ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

雨続きですね~。
すんなりポートセルミには帰らないぞっ。

では、本編どぞー。



第三百二十六話 雨宿り

 

 ――君のことが好きだ……。

 

 

 アベルが口にしようとすると、アリアは遮るように先に話し出していた。

 

 

「っ、アベルって温かいのね」

 

「ん?」

 

「…………筋肉があるからかなぁ……、ほら、私の身体って冷たいでしょ?」

 

「そんなことないよ。充分温かい」

 

 

 ――偶然なのか……? アリア、意識的に僕に言わせないようにしてる……?

 

 

 アベルはこれまで何度もアリアに話を遮られた過去を思い出し、目を伏せた。

 

 

「……そう……?」

 

 

 アリアは自分に回されたアベルの腕を掴み抱きしめる。

 

 

「っ……アリア、雨が止むまで雨宿りしてさ、出発しようか」

 

 

 腕を抱きしめるアリアの様子に、彼女が自分を嫌っていることは無いということはわかっているのだが、何度も遮られる会話にアベルは思う。

 

 

 ――僕の気持ちは聞きたくないってことか……。

 

 

 アリアは決して自分の思い通りにならない。

 

 以前ピエールが“アリア嬢は手強いでしょう?”の言葉の意味がわかった気がした。

 アリアの身体は温かくて柔らかく、いい匂いがするのに温まっていく身体に反して、気持ちは冷えていく。

 

 

 ――諦めた方がいいのかな……。

 

 

 アベルの心は折れ掛かっていた。

 

 

 それからしばらく洞穴で雨宿りをし、雨脚が弱まるとアベル達は再びポートセルミに向けて歩き出す。

 生憎と空は曇天続きで小雨に降られたり、豪雨に見舞われたりと忙しく、中々ポートセルミまで辿り着けなかった。

 

 ただ、雨の所為かお陰か魔物と遭遇する機会は少なく済んでいたため行きよりも距離は稼げている気はする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 カボチ村を出て三日目……。

 アベル達は雨の中、少しでも濡れるのを防ぐため森の中を歩いていた。

 カボチ村を出た初日と同じく、雨脚はどんどんと強くなっていく。

 

 視界も悪いし、このまま魔物と遭遇すると軽い怪我では済まなそうだ。

 アベルは今日中にポートセルミに戻るのは無理だと判断し、雨宿りの出来る場所を探していた。

 

 

「ぁっ、アベル! 脇道があるよ!」

 

 

 アリアが森の中で獣道とは違う、馬車がギリギリ通れるような道を見つけるとアベルに告げる。

 

 

「え? あ、本当だ。よく見つけたね。誰かこの先に住んでいるのかな……?」

 

 

 ――こんなこと……、今まで一度も無かったな……。

 

 

 アベルは不思議に思いながら、パトリシアをそちらに誘導する。

 

 

「ね、アベル、誰か住んでるなら雨宿りさせてもらおうよ」

 

「うん……」

 

 

 雨に打たれながらアリアが優しく微笑むと、アベルは胸を疼かせながら頷いた。

 

 

 ――アリア、そんな風に笑い掛けないでよ……。

 

 

 この間の雨宿り以来彼女の笑顔を見る度、アベルは切なくて仕方がない。

 諦めようとしているのに、諦めがつかなかった。

 

 

 そのままアベル達が歩いて行くと、アベルの記憶には無い集落が見えて来た。

 

 その集落の規模はそう大きくはない。木材で建てられた小さな家々が数軒あるだけ。

 だが その家々は魔物に襲われたのか全て廃家となっており、焼け落ちたり、壊されていたりとどれも悲惨な状況である。

 人の住んでいる様子はない。

 崩れた壁や扉には魔物の爪痕が刻まれていた。

 

 どの家も屋根が落ちているため雨宿りは難しそうだ。

 

 

「っ……ポートセルミで聞いた話にどこかの集落が襲われたって言ってたっけ……」

 

 

 ――もしかして……ここも……?

 

 

 アベルが崩れた家々を前に眉を顰める。

 アリアも悲しそうに目を伏せていた。

 

 そうして崩れた集落を眺めていると、小川を挟んだ一番奥の家屋だけは何とか形を保っていることに気が付く。

 よく見てみれば家の煙突から煙が出ているではないか。

 

 

「……あ。奥の一軒だけ無事みたいだ。行ってみよう」

 

 

 アベル達は奥の家へと向かった。

 

 奥の家には壁や屋根に魔物の爪痕が残ってはいるが、ちぐはぐな材木が充てられ崩れた部分は補修されているようだ。

 

 

 コンコン!

 

 

 アベルは傷の付いた扉に拳を打ち付ける。

 

 

「すみません!」

 

「どなたか居ませんか?」

 

 

 アベルとアリアが訊ねるが、家の中から返事はない。

 

 

「……おかしいな……。煙は見えるのに……」

 

 

 アベルが扉から離れ、家から少し距離を取り煙突を見上げるとやはり煙が出ている。

 

 

「……っ、アベル、私寒い……」

 

 

 ぶるぶるとアリアは震え、扉に戻って来たアベルを見上げた。

 

 

「あっ、うん。勝手に上がらせてもらおうか」

 

「うん……」

 

 

 アベル達は仕方なく勝手に上がることにし、家の中へと入る。

 

 

「あぁ……。お家の中は温かいのね……。暖炉まであるぅ……」

 

 

 家の中に入ると、暖炉の火がアベル達を迎えてくれた。

 アリアはガタガタ震えながら暖炉の前に向かう。

 

