ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

捨てられてたと思ってたのに。

では、本編どぞー。



第三百四十三話 押し花

「……僕、クラリスさんに求婚されたよ」

 

「ええっ!? アベル結婚するのっ!?」

 

 

 ――クラリスさんて花嫁候補だったのっ!?

 

 

 アベルの話を聞いた途端、アリアは声を上げる。

 “新たなアベルの結婚相手現る!?”とアリアは驚愕し、アベルを見つめた。

 

 

「っ、しないよっ! するわけないだろ、何でそうなるっ!?」

 

 

 ひょっとしたら嫉妬してくれるかなと思って口にしたアベルだったが、アリアの反応は斜め上を行っていた。

 

 

「や、だって、クラリスさん綺麗だし……。そういうこともあるのかなって……」

 

 

 ――どうせ私は結婚出来ないし……。

 

 

 転生前、パッケージイラストで見たのはビアンカとフローラだったが、二人の他に隠しで奥さん候補が居てもおかしくはない。

 クラリスもかなりの美女である。

 

 アベルは苦労続きの人生だが、誰を選んでも綺麗な奥さんを貰えるのだと思うと、結婚できないアリアからはちょっぴり羨ましく思えた。

 

 

 アベルが先に舞台階段を下りると立ち止まり、後ろのアリアに振り返る。

 彼女を見上げて口説くように告げていた。

 

 

「アリアの方が綺麗だよ」

 

「っ、もぉ……。すぐそういうこと言うぅ……」

 

 

 アリアが恥ずかしそうにサイドの髪を耳に掛けて、アベルの視線から逃れるように何処へと瞳を彷徨わせる。

 

 

「僕は君と……(いつか結婚したいと思ってるんだよ?)」

 

 

 ――これ以上はまだ言えないけど……もう少しアリアが心を開いてくれたら言いたい……。

 

 

 未だ本来の自分の結婚相手を思い出していないアベルは、目の前で恥ずかしがる愛しい彼女を優しく見上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そうして今夜泊まる部屋に戻ってきたアベルとアリアはというと。

 

 

「ふぅ……」

 

 

 部屋に戻って来るなり、アリアはアベルから離れて先程寛いでいたベッドに腰掛けると鞄をゴソゴソし出す。

 

 

「…………ん?」

 

 

 アベルは何だろうと思いながら、隣のベッドに腰掛けアリアの様子を窺う。

 と、彼女は【チェーンクロス】を取り出していた。

 

 

「チェーンクロス……? 何、何かに使うのかい?」

 

「うん……、身の安全のため……」

 

 

 アベルが不思議そうに見守る中、アリアはベッドとベッドの間の床にチェーンクロスを真直ぐに伸ばして置いた。

 

 

「……身の……安全? 何、これ?」

 

 

 足元に置かれた【チェーンクロス】を見下ろし、アベルは訊ねる。

 

 

「……境界線。このチェーンクロスから こっちに入っちゃダメだよ?」

 

「っ……なんでっ……」

 

 

 ――どういうことっ!? 二人きりなのに、これじゃイチャイチャ出来ないじゃないか!

 

 

 アベルが目を剥きアリアを見ると、彼女はおずおずと上目遣いで見つめて来た。

 

 

「……私達にはまだ早いでしょ? アベルはまだ十七歳。私は十八歳、もうしばらく清い関係でいましょ?」

 

「清いって……っ、キスしたのに!?」

 

 

 アリアの言葉にアベルが食い下がる。必死な瞳をアリアに向けていた。

 アベルは今夜はもう少し大人のスキンシップが出来ると淡い期待を抱いていたのだ。

 

 

「き、キスまでは……、きょ、許容範囲でしょ……」

 

 

 アリアはアベルからの自分を求める強い視線から逃れるように、ベッドに置きっぱなしにしておいた本を手に取る。

 

 

 ――未来の奥さんのために、アベルには綺麗なままでいて欲しい。

 

 

 どこぞの呪われた野良天空人とやらと関係を結ぶなんて主人公にあってはならない。

 自分は彼女達と出会うまでの繋ぎでいい。

 

 この世界はゲームの中であるが、今の自分の現実で。

 アベルが思い出していない未来を話そうとすると、息が出来なくなって話せなくなる。

 

 それは未来を改変させまいとする【原作の意志】なんじゃないのかとアリアは感じていた。

 アベルが自ら気付いたことなら許容するが、他者が気付かせるのは許さないのだろう。

 【原作の意志】は常に監視しているのかもしれない。

 

 今は特に未来が変わることが無いから こうしていられるのだろうが、アベルと関係を持ったらあの息苦しさにまた襲われるかもしれない。

 

 だから、アベルとは関係を持たない。

 

 

 なんて(もっと)もらしい理由を並べ立ててはみたが、何てことは無い……。

 

 

「アリア」

 

「あっ、安眠枕使う?」

 

 

 アベルの声にハッとして、アリアは【安眠枕】を鞄から取り出す。

 

 

「っ、アリアぁ……!(せっかく二人きりなのに……?)」

 

 

 アベルは眉根を寄せ嘆いた。

 

 

