ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

カボチ村のかかし、ちょっと怖いのです。

では本編。



第三百十二話 コワモテのかかし

 

 老婆に会釈し別れて、アベル達は村の中を進んで行く。

 依頼人はいったいどこに居るのやら。

 

 

「わあ、旅人だ~! 珍しいなあ! お兄ちゃんとお姉ちゃんは何しに来たの?」

 

 

 アベル達が依頼人の居る家屋がどこかと探していると、犬と追いかけっこをしている少年が、旅人が珍しいのか大きな声で呼び掛けて来た。

 犬は「わんわん!」と元気に吠えている。

 

 

「こんにちは、坊や。ちょっとお邪魔するね」

 

「ようこそ、カボチ村へ! ねえ、お兄ちゃん、お姉ちゃん。ボクの話を聞いて聞いて!」

 

 

 アリアがにっこりと微笑み挨拶をすると、少年が駆け寄って来た。

 

 

「「ん?」」

 

「最近うちのおばあちゃん変なんだよ。少し食べただけでお腹いっぱいになってボクにごはんをくれるんだ。病気かなぁ……」

 

 

 アベルとアリアが少年の話に耳を傾けると、始めは元気に話し出したのだが、次第にしゅんと落ち込んでしまう。

 

 

「あっ……(それで……山に……!)」

 

 

 ――姥捨て山ってこと……!? 何てこと……! 随分深刻ね……。

 

 

 先程老婆が話していた意味に漸く気付き、アリアは目を伏せる。

 

 

「…………大丈夫だよ。もうすぐ元気になるよ」

 

 

 アベルも気付いたのか、少年の頭を優しく撫でた。

 

 

「本当?」

 

「うん、お兄ちゃん達が、きっと解決するから待っててね」

 

「解決……??」

 

 

 少年がアベルを見上げると、アベルは優しい笑みで少年を見下ろす。

 少年は村で起こっている出来事を詳しくは知らないのだろう、首を傾げていた。

 

 少年と別れ、アベル達は再び村の中を歩き出す。

 

 

「……アベルって優しいよね」

 

「んー? そう……?」

 

 

 アリアが隣を歩くアベルを見上げてにっこりと笑うと、アベルは頬をぽりぽりと照れ臭そうに掻いてアリアから目を逸らした。

 

 

「うん、優しい……。そういうとこ、ホント…………――だなぁ……」

 

 

 ふとアリアは立ち止まり、ぼそっと呟くが、アベルはそのまま歩いて行ってしまい気付かない。

 

 

「ん? 何? 今何か言った……?」

 

「ううん、なんにもっ! あっ、よろず屋さんかな? 寄ってみる?」

 

 

 アベルが振り返ると、アリアはにこにこしながら首を横に振っていた。

 そして、アベルの背後によろず屋の看板を見つけ指を差す。

 

 

「……そうだね。依頼人も見つからないし、先に準備してもいいかもね」

 

「ふふふっ。ここに来るまでに結構お金貯まったもんね!」

 

「……アリア、何か欲しいものは? 何がいいか教えてよ。何でも買ってあげるから」

 

「何でもって……、ううん、私はコレを早く使えるようにならないとだもの、要らないよ? 必要なものだけ買い足そうよ」

 

 

 アベルはアリアが欲しい物なら何でも買ってやるとばかりに訊ねたが、アリアは腰に付けた【モーニングスター】に触れて告げた。

 

 【モーニングスター】はポートセルミを出て少ししてから、アベルから受け取り、扱いに慣れて来たところである。

 

 

「そう? なんか残念だなあ……」

 

 

 アベルは“ふぅ”と小さくため息を吐く。

 

 

「ん?」

 

「……アリアを懐柔出来ないなぁって……もっと、こう……、あれが欲しい、これが欲しい、って言ってくれれば解りやすいのに……」

 

 

 ――アリアが好きなものって……食べ物以外で何があるんだろう……。

 

 

 アベルは少しずつアリアを懐柔しようと画策しているわけだが、今一つアリアの好みが掴めないでいた。

 

 

「っ、もぅ……。アベルってば私を餌付けしようとしてるの?」

 

「ははは、バレた?」

 

「っ…………もぅ……(そんなことしなくたって……、とっくに……)」

 

 

 好意を隠そうともしないアベルに、アリアの頬が熱くなる。

 気取られるわけに行かないので、アリアは俯いて首を横に振った。

 

 

「……アリア嬢……」

 

 

 よろず屋へと入って行くアベルとアリアの後ろにピエールも続く。

 ピエールはもどかしい二人の気持ちが早く通じ合えばいいのにとスラりんを引き連れよろず屋へと向かった。

 

