井戸を下りるって相当怖いと思うのは私だけでしょうか。
ゲームだと下りますけど……。
では、本編どぞ。
「あれ? 落っこちちゃった。おかしいなぁ……確かに留めたはずなんだけど……」
アリアは地面に落ちた【ぎんのかみかざり】を拾ってもう一度試してみたが、やはり【ぎんのかみかざり】はキャシーの髪に留まらなかった。
「……やっぱりダメよねン。アタシそれ装備出来ないノン」
「そうなんだ……、せっかく交換したのに……」
もう一度落ちてしまった【ぎんのかみかざり】をアリアは拾ってキャシーの手にのせる。
すると、キャシーはそのまま【ぎんのかみかざり】をアリアに差し出していた。
「アリアなら装備できるんじゃないノ? アタシならまた花飾りを作れバいいカラ」
「えっ? でもそれ、キャシーちゃんが貰ったものでしょ?」
【ぎんのかみかざり】を差し出されたものの、アリアは受け取ろうとはしない。
「でもン……、アタシ装備できないシ……」
「せっかくだし、大事にとっておいたら?」
「でもン……、アタシ魔物だしィ……」
アリアとキャシーが話す中、いつものように話を聞いていたアベルはふと何かを思い出していた。
(【ぎんのかみかざり】……? 前にどこかで……………………あ!)
アベルは思い当たったのか ぽんっと手を叩き合わせる。
「アリアの銀の髪飾りならあるよ?」
「え?」
「……前にオラクルベリーでタンスを調べてね。貰ったんだ」
――丁度良かった! アリアにプレゼントしよう!
アベルは【ふくろ】から【ぎんのかみかざり】を取り出し、アリアの目の前に差し出す。
「はい、アリア。君にあげる」
「あっ、ありがとう…………あっ!」
アリアが受け取ろうとすると、アベルは差し出した【ぎんのかみかざり】を高く掲げてしまった。
――あれ? くれないの……?
アリアはアベルの行動に目を瞬かせる。
「……きっと似合うと思うよ。付けてあげるね」
アベルはそう云うと、アリアの髪に【ぎんのかみかざり】を付けてやった。
彼女のプラチナブロンドに【ぎんのかみかざり】を冠すると、随分と神秘的に映る。
修道院でも云われたことだが、お喋りさえしなければアリアは見た目だけは聖女のように見えるのだ。
「…………うん、綺麗だ。よく似合ってる。聖女……みたいだね」
アベルはアリアの姿に目を細め、愛おし気にアリアを見つめた。
――ああ~っ! アリア! なんて綺麗なんだ……! こんなことなら もっと早く付けてあげれば良かった!
オラクルベリーのカジノで手に入れた【ぎんのかみかざり】の存在をすっかり忘れていたアベルは少しばかり後悔した。
「っっ……! あっ、ありがとう……」
アベルに褒められ、アリアは ぽっと頬を染める。
――うわぁああああっ、アベル恥ずかしいよぉぉおおおっ!
何でそんなスマートに髪飾りなんて付けちゃうの!?
何でそんなスマートに褒めちゃうの!?
