やっとかーい!
では、本編どぞー。
◇
数時間後――。
「……ぁ……。寝てた……」
アベルが目を覚ますと、辺りは暗くなっていた。
雨はまだ降り続いているが、眠る前からすれば随分と弱まった気がする。
「……アリア心配してるかな……」
アベルは馬車から飛び降りて家へと向かった。
「ああ、主殿! どちらに居られたので!? アリア嬢と会われませんでしたか?」
家に入った途端、ピエールがやって来てアリアはどこかと訊ねられる。
「え……? 会ってないけど……?」
「っ!? アリア嬢は主殿を呼びに馬車に向かったはず」
「えっ、アリア来たの!? 知らないよ!?」
ピエールの言葉にアベルの目が見開いた。
「……主殿と一緒に居られるものと……、邪魔をするのも野暮かと思いそっとしておいたのですが……」
「っ、それってアリアが居なくなったってことか……!?」
「っ……そのようです……。すぐ! すぐ捜して参ります!!」
ピエールは慌てた様子で家を出て行った。
アベルも直ぐさま家を出る。
「っ、アリアーーッ!!」
アベルがアリアの名を呼ぶが雨音に掻き消され、声は
「っ、なんでっ……なんでいつも居なくなるんだよぉ……っ!」
アベルはピエールが行く方向とは逆の方へと向かい、アリアを捜す。
「アリアーーッ!」
もしかしたら馬小屋に居るかもしれない。
アベルは馬小屋へと向かい、戸を開く。
しかし、中にはパトリシアとノアしか居なかった。
「……っ、いったいどこに……」
――アリアは臆病だ、そんな遠くに行くはずはない。
アベルは暗がりの中、家の周りを重点的に捜すことにした。
ところが家の周りを歩いても見つからないので、崩れた家々も一応捜す。
「主殿!」
「アリア居た!?」
背後からピエールに声を掛けられ、アベルはアリアが見つかったか訊ねた。
「っ、いえ……どこにもいらっしゃいません……。おかしいな……。アリア嬢は一人でそんな遠くに行くようなことをする方では……」
ピエールは腕組みをして首を捻る。ピエールを背負うアンドレが疲れたような顔をしていた。
そういえば今日は雨の中の移動と戦闘と、屋根の修理で一日動き続けている。彼は大男の家に入ったところで、一人勝手に寛ぐような騎士ではない。
アベルの居ない時のピエールは彼の代わりを果たすため、仲魔達の面倒を買って出るような忠義の
アリアが居たら多少違うのだろうが、そのアリアもアベルを呼びに出ているわけで……。
ピエール自身は疲れを見せるような真似はしないが、アンドレの顔を見れば疲れているのは一目瞭然。
「ピエール、君、一日中ずっと動いてて疲れてるだろう? 君は家に戻って休んで。僕がもう少し捜して、ダメだったら交代で捜そう」
「……っ、はい。やむを得ませんね……」
やはり疲れていたのだろう、アベルの気遣いにピエールは否定しなかった。
アベルは疲れの溜まったピエールを家で休ませることにし、引き続き一人でアリアを捜すことにした。
◇
「はぁっ、はぁっ……どこにも居ない……! まさか僕に似た男ってやつに攫われたりは……」
雨の中、崩れた集落の中を捜しながら ふと口にした言葉にサーッと、アベルの背中が冷えてゆく。
――アリアを傷付けた男が、アリアを攫う……?
たまたま前はアリアが無事だったが、次も無事とは限らない。
(アリアが危ない……!)
ラインハットを後にしてから初めての出来事が多過ぎて、予測が追い付かないアベルの顔は青褪めていた。
「っ、アリアーーッ!!」
アベルは馬車に戻り、可能性は薄いがもしかしたらとキャビンを覗いてみる。
「…………やっぱり居ない……、アリアーーッ!」
“んん……、ぅん……? はぁーい”
アベルの大きな呼び声に、馬車の下から返事が聞こえた。
「……え?」
聞こえた声の方へとアベルは身を屈め、キャビンの下を覗く。
すると、なんと!
「……ぁ、もう真っ暗……。ふぁ……。寝過ぎちゃった……」
アリアが馬車の下から もそもそと出て来たのだった。
「あ、アリア……? 何で……そんなとこに……」
「あ、アベル、おはよう! って……もう真っ暗だね……。アベルが馬車で眠ってたから起こしちゃ可哀想だなって思って……。雨酷かったでしょ? 濡れちゃうから馬車の下で待ってたの。そしたら眠くなって来ちゃって……寝ちゃってたみたい。……お家に戻ろ?」
目蓋をぱちくりさせるアベルにアリアが朗らかな笑みで告げて、家へと戻ろうとアベルに背を向け歩き出す。
「っ……アリアっ!!」
アベルは堪らずアリアを背後から抱きしめていた。
「わっ……!? ア、アベル……?」
――ど、どうしたのっ!?
背後からハグされ、アリアは目を見開く。
「アリアっ、アリアっ……、アリアっ……! 無事でよかった……! また攫われたのかと思ったよ……!」
アベルはアリアをきつく抱きしめ、彼女の首筋に顔を埋めた。
アベルの腕や手が小刻みに震えている。
「ンッ……擽ったい……。やだなぁ……、無事に決まってるでしょ……? 誰の傍に居ると思ってるの……?(アベル震えてる……?)」
「え……?」
アリアは身を捩りながら片手を伸ばし、自分の首元に顔を埋めるアベルの頭を撫でてやった。
「アベルの傍に居るんだもの……、私はいつだって無事でしょ?」
「ぁ……っ、……そうだよ……。僕が傍に居るんだ、無事に決まってるよね……!」
いい子いい子と頭を撫でられたアベルは顔を上げてアリアを覗く。彼女も目線を合わせるように顔を上げた。
「でしょぉ? ……ふふっ、震えちゃって……。アベルの真下に居たのに心配したの?」
優しく穏やかな声で、アリアは微笑む。
するとアベルは一瞬黙り込んだ。
そして。
「した」
「ん?」
「君が居なくなったんじゃないかって、心配したよアリアっ!」
アベルは再びアリアを力強く抱きしめ、彼女を自分の腕の中へと隠してしまう。
「っ……苦しい……っ!」
――ちょ、アベル、チカラ強過ぎだよ……! ギブ、ギブ……ッ!
あまりの腕の力強さにアリアは骨が折れてしまうのではないかと、ちょっと不安になってしまった。
アベルの腕をぺちぺちと叩くが、ビクともしない。
ぐるじぃ……!
アリアは何とか抜け出そうと もぞもぞ動く。
するとアベルがアリアの耳元で囁いた。
「…………アリア……僕は君が好きだ」
アベルここに来て漸く告白。
次回、雨降って地固まる。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!