ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

田舎の排他的な感じ、アレやーよね!

では、本編どぞ。



第三百二十四話 もう来ないよ、こんな村!

 

◇

 

 

 

 

「……アベル……」

 

 

 村長の家を出て、アリアは前を歩くアベルを窺う。

 そうしていると、近くの畑で作業していた若者が笑いながら寄って来た。

 アベル達は立ち止まる。

 

 

「わはははは! こりゃまた傑作だべ! あんた化け物とグルだったとはな! あんたも うまい商売を考えたもんずらよっ。とにかく残りの礼金をもらったら とっとと村を出て行ってくんろよ」

 

 

 腹を抱え若者は笑うと、最後は険しい目付きでアベルを睨み付けた。

 アリアがすぐに反応する。

 

 

「なっ……ひっど……! 何てこと言うのっ!? グルじゃないもん! たまたまそういう巡り合わせになっただけじゃないっ」

 

「お嬢さん、あんたがグルだったとは思わね。こん男に騙されてねか?」

 

 

 若者がぷりぷり起こるアリアに笑顔を向けた。

 

 

「騙されてないですっ! 行こっ!」

 

 

 プイッとアリアは若者から視線を逸らし、立ち止まっていたアベルの手を取り引っ張って行く。

 

 

「……アリア……」

 

 

 ――僕の代わりに怒ってくれてるの……?

 

 

 繋がれた手の温もりにアベルの胸が温かくなった。

 

 

「……田舎特有の排他的思考ってやつだと思う。よそ者の言うことなんて聞く耳持ってないんだわ。感じ悪い。気にしないようにしよう?」

 

 

 ――頭の固い田舎者めっ! 時代は令和なんだぞ! もっと多角的に物事を捉えなさいよねっ!

 

 

 アベルは一生懸命やったんだから、褒めてあげないと!

 

 

 アリアは後でアベルをうんと褒めてやるんだと心に決め、村の出口を目指す。

 そんなアリアの慰めの言葉に、アベルはくすっと笑った。

 

 

「……僕は気にしてないよ」

 

「え?」

 

「……いつものことだから……」

 

 

 ははっ、とアベルは自嘲する。

 傷付いていないわけではないが、アリアのお陰かそこまで大きなダメージはない。

 

 

「っ……」

 

 

 アベルの笑う様子にアリアは息を呑んだ。

 

 

 ――いつもって……、そんな哀しそうな顔して、気にしてないわけないじゃない……!

 

 

 アベルの今の気持ちを想うとつんと鼻の奥が痛くなる。

 依頼されて、数日間掛けてこんな田舎までやって来て、村が救われるならと引き受けてのこの仕打ち。

 

 

 ――アベルは何も悪くないのに……!

 

 

 泣くわけには行かないので、アリアは顔を俯かせていた。

 

 

「あ、アリアちょっと待って。せっかくだからアレ貰って行こうよ」

 

「ん?」

 

 

 泣きそうになってしまったアリアだったが、アベルから明るい声が聞こえて顔を上げる。

 アベルはとある畑を指差していた。

 

 いや、畑というより畑に刺さった……。

 

 

「……アレって……っ、アレ!?」

 

 

 アリアがアベルの示す先を眺めて声を上げる。

 そこには畑に刺さった【コワモテかかし】がアリアを見ていたのだ。

 

 

「そ、あれ貰って行こうかなって」

 

「えぇ……? どうして急に……(今目の奥が光らなかった……!? こっち見ないでよぉ……)」

 

 

 アリアは【コワモテかかし】と目が合った気がして怖くなり、繋いでいたアベルの手をぎゅっと握り締める。

 

 

「確か、そこの倉庫に居た人が作ったとか言ってたよね。名産品だって。もうプックルの被害はないから貰ってもいいかなって」

 

 

 アベルはそう云って【コワモテかかし】から背を向け、傍の倉庫へと入って行く。

 

 

「えぇ~……(別に要らないんだけど……)」

 

 

 アリアもちらっと【コワモテかかし】に一瞥くれて、そのまま連れられて行った。

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

「はやあ! あんたらだべか! ち、ち、近付かないでけろ!」

 

 

 アベル達が倉庫に入るなり、農夫が目玉をひん剥く。鍬(くわ)を持つ手が震えていた。

 農夫は怯えているようだ。

 

 

「あの、外の畑にある かかしを貰っても構いませんか?」

 

「え? オラの畑のコワモテかかし? あっ、あれなら好きにして構わんけん。かかしでも何でも持って出て行ってくんろ~!」

 

 

 アベルがごく普通に話し掛けると、農夫は一瞬お目目をぱちくり。

 【コワモテかかし】は譲ってくれたが、ハッとしてさっさと出て行くようにと鍬を振り回す。

 鍬の柄の先は三つに分かれており、大きなフォークのような形をした三本鍬だ。

 振り回せば立派な凶器にもなり得る代物である。

 

 

「アリアっ!」

 

「ぐえっ」

 

 

 アベルは咄嗟に下がりアリアを庇うが、後ろに居たプックルが既に彼女のフードに齧り付き背後に引っ張っていた。

 急に引っ張られたため、アベルの手が離れアリアは尻餅を搗き喉が絞まる。

 