 ――せめてキス……いや、添寝くらいさせてくれても……。

 

 

 それはそれで辛いけど……とアベルはアリアが差し出す【安眠枕】を受け取ろうとはしない。

 仕方ないのでアリアは【安眠枕】をベッドに座る自分の脇に置いた。

 

 

「…………アベル……ごめんね。私、そういうの怖くって……、その……今夜はダメ……」

 

 

 ――アベルに抱かれてしまうと引き返せなくなる。

 

 

 欲が出て、離れたくなくなってしまう。

 アベルが結婚する時、笑顔で祝福出来なくなってしまう。

 

 “何てことは無い……。”

 

 アリアは結局自分の保身で、アベルと距離を縮めたくないだけだった。

 

 

 ……そんなアリアの想いをアベルが解る筈もなく……。

 

 

「ただ、くっつくのもダメ? ほら、昔みたいに添寝するだけ! 何もしないよ!」

 

 

 “何もしないよ!”と云いつつ、アリアの許可も得ずにアベルは境界線を越えようとする。

 アリアは手にしていた本を両手で持って迫り来るアベルの顔に打ち付けた。

 

 

「っ、ダメっ」

 

「ダメって……」

 

 

 アベルは即答されて冷たい本の表紙に涙する。

 

 

 ――アリアとキスしたい……。

 

 

 もちろんその先も出来たらしたかったが、アリアが嫌ならしょうがない。

 彼女に嫌われるわけにはいかないので、アベルは今夜は諦め渋々自分のベッドに戻る。

 

 

「アリア……。君がいいって言うまで……僕は待つよ」

 

 

 ――さっき、もうしばらく清い関係でって言ってたから……僕が十八歳になったらいいのかな……?

 

 

 い、一年くらい我慢してみせるさ……!

 

 

 もしかしたら、一年経つ前にもっと自分を好きになったアリアが我慢できなくなるかもしれないし……なんて、アベルは希望的観測で これからもアリアをうんと甘やかし、自分に夢中にさせようと微笑んでみせた。

 

 

「アベル…………、うん。ありがと」

 

 

 アベルの優しい笑みに、アリアは ほっとした顔で目を細める。

 

 

「…………安眠枕はアリアが使って。僕はそれが無くても眠れるから」

 

 

 “ここは紳士的に!”とアベルは首を横に振って身体をベッドに横たえる。

 腕で頭を支えるようにして横向きでアリアを見つめた。

 

 

 ――顔を見ているのはいいよね……?

 

 

「そう? じゃあ……。もう少し先まで読み終わったら寝ちゃうね」

 

 

 アリアがちらっとアベルを見てから、本を開く。

 アベルは本を開く彼女を眺めていた。

 

 途中に挟んだ栞を外し、表紙と最初のページにそれを挟む。

 

 

「あ……、それ……」

 

 

 栞に既視感を覚え、アベルはアリアに声を掛けていた。

 

 

「……ん?」

 

「栞……、見覚えがある気がして」

 

「あぁ! ふふっ、アベル憶えてるかな?」

 

「ん?」

 

 

 アベルが「栞」と言うと、アリアはそれを取り外し渡してくれる。

 アリアから受け取った栞には白い八重咲の花が収まっていた。

 

 

 ――この花……どこかで見た気が……。

 

 

「……それ、アベルが記憶のない私にくれたお花。押し花にしたんだよ。中々上手く出来てるでしょ?」

 

「っっ……!? アリア、捨てたんじゃなかったの!?」

 

 

 アリアの言葉にアベルは修道院での出来事を瞬時に思い出し、目を見開く。

 捨てられていたものとばかり思っていたが、そうではなかった。

 

 

「えぇっ!? 捨てないよ! カジノのお客さん以外で初めてもらった贈り物だったんだもの。とっても嬉しかったんだよ。そういえばお礼言ってなかったね?」

 

 

 “お花をくれてありがとう!”

 

 

 アリアは眩しいくらいの笑顔でアベルにお礼を告げる。

 アリアのその笑顔にアベルは堪らなくなって口元を片手で覆った。

 

 

「っ……っ……。あぁ、もう……」

 

 

 ――なに、なんでこんな……? アリア、君、僕をどんだけ沼らせるつもりなの!?

 

 

 アベルの心が喜びで満たされ、栞を見下ろしながら手の平で覆われた口角が勝手に上がる。

 アリアを自分に夢中にさせるつもりが、自分が夢中にさせられているじゃないか、この娘何なの……と、アベルの胸が痛い程にキュウキュウ締め付けられた。

 

 そんなアベルにアリアがぽつり。

 

 

「……アベルも欲しい?」

 

「……え?」

 

「栞……すっごい見つめてるから……、作ろうか……?」

 

「っ、いやっ!? 僕は別に……! か、返すね!」

 

「ふぅん……?」

 

 

 アベルはアリアに栞を返すと、再び身体をベッドに横たえる。

 本を読み始めるアリアの横顔をじっと見つめていた。

 




アベル、アリアの反応が前と大して変わらないからどんどん口説いて来るな……www
何たって肩書が“恋のドレイ”だからね……www 草生えるwww

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読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!
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