いつかアベルと踊れたらいいね!
では本編どぞ。
「あ、アベル今日は舞台に上がれないみたい。あのおじさん通せんぼしてるよ。一緒に踊れなくて残念ね」
「っ、上がらないよっ!?」
舞台の正面には、踊りに齧り付く恰幅の良い中年男性が興奮冷めやらぬ状態で踊り娘にエールを送っている。
アリアに云われて、アベルは目を見開いた。
「オラクルベリーで昼間舞台に上がってたよね? それに夜は踊り娘さんと踊ってなかった?」
「っ、アリア見てたの!? っ、違うからね! 別に踊り娘のお姉さんが好きとかそういうんじゃなくて……!」
――誤解なんだ! あれは音楽のリズムが良くてつい踊っただけであって……。
まさか見られていたとは……。
アベルはアリアを不快にさせたかと思い言い訳を口にする。
ところがアリアは特に気にする様子もなく笑った。
「ふふっ、コインを運んでて見えたの。アベルってば踊りが上手だからびっくりしちゃった」
「誤解だからっ! ……て、あれ? 怒ってない……?」
「ん? 何で怒るの……? あら、もしかしてアベル、何か
「ないっ!!」
ちらっと流し目を送られ、アベルははっきりと云い切る。
「ふふっ! アベルってモテるよね! この間、楽屋でここの踊り娘さん達もアベルを見る目がうっとりしてた気がするよ? そんな人が私の恋人だなんて……」
「っっ……僕は君だけにモテてたらそれでいいよ……!」
アリアの話が終わる前にアベルが口を挟んでいた。
「夢みたいね……。え? あっ、うん……。モテてる……よ?」
――もうすっごい好きなんだからねっ。
アリアは口に出さずにアベルを見上げる。
「ぁ、ぇと……うん。そか」
アリアが上目遣いでアベルを窺うと、アベルは頭の後ろを掻いてニヤついてしまいそうになる笑みを堪えていた。
「ふふっ、アベル照れてるね」
「っ、アリアもねっ」
「うん……何だか擽ったい……」
「うん……」
二人は自然と手を繋いで、舞台正面で踊り娘達を見上げる中年男性に話し掛けることにした。
「あのっ!」
「あたしゃ、あのバニーちゃんの大ファンなんです。うーん、クラリスちゃーん! こっち向いてえ!」
中年男性はチラッとだけアベルを一瞥すると、舞台上のクラリスに向けて片手を大きく振り振り。
瞳の奥にハートマークが浮かんでいた。
「クラリスさんは人気者なのね」
「アリアが踊ったらきっと人気者になってたろうなあ。でもそれだとライバルが増えて困るな……」
アベルはアリアを見下ろし優し気に微笑む。
「ふふっ、ありがとう。でも残念。私、踊れないんだ~」
「そうなの?」
「うん、カジノで踊ってみるかって訊かれたけど、向いてなくって。踊り娘さんて凄いよね。あんなに回転したら私なら目を回しちゃう」
アリアは舞台上を眺めながら、踊り娘達の踊りに「わぁ……」と感嘆の溜息を吐いていた。
「打診されていたのか……」
「ふふっ、実は踊ってみたんだけど、回転すると毎回バランス崩して転んじゃうの。あ、でもキャシーちゃんに教えてもらったらいつか踊れるようになるかなぁ?」
「っ、いいよそんなの。踊り娘にならないんでしょ?」
――アリアを踊り娘になんてさせないからね……!
アベルはアリアが踊るのを阻止しようと首を横に振る。
「それもそうだね。ふふっ、でもいつかアベルと踊れたら うれしいな」
「その時は僕がリードするから任せてよね」
アリアが舞台からアベルに目線を移し目を細めた。
……と、アベルもはにかみ繋いだ手を引くと、彼女の腰をぐっと引き寄せ、社交ダンスのようにポーズを取る。
まるで何処かの王子のような振る舞いだ。
「っ……! ……アベルぅ……」
急に腰を引き寄せられたアリアは驚き、瞳を潤ませる。
「ん……?」
――あれっ!? 嫌だった……!?
彼女が泣きそうな顔をするのでアベルは“しまった!”とばかりにアリアを解放した。
だが、アリアは嫌ではなかったようで……、
「アベルって……格好良い……。今の王子様みたいだった……!」
キラキラした瞳で手を組みアベルを見上げているではないか。
「えっ? ぁ、あはは……。そ、そう……?(なんだ……触って良かったのか……)」
――もっと触っていれば良かった……! 手まで放しちゃったよ……!
