何の見る目なんでショ。
では、本編どぞー。
「あっ、えっとじゃあ……。む、向こうで……」
アリアの手を引いてアベルは民家の裏へと彼女を連れて行く。
人気のない民家裏の大きな樹の下にやって来ると、アベルはアリアを樹に追い詰め、見下ろしていた。
「…………キスだけだよ?」
「っ!? キスだけですけどっ!? 他に何を……!?」
「…………っ、そ、そっか。じゃ…………」
“ん。”
と、アリアはアベルを見上げてから目を閉じる。
ほんのり赤く色付いた陶器の肌に、長い睫毛と愛らしい鼻。
そして、
ぷっくりした柔らかい桃色の唇。
アリアの唇は少しだけ開いて、リップクリームなのか潤って輝いていた。
「ぁ……っ……」
アベルは大人しく自分を待つアリアを見下ろし、頬が熱くなるのを感じる。
――っ、可愛い……! 僕のアリア……!
キスしてもいいんだよね?
……いいよね!?
“二人きりの時なら別に嫌じゃないよ”
先程アリアが云っていた言葉が蘇った。
アベルの心臓がドッドッドッと逸る。
一昨日 雨の中でしたキスはアリアからされたのと、互いにしたのとで二度。今回で三度目になる。
二度目までは ただ触れ合うだけの軽いキスだった。
三度目……と言わず機会があれば何度でもしたい。
アベルはそう思って戦闘終了後、焦って口付けしようとしたわけだが拒否された。
そういえば自分からするのは初めてではないか。
――三度目の正直で自分から……。
アベルは瞳を閉じ、そっとアリアに顔を近付けていった。
……ガチッ。
歯がかち合う音がする。
「っふ……!(痛っ!?)」
「っ……!(痛っ)」
二人とも痛みに驚き目蓋を開いた。
「……歯、当たっちゃった……」
「っ、ごめ……!」
アリアが照れながら はにかむとアベルは慌てて謝る。
――唇が少し開いてたから、前より深く口付けようと思ったんだけど……、アリアが口を開いてくれないから歯が当たってしまった……。
アベルはまだ早かったかなと、嫌われると嫌なので徐々に進めて行くことに決めた。
ところが この後のアリアの一言にアベルは困惑する。
「ん……、平気。ふふっ、初めてのお付き合いだとよくあることだよね」
「え……?」
――初めてのお付き合いだとよくあること……?
確かに自分は女性と付き合うのは初めてなのだが、アリアの物言いに何か違和感を感じた。
“アリアは、もしかして自分の前に誰か……いた?”
そんな考えが過る。
「ん……?」
「っ、アリア……僕の前に……誰かと付き合ってたの……?」
アリアが不思議そうに首を傾げるとアベルは訊ねていた。
悶々と疑問を抱えるのは性に合わない、訊いてみるに限る。
「ん? あ、前世……の、話……、だよ? 現世はアベルが初めて」
「ぁ……、ぜ、前世……。前世ね……」
アリアには前世の記憶がある。その時のことだと教えてくれたわけだが、アベルは納得しようと頷いた。
――……前世か……。いや、前世ならしょうがないんだけど……なんか…………苛立つな……。
今の彼女のことではないが、アベルは何だか無性に気になってしまう。
「……ふふっ。私、アベルみたいな優しい人初めて」
アリアはアベルを見上げて目を細めた。
「え?」
「……私って、男の人を見る目が無かったみたいで……って、あっ、何でもないっ。……そんな話されても困っちゃうよね! ごめん、忘れて!」
情報収集に行こっ! とアリアはその場から離れようとする。
アベルはそんな彼女の手首を捉え、引き留めていた。
「っ、訊きたいっ! 教えて! どんな人と付き合ってた!?」
「っ、前世のことだし、面白くない話だと思うんだけど……」
「いいんだ! アリアがどういう男と付き合ってたのか知りたい!」
「アベル……」
アリアのことなら何でも知りたいアベルは彼女に訊ねる。
アリアは躊躇いながらも ぽつぽつと語り始めた。
「……前世の私の彼は……」
アリアの前世で付き合っていた彼氏は粗野で高圧的で我儘、常に俺様でアリアを見下すモラハラ野郎だったらしい。
最悪なことにアリアは金も貢がされていたという。
「……何で、そんな奴と……」
――うん、アリア男を見る目がないな……!