 よろず屋に入ると、アベルは【せいすい】と【てつのつめ】、【どくばり】を購入する。

 

 

「また 来てくんなよ!」

 

 

 よろず屋の店主に笑顔で送り出され、アベルはふと店の奥へと視線を移した。

 

 

「アリア、教会があるよ」

 

「あ、本当だ……」

 

「……呪いを解いてもらうのと、お祈りをしておこう」

 

「うん」

 

 

 よろず屋の奥に向かうと老人が教会を営んでおり、アベル達はいつも通りアリアの呪いを解くのと、お祈りをし【冒険者の書】を記録してもらう。

 

 

「……ふむ、しかし、中々やっかいな呪いじゃな」

 

「ははは……はい。そうなんです……」

 

「わしでは殆ど解けんかったわい。……しかし随分薄れたように思うぞい。これからも頑張りなされ」

 

「ありがとうございます」

 

 

 老人はアリアを不憫そうに見つめながらも、エールを送ってくれた。

 アベル達は老人に会釈して教会を後にする。

 

 

「良かったね。この調子で次の町でも解いてもらえば完全に解けるんじゃ?」

 

「うん、そうだね。アベル、いつも付き合ってくれてありがとう」

 

「どういたしまして! アリアの呪いが解けたらお祝いしようね」

 

 

 アリアが満面の笑みでアベルにお礼を告げるので、アベルも釣られて笑顔を見せた。

 

 

「お祝い?」

 

「ああ! この間食べたケーキ、また買ってさ」

 

「ケーキ! あっ、でも……、あの子達旅してるんじゃ……」

 

「あ……、そっか……、そうだったね……」

 

 

 ――アリアを懐柔するのにいいアイテムだったのに……!

 

 

 アリアの指摘にアベルはガクッと項垂れる。

 

 

「……ふふっ、ケーキなんか無くてもお祝いしてもらえるだけで嬉しいよ?」

 

「本当に……? 僕の料理でもいい……? 肉……焼いただけになっちゃうけど……」

 

 

 ――僕は、魔物の肉を焼くくらいしか出来ない……!

 

 

 アリアの方が自炊期間が長いだけあって、料理が上手いわけだが、アベルは彼女の呪いが完全に解けたらアリアの為に何か作ってやりたいと思うのだった。

 そんなアベルの気持ちを知ってか知らずか、アリアは機嫌好く目を細める。

 

 

「もちろん! 楽しみにしてるね? いっぱい焼いてもらうからねっ」

 

「……アリア……、うん。…………食べきれないくらい焼くから覚悟してね……!」

 

 

 ――昔からそうだったけど……アリアって……、何でこんなに優しいんだ……?

 

 

 アベルの目の前で嬉しそうにはにかむアリアが可愛くて、アベルの頬が熱くなってしまった。

 

 

「ふふっ! 味変調味料、買い足しておこうっと…………って、うわっ!?」

 

 

 突然アリアが畑の方を見て肩を揺らすので、アベルは直ぐに彼女の傍に駆け付ける。

 

 

「どした!?」

 

「っ、あ、アレ……コワイなって……」

 

 

 アリアがおずおずと畑を指差すと、その先におどろおどろしい不気味な【かかし】が畑に立っていた。

 

 

「アレ……? あ、かかし……? リアルだね……」

 

「なんかコワイかかしね……(左目が今動かなかった……!?)」

 

「アリアが苦手なタイプだね? 夜に動いたりして……」

 

「夜っ!? ……いやっ!」

 

 

 アベルがニヤッと告げるとアリアは想像したのだろう、アベルの後ろに隠れてしまう。

 アベルのマントを掴んでふるふると震えていた。

 

 

「っ……怖がらせちゃった……? 冗談だよ。怖いなら見なくていいから……」

 

「アベルのいじわるぅ……。私がそういうの苦手だって知ってるくせに……」

 

 

 アベルが背後を窺うと、アリアが涙目で見上げて来る。

 

 

「っ……ごめん」

 

 

 ――カ、カワイイ……!!

 

 

 アベルはアリアの涙目に胸を射抜かれ、顔を真っ赤に染めた。

 

 

「っ、もう行こうよぅ……。あの かかしこっち見てるみたいでヤダ」

 

「う、うん……。じゃ、じゃあ、そこの民家に入ってみるね?」

 

「ん……」

 

 

 アリアがアベルのマントを引いて、早く【かかし】の前から去りたそうにしていたので、アベルは近くの民家に入ることにする。

 アリアはアベルのマントを放すことなくしばらく掴んだままだった。

 




アリアはおどろおどろしい系が苦手。
幽霊ダメ、くさった死体ダメ、ガイコツもダメ。追い詰めると爆発するっていうちょっと厄介な子である。
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