焼き餅って美味いよね!
(毎度のことですが)いちゃついてます。
では、本編どぞ。
◇
「生きとし生けるものは、みな神の子。我が教会にどんなご用かな?」
教会へ入ると先程顔を顰めていた神父が、そんなことはおくびにも出さずに穏やかな顔でアベル達を迎える。
「あの神父様、お願いがあるのですが……」
アベルは隣に居たアリアの背をそっと押して、神父に事情を説明した。
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「――…………というわけなんです」
「っ……なるほど……確かに呪われていらっしゃいますね。私でどこまでお役に立てるかはわかりませんが、やってみましょう」
アベルの説明を聞き終えた神父は、アリアの珍しい症例に一瞬だけ眉間に皺を寄せたが、
「よろしくお願いします」
アリアは頭を下げた。
「では、お嬢さん後ろを向いて下さい」
「はい。…………ぁ」
神父に云われた通り、アリアが神父に背を向け祈るように手を組む。
ふと、アベルと目が合った。
「アリア、僕が居るから大丈夫だよ。いつかきっと完全に解けるよ」
「っ…………、ん……ぅん……」
アベルが優しげな瞳で見下ろしてくるものだからアリアは頬を赤く染めて俯いてしまう。
――アベル、何でそんな優しい瞳で見て来るの……?
アリアはアベルの視線から逃れるように目を閉じ、呪いが解けるようにと祈った。
神父が呪いが解けるように祈りを捧げる……。
するとアリアの呪いがまた少し、薄まった気がした。
「……ふぅ。私にはここまでが限界のようです……。まだまだ道のりは長いですね。頑張って下さいね」
「ありがとうございました。おかげで少し楽になった気がします」
神父が祈りを終えると、アリアは神父に向き直り頭を深々と下げる。
世界各地の聖職者の力を借りねば解けないという呪いは、あと何箇所回ればいいのか。
ポートセルミではあと三、四箇所と云われたが、診る人によって違うのかもしれない。
(よかった……。まだ完全に解けていない……!)
アベル的にはアリアと共にまだ旅を続けたい。
彼女の呪いが解けるのは喜ばしいことなのだが、いけないと思いつつも まだ解けないで欲しいと知らず知らずの内に願ってしまっていた。
「そうですか、それは良かった。……このような症例が出始めたのは神が居なくなったからなのでしょうか……」
先程まで穏やかな顔を崩さなかった神父が、急に暗い顔をして俯いてしまう。
いったいどうしたというのだろうか。
「「えっ?」」
アベルとアリアは同時に目蓋をぱちぱちと瞬かせていた。
「あ、いえ……、何でもないのです。旅の人、どうぞお気を付けて旅を続けられますように……神はいつでも我々をみまも……ぅっ、見守って……うっ、うっ……」
「し、神父さま……?(えっ、泣き出しちゃった!?)」
神父に何があったのかはわからないが、彼は話途中にも関わらず両手で顔を覆ってしまう。
アベルもアリアも突然のことに驚いて顔を見合わせていたのだが、アリアは俯く神父の傍へと寄って行った。
「あ、アリア!?(いったい何を……!?)」
アベルの目が見開かれる。
「うっ……ああ、いえ、大丈夫です。私も人間です、こういう日もたまにはあり……」
神父が取り乱した自分を恥じるように顔を上げようとすると、アリアが神父の背をトントンと優しく叩いていた。
「……大丈夫ですよ、神父さま。どうかお気を落とされませんように……」
「……っ、あぁ……。……貴女は…………天使、なのですか……? 神はいったい今どこに……」
アリアの優し気な瞳に神父は瞳をうるうるさせてアリアの手を取る。
「あっ!」とアベルの声が聞こえ、不快そうに眉がピクリと動いた。
「……どこにいるかは知りませんが……、その内戻って来るのでは?」
「っ……つまり……やはり神は居ない……と……」
アリアが無責任に告げるが、神父はアリアの手に縋るように頭を下げ震えている。
「…………えっと……。その内フラッと帰って来るかと……(知らないけど……)」
