雨降って地固まる……。
では、本編どぞー。
“…………アリア……僕は君が好きだ”
アベルの低音がアリアの耳奥へと沁み込んでいく。
「アベル……待っ……」
「離れないで、傍に居て欲しい……。ずっと……」
アベルはアリアの制止も聞かずに耳元で囁き続けていた。
いつもアリアに遮られるので遮られる前に言い切りたい。
「カボチ村で……僕の代わりに怒ってくれてありがとう……、慣れてるとはいえ……嬉しかった。いっぱい褒めてくれて……ありがとう……、元気が出たよ。僕はアリアの声が好きだ。優しくて……いつも聞いていて心地好い……、見た目も可愛くて好きだし、性格も面白くて好き。君が……好き……。本当に、好き……。好きだ……」
今まで我慢していた想いが溢れて止まらないのか、アベルはアリアに「好き」を連呼する。
それに対してアリアはというと……、
「ぅぅっ、アベル苦しいよ……! 放して……死んじゃうよぉっ!」
「っ!? あっ、ご、ごめん……(えっ!? 死んじゃうのっ!?)」
強く抱きしめられ苦しいのか解放しろとアベルの腕を叩き大きな声を上げていた。
アベルはハッとしてアリアを解放する。
――しまった……! またやってしまった……!!
「っ…………、アベル……。どうして言っちゃうの……? 言っちゃダメだって言ったのに……」
解放されたアリアはアベルに背を向け、俯いていた。
「っ、好きなんだ! もう、黙ってると苦しくて、どうしようもなくて……! 一緒に旅をしないなんて言わないでくれないか!?」
こうなったら畳み掛けるしかない。
一生懸命伝えれば、きっと伝わる。
アリアの気持ちは はっきりしないが、自分を悪くは想っていないはず。
アベルはそんな想いでアリアに必死に語り掛けていた。
するとアリアの身体はくるりと反転し、アベルに向き合う形で黙り込んだと思ったら……
「……………………、……………………、……………………、……………………、……………………言えるわけないよ」
「え」
アリアはアベルの頬を両手で捉えると自らに引き寄せ、唇を重ね合わせる。
ただ口先が触れ合うだけの僅かな口付けを交わし、アリアはアベルから離れた。
「ん……。…………私だって……、ずっと好きだったんだよ……。でも我慢して言わなかったのに……アベルのバカ。約束したのに言っちゃうなんて信じられない……」
「っ……アリア……」
――甘……雨? え、今の、アリアの唇が触れ……? ずっと好き……? ふぇ……?
アベルは柔らかく触れた唇の感触にぼーっとアリアを見下ろしていた。
雨の雫が口の中に入って甘く感じた気がしたが、考えが上手く纏まらない。
「我慢してたのはアベルだけじゃないんだよ?」
アリアは人差し指でアベルの唇に触れて「めっ」と上目遣いに見上げて来る。
「アリア……、僕のこと……好き……なの……?」
「………………うん、すき……、だいすきっ!」
アベルがおずおずと窺うとアリアは首を縦に下ろし破顔して、アベルに抱きついた。
それをアベルは受け止め、喜びの余り彼女の腰に手を回して抱き上げる。
「ぅ、わっ!?」
咄嗟にアリアはアベルの首に腕を回し、ぶら下がるように掴まった。
宙ぶらりんの不安定な格好でアリアの足がぶらぶらと揺れている。と、アベルの腕が彼女の腰から移動し、お尻部分に添えられ持ち上げられた。
軽々と持ち上げられ、アリアは腕と脚をアベルに巻き付けるように掴まらざるを得なくなってしまった。
何故かというと。
「っ……! 僕もっ! 僕も大好きっ!! アリアが大好きだっ!!」
――あぁ! やっぱりさっきのは空耳じゃなかったんだ……!
アリアを抱きしめるとアベルの胸が温かくなる。
愛おしい気持ちが溢れて止まらなくなってしまい、アベルはアリアを抱えたまま身体をぐるぐると回転させていたのだ。
「っ、アベルっ、怖いっ。目線が高くて……っ!」
アリアは高くなった目線と、ぐるぐると自分を抱え回転するアベルに恐怖を覚え、必死にしがみつく。
「ああ、アリアっ! 大好きだ!」
――この匂い、温もり、感触、最高だ……! こんな日が来るなんて……!!
アベルは気を良くしたのか、調子に乗ってぐるぐる回った。
ただ回転しているだけなのだが、喜びの舞とでもいうのだろうか……された側は堪ったものではない。
「っ……わ、わかったよ……。そんな何度も言わなくていいよ……恥ずかしい……(目が回る~!)」
「大好きだ!」
アリアが目を回す中、アベルは更に回転した。
雨が降っているため、水飛沫が放射状に飛び散っている。アリアは必死にアベルにしがみ付いていた。
「わ、わかったってばっ(怖いよ~っ!)」
「好きだよ、アリア!(アリアも僕が好き! 最高っ!!)」
アベルはアリアを見上げ満面の笑みを浮かべて、足元を見ていない。
回転が止まることはなかった。
「わかったよぉっ! って、わっ! アベル危ないっ」
「え? わわっ!?」
不意にアベルが小石に躓き、身体がバランスを崩し倒れて行く。
アベルは咄嗟に自分が下敷きになるように身体を捻った。
ドサッ……!