今更手を繋ごうというのも照れるので、アベルは「次はあの人ね……」とアリアを舞台端の席に座る船乗りの男の元へと連れて行った。
「あの真ん中の女の子がたまらんっすよ。ああいう子をお嫁さんにしたいっすね」
船乗りの男がクラリスを顎で示す。その瞳はうっとりと心酔したよう。
「僕はアリアがたまらないよ……」
「ブッ! アベルっ、もぉっ、どうしちゃったの!?」
――アベルってば、私のこと好き過ぎない!?
急に真顔で云われて、アリアは吹き出してしまった。
「アリアをお嫁さんにしたい」
「っ……も、もぉ……。まだ十六歳でしょ……。早いよ……」
――ていうか、あなたにはビアンカちゃんかフローラさんていうお嫁さんが出来るんだってば……!
アリアはそう口には出せず、早いから無理だとだけ告げ首を横に振るう。
そんなアリアの言葉に対しアベルが目を瞬かせた。
「え? 違うよ? 僕もう十七になったよ。……多分」
「えっ!? そうなの!? いつ!?」
「いつだったかな……。旅の途中……?(ポートセルミに着いた次の日だったような……?)」
彼女に訊ねられ、アベルは歳を取った日を思い出す。
ポートセルミに泊まった次の日、季節的にあの日が何となく誕生日の気がした。
そういえば あの日の朝チェックした【ステータスウィンドウ】の自分の名前の前にケーキにロウソクが刺さったようなマークがついていた気がする。
「っ、言ってくれればお祝いしたのに……」
アリアが眉根を寄せ、残念そうに頬を膨らませた。
「お祝い?」
「うん、お誕生日のお祝い。ご馳走食べて、ケーキを食べて。この世に生まれて来てくれてありがとうってお祝いするの。私はお兄ちゃんにしてもらってたなぁ」
「……僕はしたことないなぁ……。あ、でも昔サンチョがケーキを焼いてくれたような……?」
アベルが訊ねると、アリアが説明してくれた。
だがアリアと出会って以降、そんなことをした記憶はないし、その前にもそういうことがあったかなとアベルは思い起こしてみるが、ケーキを食べたような……薄っすらとしか思い出せない。
――子どもの頃の記憶なんてそういうものなのかもしれないな……。
「サンチョさんが? ……サンタローズに居なかったみたいだけど……、サンチョさん元気かな……。あのパン……また食べたいなぁ……」
「はは。アリアはサンチョのパンが大好きだったよね」
アリアが目を閉じサンチョのパンを思い出したのか、うっとりと口を開ける。
“すっごく美味しそうに食べてたもんね……”とアベルは目を細めていた。
「うん、あの外カリ、中ふんわりしっとりパン最高! 何度も再現しようと頑張ってたけど、まだまだ修業が足らないみたい」
修道院で作っていたパンのことなのだろう。
やはりアリアは記憶の無い中、サンチョのパンを再現しようとしていたのだ。
「あっ」
アリアの話にアベルは修道院で食事をした時のことを思い出す。
彼女の作ったパンに対しアベルは、
『あれはもっと、ふっくらしっとりしてて、こんなにパサついてはいなかったかなぁ……』
と、批評していたのだ。
単にサンチョのパンとは違うと言っただけに過ぎないのだが、今思い返すと随分と失礼な物言いではないか。
――今ならフォローも出来る……?
アベルは過去の発言を払拭するため口を開いた。
「……あの時言えなかったけど、僕はアリアのパンの方が好きだよ。硬めの方が歯ごたえがあるし、ソースやスープに合うし」
「っ……ぁっ、ありがと……。そんな風に思ってもらえてたなんて思わなかった……」
現在のアベルが過去の自分をフォローするように告げると、アリアは“ぽっ”と頬を染める。
「また食べたいな」
「っ、ぇと、わかった……、酵母は持ち歩いてるから……作れそうな時に作ってみるね……?」
アベルの要求にアリアは照れ臭そうに首を縦に下ろした。
「うん、楽しみにしてるね」
「ん、ぅん……がんばる……ね?」
アベルが優しく彼女を見下ろすと、上目遣いで窺って来る。
大きな紫水晶がじっとアベルを捉え、その瞳には彼しか映っていない。
「…………くぅっ!(可愛いなぁっ!!)」
アリアの可愛さにアベルは口がにやけそうになるのを手で覆い隠した。
誕生日に関してなんですけど、特に設定はしておりません。
プレイヤーによって違うと思うので、曖昧です。
あぁ、でも何か一個思いついちゃった……!
これなら誕生日ネタ使えますわ……。
ということで、後日加筆しますたw
アベルと結婚ワルツ、踊れるかな?
アリア足踏みそうwww
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!