見られてますよ……。何を……?
では、本編どぞ~。
まさかアリアが嫉妬しているなどとは露程にも思っていないアベルは彼女の髪から手を放し、口を開く。
「アリアって、お人好しだよね。変に親切にするから相手が勘違いするんだよ?」
「勘違いって何……? あ、親切にするとセクハラされるってこと? 失礼よねっ」
アベルの指摘にアリアは今度は頬を膨らませる。
自分で蒔いた種でもあるのだが、カジノ時代は親切にしても大体セクハラで返されることが多かった。
「っ、セクハラもそうだけど……、君、愛想良すぎ。誰彼構わず優しくするのはやめて欲しい」
アリアが優しい
アベルはアリアの行動を制限するようで言いたくなかったが、これが独占欲なのだろうと自覚した上で彼女にお願いしていた。
「やめて欲しいって……」
アリアは困ったように眉根を寄せる。
「僕と付き合ってるんだから、他の男に優しくするのはダメだよ。僕が他の女の子に優しくしてたら嫌でしょ?」
「っ……、イ、イヤ……」
「でしょ!」
アベルの例え話にアリアが首を横に振るとアベルは破顔した。
……と思ったら。
「別に……。アベルが優しい人だって知ってるから平気だよ……?」
「っ! あのねぇ……」
柔和な顔で云うアリアの返答にアベルはガクッと項垂れる。
――アリアぁぁああああっ! 僕の気持ちはわかってくれないのか……!?
ちょっぴり涙目になってしまうアベルだった。
目の前の大好きな彼女はやっぱり、自分のことをそこまで好いてくれていないのかもしれない。
――けど、今更放してなんてやらない!!
アベルはアリアの両肩を掴み“はぁ~~”と深いため息を吐いた。
すると、アリアの両手がアベルの頬に伸びる。
「…………でも、うん。アベルが嫌なら控えるね。女性ならいいかな?」
「へ……? あ、うん」
――あ、好いニオイ……。手、小さい……気持ちいい……。
アリアに両頬を包まれアベルは目を数度瞬かせてから頷いた。
アリアは優し気に目を細めてアベルを見上げている。
「じゃあ、男性が困ってる時は、アベルに相談するね?」
「ぁ、うん。そうしてくれると嬉しい……」
互いの瞳には互いしか映っておらず、アリアが穏やかな顔で問い掛けるとアベルも素直に答えた。
「……ふふっ、私、結構察するちゃんだから困ってる人見つけるの早いよ? アベル忙しくなっちゃうね?」
「っ、何でも僕が解決してあげるよ! けどっ……あんまり何でもかんでも首を突っ込まないようにね……」
「はぁい」
くすくすと笑うアリアに注意すると、彼女は甘えたような声で返事をする。
アベルはこのまま彼女に口付けをしたくなってしまった。
「…………アリア」
「あ、アベル…………」
アベルはアリアの肩を引き寄せ、唇を近付けていく。
今ならピエールもキャシーも居ないし、キスくらいしても構わないだろう。そう思っていた……の、だが。
「…………だっめ!! …………人が居るからムリッ!!」
むぎゅっ!!
アリアの手がアベルの顔を挟んで、強く押し退けた。
アベルの唇は強制的に窄められ「どうしてアリア、誰かが居たっていいじゃないか」と呟いたのだが、口が鳥の
「うぅ……(キスしたかった……)」
――旅の恥は掻き捨てなんだから、そんなに恥ずかしがるようなことじゃないのに……。
アベルはそう思いつつ、アリアの手が離れると部屋を見渡す。
アベルとアリアの居た場所は部屋に入って直ぐの通路で、部屋は奥に行くと広がっているため奥からは丁度死角になっている。
だが、その部屋の奥からシスターとテーブル席に着く老人が身を乗り出し、興奮気味でアベルとアリアを窺っていたのだった。
シスターは口元に両手を添え頬を赤くし目を剥いて凝視。
老人はアベルに目配せして、拳を握り片腕を振って「そこだ! 行け! 行け!」とアベルを応援している。
「っ……(み、見られてたのか……!)」
二人の露骨な態度にアベルもさすがに恥ずかしくなってしまい、頬を赤く染めた。
アリアの頬も赤い。
「……ね、恥ずかしいでしょ……?」
「う、うん……」
二人はそっと離れてアベルは頭の後ろを掻き掻き、アリアはサイドの髪を耳に掛けながら頭を下げて、シスターの元へと向かった。
「闇がこの世界を
アベル達が傍にやって来るなり、知らない振りでシスターが澄まし顔をする。
「……さっき、見てましたよね……」
「さ、さあ……。なんのことでしょうか……。若い男女の睦み合う様など、私は見ておりませんわ、オホホ……」
――ああ、なんということでしょう。愛し合う男女のあの甘い空気。私には刺激が強過ぎましたわ……ああ、もっと見ていたかった……!
