ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

同じ景色を父さんも見ていたのかなぁ……。

では、本編どぞ。



第三百四十一話 父と同じ景色を

 

 

 

 

 

「すみません、お水を いただけますか?」

 

「はーい、ちょっと待って下さいね」

 

 

 酒場のカウンタ―テーブルに着くとアリアはバーテンダーに水を頼む。

 アリアの注文を受け、バーテンダーが奥へと向かうと水を用意して持って来た。

 

 

「どうぞ」

 

「ありがとうございます。ほらアベル、お水飲んで」

 

 

 バーテンダーから水を受け取り、アベルの前に差し出す。

 

 

「ん~……僕はこのままでも大丈夫だよ……?」

 

「顔赤いよ?」

 

「ん~……、ちょっと酔ってるだけ……」

 

 

 アリアが心配そうに眉尻を下げているが、対照的にアベルは ほろ酔いのふわふわした良い気分で口角を上げていた。

 

 

 ――えへへ、アリア僕を心配してくれてるんだね……可愛いなぁ……。

 

 

「お水飲んで?」

 

 

 再度アリアは水を飲む様に促してくる。

 酔っていると気が大きくなるのか、アベルは告げていた。

 

 

「飲ませて?」

 

 

 ――えへへ、たまには我儘言ってもいいよね……!

 

 

 アベルはにこにことアリアを見下ろす。

 

 

「っ、もぉっ、甘えん坊なんだから……! ……じゃあ、そこに座って」

 

 

 アリアは顔を徐々に紅潮させると近くの椅子に座るようにと指示した。

 

 どうやら飲ませてくれるようだ。

 言ってみるもんだな……と、アベルは細くなった目を糸目へと変化させる。

 

 

「うん」

 

「何でそこは素直なのよ……」

 

 

 アリアに付き添われ、アベルは素直に近くの席に着く。

 そうしてアリアはアベルに水をゆっくり飲ませた。

 

 

「口移しじゃないんだね……(残念)」

 

「えっち、口移しなんてしないよ……(人前だよ!?)」

 

 

 水を飲まされた唇の端から水が零れ落ち、アベルはそれを手の甲で拭う。

 少し経つと水を飲んだからから酔いが落ち着いた気がした。

 

 

「あ、少し顔色戻ったね?」

 

「うん……、なんか残念……。アリアにもうちょっと甘えていたかった……」

 

「残念って…………ふふっ。甘えてもいいけど……?」

 

「へ……っ、甘えないよ!? 僕は甘やかす方!」

 

 

 完全に酔いは醒めていないが、先程のふわふわした心地が消えてしまい、アベルは首を左右に振っていた。

 

 

 

 

「悪かったですかね。あんたが勇者を捜してるって、喋っべっちゃったんですよ」

 

 

 アベルの酔いが落ち着いた頃、バーテンダーがやって来てアベル達にこっそりと話し掛けて来る。

 

 

「え……?」

 

「あのお客さん、さっきからあんたと話したがってて、話し掛けられるのを今か今かと待ち望んでるんですよ」

 

 

 バーテンダーの声にアベルが顔を上げると、バーテンダーはカウンター席に座る老人をちらり。

 そちらにアベルも目を向けると、老人がにこにこと笑みを浮かべて手招きしていた。

 

 

「……えっと……」

 

「話し掛けてみよ?」

 

「……うん、そうだね。勇者の話が聞けるかもしれないし」

 

「聞けるといいねっ」

 

 

 アリアの明るい笑顔に後押しされて、アベルは席を立つと老人の元へ。

 

 

「あの……、僕のことを彼から聞いたかと思うんですが……」

 

 

 アベルは 片手を顔の前に持って来て気まずそうに拝むような仕草をするバーテンダーを一瞥し、老人に声を掛けた。

 声を掛けるなり、老人の顔が“ぱぁっ”と明るくなる。

 

 

「おお! おぬしじゃな! 伝説の勇者を捜しているというのはっ! 信じられんかも知れんが、わしは勇者さまを見たことがあるぞ」

 

「えっ、本当ですか!?」

 

「その時の話を聞きたいじゃろ? 一杯奢ってくれたら話してもいいぞ」

 

「っ、是非!」

 

 

 アベルは快諾して、10ゴールドで老人に酒を奢った。

 

 

 “うっひょ~ぃ! 酒じゃあ~!”