アベルは天空人にそんな外道がいるのかと憤りを覚えた。
前世という概念を何となく理解はしたものの、話を聞いた際に たわわが勝って話半分のままである。
「いや、今こうして話すと自分でもわかんないや……。何でそんな人と付き合ってたんだろうね……」
アベルに話し終えたアリアは自分でもおかしいと思ったのだろう、首を傾げ苦笑いを浮かべる。
するとアベルはアリアを抱きしめた。
「っ、僕はそんな奴じゃないからね! アリアを大事にするから……!」
「っっ! あっ、うん。ありがと……」
――アベルっていい男だよね……、あぁ……こんな人と結婚出来たら幸せなんだろうなぁ……。
アベルに抱きしめられると、心が落ち着く。
アリアはアベルの心臓の音に耳を傾け、彼の背に手を回した。
(……アリアは前世の父親も ろくでもない奴だったって言ってたっけ……。付き合っていた男に父親を見てたのかな……。僕が……、僕が絶対幸せにしてやるんだ……!!)
アベルは自分の腕の中に収まる愛おしい彼女を抱きしめ、心に誓う。
……抱きしめたアリアの温もりが心地好くて、彼女をすぐには手放せなかった。
しばらくして――。
「……アベル……」
もぞもぞと、アリアが動いてアベルを見上げる。
「……ん……?」
「…………ぁの……」
アリアの頬が赤く染まっていた。
「う、ん……?(あれ? アリアの頬が赤い……抱きしめられて赤くなってるのか……可愛いなぁ……)」
「っ……ぇっと……、そ、そろそろ行かない? 日が暮れる前に宿も取らないと……」
――アベルっ、何かが当たってるよ……!
抱きしめ合っていたためか、アベルのアベルが反応し硬くなっていたらしい。
アリアのお腹にそれが当たっていたのだった。
「……名残惜しいけど……そうだね」
――アリアと抱き合ってると下半身が……ヤバイ。気付かれなかったよね……?
ばっちり気付かれていたわけだが、アリアが何も言わないので、気付かれていないと思ったアベルは平静を装い、彼女の手を引き歩き出す。
町を歩き、宿屋に向かいながら情報収集することにした。
「何かあれだね」
「ん?」
「この間来た時と変わりない感じだなって……」
行き交う人々に声を掛けてみたが、人々は前回来た時と同じようなことしか教えてくれない。
同じことしか言わない住人達に違和感を覚えたアベルは呟いていた。
――おかしいなぁ……前にも同じ話を聞いたような気がする……。
首を捻るアベルにアリアは目を細める。
「あ~……、ふふっ。ゲームだからね。そんな頻繁に変わらないんじゃないかな? もっとずっと未来に訊ねたら変わってるかもね?」
「なるほど……」
アリアの言葉にアベルは深く頷いていた。
総て落とし込めてはいないが、ここが“ゲームの中”という話をアベルは理解している……ようだ。
「ね、アベル。今夜は町で一泊するとして……次はどこに行くの?」
「うーん……。記憶が降りて来ていないからわからないな。情報収集してから次の行き先を決めようと思ってる。それでいいかな?」
――その情報がまだ何もないんだけどね……。
次の目的地に関しての情報がまるで得られないので、アベルは今夜酒場にでも行こうかと考えていた。
「うん、私はアベルに従うわ」
アベルに全幅の信頼を置いているかのように頷くアリアの笑顔が眩しい。
「っ……アリア……」
「……ん?」
「……好き……」
アベルは道の真ん中、人目も
「っ……ん、うん……わかってる。わ、私も好き……よ?」
アリアは一瞬目を丸くしたが、恥ずかしそうに返す。
少しばかり瞳が潤んでいた。
「っっ!? その顔反則……!!」
不意に堪らずアベルはアリアの肩を掴み、彼女の顔に唇を寄せる。
アリアは即座に両手を突き出した。
「っ!?」
「っ、あっ、アベルっ!? ここじゃダメっ!!」
「…………、……むぅ……」
アベルの顔が歪んで強制的に横を向かされる。
頬を膨らましたアベルだった……。
前世のアリアは男運が悪かったようですw
アリアの周りの男が兄貴以外クズっていうね……w
でもアベル、ちょっとずつ進めるんじゃなかったんかい!w
……と、理性でそう思っても身体は思う通りには行かないわけですよ。
アベル若いな……。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!