ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

ビアンカとのお別れ……、出会いあれば別れありですね。

では、本編どうぞっ。



第三十四話 ビアンカとの別れ

 

 広場を後にし、三人と一匹はアリアを真ん中にアベル、アリア、ビアンカと手を繋いで歩いていた。

 宿へと向かっている途中、町の女性に声を掛けられる。

 

 

「夜な夜な聞こえていたレヌール城からの泣き声が昨夜からしなくなったのです。お手柄でしたわね。坊や達……」

 

 

 女性は優しげな瞳でアベルとビアンカを見下ろして褒めたのだった。

 

 

「はは……。それ程でも……」

 

 

 アベルは照れて後ろ頭を掻く。

 

 

「お姉さん、ずっと夜眠れなかったの?」

 

「ええ、そうね……。あまりに哀しげな声だったから気になってよく眠れなかったわ。これからはぐっすり眠れそうよ、二人共ありがとうね」

 

 

 ビアンカが訊ねると、女性はお礼を云って去って行った。

 実は、広場に行く前にも町を歩いて何人かに大したものだと声を掛けられている。

 

 

「ふふっ、町ではお化け退治の話で持ち切りね。私達いいことしたわよね? ね?」

 

「はは……そうなのかなぁ……」

 

 

 アベルは今一ピンと来ないのか、自信がないのか、ぽりぽりと頬を掻いた。

 その様子を見ていたアリアが口を開く。

 

 

『アベル、そこは誇っていいんだよ。二人とも、すごいことしたのよ? もっと胸を張っていいと思うなっ』

 

「本当?」

 

『うん! ……まぁ、子供達だけで夜中出歩くのは、あまり関心出来ないけどね……』

 

「アリアがそう言ってくれるなら……!」

 

 

 アリアが褒めると、アベルは瞳をキラキラさせて、満面の笑みを見せた。

 そして多分、最後の注意は聞いていない。

 

 

「ん? アリアが何か言ってるの?」

 

「あっ、お化け退治、すごいことしたねって褒めてくれたんだ」

 

「え? ……ふふっ、一緒に行ったのに褒めてくれるんだ、嬉しいなっ」

 

 

 ビアンカとアベルはアリアに褒められほくほく顔で宿へと戻って行った。

 宿の前にはサンタローズへ帰る為、既に出発準備を終えたパパスが玄関先で待っていた。

 

 

「父さんっ」

 

「心配かけたな、アベル。父さんの風邪もすっかり良くなったらしい」

 

 

 アベルが駆け寄ると、パパスは大きな手でアベルの頭を撫でる。

 アベルは嬉しくなって目を細めたのだった。

 

 

「それにしても今し方聞いて驚いたぞ……」

 

「子供二人だけでお化け退治したとはねえ……。でも、ビアンカ。夜中に出歩くなんて危ないマネ。これっきりだよ」

 

 

 パパスが口火を切ると、ダンカンのおかみさんが被せる様にアベルの隣に居たビアンカを見て眉根を下げた。

 パパスは話題を取られ口を閉じてしまう。後で話せばいいか……と、相槌を打つことに徹する。

 

 

「違うわお母さん、二人だけじゃなかったのよ?」

 

「わぁっ、ビアンカっ!」

 

「っ、だってアリアも一緒だったもの……!(手がとってもすべすべで温かいんだからっ)」

 

 

 ビアンカの言葉にアベルが止めに入るが、ビアンカはアリアの居るであろう方を見る。

 繋いだ手の感触から彼女の居る場所は判っているのだ。

 ビアンカはアリアが居たことを無かったことにしたくないらしい。

 

 

『ふふっ、ビアンカちゃん、ありがとう。でも気にしてないから大丈夫だよ』

 

 

 見えるわけではないが、アリアはビアンカに笑い掛けていた。

 

 

 そんな中、

 

 

「坊やは大したもんだ! その勇気はきっと父親似だな。こほっ、こほっ……」

 

「あっ、お父さん、大丈夫?(後でお薬飲ませてあげなきゃ!)」

 