「うっ、うっ……」
「元気……出して下さい。ほら、辛いことはお酒を飲んで忘れるといいですよ!」
――お酒を飲めば大抵の悩みは何とかなる! お客さんのクレームも上司のお小言も次の日には持ち越さないっ。
アリアは辛いことがあると酒を飲んで忘れるタイプなのだろう。
大酒飲みではないが、転生前は嫌なことがあった時は酒を嗜んでいたようだ。
「うっ、うっ……はい……。そう……します……」
アリアが神父から手を放して彼の肩をぽんぽんと叩いた。
「……っ、取り乱して申し訳ありませんでした。他にご用はございますか?」
「あ、いえ。ありがとうございました」
神父が漸く体勢を整え背筋を伸ばすと、アリアは会釈する。
神父はまだ不安気な顔をしていたが、アリアを見ると頬をほんのりと赤く染め目を細めていた。
「……あ、お酒は ほどほどn……」
「アリア、こっち」
「えっ……? あっ、アベルっ!?」
アリアが神父に気遣い言葉を掛けようとすると、アベルはアリアの腕を掴み、ピエールとキャシーを置いて まだ調べていなかった教会右奥の部屋へと向かった。
◇
教会の右奥の部屋へとアリアを連れて行くと、アベルは振り返る。
「アベル……?」
――待たせ過ぎて怒っちゃったかな……?
アベルが何となく不機嫌そうに見えて、アリアは恐る恐る訊ねた。
「……アリア、何であの人に優しくしたの?」
「え……、だって、泣いてたから……?」
アベルの質問にアリアは訊かれるままに答える。
なぜそんなことを訊くのだろうかと不思議に思い、疑問形だ。
「……………………はぁ。君って、お節介なとこあるよね」
アベルは手の平で鼻と口を覆うと溜息を吐いて、腕を掴んだ手を放しアリアの頬に触れた。
「っ、お節介って……、そりゃまあ、そうかも知れないけど……目の前で誰かが泣いてたり困ってたりしたら助けてあげたくなるじゃない? それが人情ってものでしょ……アベルだって、今まで人助けして来たよね?」
――アベルっ、手が大きい……って、さっきからスキンシップが多いんですけどっ?
アリアは頬に触れる温かな感触にドキドキしつつ、アベルに言い返す。
不意に触れられた頬が擽ったい。
だがその手は次第に髪へと下りて行き、アベルはアリアの髪を指先で
「…………僕は頼まれなきゃ助けないよ」
「そうだっけ……? ビアンカちゃんのお父さんのカゼ薬の件……。ビアンカちゃんのために行ったんでしょ……?」
アベルが真っ直ぐ見下ろして来るのでアリアも じっと見上げ、出会って間もない頃の話を持ち出す。
ビアンカの父親の風邪薬を取りに行った親方を助けに、自主的に行ったのは他でもないアベルではなかっただろうか……。
――ビアンカちゃんのために頑張ったんだよね……?
刹那、ズキッ。と、アリアの胸が軋んだ。
もう戻らない過去のこととはいえ、あの頃には何も感じなかった洞窟探検がビアンカのためだったと考えるとちょっぴり切ない。
アリアの瞳が伏せられてしまった。
「……っ!? あ、あの時は冒険のついでで たまたま……! 別にビアンカのためとかじゃなくてっ!」
「…………ふーん……そうなんだ?」
アベルがハッとして言い訳のように告げるが、アリアの態度は素っ気ない。
当時六歳のアベルは、ただ強くなりたくて洞窟に入っただけで、ついでに役に立てるなら それはそれでいいやと思っていただけなのだ。
(アリア、何で急に不機嫌に……? 苛立ってるのは僕の方なのに……。まさか…………ヤキモチ……とか? …………ハハ、アリアが僕に……? 無いか……。)
アリア嫉妬するの回でしたとさ。
いや、最初のアレはもうビアンカのために行ったとか、そういうことじゃない気がしますけどね。
アベル洞窟好きとか言われてたし。
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読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!