さあ、やっとルラフェンに向けて出発しましたよ。
では本編どぞー。
「…………ん?(視線を感じる……)」
前を見て歩いていたアリアがアベルの視線に気付いて首を傾げた。
「……あ、今日は大丈夫だよね?」
「え? うん、元気っ! どうしてわかるの……?」
“今日、呪いは発動していないよね?”
アベルに問われたアリアは笑顔で返してから目を丸くする。
「アリアのことはわかるんだよ」
「っ……! そ、そぉなんだ……、アベルってすごいのね」
――どうしてわかるんだろう……? 愛のチカラ……とか? いや、まっさか~!
優し気に微笑み掛けて来るアベルにアリアはちょっぴり照れてしまった。
「うん、僕はすごいんだよ。アリアのことは何でもわかるからね」
「本当に?」
「ああ、本当に。君の呪いが発現してるかどうかだけじゃなく、今日穿いてる下着とかも……」
「下着って……、っ、えっち! アベルえっちだよ!?」
アベルが下着について言及すると、アリアは眉間に皺を寄せる。
「ぁっ、ごめっ、本当は毎朝ステータスウィンドウで確認してるだけっ!」
「え……? あ、そうだったんだ。なるほど~! そういえばそんなのもあったね」
――毎朝確認してるの……?
アリアは不思議に思ったが、たまには自分も見てみたくなりアベルにお願いしてみた。
「私も見たいな」
「え?」
「ステータスウィンドウ。私、前回見た時より ちょっとは強くなったと思うの。それに、肩書も変わってるといいなって……」
アリアが照れた様子でちらっと、アベルを上目遣いで窺う。
「あ、あぁ~……うん。アリア強くなってるよ。魔力も上がってた。肩書も僕の恋人って変わってたよ」
アベルは事実だけ述べて【ステータスウィンドウ】は出さない。
見ている間に魔物が出ると危険だから……と、お為ごかしの断りを入れておいた。
「本当!? 良かったぁ……うれしい……。アベルはどうなってたの?」
「えっ!? ぼ、僕?」
「うん、変わってた?」
「っ、うん……、アリアの恋人に……ね」
――本当は“恋のドレイ”だけどね……!
アリアに問われてアベルは頭の後ろを掻き掻き。
“ハハッ、ドレイに逆戻りさっ!”なんて……本当の事は恥ずかしくて言えなかった。
「ふふふっ、そっかそっか! …………あ」
不意に嬉しそうに微笑んでいたアリアが前方を見て武器を手にする。
「ん?」
「……せっかくアベルとお話してたのに……、アベル、魔物だよっ」
「っ、アリアは下がって!」
「うんっ」
前方から魔物の群れがアベル達に近付いて来るのが解り、アベルは背に背負った【パパスの
◇
◇
◇
「……ふぅ」
アベルの口から漸く安堵の溜息が漏れる。
あれから魔物の群れを退治したものの、どこからともなく別の魔物の群れに襲われ、三連戦。
ピエールの物理攻撃とコドランの息攻撃、アリアの呪文で無事乗り切った。
ただ、コドランの【かえんのいき】攻撃は本来なら敵全体を攻撃するはずだが、二体まで燃やしただけで枯れてしまっている。
身体が通常の個体よりも小さい所為なのだろう、まだ肺活量が追い付いていないようだ。
それでも大奮闘した方かなとアベルは思っていた。
「パパスさんの剣、すごい切れ味だね。アベルが攻撃したらみんな倒れていっちゃった」
「だね、父さんが愛用してたくらいだ。シンプルだけど名匠が作ったものなのかもね」
アリアがアベルの手にする【パパスの剣】を見下ろし告げると、アベルは魔物の血を振り払って、自分の目の前に
紋章の入った装飾の少ない片刃の剣は、これまで何度か魔物を切って来たが手に入れた時と同じように輝いていた。
「……パパスさんが今のアベルを見たらきっと喜んだだろうなぁ……」
「……ん?」
アベルが剣を背の鞘に戻しながらアリアを見ると、彼女が頬を赤く染めている。
と、アリアはアベルを窺うように静かに告げた。
「……アベル、格好いいから」
「っ!? そ、そぉ?」
――嬉しいけど、面と向かってそんなこと言われると照れるっ!!