 

 

 老人が期待に満ちた瞳でバーテンダーから酒を受け取るなり、ぐびぐびとジョッキを傾ける。

 そしてある程度酒を喉に流し込んでから話し始めた。

 

 

「あれは10年以上昔じゃ! 天空の剣を探している逞しい男に会ったことがあるんじゃ。その男は天空の武器防具を すべて集め魔界に入るというとった。身なりはボロボロだったが、国王のような高貴な顔立ち! あの男こそ勇者さまじゃ!」

 

「「それって……」」

 

 

 老人の話にアベルとアリアは互いに顔を見合わせる。

 

 

 ……その人物はもしかして自分達の知っている人ではなかろうか?

 

 

 そう思い、話の続きを待った。

 老人が再びジョッキを傾け酒を飲むと、ハッと何かを思い出したように口にする。

 

 

「おお! 今男の名前も思い出したぞ! パパスじゃ! 確かにパパスという名前じゃったぞ!」

 

「あ……」

 

「やっぱり!」

 

 

 老人が話し終えるとアベルの目は伏せられ、アリアの瞳は明るくなった。

 

 

 “あの男が勇者に違いない!”

 

 

 うんうんと頷き、老人は「どうじゃ役に立ったか? ごちそうさん」とアベルに礼を述べ、残りの酒を煽るとカウンターテーブルに突っ伏して寝始めてしまう。

 

 

「……お爺さん寝ちゃった……」

 

「だね……」

 

「ね、アベル。パパスさんは ここに来たことがあったんだね。アベルも一緒だったんでしょ?」

 

「小さくて憶えてないよ……」

 

 

 明るいアリアの声にアベルは何故か浮かない顔をしていた。

 

 

「あれ……? なんだか浮かない顔ね?」

 

「結局勇者の情報は得られなかったなって……、父さんは勇者じゃないからね……」

 

 

 アベルはパパスのことが聞けたことは良かったと思ったものの、伝説の勇者の手掛かりを得ることが出来ず落胆してしまう。

 アリアはアベルの様子を穏やかな瞳で見つめると、口角を上げた。

 

 

「そっか……。けど、パパスさんがここで同じ景色を見たんだと思うとちょっと嬉しくない?」

 

「え? あ、ああ……まあ……」

 

 

 アリアに云われて、アベルは周りを見渡す。

 

 夜の方が客が多いが、昼間でも旅人達や船乗り達で賑わう酒場。

 踊り娘達のステージも昔やっていたのだろうか。

 

 老人が酒場で父と会っていたのかは定かではないし、十年以上前、自分がここに来たことがあるのかも憶えていないが、父パパスもここで一杯飲んだりしたのだろうか。

 

 同じ景色を父も見ていたかもしれないと思うと、感慨深いものがある。

 

 

 ――そうだね、父さんも同じ景色を見ていたのかもしれないね……。

 

 

 アリアの優しい笑顔にアベルは目元を緩めた。

 そんな時、老人の隣に座って酒を飲んでいた若い女性がワイングラス片手に声を掛けて来る。

 

 

「あなた達、伝説の勇者さまを捜して旅してるんですってね」

 

「あ、はい?」

 

 

 アベルが若い女性に目を向けると、彼女はアベルとアリアを足元から頭の先まで眺めてからニコッと微笑んだ。

 

 

「伝説の勇者さまを捜して あてどもない旅だなんてロマンチックね。私も私の白馬の王子さまを捜して旅に出たいなあ」

 

「白馬の王子さま……?」

 

 

 若い女性が頬杖を突き、グラスを揺らしてうっとりと眺める。

 ……何を思っているのだろうか。

 

 元アラサー社畜のアリアは“王子さまなんて おとぎ話の中だけなんじゃ……?”と首を傾げていた。

 

 すると若い女性が再びアベルを見てからにっこり、何故かアリアに微笑み掛けて来る。

 

 

「あなたの王子さまって背が高くて優しそうで素敵ね。羨ましいわっ」

 

「あっ…………! っ、はい(そういえば、パティは白馬だったね……アベルが白馬の王子さま……)」

 

 

 一年間限定だけど……。とアリアは女性に頷き、アベルを見上げてはにかむ。

 

 

「…………っ(僕がアリアの王子様か……)」

 

 

 ――照れるな……。

 

 

 アベルはアリアを見下ろし、彼女の理想の王子になれるようもっと強くなろうと思うのだった。

 




アベルはほろ酔いだと甘える。
泥酔だと倒れる。

修道院でアリアから貰った酒入り菓子は薬入りだったため(偶然ビンゴ)悪酔いしていただけで、実はアベルはそんなに酒に弱くないという設定です。
普通です、普通。
対してアリアは実は酒に弱いという設定だったりします。

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読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!
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