ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

時には甘えるも良し。

では、本編どぞー。



第三百三十二話 アベル、甘える

 

 ピエールに訊ねられたオルソーは眉を顰めしばし黙り込んでから話し出した。

 

 

「……なぜかなんて、そんなのわかんねえよ。どんなに好き合っていても、別れはいつか必ずやって来る。それが早いか遅いかは人それぞれだがな。俺は自分に嘘を吐きたくなかっただけだ。アイツは“自分は早く死ぬから諦めろ”と言っていたが、俺は諦めなかった。そしたら、結婚して子まで授かったってわけよ。結果……アイツは予定していた死期より長く生きたよ」

 

「な、なんという奇跡……! 愛のチカラということでしょうか!?」

 

 

 話を聞いたピエールは興奮気味にオルソーを見上げる。

 

 

「へへっ、愛のチカラか……(くすぐ)ってえな……。しかし……あの時諦めなかったこと、俺は俺自身を誇りに思う。俺が忘れない限り、アイツは俺の中で生き続けるし、俺が死ねば天国のアイツに逢えるはずだからな」

 

「諦めないこと……ですか……」

 

「アベルも彼女が振り向くまで諦めないって言ってたぞ。ありゃ、俺と同じで一途な男だな。いつか、彼女を嫁にするんじゃないか?」

 

「それは……どうか……」

 

 

 オルソーの言葉にピエールは口を濁した。

 

 

「んあ? なんだよ、ピエールはアベルとアリアがくっつくのが嫌なのか? あの二人お似合いじゃないか」

 

「いえっ、そうではないのですが…………」

 

 

 ――主殿の花嫁は もう決まっているのです……。

 

 

 輪廻する世界の出来事は多少の差異はあれど、その大筋は変わらない。

 恐らくアベルの結婚は確定事項なのだ。

 

 ……ここはゲームの中の世界である。

 

 アベルもアリアもあんなに好き合っているというのに、決まっているということは残酷だ……、とピエールはそれ以上何も言えなくなってしまった。

 

 

 その後、倒れたアベルとアリアを家に残し、オルソーの手伝いと称してピエール達は木の伐採や、材木小屋の補修などを手伝い一日を過ごす。

 オルソーは一見魔物のような風貌からか、仲魔達から同類と見做され慕われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、夜――。

 

 

 アリアが復活し、彼女は前日と同じように食事を作って皆に振る舞う。

 と、オルソーは男泣きをして「うめえ、うめえ、こんな美味い食事は十五年振りだ!」と何度もおかわりをしていた。

 

 何で涙なんか……と、後に話を訊くと、息子が出て行った原因がオルソーの料理の不味さにあったらしい。

 

 

 “母ちゃんのもマズかったが、まだ食えるだけマシだった……これ以上マズイもの食って、殺されてたまるか! クソオヤジ! オレはウマ飯の嫁を捜すぞ!!”

 

 

 というのが、息子が家を出て行く際の最後の言葉だったそうな……。

 

 

 余談であるが、アベル達に用意してくれた食事はポートセルミで購入した【ミルクがゆ】と【パン】と【パンプキンスープ】で、オルソーは一切調理していない。

 恐らく、マルシェワゴンのツインテールの女の子が作ったものなのだろう。

 オルソーが客人のために買っておいたものである。

 

 普段から息子に「オヤジは調理するな! 客が訊ねてきたら別の誰かに頼め、死人が出るぞ!」と云われていたからか、自分ではそこまで酷いと思っていなかったが、手料理を振舞うのはやめ購入したものを出したのだった。

 

 アベル達に振舞った既製品(料理)はアベル達の分だけで底を突き、オルソーは食べていない。

 というより、オルソーは味音痴で自分の料理が不味いとは思っておらず、自分の食事は自分で作って食べていた。

 

 アベルとアリアが寝込む中、昼に謎の肉の入った青色の液体スープに魔物であるピエール達がドン引きする中、オルソーは「ちとマズイかな……? いやでも中々……」と自画自賛し、食している。

 

 アリアの作った料理はといえば、彼女は料理人ではないため特別美味いわけではないが、普通に美味い。味音痴のオルソーでも美味いと感じる味付けだったようだ。

 

 “十五年振りだ!”と言っていたオルソーだったが、十五年前食べた美味い食事とは今は亡き妻の料理のわけだ。

 ……なのだが、実はその料理は然程美味いものではなく、美化されているのである(なんてったって、夫婦揃ってメシマズだ!)。

 

 だが、オルソーは妻の料理はいつも美味く感じ、いつも完食していた。

 

 

『愛さえあれば料理の味は全て美味いのだ、ガハハッ!!』

 

 

 オルソーの持論だったが、アリアの料理を食べ、涙したのは真に美味いものと出会えたからかもしれない(実際は普通の味なのだが……)。

 

 

 

 

 そんなこんなで皆が食事する中、アベルは熱が下がらないためベッドで横になっており、アリアに食事を運んでもらう。

 

 

「……アベル、ごはん食べられる……? 一応、持って来たけど……」

 

「あ……、うん……、食べる……」

 

 

 エプロン姿のアリアがアベルの元にやって来ると、アベルは寝ていた身体を起こした。

 

 

「……エプロン姿似合う……、可愛いね……」

 

「や、やだ……、アベルったら……。熱でもあるんじゃないの? って熱あるんだっけ……ウフフッ❤」

 

 

 アベルに褒められ、アリアは照れながらアベルの膝にトレーをのせて笑った。

 

 

「……僕は君に熱を上げてる……」

 

「……プッ! どうしちゃったの? アベル変だよ?」

 

 

 ――アベルの顔が赤い……熱が下がっていないみたいね……。

 

 

 アリアはアベルの様子を眺めながら手にスプーンを持たせる。

 

 

「そうかな……。まだ昨日の事が夢みたいに思えて……、君に伝えなくちゃって……」

 

 

 アベルはぼーっとする頭でアリアを見つめたまま動かなかった。

 

 

「アベル……」

 

「……アリア……、君が好きだよ……」

 

「っ……わかってるよ……、昨日いっぱい聞いたし、伝わってるよ……?」

 

「……うん……良かった。……好い匂い……」

 

 

 アリアがアベルを見つめて頷くと、アベルは安心したのか野菜と肉の入った白いスープを掬う。

 

 今夜のメニューはクリームシチューだ。

 昨日のメニューがなんだったのかアベルは知らない。二人で家に戻るとそのまま倒れてしまい食べ損ねてしまっていた。

 だから今夜は何が何でも食べてやるんだとアベルはスプーンを口元に持っていく。

 

 

「召し上がれ」

 

「……はぁ……」

 

 

 アリアに見守られ、アベルはスプーンを口に持って来ようとしたが脱力した。

 スプーンは再びシチューの皿の中へ。

 

 

「……あれ? どうしたの? やっぱり食欲無い……?」

 

「ううん……、そうじゃないんだけど……何か手に上手く力が入らなくって……」

 

 

 ――アリアの料理、食べたいのに……!

 

 

 熱のせいか手に力が入らないらしく、アベルは俯いてしまった。

 

 

「食べさせようか?」

 

「えっ」

 

「アベル辛そうだし……、熱いからフゥフゥしてあげるね」

 

「ぁ…………っ……うんっ!」

 

 

 そうしてアベルはアリアに食事を食べさせてもらう。

 何だか子どもに戻った気分だったが、悪くない。

 

 

 ――病気になった時は甘えてもいいのかな……?

 

 

 そう思ったアベルだった。

 




アベルをめいっぱい甘やかしてやりたい母心……。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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