アリアが恥ずかしそうに告げるので、アベルも釣られて頬が熱くなってしまう。
「……ふふっ、早くゴールドを拾って、次の魔物達が来る前に行こ?」
アベルの頬が赤くなったことに気付いたアリアは地面に転がるゴールドを拾い始めた。
「っ……ア、アリアは僕のことそんな風に見てくれてるんだね?」
「ん? うん……、昔は可愛かったけど……今のアベルは格好良いね」
「そっか……ふ、ふーん……。僕、格好いいんだ……?」
アリアに褒められアベルは胸を張ってみせる。
「あ……ふふっ、そういうところは可愛い」
「可愛いって……、僕は男なんだけど……」
アリアの瞳が優し気に細められ、彼女は穏やかに笑った。
“可愛い”という言葉は女の子に使うものであって、自分は男だからそんなこと言われても全然嬉しくないわけで……と、アベルは不服そうに口を窄める。
「ふふっ! そんなに落ち込まないで? 可愛いあなたも私は大好きだよ?」
「大好き……、な、ならいいけどっ………………って、な、なんか誤魔化された気がする……」
「ふふふっ、本当なんだけどなぁ……」
「アリア……」
アリアがずっと嬉しそうに微笑んでいて、アベルは少々不満があったものの心は何だか擽ったかった。
それからも魔物の群れとの遭遇を繰り返し、一日ではルラフェンに辿り着けず……。
◇
「わぁ、湖! 綺麗な水~!」
アリアが黄昏始めた湖を臨み、両手に水を掬う。
湖の水は清らかで冷たく、アリアの手から零れ落ちていた。
一日でルラフェンに辿り着けなかったアベル達は今夜、ポートセルミとルラフェン間にある湖の畔でキャンプをすることに。
「アリア、キャンプになって悪いね」
「ううん、大丈夫。もう慣れたもの。火を起こすね」
「あ、うん、お願いします」
アベルが焚き火のセッティングをすると、アリアが【メラ】で火を起こす。
「呪文て便利だな~」
アリアは自分の指先から放たれた炎の玉を いつもながら不思議に思っていた。
呪文が使えるようになり十余年。
自分が憶えている呪文は大体使えるのだが、強力な呪文はかなりの集中力を要するため、あまり使わない。
魔力の調整が難しいのである。
具体的な数値としてレベルがわかるわけではないが、まだ使うレベルに達していないということなのかもしれない。
旅を始めてからというもの、最近中級の呪文を使うのが楽になって来ていた。
強力な呪文もその内容易に使えるようになるだろう。
焚き火の炎が十分薪に行き渡ると、薪を追加するアベルの隣にアリアがやって来る。
「ははは、アリアくらい色々使えればそうだね」
「アベルも色々使えるでしょ?」
アリアが焚き火の前に腰掛け火に当たる。
と、彼女の背後にプックルがやって来て丸くなった。
スラりんはアリアの膝に、ドラきちはアリアの頭に。
コドランはアリアの左に、キャシーは右に。
仲魔達は安らいだ表情でまったりしていた。
彼女から何か癒しのオーラでも出ているのだろうか……、この間の大雨の時からキャンプ中、アリアの周りは仲魔だらけである。
「まあ……」
――キャンプだとアリアに近付けない……!
アベルは仲魔達の様子を見ながらアリアの質問に答えた。
「ルラフェンで研究してる呪文って何なんだろうね」
「まだ記憶が降りて来てないからわからないけど……、キャンプせずに済むようになればいいね!」
――キャンプだと中々二人きりになれないしね!
アリアがルラフェンの呪文の研究について訊ねると、アベルは私情を込めて拳を握り力強く言い切る。
「あ、うん。でも私キャンプ結構好きかも」
アベルの思惑など知らないアリアは瞳を数度瞬かせてから唇の端を上げた。
「え、そう?」
「みんなでこうして火を囲むのって楽しくない?」
アリアはプックルに背を預け、膝に座りウトウトしているスラりんとコドランの頭をそれぞれ撫でる。
キャシーやドラきちの様子も眺めて、キャシーとは微笑み合い、ドラきちとも目を合わせて微笑んだ。
「ぁ…………、うん。アリアが居れば……楽しいかな」
「アベル……」
アベルは仲魔達を見つめるアリアを見て、哀し気に目を細める。
「今まで僕は独りで旅をしていて……、仲魔達は居たけど独りだったからね……」
「…………っ、私が居るよ!? アベルは独りじゃないよ!?」
アベルの言葉が淋し気に聞こえ、アリアはアベルに手を伸ばした。
するとアベルはアリアの手を指を絡めて握る。
「うん、今回はね。あ、けど淋しかったわけじゃないよ。仲魔達はみんな僕の傍に居てくれたからね。…………今の方がちょっと淋しいかも……」
「え……?」
パーティー>アベル・アリア・ピエール・コドラン
馬車の中>スラりん・ドラきち・キャシー・プックル
out:ダニー(モンスターじいさん送り)←結構前だけど。
そろそろ新しい仲魔が増える予感。
キャンプ楽しいよね! 11で基本キャンプ人間だったもので、宿屋に宿泊したのは称号のための一度のみという……www
大したことではないのですが、実はキャンプについて裏設定がありまして、その内お話のどっかで語るかと思います。忘れてなければ……!w
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読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!