ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

NPCとは何ぞ。

では、本編どぞ。



第三百三十八話 NPCとは何ぞや

 

 アベルが階段を下りて行くと、アリアは階段を見上げアベルが来るのを待っていた。

 

 

「アベル」

 

「……アリア……」

 

 

 ――アリア、僕がエッチでも嫌じゃないんだ……?

 

 

 アリアの表情は穏やかで、特に怒っている様子はない。

 アベルは可愛い彼女を見つめながら階段を下りて行く、……と。

 

 

「ぅわっ!?」

 

 

 ガタガタッ!

 

 

 残り二段、という所で足を踏み外してしまった。

 アベルは一階の床にお尻を打ち付ける。

 

 

「あっ、アベル!? 大丈夫!?」

 

「っっ……! へ、平気…………、っ……!?」

 

 

 アリアが心配して傍に寄って来るなりアベルは彼女を見上げた。

 丁度目線がアリアの太腿と例の紐パンを捉え、アベルの顔が真っ赤に染まる。

 

 

 ――あっ、ラッキー……! これっ、これだよ!!

 

 

 目の前の美味しそうな(もも)肉につい触れたくなる衝動に駆られるが、アリアが手を差し出すのでアベルは彼女の手を取り、立ち上がった。

 

 

「怪我してない?」

 

「……てて……大丈夫。ハハッ、ついアリアに見惚れてて足を踏み外しちゃったよ……」

 

「っ、もぉ……、すぐそういうことばっかり言う……」

 

 

 彼の言葉にアリアはアベルを引っ張り起こしながら頬を赤くする。

 立ち上がったアベルは今度は真剣な顔で彼女を見下ろした。

 

 

「いや、真面目な話だよ?」

 

「ん?」

 

「君と居ると気になっちゃって集中力が途切れる時があるんだよ。戦闘中は気を付けないとね……」

 

「っ、そうなんだ……それは大変ね……。私が体力が少ないから迷惑掛けてるのね……。私、迷惑掛けないように気を付けるね」

 

「あ、そういうわけじゃなくって……」

 

 

 ――つい、いつも君を目で追ってしまうだけなんだ。

 

 

 いつでもアリアを見ていたい。

 

 そう思ったアベルだったが、これ以上言えばアリアが恥ずかしがるだろうと黙り込んだ。

 

 

「……アベル?」

 

 

 アリアが柔和な顔で首を傾げる。

 

 

「っ(可愛いな……)、あ、うん。そこにいる人に話を聞いてみようか」

 

「うん」

 

 

 アベルはアリアを連れて、情報収集に乗り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 先ず手始めに、一番近い位置に居る 子ども連れで食事を摂る戦士にアベルが話し掛ける。

 

 

「こんばんは。あなたも旅を?」

 

「ああ、訳あって子どもと旅をしている。ハハ、寝てしまったか、そろそろ部屋で寝かせてやらないとな」

 

 

 アベルが話し掛けると、旅の戦士は向かいの席で食事中に寝てしまった息子に微笑み掛けていた。

 

 

「ふふ、子どもはもう寝る時間ですもんね」

 

 

 アリアは船を漕ぐ子どもに目を細める。

 

 

「子どもか……そういえば……」

 

「そういえば……?」

 

 

 アベルは何が聞けるのだろうかと旅の戦士に耳を傾けた。

 

 

「ラインハットではずっと行方不明だった王子が最近帰って来たそうだ。いったい10年以上もどこで何をしてたのか不思議な事件だな」

 

「ぁぁ……。そうですね……」

 

 

 ――知ってる話だったか……。

 

 

 アベルは知っている話に頭を下げ、別の人と話そうとアリアを連れ戦士の男と別れた。

 

 

「ヘンリー君の噂がこんなところまで……。やっぱり一国の王子様だと離れた土地でも情報が聞けるのね」

 

「……ヘンリーはあれだよ」

 

「ん?」

 

「さっきの話。不思議な事件だなって言ってたけど、ハハハッ! 不思議でも何でもないよ。魔族に攫われて、山の頂上で僕と一緒にドレイをやってたんだよね~っ! まあ、大きな声じゃ言えないけどねっ!」

 

 

 明るく笑い飛ばしながらアベルは告げる。

 毎度毎度のことながら、あの十年間は辛いことの連続だった。

 

 せめて笑い飛ばして忘れようと、冗談めかしていた。

 

 

「アベル……」

 

「……ていうか、今もドレイなんだけどね……」

 

 

 アリアに哀れみの瞳を向けられたが、アベルは頬を紅くして目を逸らす。

 

 

 ――恋のドレイ……、うん、何か恥ずかしいからアリアに知られたくないな……。

 

 

 肩書が他のものに変わるまで【ステータスウィンドウ】はアリアに見せられないなと思ったアベルであった。

 

 

「え?」

 

「…………っ、あっ、今度はそこのマスクしてる人に話を訊いてみよう!」

 

 

 アベルは照れながらアリアをちらり。

 舞台脇のテーブルについて踊り娘のステージを食い入るように眺めるマスク男に声を掛けに行った。

 

 

「アベル?(ほっぺ赤くしてどしたんだろ……?)」

 

 

 アリアは首を傾げアベルについて行く。

 

 

「あの、すいません」

 

「ヒューヒュー、ここのステージは いつ見てもサイコーだぜっ」

 

 

 ヒューヒュー!

