ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

ポートセルミに戻って来たヨ。

では、本編どぞー。



第三百三十五話 ここは港町ポートセルミよ

 

 

 

 

 

「ここは港町ポートセルミよ」

 

 

 ポートセルミに着くと町の入口で女性が話し掛けて来る。

 そこそこに美人なその女性は、町にやってきた旅人達に優しくここがポートセルミであると教えてくれていた。

 

 

「到着ねン。まだ昼間だけどン……今夜はここで一泊するのン?」

 

 

 キャシーが町を見渡し、腕組みをする。

 

 

「……そうだね……。次に行く場所も決めていないし……情報収集をしないとね……。僕、道具を買い足して町の人に話を聞いて来るから、ピエールは馬車を頼むね……。あ、アリアはキャシーと一緒に居てね……」

 

「はい、承知しました。お気を付けて」

 

「あ、うん……」

 

 

 アベルは馬車をピエールに任せ、アリアに指示してフラフラと一人で歩いて行ってしまう。

 その背中は落ち込んだ様子で哀愁を漂わせていた。

 

 

「アリア嬢……主殿はどうかされたのですか……?」

 

「え? あ……、えと……」

 

 

 ピエールに訊ねられ、アリアは気まずそうにサイドに掛かった髪を耳に掛ける。

 さっきまでアベルとアリアは仲睦まじい様子だったはずなのだが、いったいどうしたというのか……。

 

 

「アリアってバ、アタシ達に遠慮せずイチャイチャすればいいのニ」

 

「そうですよ、私達は魔物。主殿達が幸せならそれで良いのですよ?」

 

「っ……そ、そういうわけには……」

 

 

 ――だって、恥ずかしいでしょ……!?

 

 

 アリアはつい先程の出来事を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……それはポートセルミに着く直前の出来事であるが、魔物の群れと戦い、攻撃を受けたアベルが吹き飛ばされ、たまたまアリアを押し倒す形で倒れてしまったのだ。

 そのタイミングでピエールが敵に止めを刺し、戦闘自体は終える。

 

 突然の出来事に地面に横たわったアリアは瞳を大きく見開いたままアベルを見上げていた。

 だからなのかもしれないが、仲魔達の目の前でアベルはあろうことか そのままアリアに口付けをしようと顔を近付けた。

 

 

『ッ、イヤァーーーーッ!!』

 

 

 ところがアリアは仲魔達の手前、恥ずかしさに全力でアベルを拒否。

 

 

『えっ……い、嫌……!?(嫌って……どうして……。だって、一昨日キスして……)』

 

 

 アベルはショックを受け固まってしまった。

 彼はアリアに嫌われたと思い、酷く落ち込んでしまう。

 

 アリアは直ぐに「ご、ごめっ……違うのっ……!」と謝るが、アベルはアリアから離れ項垂れ…………現在に至るわけである。

 

 

 アベルはアリアとの距離を縮めたい一心なのだが、どうも上手くいっていない様子。

 アリアはアリアで少しずつ距離を縮めたいため、しょうがないのだが……。

 

 

「人間って面倒臭いのねン……」

 

「……面倒臭いって……ヒドイ……」

 

 

 キャシーがアリアを横目に“はぁ”と溜息を一つ。

 アリアは苦笑いを浮かべていた。

 

 

「スキならさっさと(つがい)になって、子作りすればいいのニ。人間って長く生きられないんデショ? 限られた時しか無いんだもノ、ウダウダしてると時間が勿体ないワヨ?」

 

 

 ――アタシ達魔物はその点シンプルよン! 気に入ったらすぐ食べちゃうものン!

 

 

 キャシーが魔物の恋愛事情を語る。

 

 【エンプーサ】は気に入った男が居ればそこに誰が居ようとも、すぐにアタックし、色香で落とすんだそうだ。

 人間のように心を通わせるというよりは、肉体の交わりの方が重要らしい。本能に忠実なのである。

 まあ、相手が人間の場合、事後で食べてしまうわけだが……。

 

 

(そんなことを言われてもそう簡単じゃないんだよ……。)

 

 

 アリアはキャシーの恋愛観は当てにならないと気まずそうに頬を掻いた。

 

 

「っ……限られた時……確かにそうだけど……っ、でも私そんな勇気ない……手を繋ぐので精一杯。みんなの前でなんてとてもとても……私はヒロインでもないし、勇者でもないんだよ?」

 

 

 ――私はただ、アベルが好きなだけ。

 

 

 お別れの時が来る、ぎりぎりまで仲良く出来ればそれでいい……。

 

 

 何の因果か、特殊な環境下で今想いが通じ合ったとはいえ、別れは約一年後に確定済みである。

 複雑な乙女心にアリアは目を伏せていた。

 

 

「アリア嬢……」

 

「……でも、アベル落ち込んでたみたいだから私、追い掛けて来るね……!」

 

「……そうネ。そうしなさいナ」

 

 

 ピエールが心配する中、アリアが顔を上げ破顔する。

 

 

「うん!」

 

 

 アリアはピエールとキャシーに手を振って、アベルを追い掛けることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 タッタッタッタッ……。

 アリアの地面を蹴る靴音が教会側で聞こえる。

 

 

「はぁっ、はぁっ……。アベルどっちに行ったんだろう……」

 

 

 ――確か教会の方へ行った気がするのだけど……。

 

 

 アベルの向かった方へとアリアは走り、彼を捜していた。

 

 

 教会に行ったのかな……? それとも道具屋へ?

