アベルが脱ぐよ!
では、本編どぞ。
◇
ぽつぽつ。
ぽつぽつ、と。
カボチ村を出て少しして、灰色の空から雨が降り始めていた。
「雨だ……」
――珍しいなぁ……。
アベルは空に手の平を向け、触れる雫に少しばかり感傷的になる。
カボチ村の一件は毎度のことではあるが、やっぱり少し哀しい。
(カボチ村の人達とはいつも解り合えない……。)
自分の代わりに空が泣いてくれたのかと、アベルはこんな時アリアが言っていたように自分は“主人公”なんだなと感じてしまった。
「アベル、雨が酷くなる様なら早めにどこかで雨宿りしないとね」
アリアが空を見上げてフードを被る。
ポートセルミに戻るまでには数日かかる。
何処か雨宿りの出来る洞穴でもないかなと探りながら、次第に強くなっていく雨の中、アベル達はポートセルミを目指していた。
「っ……土砂降りになりそうだね。アリア大丈夫かい?」
「私は平気! この
土砂降りになりつつある悪路の中、アベルが隣を歩くフードを被ったアリアを窺うと彼女は顔を上げる。
アリアのマントは水を弾いていた。
それでも雨の量が多く、彼女の髪や中の服は多少濡れてしまっている。
「撥水加工?」
びしょ濡れのアベルが訊ねると、アリアがにっこりと微笑んだ。
「魔法のマントなのかな? モンスターじいさんの薦めで買ったものだから特殊なのかもね」
「へ~。その服……、モンスターじいさんが薦めたんだ……」
――なんでモンスターじいさんがアリアの服を……。
アベルはそう思ったが、今は彼女が濡れずに済むならそれで良い。
深く考えることはしなかった。
「……それにしても……」
――よく降るなぁ……。僕、ここまで泣かないけど……?
アベル達は少しでも雨を避けるために山の中へと入って行く。
そうして運よく大きな洞穴を見つけ、そこで雨宿りをすることにした。
◇
ピチャンッ。
ピチャン……。
雨の雫が洞穴の地面に出来た水たまりに落ちる。
「はぁ~……参ったね(焚き火あったか~い!)」
雨を避けるように洞穴に逃げ込んだアベル達は暖を取っていた。
アベルが組んでくれた木々にアリアが【メラ】を唱え火を起こすと、出来上がった焚き火に手を
こういう時、呪文て便利だなとアリアは心からそう思った。
「うん……、服を乾かさないと……」
アベルがパトリシアの様子や馬車の点検を終え焚き火の傍にやって来ると、服を脱ぎ出す。
仲魔達はアリアが好きなのか、彼女の周りに集まっている。
スラりんなんかは自分がアリアに好かれているのを知っているのだろう、アリアの膝上に陣取って気持ち良さそうに うつらうつら。
「わっ! アベルっ!? ちょ、ちょっと待って……!(急に脱がないで! こ、心の準備が……!!)」
アベルの突然の脱衣にアリアは両手で顔を覆って俯き、首を左右にふりふり。
「へ……? あ、ごめん。冷たくて……はっ、くしょん!!」
「っ!? 大丈夫!? ……ぁ……」
アベルから くしゃみが聞こえ心配になったアリアが顔を上げると、彼女は固まってしまった。
「ズズッ……だい……じょうぶ。…………アリア?」
――あれ? アリア固まってる……どうしたんだ……?
アベルが鼻を啜りつつ、脱いだ服を絞りながらアリアをちらり。
ただいまパンツ一丁である。
アリアは黙ったままアベルを見ていた。
「ぁ……、ぇと……。っ……」
――アベル、いい身体してるぅ……!!
アベルの均整の取れた肉体を前に、アリアの頬が赤く茹っていく。
服装の所為でいい身体だなとは常日頃思っていたが、ここまでドストライクな身体をしていたとは……。
――っ……、若い子ってすごいのね……! なんて肉体美……!