 

 

 マスク男は拳を振り上げ踊り娘に釘付けだ。

 ステージに夢中でアベルの声に気付くことはなかった……。

 

 

「……無視された」

 

 

 アベルは目を閉じ、口をへの字にする。

 

 

「あはは……。落ち込まないで?」

 

「大丈夫、君がいるから落ち込まないよ?」

 

「っ! んもぅ!(どうしてすぐそういうこと言うのっ?)」

 

 

 優しく慰めてくれるアリアにアベルが笑みを向けると、彼女の頬が赤く染まった。

 

 

 ――嬉しくなること言ってくれちゃって……アベルって、何でこんなに口説き上手なんだろう……。

 

 

 アリアの胸がキュンと疼く。

 アベルから掛けられる言葉はどれもが嬉しくて、“私ってチョロいな……”と思うアリアだった。

 

 

「無視されるの慣れてるから僕は平気だよ」

 

「そうなんだ?」

 

「うん……、時々誰かに僕が話し掛けようとすると、訊いても無いのに勝手に話し始めたりする人がいるでしょ?」

 

「……ぁぁ……、居る……ねぇ……」

 

 

 アベルに問われてアリアはこれまでの道程を探る。

 

 

 ――そういうこともあった気がする……!

 

 

「あれって……“ゲームの中”……、だからなんだよね?」

 

「ん……NPCだからね。そうかも」

 

「エヌ……ピーシー……だから……?」

 

 

 ――なんだ? 新しい言葉(ワード)が出て来たっ!?

 

 

 初めて聞く言葉(ワード)に、アベルはアリアの言葉を反復していた。

 

 

「うん、ゲーム上でプレイヤーが操作しないキャラクターのことをNPCっていうの。NPCは決められた台詞を話す。この世界ではあなた以外の人はみんなNPCよ」

 

「……みんなって……、アリアも?」

 

「……ふふ。どうかな? もしかしてそうだったりしてね?」

 

「…………そんな…………」

 

 

 アリアがにこにこと微笑むと、アベルは目を伏せる。

 

 

 ――アリアがそのエヌピーシーだというなら、僕は……独りぼっちじゃないか……。

 

 

 自分は主人公で、自分だけが意思を持つ存在?

 

 

 アベルは目の前の彼女がNPCにはとても思えなかった。

 

 

「アベル、そんな哀しそうな顔をしないで。この世界は多分違うと思うよ」

 

「……え?」

 

「仲魔達も、町の人々も、みんな意思を持ってる気がするもの。NPCの名残は多少あるのかもしれないけれど、みんな自由だわ。ここはそんな世界なんだよ」

 

 

 アリアはステージを見上げ、踊っている踊り娘や周りで踊りを見る客達、酒場で酒を提供するバーテンダーを遠目に眺める。

 その瞳は優し気だった。

 

 

「アリア……」

 

「それに私は肉体はともかく精神は外から来たわけだし、違うよねっ。NPCはこんなに多く喋ったりしないわ」

 

「……うん、そっか。よかった……」

 

「不思議な世界よね……」

 

 

 ふとアリアは遠くを見ていた目線をアベルに移す。

 

 

「……ん?」

 

「…………ふふっ、ホントフシギ~!」

 

 

 ――ゲームの主人公と恋するなんてねっ。

 

 

 柔和な顔で首を傾げるアベルをアリアは見上げ、目を細めた。

 

 

「…………? アリア何だか機嫌いいね?」

 

 

 アリアの機嫌が良さそうに見え、アベルも微笑み返す。

 

 

「ん? うん。アベルと一緒に居るからねっ」

 

「っ……! ぁ、ぅん……。えへへ……そっか」

 

 

 アリアに笑みを向けられアベルはデレデレしてから、別の人に話し掛けることにしたのだった。

 




恋のドレイのアベルさんw

NPCとはNon Player Characterの事ですね!(え? 知ってるって?)
ゲーム上でプレイヤーが操作しないキャラクターのことではありますが、この世界のNPCは意思を持っている人も居るってゆー……。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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