クラリスちゃんっ! 可愛いんだろうなぁ……。
では、本編どぞー。
次の行き先が決まりアベルはアリアと共に部屋に戻ることにし、舞台の前に差し掛かる。
と、丁度これまで鳴っていた音楽が鳴り止み、踊り娘達が退場して行った。
「あ、アベル。踊り終わっちゃったみたい」
「本当だ……」
何となくアベルは楽屋へと戻って行く踊り娘達を見ていた。
クラリスの去って行く背中を目にして、“ピキッ”とこめかみに痛みが走る。
「……クラリスさんに挨拶して行く?」
「えっ!? あっ、いや……?」
アリアが声を掛けて来るとアベルは慌てて首を左右に振った。
――別の世界で僕は彼女にからかわれたんだよね……。
“あたしと結婚してくれない?”
アベルは別世界のクラリスが冗談めかして自分をからかった記憶を思い出していた。
あの時は一人で旅をしていた時だったから、かなりドキッとしたらしい。
印象的な事柄は憶えているもんなんだなと、急に降って来た記憶に気まずそうに頬を掻く。
「アベル?」
「僕は別にクラリスさんのことは何とも思ってないよ……?」
「あら、前に来た時クラリスさんに微笑まれて、照れた顔してたような気がしたけど……?」
「誤解だよっ!」
アリアの伏し目がちな流し目にアベルは誤解を解こうと彼女の手を取った。
「ふふっ、しばらくここには戻って来れないかもしれないし……、せっかくだから絹のエプロンをくれた彼女にも挨拶していきたいなっ」
「……アリアがそう言うなら……じゃ、行こっか」
アベルは“アリアが云うならしょうがない、挨拶しに行こう!”……ということで、彼女を引き連れ舞台に上がる。
「フフフッ。アベル嬉しそうだね」
「っ、いやっ、別に……? 誤解だってば……」
――クラリスさんのことは何とも思ってないけど……、今何か言えば変に思われるか……?
横から窺うようなアリアの上目遣いにアベルは苦笑いを浮かべた。
「クラリスさん人気者だもの! 私も素敵だと思うよ? あっ、彼女のサイン貰っちゃおっかなっ」
アリアはそう云うが、色紙が無いため「握手で我慢しよっ」とにこにこしながらアベルに連れられて行く。
前回の訪問時はムスッとしていた気がしたが、今回特に嫉妬している様子は見られない。
どんな心境の変化なんだろうか。
「アリアあのね……。僕は君しか見てないって言ってるよね?」
――伝わってない……? というか、アリア全然妬いてくれないんだな……。
ニコニコと微笑み連れられて行くアリアの姿に、アベルは“僕は君だけだよ”と伝えるのだが今一つ伝わってない気がする。
アリアの表情はいつも通り柔和で穏やかだった。
ところが、
「フフフッ、ありがとアベル。私もアベルしか見てないよ?」
表情を変えないアリアは立ち止まり、アベルの手をぎゅっと強く握って真正面から見上げる。
アリアの紫水晶にはアベルしか映っていなかった。
「っ……アリア……。っ、ならいいんだっ」
――あぅ。その瞳で見つめられると僕はもう……。
真っ直ぐ見つめて来るアリアの神秘的な瞳にアベルの頬が紅潮する。
アベルはアリアの手を一度放し、指を絡めて繋ぎ直すと楽屋へと入って行った。
「ふふっ。アベルって可愛い❤」
アベルの赤い顔にアリアはくすくすと笑い、自分の手を引く力強い手を眺める。
――擽ったい。
一年後に別れが決まっているが“今はこの幸せを噛み締めたいな……”とアリアは目を細めていた。
◇
アベルとアリアが楽屋に入って直ぐ、先日会った踊り娘が二人に気付き手招きして来る。
女性の目線はアリアだけに注がれていて……どうやらアリアを呼んでいるようだ。
「え? 私?」
どうも踊り娘女性はアリアに興味があるようで、アリアが自分を指差すと「ウンウン」と頷いていた。
「呼ばれてるみたい……。丁度良かった。アベル、私ちょっと彼女とお話して来るね。クラリスさんには後で挨拶するよ」
「う、うん、わかった」
アリアはアベルに一言断りを入れて、一人で奥の化粧台でメイクを落とす踊り娘の元へと行ってしまう。
一人取り残されたアベルはここで突っ立っているのもおかしいかと、正面奥のテーブルで寛ぎ始めたクラリスと話すことにした。
「こんばんは。今日のステージ素敵でした」
「あら、ありがとう」
「すごい人気でしたよ。観客の話を聞いたら あなたの名前ばかり出ていました」