ピエールとキャシーの前にも関わらず今回は誤魔化すことが出来ず、アリアは恐縮して熱くなった頬に手を当て戸惑いの表情を浮かべていた。
「フフ……、気に入ってもらえたみたいで良かった。これでキャシー、君のは必要なくなったよ?」
「アッ。…………そうネン……」
アベルがチラッとキャシーを窺うと、キャシーは頬をプクッと膨らませる。
キャシーもアリアに【ぎんのかみかざり】をあげたかったのかもしれない。
口を窄めながら自分の荷物に【ぎんのかみかざり】を仕舞っていた。
「よし、ここまで来れば僕でも解る。キャシー、道案内ありがとう。じゃあ行こうか」
アベルの一声で、北東の広場へと下りると壁に貼られた貼り紙を目にしてベネットじいさんの家へと向かった。
◇
にゃぁん……。
ベネットじいさんの家に向かう途中、井戸の前を通ると井戸から猫の鳴き声が聞こえる。
「ね、アベル、今猫の鳴き声が聞こえなかった?」
「ん?」
「……井戸の方から聞こえた気がするのだけど……」
にゃぁん……。
アリアが井戸に近寄って行くと、井戸の底からか細い猫の鳴き声が聞こえた。
「あっ、ほら、やっぱり聞こえた! ネコちゃん出られなくて困ってるんじゃないかな? 助けてあげられないかな……? ダメ……?」
「……いいよ。助けに行こうか」
アリアが眉をハの字にして懇願するので、アベルは断る理由がない。可愛い彼女の為なら喜んで……と井戸を調べることにした。
◇
◇
◇
『気を付けてね! 手、ロープから放さないように!』
先に井戸を下りたアベルが地上から井戸を覗くアリアを見上げる。
「ん、うん……」
アリアも井戸のロープをしっかりと掴み降下して行った。
――前よりは上手く下りられるようになったけど……井戸の上り下りって大変……。
手は痛むし、太ももも擦れるしちょっと怖いし、あんまり下りたくないな……。
でも、ゲームプレイ中は井戸によく入って行ってたのよね……。
いざリアルに経験すると消防士か自衛隊の訓練のようだとアリアは思ってしまう。
そんな時あとちょっとで井戸の底という所で、
ズルッ……
「っ、あっ!(滑っ……!)」
脚が滑り咄嗟に手でしっかりロープに掴まったものの、手だけでは身体を支え切れずにアリアは重力にならって井戸の底へと落ちて行った。
「ひゃっ……!」
“トサッ”
悲鳴を上げそうになったものの、それはすぐに止まった。
アリアは井戸の底に落ちたものの地面に身体を打ち付けることなく、アベルの腕に受け止められていたのだ。
「はいキャッチ。うん、やっぱり僕が先に下りてて正解だったね」
「ぁ……、アベル……。っ……!(やだ、アベル格好いい……!)」
アベルが優しい瞳で見下ろし目が合うと、アリアは堪らずアベルの肩に手を伸ばして抱き着く。
(あふんっ……!)
「あっ……アリアっ?」
――あぁ、柔らかいっ……! 二日振りの抱擁……!
突然の抱擁にアベルの胸が きゅんと疼いた。
「こ、怖かったのかい……?」
アベルは恐る恐るアリアに訊いてみる。
彼女を抱えているから自分から抱きしめ返すことは出来ないのが辛いところである。
「……ううん、アベルにくっつきたかっただけ……」
「っ!? ……そ、そうなんだっ……(いつでもくっついてくれていいんだけど!?)」
アリアがアベルの耳元でこっそり呟くと、アベルの頬が赤く染まった。
――アリアが甘えてくれてる!? 嬉しいっ!!
彼女の温もりが心地良くてこのまま連れ去りたい衝動に駆られる。
だが、ピエールとキャシーが井戸を下りて来ると、アリアは すぐに手を放してしまった。
「っ……、アベル下ろして」
「あっ、うん」
アベルは名残惜しいがアリアを地面に下ろしてやる。
するとアリアは口元に手を添え、ピエールとキャシーにわからないようにアベルに何か言いたげな顔で見上げていた。
「……? 何……?」
アベルは何だろうと首を傾げてアリアの方へと耳を寄せる。
「…………二人きりになったら、またハグしてもいい……?」
「っ! い、いいに決まってるでしょ!(ていうか、なんなら こっちからするけどっ!?)」
こそっと告げるアリアの可愛いお願いにアベルの頬が瞬時に茹った。
「ホント? ふふっ、うれしい……。じゃあ、また今度ねっ!」
アリアはピエールとキャシーに気付かれないよう、手で口元を隠しながら ちゅっ、と小さな水音を鳴らす。
アベルの耳に何かが触れた気がした。
それはほんの僅かな接触だったのに、アベルの身体を即座に熱くさせ、その熱が全身へと巡る。
そうしてアリアはアベルからすぐに離れるとピエールとキャシーに話し掛けていた。
ピエールには「大丈夫でしたか?」と訊ねられ、キャシーからは「鈍クサ……」と
そんな彼女の様子を眺めていたアベルはといえば。
「っ……ぁあ……もう……、アリア、君って
――可愛過ぎるんだけどっっ……! おっきしちゃうでしょ……!!
アベルは興奮してしまい顔を両手で覆って“はー……”と深く息を吐いたのだった。
アリアがあざとい……。どうしたアラサー……www
いくつになっても恋は盲目って感じですかね……。フーヤレヤレ。
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読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!