ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

カボチ村の依頼を受けましょう。

では、本編どぞ。



第三百十三話 魔物退治の依頼

 

 民家に入ると そこは民家ではなく倉庫のようで、腹の出たふっくらした農夫が農具の手入れをしていた。

 

 

「あっ、すみません。間違えました」

 

 

 アベルはポートセルミで会った農夫じゃないと気付き踵を返そうとするが、農夫は腹を撫で撫で話し出す。

 

 

「まんず、ハラが減って力が出ねえずら。あの化け物を防ぐためオラの畑にコワモテのかかしを置いたけんど、いっこうに効き目がねえだよ。カボチ村に伝わる名産のかかしなんだどもなあ……」

 

 

 農夫の話にアリアが やにわに口を開いた。

 

 

「コワモテかかし攻撃の効果は抜群だっ」

 

 

 ――とっても怖かったよ……っ!?

 

 

 私には効き目ばっちりだったよ、と伝えたかったようだが農夫には伝わらなかったようだ。

 

 

「……なんだべ?」

 

「アリア……?」

 

 

 農夫とアベルは首を傾げる。

 

 

「……あのかかし、すごく怖かったです……!(夜見たら絶対おしっこちびっちゃう……)」

 

「…………はっはっはっ! そうかそうか! お嬢さんには効果があっただか!」

 

 

 アリアが涙目で訴えると、農夫は漸く合点がいったらしく笑い飛ばした。

 

 

「私に効果があっても意味無いんですよ……?」

 

「違いない! はっはっはっ!!」

 

 

 アベル達は大いに笑う農夫をそのままに、民家を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ははっ、ただの かかしなのに、アリアは怖がりだなあ……」

 

「いや、あれは怖すぎるでしょ……。何だったらスミスよりも怖かったよ……スミスが可愛く思えるくらいだよ……」

 

 

 倉庫を出るとアリアは【かかし】に背を向ける。

 

 

「あはは、それで後ろを見ないようにしてるんだ?」

 

 

 アベルはアリアの背後にある【かかし】を ちらちらしながら愉快そうに笑った。

 

 

「っ……そ、そんなことないけど……?」

 

「ははっ、アリアってそういうとこ可愛いよね」

 

「っっ!? すぐそういうこと言わないでっ。ほら、行くよっ」

 

 

 アリアは【かかし】が視界に入らないように不自然に横歩きをし、アベルを急かす。

 

 

「え~……? だって可愛いじゃないか……」

 

「もぅ、そういうのいいからっ、行くのっ」

 

「はいはい」

 

 

 アリアが「あの建物この村で一番大きいよっ」と【コワモテかかし】に振り返ることなく一人で走って行ってしまうので、アベルは後ろについて行く。

 何となく、彼女の耳が赤い気がした。

 

 

 ――ああ、もう、本当可愛いな……。

 

 

 彼女を諦めるどころか、このままだと気持ちが溢れそうだとアベルは口元を覆う。

 

 

 自分がはっきり好きだと言ってしまったら、アリアはサンタローズで宣言した通り、共に行く旅を止め 独りで行ってしまうのだろうか……?

 

 アベルは日々膨らんでいく想いをどうにか押えるように努めることにしていたが、同時、アリアが自分に恋をしてくれれば何の問題もないのになと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリアを追い掛け、アベルはカボチ村で一番大きな建物の前に立ち見上げる。

 

 

「依頼人、ここに居るといいね。大きい建物だから……村長さんの家かな……?」

 

 

 アベルがやって来るなりアリアが口にした。

 

 

「多分ね。……中に居る人に話を訊いてみようか」

 

「うん」

 

 

 アベルは扉を開き、中へと入る。

 建物の中は住宅兼、倉庫のような造りで手前には土間、奥には板間が見えた。土間には上り階段が見える。二階建てらしい。

 部屋の奥、板間には四人の男がテーブルを囲み話し込んでいた。

 

 

「んじゃ やっぱりポートセルミの酒場にたむろする連中に助っ人を頼むつもりだな?」

 

 

 四人の男の内、奥に座る紫の上質な帽子を被った男が隣に座る農夫に話し掛ける。

 

 

「んだ。あすこにはなかなかウデの立つ戦士達が出入りしますけん」

 

 

 話し掛けられた農夫は深く頷いた。

 農夫はアベル達に背を向けているため、背格好がこの間ポートセルミで会った男に似ている気がするが、出入口から見ているアベルからは はっきりとはわからない。

 

 

「オラ反対だ! 村のことをどこの馬の骨かも知れねえよそ者に頼むなんて! 大方ダマされて礼金だけ持ってかれるのがオチだべ。んじゃオラは仕事があるで……」

 

 

 急に紫の帽子を被った男の向かいに座っていた若者が机を叩いて立ち上がると、言いたい事だけを言ってアベル達の居る出入口へとやって来る。

 

 

「なんだ? あんたは? どいてけろ!」

 

「あ、ああ……」

 

「わっ」

 

 