「え? あたしがすごい人気ですって? 今はね……。でも若いうちだけ。いつまでも続けられるお仕事じゃないし……。ねえ……。あたしと結婚してくれない?」
クラリスはアベルを見上げ求婚してくる。
踊りが終わって まだそんなに経っていないからか、彼女は全身に汗を掻いており何とも
ゴクリ。
下から上目遣いで見上げられたアベルは唾を飲み込んだ。
(冗談だとわかってるとはいえ……、クラリスさんて色っぽいんだよね……。けど僕はもう……)
アリアがいなければ、二つ返事でOKしただろう。
「っ、すみません、僕には彼女が居るので……」
アベルは化粧台の前の踊り娘と楽し気に会話するアリアを眺める。
……答えはノーだ。
「なーんてね。カンタンに決められたらいいんだけど……」
「……ははは。冗談です……ね?」
「うふっ、ごめんなさいね。可愛い彼女とお幸せにね」
クラリスはちらっとアリアに視線を向けてアベルに戻すと目を細めた。
「はい。クラリスさんも どうぞお幸せに!」
適切な言葉ではなかったのだろう、アベルの言葉にクラリスは苦笑いを浮かべて手を振る。
そうしてアベルはクラリスと別れ、アリアを迎えに行くことにした。
化粧台の方へと歩いて行くと、アリアと踊り娘女性が未だ楽し気に会話している。
「うわーヤダ……。あたしったら汗べっちょり」
「ふふふっ、あれだけ動いたら汗掻きますよね~」
「汗掻くのはいいんだけど化粧が落ちちゃってね~。あなたみたいな化粧要らずなら良かったのに」
アリアは以前ここに来た時と同様、再び踊り娘に頬をぷにぷに。弄られ苦笑いを浮かべた。
「あぁ……このもちもち感……癖になるわね……」
「ぅぅ……」
――なぜにこの人は私の頬を弄るの……?
アリアは【絹のエプロン】のお礼を言いに来ただけだというのに、と遠い目で手放してくれるのを待つ。
「アリア。挨拶は終った?」
「あっ、うん!」
アベルが声を掛けると、踊り娘の手がアリアの頬から離れた。
アリアは解放され ほっとした顔をする。
「あら、彼のお迎えが来ちゃったわ。残念、あなたのお肌のヒミツを知りたかったのに……フフッ。あなた達、旅してるんでしょ?」
「「はい」」
踊り娘が訊ねると二人は頷いた。
「もし今度この町に寄ることがあったらまた会いに来てね。その時はお肌のコンディションも万全にしておくんだから! 負けないわよ?」
「あはは……(何か……張り合われてるような気がしなくもない……)」
踊り娘の云い方にアリアは乾いた笑いを浮かべ、アベルを見上げる。
するとアベルはアリアの耳元に顔を近付け、踊り娘に聞こえないように小さく囁いた。
「…………いつだって彼女よりアリアの方が綺麗だよ」
「っっ!?(ちょ、アベルっ!?)」
アベルに囁かれたアリアの頬が瞬時に茹る。
アベルの吐息に硬直してしまった。
「それじゃ、僕達はこれで」
「ええ、またいつか、ね!」
「アリア行こう。そろそろ休まないと」
顔を真っ赤にし固まってしまったアリアの手を引いて、アベルは楽屋を後にする。
去り際、クラリスが優しい笑みを浮かべて手を振っていたのでアリアは会釈だけし、しっかりとした挨拶も出来ないままアベルに連れて行かれた。
「っ、あっ、クラリスさんに挨拶はしたの?」
「うん。僕はね」
「そっか。私全然お話出来なかったな……」
舞台上へ戻って来ると、アリアがちょっぴり残念そうに零す。
アベルは彼女とした会話の内容をアリアに話すことにしたのだった。
アベル的には記憶が戻るくらい、どっきりエピソードだったのですw
一人旅しててさ~、綺麗なお姉さんが「結婚してくれない?」って言って来たら、印象に残っちゃいますよね!
デボラさんはよく知らないのですが、クラリスも花嫁候補だったりしたら、面白かったな~。
4勇者(男)とマーニャが……、いや、安直か。
いや、結婚せずとも子孫を残すことは可能なわけで。
4勇者(男)とマーニャのカップリングも有かなぁ……。
話が一つ思い浮かんだけど、妄想で楽しんでおきます……w
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読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!