 

 ダンカンがアベルを褒めると咳き込む。ビアンカはアリアから手を放し、慌ててダンカンの背中を撫でたのだった。

 んふっ、こほっ……と乾いた咳が僅かばかり残っているようだ。

 

 

「……っ、はははっ、ありがとうビアンカ、大丈夫だよ。少し咳が残ってるだけで、もう殆ど治っているんだ」

 

 

 ダンカンは「声も掠れてないだろう?」とビアンカを安心させるように微笑む。

 

 

「……後でお薬飲んで、休んでね?」

 

「ん? あ、ああ、そうだな。そうさせてもらうよ」

 

 

 ビアンカはダンカンを心配そうに見上げた。

 

 

「さて、アベル。これから村に戻るが、町の人達に挨拶は済ませたか?」

 

「あ、うん。お店とか、教会も全部回って来たよ」

 

 

 パパスに問われて、アベルは頷く。

 

 

『うんうん。酒場にも……行ったもんね……?』

 

「うん……、あはは……」

 

 

 ちらっと、アリアに見られアベルは苦笑する。

 プックル解放前、アベル達は酒場に寄ってバニーのお姉さんに褒めてもらって悦に入っていたのだが、カウンターテーブルに置いてあるビンを片っ端から割ってアリアにドン引きされていたのだった。

 

 酒場のお姉さんは何事もなかったかのようにそのことに触れないのに、アリアは「え……」と、真顔なっていたのが印象的だったらしい。

 何故ドン引きされたのか、アベルはよくわかっていないが、ビンを割るのはもうやめようと思ったのである。

 

 

「では行くとしよう。ダンカン、世話になったな!」

 

 

 パパスはアベルに了承を得ると、ダンカンに向き直り挨拶を交わして宿を離れた。

 アベルはパパスの後ろについて歩いて行く。アリアは強制的にアベルに手を引かれ、その後ろにはプックルが続いていた。

 

 

「アベルー!」

 

 

 宿から離れて歩いて行くと、後ろからビアンカの声が届く。

 すると、パパスが振り返り、

 

 

「……ん? おお、アベル、ビアンカちゃんが呼んでいるぞ? 父さんはここに居るから、お別れしてきなさい」

 

「うん」

 

 

 アベルはパパスをその場に残しアリアを伴って、走って来るビアンカの元へと向かった。

 

 

「ビアンカ。どうしたの?」

 

「アベル! しばらく会えないかもしれないから、これをあげる……」

 

 

 アベルがビアンカと合流すると、彼女が黄色いリボンを差し出してくる。

 

 

「あ、リボン……」

 

 

 これ、僕知ってる……!!

 

 このリボン、大事にしなきゃいけないものだ!

 

 

 アベルはビアンカの差し出すリボンにはっとして目を見開いた。

 このリボンを僕はどこかで見ている……と、いつもの既視感を感じたのだった。

 

 

 これを確か……プックルに……。

 

 

 アベルは成り行きを見守る。

 

 すると、

 

 

「そうだわ! プックルちゃんに付けてあげるね」

 

 

 ビアンカはプックルの尻尾にリボンを結ぶ。

 

 

「っ……ぁ……っ。やっぱり……」

 

 

 アベルは小さく呟き、落胆する。

 が、ビアンカは次に、

 

 

「あと……、アリアにも……これ」

 

 

 ビアンカは少し照れた様子で、もう一つリボンを差し出した。

 

 

『えっ? わ、私に……? いいの……?』

 

「えっ」

 

 

 アリアが目を丸くして瞳を瞬かせると、その様子にアベルも驚いていた。

 

 

 いつもと同じじゃない……!?

 

 

 アベルはいつもと違う(・・・・・・)展開に、胸の高鳴りを感じるのだった。

 




ビアンカちゃんにリボンもーらった!
二本あったっていう。

ビアンカとの別れですが、まだ別れてなかったwww
文字数都合上、次話に続きます。

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読んでいただきありがとうございましたっ!

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