わーい、デートだー!
では、本編どぞー。
「誰を……送るの?」
アベルが口を開くと、アリアはいったい誰を送るつもりなのかと じっと窺って来る。
「……アリアが気付いているかは解らないけど……、この大陸に来てから遭遇する魔物達が強くなって来ている気がするんだ」
「…………うん、それは私も感じてる」
西の大陸にやって来てからというもの、東の大陸には居なかった強い魔物と遭遇することが増えた。
もちろん自分達も度重なる戦闘で強くなってはいるし、全滅したことはない。
……のだが、アベルはピエール以外 仲魔の強さが追い付いていない気がしていた。
一生懸命奮闘してくれている仲魔達には申し訳ないのだが、アリアを守る為にも もう少し戦力を底上げしたい。
そうすることで彼女だけじゃなく、
恐らくこれから遭う魔物達はもっと強くなっていくのだろう。
長く共にいた仲魔と入れ替えをすることも検討しないといけない……。
アベルはプックルを仲間にした後から考えていたのだった。
アリアも遭遇する魔物が強くなって来たことは感じている様子で、首を縦に下ろしていた。
「……アリアには申し訳ないんだけど……、次はキャシーを送ろうと思っているんだ」
「えっ、キャシーちゃんを!? そんなっ! せっかく仲良くなったのに……!」
アベルの提案にアリアは動揺の顔を見せる。
アリアとキャシーは仲が良い。
本当ならずっと連れて行ってあげたい所だが、キャシーの成長の伸びがこの頃悪い気がする。
彼女が放つ 身体の神経を麻痺させる【やけつくいき】は中々有能なのだが、万能ではない。
戦闘が終わると息切れもしているし、彼女自身辛いのではなかろうか。
「ぅ……ご、ごめんね。けど、キャシーはその……」
アリアが不安気に見つめて来るので、アベルは眉を下げた。
「アリア」
「あ、キャシーちゃん」
アベルとアリアが話している所へキャシーが馬車から降りてやって来る。
その顔は柔和に微笑んでいた。
「いいのン……。アタシ、うすうす感じていたのン……。最近アベルんもアリアもどんどん強くなってルっていうのニ、アタシあんまり強くなってる気がしないのよネン。そろそろ打ち止めなのかもン……。だからネ、次はアタシがモンスターじいさんの所へ行く番なノン」
「そんなぁ!」
――キャシーちゃんは仲魔唯一の女子なのに……! いや、他の子達も女の子が居るのかもしれないけどっ……。
時々辛辣なことを云うキャシーだが、アリアは彼女とのお喋りが大好きである。
馬車のキャビン内で眠る時なんかはいつも一緒なので、眠くなるまでお喋りしたり、手を繋いで眠っていたりもするくらいだ。
“次はアタシがモンスターじいさんの所へ行く番”の言葉に、アリアの瞳が涙で滲み 彼女はキャシーを抱きしめた。
キャシーもアリアを抱きしめ返し「アタシ達ズッ友よン!」と二人して涙を流している。
「アリア……(ごめん……)」
アベルは申し訳ない気持ちと、今後のことを
戦力だけではない、色々……。
――キャシーが居たら……アリアに近付けない……!
ポートセルミでアリアと二人きりにさせてくれたのだ、恐らくキャシーに悪気はないのだろう。
ただ、二人が話し始めると入る隙がない。
そして、キャビンで眠る時に二人は手を繋いで眠っているし、焚火の前で眠る時も手を繋いでいたりする。
女の子同士ってこんなものなのかと始めは思っていたが、アリアと想いが通じ合ってからは“恋人の自分よりも密なのでは……?”という考えに変わった。
アリアとキャシーの仲を見せつけられる度にアベルはちょっと妬いてしまっていたのだ。
“キャシーが居なければ、アリアはもっと僕とお喋りが出来るのでは?”