 アベルの身体擦れ擦れの所を三本鍬が掠めていった。

 農夫からの突然の攻撃にアベル達は面食らう。

 

 

「っ、あっぶない……! 農具を振り回すなんて……! ちょっとおじさんっ」

 

「出て行ってくんろ~! 出て行ってくんろ~!」

 

 

 アリアが止めようと声を掛けるが、農夫は聞く耳持たずで三本鍬を振り回していた。

 

 

「ちょ、ちょっとおじさんってばっ。危ないって~!」

 

 

 アリアは農夫の頭がおかしくなったのかと、何とか宥めようとするのだが風を切る三本鍬で近付けない。

 

 

「っ、アリア行こう! じゃあ、かかし貰って行きますね!」

 

「あっ、アベル!」

 

 

(ここに居たら怪我をする……!)

 

 

 そう判断したアベルはアリアの手を取り急いで倉庫から飛び出した。

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

「……はぁ、はぁ……怪我は?(さっき“ぐえっ”て言ってなかった?)」

 

「はぁ、はぁ……平気! プックルが後ろに引っ張ってくれたの。ちょっと首絞まっちゃったけど大丈夫だよ」

 

「良かった……。あんなことされたの初めてだよ……、びっくりした……」

 

 

 倉庫を飛び出し かかしのある畑にやって来ると、アベルは【コワモテかかし】を調べる。

 アリアはアベルの後ろでプックルに擦り寄り【コワモテかかし】を見ないようにしていた。

 

 

 “外して持って行きますか?”

 

 

 アベルの脳内に誰かの声が響く。

 

 

 アベルは地面からかかしを引き抜いた!

 アベルは【コワモテかかし】を手に入れた!

 

 

 アベルが【コワモテかかし】を手にして「リアルだなー……」と眺めていると、アリアの小さな声が聞こえて来る。

 

 

「……ソレ……、どうするの……?」

 

「……どうしよっか?」

 

 

 アリアが恐る恐る訊ねると、アベルは顔だけ彼女に向けてニカッと白い歯を見せた。

 今【コワモテかかし】の顔はアベルに向いている。

 アベルはゆっくりとアリアの方へと【コワモテかかし】の顔を向けようとしたのだが。

 

 

「っ……あ~……いたずらっ子の顔してる~! ダメよ。私に向けたら絶対ダメなんだからっ。ねっ? わかった? 絶対ダメっ」

 

 

 アリアの瞳に涙が滲み始めていた。

 

 

「……ハハッ、そんなことしないよ(涙目になっちゃって可愛い……!)」

 

 

 涙目で拒否するアリアが可愛くて、本当は顔を向けてやろうかと思っていたのだが それだけ見て満足し【コワモテかかし】を【ふくろ】に仕舞った。

 

 

「仕舞ったよ」

 

「うん! ならいいの。貰えて良かったねっ」

 

 

 アベルが完了報告を挙げると、アリアは優しく微笑んでくれる。

 

 

「…………っ、行こう!(本当、可愛いなあ……)」

 

「あっ、アベル!」

 

 

 アベルはアリアの手を強引に取り、再び村の出口を目指した。

 

 

「うわー! お兄ちゃん、あの化け物をペットにしたの!? お兄ちゃんて もしかしてモンスター使いなの?」

 

 

 不意に、前に来た時に出会った犬と戯れる少年に声を掛けられる。

 

 

「え? アハハ……そう、かも?」

 

 

 アベルはアリアと繋いでいない方の手で頭の後ろを掻いた。

 

 

「すごいや! すごいや!」

 

 

 少年がキラキラした瞳で、アベルを見上げる。

 と、そんな少年の様子にアリアが柔らかく微笑んで口を開いた。

 

 

「ふふっ、でしょう? お兄ちゃんはすごいんだよっ。いーっぱい、モンスターの仲間を従えているのよ。こんなことが出来るのはお兄ちゃんだけなんだから! 中々出来ることじゃないのよ? しかもお兄ちゃんは力も強いし、イケメンだし、とっても優しい人なんだからっ」

 

 

 アリアは少年に言い聞かせるようにアベルがいかに凄いか伝えた。

 アベルは褒めそやされ、ちょっぴり擽ったい。

 

 

「すごいや! すごいや! お姉ちゃんはお兄ちゃんが大好きなんだねっ!」

 

「「えっ?」」

 

 

 少年がアベルとアリアを交互に見て破顔すると、二人は顔を見合わせる。

 

 

「違うの? お手々繋いで、仲が良さそうに見えるけど……」

 

「っ、そ、そぉ……だね。仲間としてね……。っ、と、とにかくお兄ちゃんはすごい人だからっ!」

 

 

 少年の指摘にアリアは慌ててアベルの手を放した。

 

 

「仲間か…………、アハハ……。アリア、そんな褒めなくても……」

 

「っ……いいのっ、アベルは本当にすごいんだから……」

 

 

 仲間としてか……と残念に思いつつ、アベルは離れてしまったアリアの手を見下ろす。

 

 

(もう少し……繋いでいたかったな……)

 

 

 残念に思いながら、アベル達はカボチ村を後にしたのだった……。

 




カボチ村よさらばいばい。
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