ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

子ネコ命名編です。

では、本編どうぞっ。



第三十二話 子ネコの名は?

 

 どうせすぐ戻って来るでしょ。

 と、アリアはアベルの居る部屋に戻り扉を閉める。

 

 

「……背の高さがなぁ……(私が見えないからって失礼にも程がある……!)」

 

 

 プンスカ!

 

 アリアは不満げに頬を膨らませた。

 やはり、姿が見えないというのは不便である。

 

 

「ん…………、アリア……? 戻って来たの……?」

 

 

 ベッドでアベルが今にも寝落ちしそうな顔で訊ねてきた。

 

 

「あ、うん。パパスさんならバルコニーに居たよ。もうすぐ戻って来るんじゃないかなぁ?」

 

「ん……、そっか、ありがとう。じゃあ…………」

 

 

 アベルは布団を捲って、自分の隣をぽんぽんと叩く。

 今夜も一緒に寝ようよ! と誘っているのである。

 

 

「っ、私は別に一緒に寝なくてもいいんだけど……? 床でも別に構わないのに……(同衾って何気に恥ずかしいのよ!?)」

 

「……ふぁああ……。アリア早くして。僕もう眠くて眠くて……」

 

「っ、しょ、しょうがないなぁ……」

 

 

 アベルがあくびしてから眠そうに口を尖らせると、アリアは逆らえないのか、ベッドに入りアベルに背を向け寝転がった。

 すると、アベルはアリアに抱きついてくる。

 

 

「……へへ。やっぱアリア、温かいや」

 

「…………私、抱き枕じゃないんだけど……(子供と添い寝くらいどうってことない、どうってことなんて……ないんだからねっ!)」

 

 

 アベルに後ろから抱きつかれ、アリアは落ち着かない様子で固まっていた。

 

 

「…………アリア……」

 

「っ……!」

 

 

 アベルがすりすりと、アリアの背中の翼に顔を埋める。

 翼は温かくて、ふわふわしていて触り心地が良い。

 

 

 それに、いいにおい……。

 落ち着くなぁ。

 

 

 ……そうしてアベルは完全に意識を手放したのだった。

 

 

「……っ、くすぐったいぃー……!(こんなんじゃ眠れないよ!)」

 

 

 アベルって強いくせに甘えん坊なのね……。

 お母さんがいないから私に甘えているのかなぁ……。

 

 そりゃそうか……まだ、六歳だもの。

 甘えたいよね。

 

 

 アリアは、翼に当たる規則的な温かい吐息にそう思う。

 

 

「おやすみ、アベル。いい夢を」

 

 

 アリアも目を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 次の日の朝――。

 広場にアベル達は子ネコを貰いにやって来ていた。

 

 

「さあ約束だわよ! この子ネコ貰っていってもいいわね?」

 

 

 ビアンカが腰に手を当て、語気を強めていじめっ子達に詰め寄る。

 

 

「おい、どうする?」

 

「仕方ないか……。よし! 約束したしお前等も頑張ったからな! このネコはあげるよ!」

 

 

 いじめっ子達は互いに見合い、目配せすると了承する。

 そして、繋いでいたロープを外して子ネコを解放したのだった。

 

 

「ガウガウ!」

 

 

 ロープから放たれると、子ネコは一目散に駆け出し……。

 

 

「っ!?」

 

『きゃぁっ!』

 

 

 アリアを襲ったのだった。

 どすんっ、とアリアは尻餅をついて、子ネコを抱き留める。

 

 

「ちょ、やめ……」

 

「ガウッ! ペロペロペロ……」

 

『ちょっ、くすぐった……! あぁっ!!(何々、なんで!?)』

 

 

 アベルは止めに入ろうとしたが、子ネコはアリアの頬をベロベロと舐め、じゃれていたので安全と判断し、放っておいた。

 

 

「あははっ! この子、アリアのこと好きみたいだね(それともアリアを食べようとしてる……!?)」

 

 

 ペロペロから~の、ベロベロ。

 れろ~ん、れろ~んと、段々と舐める範囲が広くなっていく。

 そして、子ネコの顔が恍惚な表情へと変わっていった。

 

 

『っ、ちょっ……あっ、舌がざらざらして……っ……うわ……べちょべちょ……(アベルも止めに入ってくれればいいのに~!)』

 

 

 子ネコの一方的な舌攻撃にアリアの顔がヨダレ塗れになっていると……。

 

 

「よかったわね、ネコさん。もういじめられないわよ。さあ行きましょう」

 

 

 ビアンカが助け船を出してくれたのだった。

 ビアンカは、子ネコがアリアと戯れているのだろうと解っている様子で、子ネコの頭を撫でる。

 すると、子ネコは一頻り顔を舐めて満足したのか、アリアから離れたのだった。

 

 

『ぅぅ……ビアンカちゃんありがとう……。ビアンカちゃんが居なかったら頬っぺたふやけてたよ……(なんで私を舐めるのよ……)』

 

 

 ふぅ。とアリアはヨダレ塗れの顔を拭う。

 

 

「あははっ、アリアべちょべちょだよ? あ、ビアンカに言っておくね」

 

 

 アベルはそう告げて、アリアにハンカチを渡した。

 

 

『っ、アベルも止めてくれればいいのにー……うう、臭い……。ちょっとそこの湖で洗ってくるね……』

 

 

 アリアはアベルのハンカチを手に湖へと走っていった。

 

 

「ビアンカ、アリアそこで顔洗ってくるって。ちょっと待ってて」

 

「ええ、いいわよ」

 

 

 アベルがアリアの居る方へと目を向けると、ビアンカの瞳には映らないが湖の水がパシャパシャと跳ねたので、そこに彼女が居るということだけはわかった。

 