 

「アリア……、もしかして……」

 

「んー?」

 

 

 アベルも隣にやって来てアリアを窺った。

 彼女の顔色は真っ青で唇は紫色に変色している。

 

 

「今日……、呪い……」

 

「ぁ…………、ふふっ、バレた? そっ、体力低下日!」

 

 

 アリアはぐったりしているくせに、何でもないことのように笑った。

 

 

「っ……ごめん……。気付かなかった……」

 

「気付かれないようにしてるもの! わかるわけないよ?」

 

 

 アベルが謝ると、アリアは笑顔のまま暖炉に当たる。

 

 

「っ……、なんで……。言ってくれって言ったよね……? ホウレンソウでしょ……?」

 

「アベルは みんなのリーダーでしょ? 私一人だけのために気を遣わせたくないの」

 

「そんなの今更気にしないでよ……」

 

 

 ――アリアが苦しいのは嫌なんだよ……。

 

 

 アリアの気遣いは嬉しいが、余計な気遣いは必要ない。

 自分は心配する側であって される側ではないのに……、アベルは青い顔で笑うアリアに眉根を寄せていた。

 

 

「……じゃあ……、ホイミ掛けてくれる?」

 

 

 アベルが不機嫌になったかなと思ったアリアが、彼を見つめて訊ねる。

 

 

「うん…………、ベホマ!」

 

 

 アベルは【ホイミ】の最上級呪文【ベホマ】を唱えた。

 【ベホマ】は落ちた体力(HP)を最大まで回復する。

 

 

「ぁ……。すごい……! 身体一気に楽になった……!」

 

 

 【ベホマ】を掛けられたアリアの体力(HP)が一気に回復し、彼女の血色がよくなった。

 

 

「……アリア、自分でも回復できるよね……? どうしてしなかったの……?」

 

「ん? あっ、そっか……! そうだね。私も回復呪文使えるもんねっ」

 

 

 “あははっ”

 

 

 アリアは「忘れてたよ~」と髪の毛を弄り、それ以上は黙り込んでしまう。

 

 

「え……、もしかして、呪いって……。二つ同時に起こってたりする……??」

 

 

 何となくアベルは訊ねていた。

 

 

「ぁ、ぇと……」

 

 

 アリアは気まずそうにアベルから視線を逸らす。

 

 

 今日は魔物との遭遇が少なかったが、そういえばアリアは今日、呪文を使っていない。

 

 

「アリア」

 

 

 そのことに気が付くと、アベルは無表情で彼女の名を呼んだ。

 

 

「っ、その……、今日は呪文が使えなくって……ですね……」

 

「その上、体力も低下していた……?」

 

「……はい……」

 

 

 アベルの追及にアリアはもじもじ。指の腹を合わせてイジイジ。

 気まずそうに微笑んでいた。

 

 

「っ、何で言ってくれないんだよっ!!」

 

 

 アベルは語気を荒げた。

 

 

「っ、魔物と殆ど遭遇してないからいいかな~……って……、ダメだった?」

 

「ダメに決まってるよ!」

 

「そんなに怒鳴らなくても……」

 

 

 ――教会に行く度 身体は軽くなっていくし、呪いの発現頻度も少なくなってるけど……、呪いが発現した時はダブルで掛かるようになって来たのよね……。

 

 

 アベルに言うと心配するから……と、アリアは黙っていたのだった。

 

 

「アリア、自分のこと大事にしてよ!」

 

「大事にしてるよ? 大丈夫だと思って言わなかっただけっ」

 

「っ、どこが大事にしてるんだ? 僕から見たら何も考えてないように思えるよ」

 

 

 アベルの言葉にアリアがムッと頬を膨らませる。

 

 

「なっ、何も考えてないってなに!? 私がバカってこと!?」

 

「っ……バカなんじゃない?」

 

「っ、バ、バカって……アベルひどいっ!」

 

 

 売り言葉に買い言葉でアベルが肯定すると、アリアは眉を顰めた。

 そんなアリアにアベルも苛立ち唇を尖らせる。

 

 

「酷いのはどっちだよ……。心配ばっかり掛けさせといて……。心配する方の身にもなって欲しいよ」

 

「むぅ……。そんなの勝手に心配してるだけでしょ……! 私はあなたに心配してなんて頼んでないんだけど……!?」

 

 

 ――十六歳の若者に心配されるほど、私は頼りなくない! ……はず。

 

 

 アベルの物言いに、アリアは「私これでもアラサーなのよ!?」と叫びそうになった。

 ところが そんなことを口にする前に、アベルが限界を迎えてしまい……。

 

 

「っ、アリアのバカ! わからずや!」

 

 

 アベルは大声で怒鳴り立ち上がって家を出て行こうとする。

 

 

「あっ! ちょっとアベル、どこに行くのっ?」

 

「…………ピエールが来ないし、パティの様子も見て来る。アリアはみんなとここに居て。そこで温まってればいいよ」

 

 

 実はピエールにパトリシアを任せていたのだが、雨宿りに中々いい場所が見つから無いのだろう、ピエールが家に入って来ていなかった。

 

 アリアが呼び止めたものの、アベルは彼女に背を向けたまま家を出て行ってしまった……。

 




たまに喧嘩するね、この二人。
お互い精神年齢高いはずなんだけどね……。

前の前の話で加筆したため、今回も長めです。
キリの良い所ってことで、次回が少ないんですけど……。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!

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