そんな裏の思惑もあって、次はキャシーをモンスターじいさん送りにしようと決めたのである。
そんなことは知らないキャシーがアリアとの抱擁を終え、アベルのマントをチョイチョイと引っ張った。
「ねえ、アベルん。次の仲魔が出来たらアタシ居なくなっちゃうじゃない? そこでお願いがあるんだケド……」
「う、ん? なんだい?」
「……アリア、前に約束したこと、憶えてる?」
キャシーはアベルに訊ねておいて、今度はアリアにも問い掛ける。
「え?」
……アベルとアリアは二人して首を傾げ、キャシーの話に耳を傾けた。
話を聞き終えた二人はキャシーからのお願いを快諾したのだった……。
◇
◇
◇
……キャシーの願いはルラフェンでアリアとデートすること。
以前、町で買物をしようと約束していたのだ。
ルラフェンに着くまでに仲魔が出来たなら諦めるが、どうやらキャシーの願いは聞き届けられたようで……。
「ア~リアっ♪ そんなシケた顔しないデン、可愛い顔が台無しヨン! 今日はアベルんがアリアを貸してくれるって言ったんだものン。情報収集がてラ二人で町を歩きまショ!」
ルラフェンの町の入口広場で町に入った途端落ち込むアリアにキャシーは明るく話し掛ける。
「キャシーちゃん……、…………うん! アベル、私達先に行くね? あっ、待ち合わせはどうしよう……?」
キャシーが手を差し出すとアリアは漸く笑顔を見せ、その手を取り歩き出すが、後でアベル達と合流しなければならない。
迷路のような町での待ち合わせ場所はどこが最適なのだろうか。
アリアは足を止めアベルに訊ねていた。
「うーん……、この町かなり入り組んでるみたいだ……。あそこの風車が回ってる屋上でいいんじゃないかな? ほら、一番高い場所だし」
「……うん、わかった! じゃあ、また後でねっ」
アベルが町で一番高い建物の屋上を指差すと、アリアは弾ける笑顔で了承し、キャシーと共に町の奥へと行ってしまった。
「あ、ああ……いってらっしゃい……(アリアやっと笑ってくれた、可愛いなぁ……)」
――……いいなぁ……僕もアリアと手を繋いでデートしたい……。
キャシーと楽し気に会話しながら歩いて行くアリアの後ろ姿をアベルは手を振って見送る。
ポートセルミで自分も似たようなことをしているが、足りない。
出来ればもっとしたい。
デートを申し込んだら、アリアはしてくれるのだろうか……。
だけど彼女は仲魔達が居ると恥ずかしがってしてくれないかもしれない。
だけどもう少し距離を縮めたい。
もっと彼女を知りたい。
……そんな想いがアベルの中で渦巻いた。
キスは既にしている……が、片手で収まる程度。足りない。
出来ればもっとしたい。
かといって無理強いは出来ない。
彼女のペースになるべく合わせてあげたい。
だが。
想いが通じ合っているとはいえ、距離感が以前とそう変わらない気がしてアベルは少々焦りを感じていた。
「アリア……、もう少し僕の相手をしてくれても……」
アベルの口から不満が零れ落ちる。と、ハッと我に返って口を手で覆った。
――いや、僕何言ってるんだ!? 仲魔達が居るんだからしょうがないよね!?
昨日のキャンプでも、以前のキャンプでも、アリアは仲魔達に食事を作ったり寝かしつけたりと色々世話を焼いていた。
アベルと話をすることだって、ちゃんとある。
でも、足らない。
――足らないって……僕は子どもか……!!
アベルは自分の発言に落ち込んでしまう。
駄々を捏ねる子どものような気がして、こんな想いをするのは初めてな気がした。
仲魔達に愛情を注ぐ彼女に自分をもっと見ていて欲しいと思う。
自分だけを見て欲しい……とも。
『アベルー!』
急に背後、頭上でアリアの声が聞こえて、アベルは振り返る。
すると そこには障壁の上の通路で行き止まったアリアとキャシーが手を振っていた。
「あっ、はははっ、行き止まりだね!」
アベルが障壁を見上げ笑う。
『ね~! この町迷路みたいで楽しいっ☆』
「そっか! よかったね!」
アベルが同意すると、アリアは笑顔で手を振って去って行った。
「……あぁ……、ぱんつが見え……じゃない。笑顔が可愛かった……」
彼女に手を振り返し、日々大きくなる独占欲に戸惑いつつ町を彷徨い歩くアリアの姿をアベルは眺める。
――やっぱり僕もデートしたい……!
「主殿。私達も参りましょう」
「ああ……」
ピエールに促され、アベルもポートセルミで聞いた“呪文の研究をしてる老人”とやらを捜しに歩き出した。
デートはアベルとじゃなかったってゆー。
その内アベルとデート出来るといいなぁ。
----------------------------------------------------------------------
読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!