ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

夜になると化け物が西からやって来る。

では、本編どぞ。



第三百十四話 魔物の影

 

 

 

 

 

「あんた、化け物退治をいくらで引き受けたんか知らんけどよ。死んじまったらどうにもならんだぞ。まっ、よそ者のあんたが死ぬくらい本気だとも思えんがよ……」

 

 

 村長の家を出ると近くの畑で手入れをしていた若者が話し掛けて来る。

 先程アベルを睨み付けてきた青年だ。

 どうやらアベル達が村長の家から出てきたのを見ていたらしい。

 

 

「大丈夫ですよ。僕達強いし……」

 

「……そのお嬢さんも連れて行くだか?」

 

 

 アベルが自信満々に片手に拳を打ち付けると、若者はアリアをちらり。

 

 

「へ? あ、私? ええ、一緒に行きますけど……」

 

「やめておいた方がええ。化け物退治にこんな綺麗な女の子さ、連れてくなんてどうかしてる。化け物に食い殺されたらどうするだ!」

 

 

 若者はアリアは連れて行かない方がいいと勧めたのだが、アリアは問題ないと口角を上げた。

 

 

「……あ、えと、私戦えるので……」

 

「僕が守るから大丈夫ですよ。ね?」

 

「っ、ぅ、うん……」

 

 

 アベルが急にアリアの頭を撫でると、アリアは小さく頷く。

 

 

「だども、あの化け物はすばしっこいだよ……! って……、オラが言ったところで関係ないか……」

 

 

 若者は唇を尖らせ、農作業に戻って行った。

 

 

「……あの人……心配してくれたのかな……」

 

「かな……? でも、大丈夫だよ。アリアは僕が守るから」

 

「アベル……」

 

 

 ――いっつも、そういう格好良いこと簡単に言っちゃうんだから……。

 

 

 アベルの優しい笑みにアリアの胸がトクトクと疼く。

 

 

「今夜は宿屋で休んで明日から西に向かおう」

 

「うん。あと、夜、その化け物がやって来るらしいから見てみないとね」

 

「ああ」

 

 

 アベル達は宿屋へと向かうことにした。

 その途中で農作業を終え、鍬を抱えトボトボと歩く男を見掛ける。

 

 

「……どうかしたんですか?」

 

 

 アベルは声を掛けたくなる衝動に駆られ、つい声を掛けてしまった。

 

 

「働いても働いても暮らしは楽になんねえ。オラなんでこんな村に生まれちまったんだか……」

 

 

 ――もっと都会に生まれてたら、今頃あんたみたいに可愛いお姉ちゃんと一緒に楽すく歩いてたのに……都会の男は違うだな……。

 

 

 じろり。

 

 

 アベルは何故か男に睨まれてしまう。

 アベルの隣には笑顔のアリアが居たのだった。

 

 

「…………え?(に、睨まれた……! 何で……!?)」

 

「…………ん? アベル、行こ?(なんか目付きがコワイ人ね……)」

 

「あ、ああ……」

 

 

 アベルがアリアに手を引かれると、男の目が益々険しくなる。

 何となく背後に殺気を感じつつ、アベルはアリアに連れられるままに宿屋に向かった。

 

 丁度、日も暮れ始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 宿屋に着くと客が珍しいのか、おかみが慌てて奥から受付カウンタ―にやって来る。

 この宿も村長の家と同じく土間の奥に板間がある造りだ。

 板間が客室なのだろう、ベッドが二台置いてあるのが見えた。

 

 

「あんれ、珍しい! お客さんだよ! ようこそ旅の宿に。夜道を歩かれて さぞやお疲れでしょう。ひと晩24ゴールドですが、お泊まりになりますか?」

 

「はい(夕方からここに居たけどね……)」

 

「夜は化け物が来るで、外に出ん方がええよ。そこのベッドを使ってくんろ」

 

 

 アベルが宿代を渡すと、奥の板間に見えるベッドを使うようにと案内された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……わ~い、ベッド~!」

 

 

 アリアが板間に着くなりベッドにダイブすると、彼女は無邪気に寝転がる。

 

 

「はは……、そういえばベッドは久しぶりだね」

 

「うん。うれしい! ふかふか~っ♪」

 

 

 アベルが隣のベッドに腰掛けると、アリアはうつ伏せで足をバタつかせ頬杖を突いていた。

 ド田舎の宿屋ではあるが、ベッドの管理は行き届いている様子。

 

 この宿屋は板間に扉が無く、受付カウンターからもベッドが見える造りのため、アベルも今夜は良からぬことを考えることなく眠りにつけそうだ。

 

 

「……僕もアリアが嬉しそうで嬉しいよ」

 

 

 アベルは無邪気に喜ぶアリアを優しい瞳で見つめ微笑む。

 

 

「っ……も~……アベルったら……またそんなこと言って……」

 

「……少し休んだら、外に行ってみようか」

 

「……うんっ」

 

 

 アベル達はしばし身体を休め、外に様子を見に行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 アベル達は少し休んだ後で宿屋を抜け出す。

 