 

「……ネコさんはアリアのこと見えるのね、いいなぁ……」

 

「ガウ……?」

 

 

 ビアンカは子ネコを見下ろして淋しそうに笑う。

 

 

「…………ビアンカ……」

 

「……いつか見えるようになるかしら?」

 

「うん……。だといいね」

 

 

 アベルの瞳には顔を洗い終え、戻って来るアリアの姿が映っていた。

 

 

『ふぅ……さっぱりした……。おまたせ……』

 

「ガウッ!」

 

 

 アベルのハンカチで顔を拭きながら戻って来たアリアに、子ネコが声を掛けて来る。

 

 

『っ、も、もう舐めないで?』

 

「ガウガウッ!」

 

 

 アリアがびくりと身構えると、子ネコは撫でて欲しいのか頭をアリアの身体に擦り付けた。

 

 

『っ……変わった毛並みだねぇ……』

 

 

 アリアがたてがみを撫でてやると、子ネコはうっとりと、満足そうな顔をする。

 

 

「あ、そうだわ! このネコさんに名前を付けてあげなきゃ!」

 

「え、また……?」

 

「ん? また?」

 

「あ……。いや……、えと……」

 

『名前付けてあげるの? それはいい考えだねっ! どんなのがいいかな……』

 

 

 アリアはビアンカとアベルの会話に勝手に入って考え出す。

 

 

 ――頭の毛が赤だから“アカゲ”とか?

 それとも、身体の模様がヒョウ柄に似てるから“ヒョウキチ”?

 ガウガウ鳴くから、“ガウタ”?

 

 いや、ガルルルルとも鳴くし、“ガルル”…………。

 

 

 

 

 ………………………………。

 

 

 

 

 …………駄目だ、私ネーミングセンスないんだった……。

 

 

 アリアは勝手に落ち込み俯く。

 そんな中、ビアンカが「うーん」と腕組みして宙を見上げた。

 

 

「ねえ……ボロンゴってどうかしら?」

 

『ビアンカちゃんが付けてくれるの……!?』

 

 

 ビアンカが名前候補を言い出し、アリアは顔を上げる。

 

 

「えっと……」

 

「気に入らない? じゃあプックルってどうかしら?」

 

 

 アベルの反応がいまいちなので、ビアンカは別の名前を出してみる。

 

 

『あ、可愛い名前』

 

「うーん……」

 

 

 アリアの受けは良かったが、アベルの反応はいまいちだった。

 

 

 じゃあアンドレってどうかしら?

 

 じゃあチロル?

 

 じゃあリンクス?

 

 じゃあ、ゲレゲレ?

 

 ……モモ、ソロ、ビビンバ、ギコギコ……。

 

 

 ビアンカが思いつく限りの名前を並べる。

 アベルはどれも気に入らないのか「うーん」と唸るだけ。

 

 

「はぁはぁ……もうっ! 何が気に入らないのよっ」

 

 

『ビアンカちゃん、短時間にこんなに候補挙げられるなんてすごーい!』

 

 

 アリアはパチパチパチと手を叩いていた。

 

 

「……もう一回訊いてもいい?」

 

 

 アベルが名前候補をワンモアタイムする。

 

 

「……っ、もぉ~! あと一回だけだからねっ!(可愛い顔してっ!)」

 

 

 アベルに上目遣いで見られ、ビアンカはしょうがないなぁともう一度初めから名前候補を云ってくれるのだった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「はぁ、はぁ……。一気に言ったら疲れたわ……。で、どうするの?」

 

「……うーん……、やっぱりまた(・・)同じ名前ばっかりなんだなぁ……」

 

 

 アベルは顎に手を当てて、考え込む。

 すると、ビアンカの眉間に皺が寄って……。

 

 

「んもぅ! 八つも挙げてるのに、何が不満なのよぉっ。だったらここはアリアに付けてもらおうじゃないっ!」

 

 

 ビアンカはやけっぱちでやにわにアリアを“ビシッ!”と指差したのだった。

 アリアの居場所はよくわからないが、子ネコがゴロゴロゴロと咽喉を鳴らし、たてがみが風もないのに度々形を変えるので、そこに居る(・・)と感じたらしい。

 

 

「! それいいねっ! それは初めてだ!」

 

 

 アベルはアリアの方を向いて、笑顔を見せる。

 アリアのすぐ隣には子ネコがお座りして、アリアに撫でられていた。

 

 

『へっ? わ、私?』

 

「……アリア、さっき云った名前のどれが良かった? それとも、アリアが付ける?」

 

 

 突然振られ、目を丸くしたアリアをビアンカが居場所にアタリを付けて、話し掛けてみる。

 

 

「それもいいかも!」

 

 

 アベルはノリノリだ。

 

 

『っ、いや、私ネーミングセンスマジヤバなんでムリ……』

 

「そっか、じゃあどれか選んでくれる?」

 

『えっと……、な、何だったっけ……?』

 

 

 アリアが訊ねると、アベルは満面の笑みを浮かべた。

 そして、そのままビアンカの方へと顔を向け……。

 

 

「……ビアンカ、アリアがもう一回名前候補を聞きたいって……」

 

「っ、……もぉぉおおお!!(また云わせるのぉ!?)」

 

 

 ビアンカは名前候補をまた云う羽目になってしまった……。

 




名前決まらんかったし……。
ビアンカちゃん何度も言わされて可哀想……。

今回ちょっと長くなってしまいました。
いつも2500~3000文字前後で一話分にしているのですが、切りどころがわからなくって。
すみません、次回もそんな感じになりそうです。

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評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!

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