アベルがちらっと横目でシスターを窺うと、シスターの額からは汗粒がタラタラと零れ落ちて行く。
シスターには無縁なのか、アベルとアリアのやり取りは刺激的だったようだ。
現実世界でいう所の映画のちょっとしたラブシーンに相当するのだろう。シスターの心はドキドキと興奮してしまったのだ。
((やっぱり見てたんじゃん!!))
アベルとアリアは見つめ合って互いに気まずい顔で笑い合う。
「……伝説の勇者か……」
――シスターがこうなら、そこの老人も見てたんだろうな……。
アベルはシスターの云っていた話に、ポートセルミで聞いた話と何ら変わらない……またこの話か、と思いつつ、先程のことも気になりテーブル席に着く白髪の老人に話し掛けることにした。
「あの、さっき僕達を……」
「伝説といえばお前さん、ルラフェンの地酒の伝説を知ってるかね?」
アベルが訊ねようとすると、白髪の老人が被せて質問してくる。
アリアがアベルの後ろで「ぁっ」と小さな声を発したが直ぐに両手で口元を覆って黙った。
「え? あ、いえ……(アリア……?)」
アベルはアリアの態度も、老人の云うことも何のことかと解らず首を横に振る。
老人はアベルの返答を聞くと話し始めた。老人の口からは何だか嗅いだことのあるニオイがする。
「今から100年程前に生まれた銘酒“人生のオマケ”は……。そのあまりのマズさ魔物さえも逃げ出したという……。今じゃあ下の酒場でも出しとらん。ええか、その酒を手に入れようなどと決して思わんことじゃ」
“なっ、娘さん?”
老人が最後にアベルの背後にいるアリアに視線を送って、カッと一瞬だけ目を見開く。
アリアはハッとして、うんうんと黙って頷いていた。
「え? あ、はあ……、わかりました(別にお酒なんて要らないけど……)」
――でもアリア……? 何だ? 何か隠してない……?
アリアの態度が何となくおかしい。
そして、銘酒だと云っているのにマズイと云う老人。
銘酒……とは、良い酒に付けるものなのでは……?
などと、アベルが気付くはずもなかった。
そして老人が今度はチョイチョイとアベルを手招きするので、アベルは彼の傍に寄って身を屈めると耳を貸す。
「お前さん、あそこではギューっとして逃げられなくしてからブチューじゃよ!
老人は云い終えるとニヤニヤしながらアベルの脇腹を肘で突いた。
「っ! い、いやっ、それっ、僕のペースでするんで!!」
突然の恋愛指南にアベルは驚き、老人から離れる。
「“人生のオマケ”があれば、たちまち雰囲気が良くなって…………フガフガッ」
老人は失言した! とばかりに慌てて両手で口元を塞ぐ。
アベルは特に何かを感づくことはなく溜息を吐いた。
「…………はぁ……」
「……アベルどうしたの?」
「…………っ、何でもないよ……」
――強引にキスして嫌われたらどうするんだ!? ……でも、したい!
アリアの元に戻ったアベルは自分を見上げて来る彼女の艶々の唇につい、目がいってしまった。
彼女の唇は柔らかくて甘くて、気持ちがいい。
いつでも触れたいけれど、さっきみたいに拒否される度、正直怖くなる。
――やっぱり慎重にした方がいいよね……?
場所を選べというだけの話なのだが、アベルはまだそれに気付いていない。
両想いなのに悩みが尽きないとは思わなかったアベルは日々葛藤していたのだった。
キャッキャウフフの回でした。
アベルが色々迷走してるのが楽しいw
押せ押せなアベルもいいし、弱腰なアベルもよきよき。
このお話のアベル、全然硬派じゃないんよね……。
人生を何万回(どころじゃない)も繰り返しているので、硬派で通せるはずもなく……。
他の方の書くVの主人公って結構硬派なイメージがあるんですけどね~(格好良いですよね~❤)
そして、このお話のアベルが私の好みかと云われると、どうかなぁ………………可愛くて好きですね!w
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読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!