アベルを下にして二人は草むらの上に倒れる。
「っ……、いったぁ……。……アベル大丈夫?」
アリアがアベルの胸に手を付き身体を起こし訊ねるが、アベルは今度はぼーっとした様子で黙り込みアリアを見上げていた。
「アベル……? どうしたの……? ……頭打っちゃった?」
心配そうにアリアが訊ねてみても、アベルは彼女を見つめたまま微動だにしない。
「アベル? 大丈夫……?」
「……よね……?」
彼の顔の前でアリアが手をふりふりしていると、アベルの唇が動いた。
「…………ん?(ヨネ……米?)」
アリアは首を傾げる。
「夢じゃないよね……? アリア」
「夢じゃないよ……?」
アベルが身体をゆっくり起こし、アリアと向かい合うと彼女は優し気に目を細めた。
――アベルにここまではっきり言われたら、抗えないよ……?
約一年後に別れが待っているが、受け入れるしかない。
アリアはこれ以上自分の気持ちを隠すことは無理だと諦め、アベルを受け入れることにしたのだった。
「……アリア、僕の恋人になってくれる……?」
「ぁ…………っ、ぇと……」
アベルに訊かれて、アリアは口篭もる。
「っ!? ダメなのっ!? 僕のこと好きなんでしょ!?」
――やっぱり夢だった……!? いや、でもアリア今僕の上に乗ってるよね!?
アベルはアリアの存在を確認するため、思わず彼女の両肩を掴んだ。
するとアリアの唇が開く。
「……アベルの肩書って……あったじゃない?」
「肩書……? あー……ポートセルミで見た……?」
急なアリアの質問に何のことだろうかとアベルは思ったが【ステータスウィンドウ】で見た肩書のことかと思い当たり答えた。
「うん、“逃げたドレイ”って……酷いやつ」
「あぁ、それなら今は……」
――そういえば、ポートセルミに泊った朝 確認したら“さすらいの旅人”に変わってたんだよね……。
それがどうしたんだろう?
アベルは首を傾げていた。
と、アリアの背後に【ステータスウィンドウ】が現れ、自分の肩書が【モンスターつかい】に変わっているのが見える。
――あ、変わってる……! 面白いな……!
アベルは【ステータスウィンドウ】に消えるよう願い、【ステータスウィンドウ】を消した。
「アベルの肩書変えちゃおっか……?」
「え?」
「逃げたドレイはあまりに酷過ぎる。私の恋人って肩書に変えちゃう? そしたら、未来変わるかも……なんて……、ダメかな……?」
「あ……、っ……アリア……それって……!!」
――僕の恋人になってくれるってことだよね……!!
アリアの提案にアベルの顔がみるみる明るくなっていく。
「……ふふっ。未来、変わるかな?」
「変わるっ! 絶対変えてみせる……!! 僕は君とずっと一緒に居たい……!!」
――未来を変える……! アリアが本気で協力してくれるなら叶うかもしれない……! 繰り返される運命に抗ってみせる……!
アベルは優し気に微笑むアリアを再び抱きしめた。
自分の腕の中にすっぽりと収まってしまう柔らかくて温かい感触に心が満たされていく。
「っ、アベル……痛いっ……ね、お願い、もうちょっと優しくして……?」
「あっ、ご、ごめん……えと……、これくらい?」
アリアに云われてアベルは腕の力を緩めた。
彼女からは「うん……」と小さな声が聞こえアベルの背に手が回される。
しばらく抱きしめ合った後で二人は離れると見つめ合う。
「ぁ…………」
「ぁ…………」
すると互いに言葉を失ってしまった。
「……ふふっ、改まって目が合うと、何か照れちゃうね……」
「……ははっ……、うん……照れる……」
「アベル……❤」
「アリア……❤」
二人は見つめ合い 降りしきる雨の中、静かに口付けを交わしたのだった……。
やっと想いが通じ合えて一段落。
二人、びしょ濡れですよ。
雨の中のチューもいいよね!
まあ、びしょ濡れなもんで、当然……は、次回!
まだまだ物語はラブラブ・イチャイチャ・ダラダラ(何の三段活用だ)と続きます。
きっと最後まで……!
燃えよ妄想。動かせ手指。たまには運動もしなくちゃね!
ってことで、毎日睡眠・運動不足な私ではありますが、健康に気を付けて楽しく創作していきたいと思います。
----------------------------------------------------------------------
読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!