ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

方向音痴だと、本当困ります。

では、本編どぞ。



第三百五十一話 ド方向音痴

 

 “二十八歳のアリアもきっと素敵だと思うよ。僕が出会ってたらプロポーズしてたよ”

 

 

「えっ? アベル?(どういう意味?)」

 

「えっ? あ、二十八歳でも全然大丈夫だよって言いたかっただけ」

 

 

 ――二十八歳のアリアも素敵なんだろうなぁ……。

 

 

 アリアがぽかんと口を開けると、アベルは二十八歳のアリアを想像し、二度深く頷く。

 今一つ前世をよくわかっていないようだが、アベルは旅が長引けばそれだけ待たせるかもしれないと思い、未来のアリアを想像したのだった。

 

 

 ……アベルの想像上、二十八歳のアリアは今より艶っぽさが増して結構良かったらしい……。

 

 

 アベルとアリアの会話は少し噛み合わないものの、互いに解らないなりに微笑み合っていた。

 

 

「あっ、うん、ありがとう……? ……って、死んじゃったんだけどね……」

 

「っ、そ、そうだったね!」

 

 

 ――あ、そっか。前世か! ……前世のアリアはどんな女性だったのかな……。

 

 

 漸く会話に追い付いたアベルは前世のアリアを想像してみるが、目の前の彼女が基準なので彼女しか思い浮かばなかった。

 

 何せアリアは自分が一目惚れした女である。

 これ以上に好みのタイプはいない。

 

 前世もきっと綺麗に違いない。

 

 ……そんなわけがないのだが、アベルは前世のアリアが死んだという事実に少しばかり胸を痛めた。

 

 そうしていると、ふとアリアが木の葉に包まれた何かをアベルに差し出して来る。

 

 

「アベル、これ食べない?」

 

「ん……? あ、それ(ポートセルミで見た……)」

 

「ふふっ、鮭おにぎり。さっき広場でこないだの行商人の女の子に会ってね。おまけで貰ったの。半分こしよ?」

 

 

 アリアが木の葉の包みを解くと、中からおにぎりが出てきてそれにパクつく。

 

 

「フフッ。もうお腹空いちゃった? それ全部食べていいよ?」

 

「ん、いいの……? じゃあ遠慮なく……。歩き回ったら小腹が空いちゃった。……食いしん坊でごめんね」

 

 

 もくもくと小動物のような食べ方のアリアを眺めるとアベルの目元が弛む。

 いつの間にか彼女の頬に米粒が付いていた。

 

 

「いいよ。後で何か食べに行こう、ご馳走するよ」

 

 

 そう云いながらアベルはアリアの頬に付いた米粒を取って、それを口にする。

 

 

 ――アリアの頬に付いた米とか……美味い。美味すぎる!!

 

 

 アベルの頭はアリアが好き過ぎてちょっと重症になって来ているようだ。

 

 

「ぁ……うんっ! ありがとアベル。だいすきっ!」

 

 

 アベルの行動に目を丸くし、ぽっと頬を染めたアリアだったが、食べ物には弱いのか破顔する。

 こういう時だけは現金な彼女である。

 

 

「っ……ぁ、ぅん……僕も……(あぁ……カワイイ……)」

 

 

 アリアの眩しい笑顔にアベルも頬を染め頷いた。

 

 

 ――アリアって……やっぱり食べ物で釣れる……?

 

 

 自分を好きだと言ってくれるのは二人きりの時と、食べ物が絡んだ時のみだった気がする。

 つまりアリアは食べ物に弱い。

 

 ……何となくそんな気がしたアベルだった。

 

 

「……ごちそうさまでした! あ~美味しかった~♪ またいつか食べられたらうれしいなぁ」

 

「ははは。また会えるといいね」

 

 

 アリアが食べ終えると、アベルはアリアの頭をぽんぽんと優しく撫でて笑顔を見せる。

 

 

「ねっ! あっ、そろそろ行こっか! 何かね、町を歩き回ってたら張り紙を見つけてね」

 

「張り紙?」

 

「うん。“求む 魔法研究助手。このカドを南へ。”っていう張り紙があっちの壁に貼ってあったの」

 

 

 アリアは南を指差した。

 そのアリアを放置し、アベルはキャシーへと視線を移す。

 

 

「アリア、そっちは南ン……張り紙は……そっちヨン」

 

 

 アベルの視線を受けキャシーは呆れ顔で町の北東、屋上の下方を示した。

 アベルはキャシーの示した方へと屋上から見下ろす。

 

 何が書いてあるのかはわからないが、張り紙が貼ってあることは確認出来た。

 恐らくアリアが見たのはこれだろう。

 

 

「ぅ……。アベル、私を信用してくれていないのね……、哀しいわ……」

 

 

 アベルが張り紙の確認をする後ろで、アリアが「うっ、うっ」と嗚咽を漏らしていた。

 

 

「ぅ……。ご、ごめんね……。信用してないわけじゃなくて……」

 

 

 ――アリア泣いてるっ!?