 若者に睨まれ、アベルはアリアを隠すように若者に道を譲った。

 若者はそのまま外へ出て行ってしまう。

 

 

「ね、アベル……何だろ……。あの人怒ってたね」

 

「うん……。けど、依頼人が見つかったよ」

 

「へ……?」

 

 

 アリアが建物から出て行った若者の背を見送っていると、アベルは部屋の奥にいた農夫と目が合い、軽く手を挙げた。

 

 やはり さっき話をしていた農夫はポートセルミで会った依頼人だったようだ。

 アベル達はテーブルのある板間へと向かう。

 

 

「こんにちは、僕は……」

 

「お、あんたは! オラだよ! ほれポートセルミで。やっぱり来てくれただか。あんたを信用したオラの目にくるいはなかっただな。エヘン! んじゃ詳しい話は村長さんに聞いてくんろ」

 

 

 アベルが農夫に話し掛けると、ポートセルミでぼこぼこにされていた怪我などすっかり治った様子で腰に手を当て、満足そうに頷いた。

 そうして村長が紫の帽子を被った男だと教えてくれる。

 

 

「良かった。どこに居るのかと思って捜していたんです。それで……」

 

「ほう、あんたが酒場に通う助っ人の先生だべか。こんたびはどんもオラたちの頼みを引き受けてくれたそんで……。まことにすまんこってすだ」

 

 

 アベルがちらっと農夫に紹介された村長に目を向けると、村長は軽く会釈した。

 

 

「いえ……、困った時はお互い様なので……」

 

 

 アベルも軽く頷く。

 

 

「んで退治してもらう化け物のことじゃけど……、これがまんずオオカミのようなトラのようなおっとろしい化け物でしてな」

 

「オオカミのようなトラのような……?」

 

 

 村長の話にアリアがアベルの後ろで首を傾げた。

 お化けではなさそうなので、ほっとした顔をしている。

 

 ……村長の話は続く。

 

 

「どこに住んどるかはわからねえんです。ただ西の方からやって来る、ちゅうことだけは皆知ってますだよ。おねげえだ。お前さまは強いんだろ? どうか西から来る化け物の巣を見つけて退治して来てくんろ!」

 

「……西から……」

 

 

 村長が手を合わせてアベルに頼むので、アベルは腕組みしてうーんと唸る。

 

 

「さっき出て行った若もんが、外の人間になんか頼むでねと怒っとったが、先生くらい強いもんでなきゃ話になんね。頼むだよ」

 

「若いもんは血の気が多くていけねえだな」

 

 

 依頼人がアベルを見上げ告げると、農夫の向かいに座っていた恰幅の良いおっさんがうんうんと頷いていた。

 

 

「……わかりました。今日はもう日が暮れるので一晩ここに泊まって、明日から西に行ってみます」

 

「ああ、そうしてくんろ。夜になると化け物が現れるだよ。せっかくだ、どんなもんか見てくんろ」

 

 

 アベルが了承すると村長が化け物を確認するよう告げて来る。

 そしてアベル達は村長の家を後にしようとしたのだが……。

 

 

「……階段……!」

 

 

 出入口傍で二階に続く階段を見上げる。

 途端アベルは二階に行きたい衝動に駆られてしまった。

 

 

「…………えっと……、アベル寄ってく?」

 

「…………ああ! い、いい?」

 

「ふふふっ……。うん、了解」

 

 

 二階に行きたくてウズウズするアベルにアリアは笑って、了承する。

 アベル達は二階へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごろく券……!」

 

「うん……そだね……」

 

 

 ――これは職業病だからしょうがないの……!

 

 

 二階に着いて、村長の奥さんらしき婦人が居るにも関わらず、アベルは引き出しを開け【すごろく券】を見つける。

 

 その勇気、本当すごいと思うわ……とアリアは黙って見ていた。

 そうして部屋の奥にあるツボも割って【ちいさなメダル】も見つける。

 

 

「……よかったね」

 

「うん……!」

 

 

 アリアが【ちいさなメダル】を掲げ、嬉しそうなアベルに声を掛けると、アベルは満面の笑みを浮かべていた。

 

 

(……こういうとこ、本当、ゲームよね……)

 

 

 アリアは無邪気に笑うアベルが可愛いので それで良しとする。

 

 

「あら、お客さん。ここには何もないだよ」

 

「あ、すみません。お邪魔します」

 

 

 ふと、婦人と目が合ってしまい、アベルは頭を下げた。

 

 

「よその土地にはもっとすごい魔物が出てるって話も聞いただよ。あの化け物はまだ人を襲わんだけマシかも知れんがよ」

 

「そうなんですか?」

 

「んだんだ。うちの村を襲う化け物は畑を荒らすだけなんだぁ。だども、いつ人を襲うかもわからんし、心配なんだわ」

 

「……それはそうですよね……」

 

 

 片頬に手を当て、憂う婦人に会釈して、アベル達は今度こそ村長の家を後にした。

 




ゲームなので、引き出しは開けるしツボは壊します。
これはもう、アリアが云っていた通り主人公という職業病なのでしょうw
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