アベルのそっくりさん!?
では、本編どぞ~!
「ああぁぁぁ……、何だって油断したんだ……。アリアから離れちゃダメだってわかってたのに……!!」
アベルは村外れまで走って膝を地面に落とし項垂れる。
これ以上一人で進むのは危険と判断し、アベルは一度村に戻ることにした。
「っ……くそっ……、何だってアリアを……!!」
「主殿!! 先程アリア嬢の叫び声が……!!」
村に戻って来ると、ピエールが起きて来たのかアベルに駆け寄って来る。
「ピエール! アリアが攫われた! 西に行く!」
アベルは一度宿に戻ると、武器を装備し直し置いていた荷物を手にした。
アリアの寝るはずだったベッドには彼女の荷物が残されていたのでそれも回収する。
「なんと……! で、では明朝……」
「そんなこと言ってられるか! すぐ発つよ! アリアが危ない」
「いけません! 主殿はここに来るまでに疲労しておられます。体力を回復させてから参りましょう。アリア嬢なら恐らく大丈夫です」
宿屋を出ようとするアベルをピエールは出入口に立ちはだかり止める。
「え……」
「西の洞窟で待っておられるはずですから」
「洞窟っ? ……ってことは……、これは……
自分を見上げて来るピエールにアベルは訊ねた。
ピエールは西に洞窟があることを知っている……。
自分にはまだその記憶は降りて来ていない。
――ということは、もしかしてアリアの影響で未来が変わっている……?
アベルはそう思ったが今はアリアが居ないため安易に喜べなかった。
「いえ……
ピエールも首を横に振ってそれを否定する。
ところが その言い方は落ち着いていた。
「っ、何それ……、西にいる化け物っていったい……」
「…………どうか私を信じて下さい」
「…………わかった。ピエール、君を信じるよ」
見上げて来るピエールにアベルは静かに首を縦に下ろす。
それから身体を休めるためアベルはベッドに戻って横になったが、アリアのことが気掛かりで良く寝付けなかった。
◇
――そして夜が明けた……!
「西に……、洞窟があるんだね?」
「はい。我々の足だと、明日か明後日には着くはずです」
「っ……そんなに……」
アベル達は夜が明けて早々カボチ村を出て、ピエールの云う西の洞窟へと向かっていた。
アリアと再会してから彼女とこんな風に離れたことが無かったアベルは胸元を掴み、顔を顰める。
――アリアっ……! 無事でいてくれ……!!
アリアが攫われた理由はわからないが、ピエールの様子がやはり落ち着いているので何となく大丈夫な気はしている。
……のだが、こうして離れ離れになるとやっぱり不安で堪らない。
アベルは自分はアリアが居ないとこうもダメになるのかと気付いてしまい、次第に西の洞窟に向かう足は早くなっていった。
一方で、攫われたアリアはというと……。
◇
◇
◇
……ピチャン。
雫が天井から地面の水たまりに落ち、水が跳ねる音がする。
洞窟の奥深く、化け物の巣までアリアは連れて来られていた。
「あぁ~……ええと……。ここはどこ……、そして あなたは誰……?(お腹空いたな……)」
ぐ~きゅるるる、と鳴る腹の虫を宥めるようにアリアはお腹を擦りながら、見たこともない洞窟奥の巣の中……藁床に座っている。
昨晩……――。
化け物に咥えられ風を切りながら どこかに攫われたと思っていたら、あれよあれよと
……とはいえ洞窟内なので日の光が入るわけでもなく、今が朝なのかはアリアにはわからないのだが……。
どうやらここが化け物の巣らしい。
彼女のすぐ隣には大きな豹のような獣が目を閉じ横たわっている。
アリアは眠って体力・魔力ともに少しだけ回復。状況把握に努めた。
……巣の最奥に見たことがあるような
全身ローブに覆われているので、その人物が男なのか女なのか性別がわからない……どころか人間なのかも定かではない。
ただ、背は高めである。男の可能性が高い気がした。
(もしかして魔族……?)
