ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

358 / 822
いつもありがとうございます、はすみくです。

蓼食う虫も好き好き。

では、本編どぞ!



第三百五十七話 蓼食う虫も……

 

「ヤダ、あそこに居る戦士のヒト、まだウロウロしてるン……!」

 

 

 前方に厳つい顔をした旅の男戦士がウロウロしているのが見え、キャシーは先頭から離脱、アベルの後ろに居たアリアに抱きつく。

 

 

(あっ! キャシー! またアリアとくっついて……! 僕もくっつきたいのに……!)

 

 

 アベルはアリアに抱き着くキャシーにやっぱりモンスターじいさん送りにしようと決めた。

 

 キャシーが居るとアベルはアリアに中々近付けないのである。

 だからなるべくパーティーにキャシーを入れないようにしていたわけだが、それでもキャシーはアリアと仲が良い。

 

 キャシーに悪気はないのはわかっているが、例えば休憩で馬車を止めると女同士で話し始めてしまうのだ。

 そこにアベルも入れてはもらえる。……入れてはもらえるのだが、いつの間にか女同士の話になってしまって、アベルはアリアと話すことが出来ずにただの聞き役に。

 

 そもそも、その話も大体がキャシーの独壇場である。

 アリアはキャシーの話が面白いのか毎回興味深そうに聞いて ただ笑っているだけのことが多い。

 アリアの笑顔を見られるのは嬉しいのだが、アベルはアリアともっと仲良くなるために話がしたいのだ。

 

 ただでさえキャンプだと魔物達がアリアを囲んで近付けないというのに、町の中までアリアを独占されてしまったら、自分はいつアリアと仲良くすればいいのか。

 

 ……だからこのままキャシーを連れて行くことは出来ない。

 キャシーの戦力だけではない、キャシーをモンスターじいさんに送りたい理由がここにあったのである。

 

 

「あ、あの人、さっきも会ったよね……!」

 

 

 アベルが ぐぬぬと拳を握り締めている間にアリアは声を上げていた。

 アリアが云うには男戦士とはキャシーとデート中にもすれ違っていたらしい。

 

 

「アリアっ、あの人アタシを見る目がヤラシイから守ってン!」

 

「っ、任せてっ!」

 

 

 怯えるように弱り目で抱き着いて来るキャシーに、アリアはヨシヨシと彼女の頭を撫でて自分の背後に匿う。

 

 

「……何? あの人、そんな眼でキャシーを見てたの?(勘違いなんじゃ……)」

 

 

 アベルはキャシーをそんな風に見る男が居るとは思えず首を傾げた。

 

 

「キャシーちゃん、おにゅーのビキニトップがセクシーでしょ? だからそれをじっと見てたの! えっちな人!」

 

「え? おにゅーのびきにとっぷ?(何だ?)」

 

 

 アリアの話を聞いたものの、アベルの首は捻られたまま。

 

 

「マルシェワゴンで買ったの。ピンクのトップスから赤に変わったでしょ!」

 

「えぇ……全然気付かなかったよ……」

 

 

 キャシーのことは仲間としては大事だが、女の子としては全く見ていないのでアベルは気にも留めていない。

 アリアに云われてキャシーを見ても“うーん……”と何が違うのかアベルにはやっぱりわからなかった。

 

 

「アベルって、些細な変化に気付かない人なの?」

 

「アリアのことなら気付くと思うけど……? 他の子の服装がどうって言われても興味ないからなぁ……」

 

「っ……そ、そうですか……」

 

 

 ――あぁ、もうアベルってば、私のこと好き過ぎなんじゃ……!?

 

 

 アベルが考え込みながら告げるとアリアはキャシーを背に匿いつつ照れてしまう。

 

 

「キャッ、アリアっ、こっちに来るわン!」

 

「っ、キャシーちゃん、アベルも居るから大丈夫だよっ」

 

 

 アベル達が張り紙まで行くには強面の男戦士の前を通らなければならない。

 徐々にその距離は近づいていた。

 

 

「アベルっ、キャシーちゃんを匿ってあげて?」

 

「……わかった(気のせいだと思うんだけどなぁ……)」

 

 

 アベルはキャシーが男戦士に狙われてるとは思えなかったが、他でもない可愛い彼女の頼みなので自分が壁になることにする。

 

 

「……アリアも僕の後ろに隠れてもいいよ?」

 

「私は平気っ、キャシーちゃんを守らなきゃ!」

 

 

 アベルとアリアはキャシーを男戦士の目に触れないよう、背後に隠しながら男戦士の脇を通り過ぎようとしていた。

 

 

「まいった! 道に迷ったようだ。この町はどうも道が複雑で困ったものだよ」

 

 

 アベル達がすれ違おうというその時に、男戦士が頭を抱え話し掛けて来る。

 

 

「っ! ……アハハ……そうですね……」

 

 

 アベルは話し掛けられてしまった手前、無視するのもどうかと思い軽く会釈しておいた。

 すると男戦士がアベルの隣のアリアに目を見開く。

 

 

