アリアは自分のことを嫌ってはいない気がする。むしろ、好意的に見てくれている気さえする。
アベルはアリアの態度に何となく そんな気がして、彼女の背を愛おしそうに眺めていた。
マーリンは即行モンスターじいさん送りでございます。
強くすればいいんだろうけど、アリアと能力が被っちゃうからね。ごめんね。