一瞬そう思ったアリアだったが、ローブを纏った人物からは特に殺気や邪気を感じられない。
アリアは声を掛けた人物の返答を待った。
意外にもその人物はアリアに声を掛けられると、すぐに顔を上げる。
「……ん? 私か? 私は……さすらいの旅人だよ」
ローブを纏う人物の声を聞くと男だとわかった。何となく、聞いたことがある声だ。
耳に心地好い。
男は頭に被ったフードを取り去り、アリアにはにかむ。
長い黒髪を束ねた優しい瞳のその男は、ターバンをしてはいないがアベルによく似ていた。
「っ、さすらいの旅人って……アベル……?(いや、でもアベルはカボチ村にいたし……一人称が
男がアリアに近づいて来るので、アリアはじっと男の顔を見つめる。
男はアベルにそっくりだが、何だか纏う空気が
「っ、……アベル……? じゃあ……ない……よね……?(何だか普段のアベルより随分大人っぽい気がする……)」
「アベル……? 誰だ……? ……ああ、この顔の男がそうなのか」
アリアが座ったまま男の顔をじっと見つめていると、男は“フッ”と笑って目の前にやって来てしゃがむ。
そして、アリアの顎を無遠慮に掴み顔を上げさせた。
その彼の爪は鋭く、長い。
アリアの肌にその爪が一部食い込んでいた。
「っ? そう見えるって何……(顎痛いんですけど……、けど、アベルに似てるからなんか抵抗できないや……)」
――初対面なのに顎を掴んでくるなんて失礼な人ね、しかもなんか痛いし……。
アリアはアベル(?)に顎を取られ、見下ろされていた。
本物のアベルはアリアに対してこんな無礼な態度を取ったりしない。いつだって優しく丁寧に扱ってくれるし、爪だってそんなに伸ばしていない。
だが瞳は彼そのものなのでアリアは抵抗できなかった。
(クールなアベルって感じ……っ、こういうアベルも格好いいかも……)
などとアリアはちょっと萌えてしまう。
「……この姿はお前の最も愛しい者に見えるはずなのだが……、どうやらそこのキラーパンサーと同じらしいな……」
ちらりと男がアリアの隣に伏せている黄色のボディに赤いたてがみ、豹のような魔物【キラーパンサー】に目を向ける。
と、男の声に【キラーパンサー】が顔を上げた。
男が【キラーパンサー】の喉元を掻いてやると「グルルル」と嬉しそうに喉を鳴らす。
「っ、最も愛しい者って……何っ? やだっ、私そこまでアベルのこと想ってないけどっ?(大好きなんだもんしょうがないでしょっ……!)」
男の指摘にアリアの顔が瞬時に茹ってしまった。
図星だったらしい。
「グルルル……」
「っ……? な、何……?」
アリアのすぐ隣で【キラーパンサー】が唸り声を上げる。
その様子を横目にアリアは身構え、身体を強張らせた。
逃げるにしても距離が近過ぎてすぐに捕まってしまいそうだ。
そもそも、男に顎を掴まれていて逃げられない。
武器は……持っていない。
アリアは武器だけでなく、持ち物を宿屋に置いて来てしまい 今は何も持っていなかった。
得意の呪文で切り抜けるという手もあるが、【キラーパンサー】は唸り声を上げているだけで特に襲ってくる様子はないし、男の瞳も普段のアベルと同じように優し気だったので、アリアはアベル似の男と【キラーパンサー】を注意深く警戒するだけに留める。
そんな様子見のアリアに男が口を開いた。
「……この身体は仮の姿。私はお前に会うために ここに来た。逢いたかったよ、アリア」
「……はあ……?(……どういう意味……?)」
男がアベルの顔で優しい笑みを浮かべる。
アリアは「顎が痛いんですけど……」と、上を向かされながら目を瞬かせた。
――私のことお前……って……やっぱりこの人アベルじゃないよね……、逢いたかった……? なんのこっちゃ……?
男の云う“逢いたかった”が何を意味するのかアリアにはさっぱりわからない。
「…………フム、忘れているか……。まだ目覚めていないのだな? ならば今しばらく待とう。何、私は待つのには慣れている。ゆっくり目覚めれば良い」
男の口調は穏やかだったが、穏やかな口調とは裏腹にアリアの顎を掴んでいた指に力が込められ荒々しく弾かれた。
すると男は立ち上がってアリアに背を向け歩き出す。
「痛っ。あっ、ちょ、ちょっと……! あなたいったい誰なのよ~!」
男の爪で引っ掛かれたのか、アリアの顎から血が滴っていた。
「……そのキラーパンサーはお前の知り合いだろう?」
男は背を向けたままフードを被りそんなことを告げると、次の瞬間 跡形もなく姿を消した。
「え……(消えた……!?)」
アリアは男の言葉に隣の【キラーパンサー】に目を向ける。
「グルルルル……ガウッ!」
【キラーパンサー】はアリアと目が合うと大きく目を見開いて彼女に襲い掛かった。
「わぁっ!? 何するのっ! ……っ、ちょっ、ちょっと、何っ、何して……!?」
「ガウガウッ!」
アリアが呪文を唱える間もなく【キラーパンサー】はアリアを押し倒し、彼女のスカートの中に顔を突っ込んだのだった。
「っ!? ……ぱんつの紐引っ張っちゃダメーーーーっ!」
「ガウガウ!」
「いやぁああああっっ!!」
アリアの叫び声が【キラーパンサー】の巣に響いた……。
アベルに似た人物……、誰やねん。
その内また現れる……かも?
そして、またもぱんつの時間がやって来ます……。