「……ん? そちらのお嬢さんは……、確かさっき……」

 

「…………ども……」

 

 

 アリアもアベルと同じように軽く会釈した。

 だが、男戦士はアベルとアリア二人の背後にいるキャシーに気付き、目を細める。

 

 

「……そこの……、小さなレディー……」

 

「っ!?(アタシのことネン!?)」

 

 

 男戦士の言葉にキャシーがビクッと肩を震わせる。

 アベルが目を剥き驚く中、男戦士がキャシーの目の前まで回り込んで来た。

 

 

「先程はじっと見てしまい すまなかった。そなたの髪に咲く花飾りを見て、故郷を懐かしく思ってな……。たまには帰りたいと思ったのだが、如何せんこの町から出られぬ。良ければこの髪飾りとレディーのその花飾りを交換してはもらえないだろうか」

 

 

 男戦士は自分の持ち物から銀で作られた【ぎんのかみかざり】を差し出す。

 

 

「え……こ、この花飾りでいいのン……?」

 

 

 キャシーは頭に付いている花飾りに触れて確認を取った。

 

 

「ああ、こんなものしか無くて申し訳ないが、女性に人気の品物らしい。そなたのようなレディーに似合うはずだ。受け取っておくれ」

 

「っ、しょ、しょうがないわネン……、じゃあ、交換してあげるワ……(花飾りならすぐ作れるし……)」

 

 

 男戦士がキャシーの手に【ぎんのかみかざり】をのせる。

 手元でキラキラと輝く【ぎんのかみかざり】に惹かれ、キャシーは「新しい衣裳にピッタリねン!」と花飾りを外すと、男戦士に手渡したのだった。

 

 

「ありがとう、小さなレディー。いつかこの町から出ることが出来たら またどこかで会おう! では失礼する!」

 

 

 キャシーの花飾りを受け取ると、男戦士はほんのりと頬を染め会釈して去って行く。

 

 もしかしたら、彼は本当にキャシーを……?

 

 

「うっそだぁ……」

 

 

 ――えっ!? マ!? ナイでしょ!! アリアにってならわかるけど!

 

 

 アベルは“魔物だぜ!?”なんてヘンリーの口調を真似た言い回しで、口に出さず心の中でツッコミを入れていた。

 

 

「……はぁ、悪い人じゃなくて良かった……。でもアベル、キャシーちゃんに失礼よ。好みは人それぞれでしょ?」

 

「あっ! う、うん。ごめんねキャシー」

 

 

 アリアに(たしな)められアベルはキャシーに謝罪する。

 だが、キャシーは気にしていなかった。

 

 

「別にいいのン! アタシの美貌に振り向かないアベルんの方が珍しいだけだからン☆ あぁン。モテる女は辛いわぁぁあああンン!!」

 

 

 ――どうしましょウ! 見知らぬ男性とプレゼント交換をしてしまったワ!

 

 

 キャシーは【ぎんのかみかざり】を持ったまま、両手で拳を握り、両頬にそれを当てると あざとく顔を左右にふりふり、ぶりぶり。

 

 顔は厳つく強面な男戦士だったが、【ぎんのかみかざり】を渡す時、花飾りを受け取る時、どちらも手が緊張で震えていた気がする。

 キャシーの好みのタイプではなかったが、悪い気はしなかった。

 

 アベルはその様子を何とも言えない顔で見ている。

 

 

「ふふっ、キャシーちゃんてポジティブ~! そういうとこ素敵だね!」

 

「でしょ~ン!」

 

 

 アリアがキャシーを褒めると、キャシーはアリアの腕をぎゅっと抱きしめキャッキャッと楽しそうに話し始めた。

 

 

「っ……また……(僕の彼女に抱き着いて……!)」

 

 

 ……アベルはやっぱり面白くない。

 

 

「……はぁ。でもン、アタシ、これ装備出来ないワ……(綺麗だけド……やっぱり魔物のアタシには無理そうネン……)」

 

 

 キャシーが交換した【ぎんのかみかざり】を見下ろし溜息を吐く。

 銀は魔除けにも使われることのある素材のため、魔物であるキャシーには装備出来なかった。

 

 ところがそんなことを知らないアリアは……。

 

 

「そうなの? 付けてあげるよ」

 

「えぇっ!? そんなこと出来るノン!?」

 

「やってみよ、貸して?」

 

「…………じゃ、じゃア……」

 

 

 キャシーがアリアに【ぎんのかみかざり】を渡すと、アリアはキャシーの髪にそれを飾ろうとする。

 が、何故かキャシーの髪には【ぎんのかみかざり】は髪に留まらず地面に落っこちてしまった。

 




女の子は群れる傾向があるので、男性は入りにくいですよね。
アベルは巧いことキャシーを排除したいわけです。

キャシーは何も悪いことはしてないんですけどね……。

迷子の戦士、未来でも迷ってるんですかね?

キャシーって、何故銀の髪飾りを装備出来ないのでしょうか。
女の子なのに……。

----------------------------------------------------------------------
読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。