 外はすっかり日が暮れており、闇の中である。

 目が慣れれば月明かりで何となく辺りの様子はわかるが、この暗闇の中では化け物と戦うことは難しい気がする。

 村長の云うように巣を見つけて退治するのが好ましい。

 

 今夜は化け物の確認だけすることにした。

 

 化け物が人を襲うことはないと聞いていたので、アベルの【やいばのブーメラン】はともかく、アリアの【モーニングスター】は動く度に音がするので余計な雑音を立てないため武器は宿屋に置いて来ていた。

 ピエールとスラりんは疲れからか ぐっすり眠っていたため、そっとしてある。

 

 

「まだ来てないみたいね……」

 

「アリア、離れないでよ。何があるかわからないよ?」

 

「大丈夫大丈夫。西の方角……、あっちね?」

 

 

 アリアはゆっくりと人差し指を動かし、珍しく正確な方向を指し示した。

 

 

「あ、正解。すごい!」

 

「ふふっ。私だってたまにはわかるんだから……!」

 

 

 アベルに褒められ、アリアが腰に手を当てドヤる。

 方向が合っていたくらいでドヤるものでもないのだが……。

 

 

「アリアはここでじっとしててね、僕はあっちで見てるから。決して手を出さないように」

 

「わかってるよ。私そんな無謀なことしないよ……(基本ビビリなんだからそんなこと出来ないよ……)」

 

 

 アベルは人一人を隠せる太さの樹の影にアリアを置いて、自分も少し離れた別の樹の影に身を隠した。

 そうしてしばらく様子を見ていると、黒い大きな影が西の方角からものすごい速さでやって来る。

 

 

「っ!?(来たっ!!)」

 

 

 アリアがアベルの方へと視線を投げると、アベルは黙って頷いていた。

 

 二人の間に距離があるため、アリアの顔は暗闇に慣れた目でもよく見えなかったが、彼女がアベルの方へ顔を向けているということだけはわかっていた。

 何故わかったのかといえば、アベルはアリアの動向が気になり先程から彼女と、化け物のやって来ると云われている西の方角を交互に確認していたのだ。

 

 アリアは樹の影から動くことなくじっと化け物の様子を見ている。

 アベルはアリアがじっとしていることに安堵し、化け物に集中することにした。

 そうこうしている内に化け物が畑を荒らし始める。

 

 

 ガツガツガツ!

 

 

 ……暗闇の中でよく見えないが、どうやら野菜を食べているらしい。咀嚼する音が聞こえた。

 もうすぐ収穫を控えた野菜が次々に食い荒らされているようだ。

 その動きは俊敏で、アベルが目を凝らすも動きを追うのがやっとである。

 

 

(あんなに早いんじゃ やっぱりここでは倒せないかな……。しかし結構大きいな……)

 

 

 アベルは黒く大きな影の様子を眉間に皺を寄せ注意深く見つめた。

 村長が云っていた通り、オオカミのようなトラのような……。暗くてよくは見えないがそんな気がした。

 

 

「……ん……? あれ……? あの子……」

 

 

 アベルが化け物を観察している中、アリアは化け物の様子に何か気になることがあったのか身を乗り出す。

 アリアの位置の方が化け物に近い。

 その時丁度アリアの足元で小枝が踏まれ“パキッ”と音を立てた。

 

 化け物の咀嚼音以外無かった静かな村で、その音は思いの外大きく……。

 

 

「ガウ……?」

 

「あっ……(目が合った……!?)」

 

 

 アリアの立てた音に化け物が反応し、アリアと目が合ってしまう。

 オオカミのようなトラのような……化け物の瞳がキラリと光った。

 

 

「ガウッ!!」

 

「えっ、ウソ(こっちに来る……!?)」

 

 

 化け物は一吠えすると、アリアに向かって来る。

 

 

「っ!? アリアッ!!」

 

 

 アベルはすぐさま走り出した。

 ところがアベルが駆け付けるより早く、化け物はアリアに襲い掛かっていた。

 

 

「ガルルルル……!! ガウッ!!」

 

「うそーーっ! きゃぁああああっ!!」

 

 

 ――何でっ!? 人は襲わないんじゃなかったのっ!?!? めっちゃ襲って来るじゃないっ!

 

 

 化け物がアリアのマントを咥え、巧みに彼女に巻き付ける。

 あっという間にアリアの自由を奪ったかと思うと、彼女を大きな口で咥えて走り出した。

 

 

「っ、アリアーーーーっ!!」

 

 

 アベルは追い掛けたが化け物は瞬く間にアリアを(さら)って去って行き、闇に消える。

 咄嗟に【やいばのブーメラン】を放ったが何の感触も得られず【やいばのブーメラン】はアベルの手元に戻って来た。

 必死で走ったにも関わらず化け物の足があまりに速く、追い付けなかった。

 

 それは思い掛けない一瞬の出来事でアベルの背中が急速に冷えて行く。

 

 

「はぁっ、はぁっ、……嘘だろ……。そんな……!!」

 

 

 

 

 ――アリアが攫われた……!!

 




あー……アリア攫われちゃいましたね。
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