 

 

 どちらかだと思うが、アベルは情報収集して来ると言っていたから、もしかしたら町をうろついているのかもしれない。

 アリアはすぐ傍の教会を覗き、アベルが居ないことを確認すると道具屋へと向かった。

 

 すると、アベルが道具屋で買物をしているのを見つける。

 

 

「あっ、アベr」

 

 

 アリアが声を掛けようとしたタイミングでアベルは店員から【ふくびき券】を受け取り、店から歩き出していた。

 アリアは慌てて彼を追い掛け声を掛ける。

 

 

「アベルっ!」

 

「ぁ、アリア……。ど、どうしたの? キャシーと一緒じゃ……」

 

 

 呼び止められたアベルが振り返ると、彼は一瞬嬉しそうな顔をしたが、すぐに淋しそうな笑みを見せる。

 

 

「あ、えと……。アベルが落ち込んでたみたいだったから……」

 

 

 ――そんな淋しそうな顔しないで……、誤解だよ……。

 

 

 びっくりして叫んでしまったことが まさかこんなにアベルを傷付けるとは思いもよらず、アリアはなるべく刺激しないように優しく話すよう努めた。

 

 

「それで追い掛けて来てくれたんだ……?」

 

 

 ――アリア、君、本当に僕のこと好きなの……?

 

 

 大声で叫ばれ拒否されたアベルは、まだショックを受けたままだったがアリアが自分を心配してくれたのかと思い訊ねる。

 

 

「うん……、心配で……」

 

「……っ、ぁ、あ~…………うん、もう、大丈夫だよ。アリアが……追い掛けて来てくれたから……」

 

 

 アリアは首を縦に下ろすと、アベルを不安そうな顔で見上げていた。

 彼女のその顔にアベルは“あ、やっぱり、アリア僕のこと好きじゃん!”と折れかけていた心が復活する。

 

 

 ――好きな女性(ひと)に気に掛けられるだけでこんなに嬉しいなんて……。

 

 

 アベルは照れ臭そうにアリアを見下ろし目を細めたのだった。

 

 

「あの……、みんなの前は恥ずかしくって……。さっきは思い切り拒否しちゃってごめんなさい……」

 

「っ、ぁ……そうだったんだね……!」

 

 

 ――そういえば、そんなこと言ってたっけ!

 

 

 アリアがアベルの手をそっと両手で包むとアベルはハッとした。

 拒否されショックが大き過ぎたために、アリアのフォローを聞き取れていなかったのだ。

 

 

「……二人きりの時なら別に嫌じゃないよ……? でも、その……アベル、性急過ぎて……慣れないっていうか……。て、照れちゃって……」

 

「ぇ……あ。……っ、そ、そうだったの……?」

 

 

 アリアはアベルの手をキュッと握り、俯いてしまう。

 髪の間から覗く耳が赤くなっていた。

 

 恥ずかしがっている彼女の様子にアベルは胸をキュンと ときめかせる。

 

 

「ん……。出来れば……少しずつだと嬉しいな……。少しずつアベルを教えて……?」

 

 

 アリアは照れているのだろう、アベルの手をマッサージするように揉み揉み。

 

 

「アリア……」

 

 

 ――あれ……? アリアってこんなに恥ずかしがり屋だったっけ……!? なに……、なんでこんなに……、

 

 

 いじらしいんだ……!? これまでこんなこと無かったよね!?

 

 

 ……アベルはこれまでのアリアを思い出す。

 

 記憶喪失中は確かにこんな感じだったが、今は記憶が戻っているわけで、記憶の戻ったアリアはお姉さん風を吹かせるがちょっと抜けてる元気な女の子だ。

 自分の前でこんなに もじもじするような女性(ひと)では無かったはず。

 

 なのに、この間自分が気持ちを打ち明けてからというもの、記憶喪失中の性格に戻ったような……。

 

 

 と、思っていたら。

 

 

「……アベル。許してくれる?」

 

 

 アリアは急に顔を上げて可愛く首を傾げた。

 

 

「っ……許すも何も……、……………………、………………ぁ」

 

「ん……?」

 

「じゃあ…………キス……してもいい……?」

 

「っ、ここじゃイヤ……」

 

 

 アベルの提案にアリアは首を横に振る。

 ここは道具屋のすぐ傍。町行く人々達が見つめ合う二人とすれ違って行った。

 




みんなの前でイチャつくのは恥ずかしいアリア。
アベルは早くもっと彼女と距離を詰めたいと思っています。

とりあえずイチャつきがデフォです……。スイマセンw

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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