 

 

 アベルは振り返って背後のアリアを慌てて窺う。

 アリアのことは信用している。

 ……が、方角に関しては全く信用出来ないからキャシーに確認しただけなのだが、アリアを無視したのは不味かったかもしれない。

 

 ところがアリアは顔を俯かせてはいたが、泣いてはいなかった。

 

 

「ぅっ…………うん……わかってる。私……方向音痴がヒド過ぎるよね!」

 

 

 あははっ! とアリアは今度は笑い出した。

 自分の方向音痴加減に呆れて笑いが込み上げてしまったらしい。

 

 

「……プッ! 自分でわかってるんだ!?」

 

 

 アリアの様子にアベルも吹き出す。

 

 

「うん! わかってるよっ! さっきキャシーちゃんとデートしてて、私、この町は独りで歩いちゃいけないって思ったもの」

 

「うん。僕と一緒に居た方がいいよ」

 

 

 ――僕と一緒だったら安心でしょ……。

 

 

 アリアが道に迷わないようにとアベルは云ったつもりだったのだが、彼女には通じなかったようで……。

 

 

「……ちょっと残念だけど……そうみたい」

 

「ざ、残念って……?」

 

 

 アリアがアベルと一緒に居たくないかのように告げるので、アベルの額に汗粒が浮かんだ。

 

 

 ――どういうこと!? 僕と居ると残念!?

 

 

 声もショックで掠れてしまう。

 

 

「でね! 魔法研究助手を募集って書いてあったから、例の魔法研究の老人かなって」

 

 

 アリアはアベルの声が聞こえなかったのか、魔法研究の老人について話し始めた。

 

 

「っ、アリア、残念ってどういう……」

 

「行ってみよう?」

 

「え、あ……」

 

 

 アベルも一度だけ食い下がってみるが、アリアがアベルの手を取るので目を瞬かせる。

 

 

「…………ん? どうしたの?」

 

「ぁ、いや……」

 

 

 アリアが不思議そうな顔でアベルを見上げた。

 滑らかな肌触りのいい彼女の手の感触に、アベルはそれ以上何も聞かなかった。

 

 何が残念なのかはわからないが、もしかしたら大した理由などないのかもしれない。

 

 アリアは今自分の手を取り繋いでくれている。

 些細なことに拘って嫌われるのは嫌だから、アベルは忘れることにした。

 

 

 ――(こだわ)り過ぎかな……アリアの言動に一喜一憂してしまう僕は相当重症なのかも……。

 

 

 アベルは日毎大きくなるアリアの存在に愛おしい気持ちと、少しの恐怖を感じる。

 

 

 ……彼女に嫌われたくない。

 

 

「アベル行こっ」

 

 

 アリアはアベルの手を引き階段を下りようとしていた。

 アベルも歩き出すが、自分の目的を思い出す。

 

 

「あっ、そうだ!」

 

「ん?」

 

「アリア、ベネットじいさんの所に行くのは後。先に教会へ行こう!」

 

 

 アベルはアリアを追い越し、階段を先に数段下りると振り返った。

 

 

「べ、ベネットじいさん??」

 

「そ、魔法研究をしている人だよ。そこに煙が見えるでしょ? その家がベネットじいさんの家なんだって」

 

 

 アリアが首を傾げると、アベルは階段下の先にある民家を指差した。

 民家の煙突からは白い煙が絶え間なく出ている。

 

 

「わっ、すごい! もう見つけていたのね。さすがはアベル! 尊敬しちゃう!」

 

「あっ……ははっ、それほどでも……」

 

 

 アベルの指し示す方へと視線を向けたアリアが、自分が遊んでいる間にアベルが次に行くべき場所を見つけていたことに感心し褒めて来る。

 

 

 ――アリアっていっつも褒めてくれるよね……。

 

 

 アベルはアリアに褒められ頭の後ろを掻いた。

 好きな子に褒められると照れ臭いがかなり嬉しい。アベルの口角は自然と上がってしまうのだった。

 

 そうしてアベルはアリアの手を引いて先ずは教会に行くことにした。

 




アベル……アリアのこと溺愛し始めてるけど方向・方角に関しては全く信用してないwww

アリアはアリアで元々方向音痴の気はあったのでしょうが、書かれていないけど現実世界じゃ文明の利器スマホがあるから問題ナシ。

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読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!
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