こ、こんなの画面の中でしか見たことないんですけど……!? と、アリアは動くことが出来ずに ただ目を剥いていた。
アベルの黒髪から落ちた雨の雫が厚い胸板を伝い、六つに割れた腹直筋に流れていく。
顔は幼さが残っているのに身体は大人のそれで、アリアの鼓動はドクドクと跳ね上がった。
アリアはアベルから目が離せない。
そして ちょっぴり鼻血を出しそうになってしまったアリアだった。
アベルが濡れた服を近くの岩に広げ戻って来るとアリアに訊ねる。
「アリアの服は大丈夫? 少し濡れてたみたいだけど……絞ろうか?」
「っ……私は平気……。そんなに濡れてないし、こうして火に当たってれば乾くよ」
――あ……、アベルの身体……よく見たら傷がいっぱいあるのね……。十年前は無かったよね? 奴隷時代の……かな……。
焚き火に当たりながら つい凝視してしまったアベルの身体にアリアは幾つもの古傷を見つけてしまい、今度は哀しくなってしまった。
アベルが生を何度も繰り返し、奴隷生活を送っているのだと思うと可哀想で堪らない。
まして、その記憶を持っているなんて辛すぎる。
今回も もう取り戻せない十年だが、アリアはアベルがこの先幸せになってくれるようにと願わずにいられなかった。
「そっか、良かった。風邪引いたら大変だからね」
アリアに凝視されていたアベルは“見られてるなー……”と感じつつも焚き火用の薪を追加し、傍に居る仲魔達の様子を一人一人チェックする。
みんな さっきまで珍しい雨と悪路を行きぐったりしていたが、アリアに寄り添い焚き火に当たると ほっとした顔をしていた。
アリアの頭にはドラきちが乗っかり、左にはコドランが寄り添う。右にはキャシーまでもがアリアの肩に頭を預けてぼーっとしている。
極めつけ彼女の後ろにはプックルが横たわり、背凭れとなっていた。
いつもはここまでではないが、みんなアリアに癒されたいのだろうか……。
――ちょっと重そうだけど大丈夫なのかな……、アリアって何故か魔物に好かれてるよね……。
自分もアリアに癒されたいけど、無理そうだなとアベルは仲魔達を見て諦める。
「……アベルも風邪を引かないようにね。ほら、ちゃんと焚き火に当たって?」
アリアは膝上のスラりんを抱きしめ、アベルに焚き火に当たるよう促した。
「っ、はっくしょんっ! 大丈夫大丈夫! 僕は病気知らずだからね!」
「くしゃみ してるじゃない……。あっ、ちょっと待ってて」
「ん……?」
“みんな、ちょっとごめんね。”
アリアはそう告げて仲魔達から離れ、馬車へと一人向かう。
洞穴の岩を踏み台にしてキャビンに乗り込み、少しして手に何かを持ち戻って来た。
「どうしたの?」
「これ羽織って?」
アリアがアベルに持って来た何かを差し出す。
それは毛布だった。
「あ、毛布」
「寒いでしょ?」
「ありがとう……」
「ふふっ、どういたしまし……くしゅんっ!!」
アリアは元の位置に戻りながらくしゃみを一つ。
まだ中の服が乾いておらず、少し肌寒い。
「アリアも くしゃみしてるじゃないか……」
「うふふっ、大丈夫だよ。まだ中の服が乾いてなかっただけ。今日は呪いも発動してないし、元気元気!」
毛布に包まりながらアベルが言うと、アリアは焚き火に手を翳して微笑んだ。
その彼女の肩が少し震えている気がする。
「……毛布、一枚しか無かったっけ……」
「うん、私しか使わないから……」
「……一緒に使う?」
「へっ?」
アベルの提案にアリアは目を瞬かせた。
「…………、毛布一枚しかないし……。アリア震えてる……よね? 本当は寒いんじゃないの?」
「っ……わ、私は大丈夫だよ……? スラりんを温めると湯たんぽ代わりになるし……」
アベルに訊ねられ、アリアはウトウトしているスラりんを抱き上げる。
焚き火に当たっていたスラりんは温かい。
「……何もしないから。……………………っ……、……おいで?」
アベルは思い切って毛布を広げてアリアを誘った。
「アベルっ……。それは……!」
――アベルの股の間においでってこと……!?
アリアの顔が真っ赤に染まる。
「あっ……、は、恥ずかしいかな? けど大丈夫だよ、何もしないからっ」
アベルは取り繕うように慌てて笑った。
「っ……でもっ……」
――そういうの、アラサーの私でも恥ずかしいんですけど……っ。
さすがに躊躇してしまうアリアだったが、鼻がムズムズしてくる。
「っ、はっくしょんっ!」
「っ、おいでっ!」
アリアの大きなくしゃみにアベルは堪らず彼女の手を引いて、自分の股の間に座らせ背後から自らの腕と毛布で包んだ。
「えっ……」
「……温かいでしょ?」
「っ……ぁ……っっ……!! あっ、たかい……けど……っ」
――ちょ、ちょっと何がどうなって……!? 私今、アベルに抱きしめられ……っ!?
アベルの腕に包まれたアリアは物理的【メダパニ】に掛かってしまい、頭がぐるぐるしてくる。
(え? は? なんでこんなことになってるの……?)
今起こっている現実を冷静に受け止められそうにないアリアは身体を強張らせていた。
「……僕も温かい……」
――アリアの身体は僕の身体と違って小さくて柔らかくて……、いい匂いがする……。落ち着くけど……、興奮してしまいそうだ……。
アベルは邪な考えを消すように「はー……」と息を吐き出し、アリアの肩に顎をのせる。
「っ……、アベル……?」
「……アリア、僕さ……」
ゲーム中で雨の降る描写ってあったかな?
あ、石化してる時はあったっけ?
うろ覚え……。
いつから天候って入るようになったのでしょうかね……。
そんなわけで洞穴にて小休止です。
アリア、アベルの身体をガン見するの回でしたとさ。
アベルのぱんつ……(またしてもぱんつネタ……)はトランクスなのかブリーフなのか、はたまたボクサータイプ?
うーん、ビルダーズの男の子みたいなぱんつかな。
そんなわけで“ぱんつ”としか書きませんでした。お好きなぱんつをご想像下さい。
ステテコパンツ、アベルは装備出来ないんですよね……。
ちぇっ、アリアと着回ししたかったな……。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!