ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

喋る猫ちゃん。にゃー!

では、本編どぞ。



第三百五十九話 喋る猫

 

「ネコちゃん、助けに来たよ」

 

「にゃ~ん?」

 

 

 気を取り直して、アリアが井戸に居た猫に話し掛ける。

 話し掛けられた猫はアベル達の元へと寄って来て、何かを伝えたそうにアベルとアリアをじっと見上げていた。

 

 

「ん……? 何か……伝えたがってるみたい。ね、アベル」

 

「あ、うん。こんにちは……?」

 

 

 アリアにマントを引かれ、アベルは猫に話し掛けてみる。

 

 

 すると なんと!

 

 

「まったくベネットじいさんにも困ったものだにゃ~。じいさんの庭が気に入ってるのに煙くっていられないんにゃ! でもあんたにグチを聞いてもらって少しすっきりしたにゃん」

 

 

 猫は流暢に話し出したのだった。

 

 

「わっ、ネコが喋った!」

 

 

 猫の様子にアリアは驚き咄嗟にアベルの腕を掴んだ。

 アベルは「ぁっ」と小さく声を発して、ぽっと頬を赤く染めている。

 

 猫の話はまだ続いていた。

 

 

「お礼にいいこと教えるにゃ。この世界のあちこちには その地域の名産品と言われるものがあるにゃ。いろいろ旅をすればきっと手に入るにゃから集めておくとよいにゃん」

 

 

 猫はそれだけ云うと“にゃぁ~ん”と目を細めて満足したようにアベル達に背を向け井戸の中を散歩し始めてしまった。

 愚痴を聞いて欲しかっただけで、助けて欲しかったわけではなかったようだ。

 

 アリアは猫が去って行くとアベルから手を放す。

 

 

「喋る猫か……すごいな……(アリア、もっと触っててもいいんだよ?)」

 

 

 アベルは離れてしまったアリアの手が名残惜しくて留めようと思ったが、伸ばした手はタイミング悪く空を切っていた。

 そんなアリアは猫の話に腕組みして何やら思案顔である。

 

 

「名産品……? あ、そういえばいくつか持ってたっけ……」

 

「あ~、コワモテかかしのことかい?」

 

 

 見る? とアベルは【ふくろ】をゴソゴソ。

 アリアは肩をびくりと揺らして首を横に振った。

 

 

「っっ! 出さなくていいよっ! っ、ここ暗いから本当、ヤメテ……」

 

「ははっ、ごめんごめん」

 

 

 ちょっぴり涙目でアリアが【ふくろ】を探るアベルの手を止めて来るので、アベルは嬉しそうに【コワモテかかし】を出すのを止める。

 

 

 ――涙目になっちゃって……可愛いなぁ、そんなに怖いのかな……?

 

 

 アベルが目を細めて【ふくろ】から手を放した。

 

 

「名産品といえば、安眠枕もそうだよね」

 

「そうだね、修道院で貰った木彫りの女神像も名産品って鑑定(インパス)で出てたなぁ」

 

 

 アリアが訊ねると、アベルは今度は自分の持ち物袋を確認する。

 そこには【木ぼりの女神像】が入っていた。

 

 これ。

 

 と、アベルは【木ぼりの女神像】を持ち物袋から取り出し、アリアに見せる。

 

 

「木彫りの女神像? あ……私一度だけ彫ったことがあるよ。あれ名産品だったんだ? アベル貰ったの?」

 

「うん、多分アリアが彫ったものを貰ったと思う」

 

「え? どうしてわかるの? 確かに私、一人で出来ないからシスターと一緒に彫ったけど……一体しか彫ってないんだよ……?」

 

 

 ――【木ぼりの女神像】はシスターの誰もが彫っているものだから、その内の一体を貰っただけなんじゃ……?

 

 

 アリアはアベルが手にしている【木ぼりの女神像】をまじまじと見つめた。

 すると確かに見覚えのあるちょっぴり歪な彫りの入った【木ぼりの女神像】に既視感を覚え「ぁっ」と声を漏らす。

 

 

「……アリアが彫ったものだよね?」

 

「っ……アベルすごい。よくわかったね……。そうなの……、これ、左側の髪を彫ってる時に手が滑っちゃって……、ナイフが飛んで行っちゃったの……」

 

 

 アベルの質問にアリアは首を縦に下ろすと、当時の出来事を話し出した。

 【木ぼりの女神像】をシスターに教わりながら彫っている最中、勢い余ってナイフが飛んで行ったらしい。

 

 

「え゛」

 

「そのナイフが壁に刺さっちゃって……私びっくりして……。シスターが“そこまで!”って言って後はお任せしちゃったんだ」

 

「……っ、怪我はしなかったのかい……?」

 

「うん、大丈夫。左手親指の皮をちょっと()いじゃったくらいだよ」

 

 

 アリアは左手をひらひらと振ってみせる。

 

 

「っ、してるんじゃん!! 見せて!」

 

 

 アベルは慌ててアリアの左手親指を確認する。

 傷が残っている様子は無かった。

 

 

「あっ、もう治ってるよ!?」

 

「っ…………、アリア、君、結構抜けてるとこあるから気を付けてよね……!」

 

 

 アベルはアリアの手に傷が付いていないことを確認すると ほっと胸を撫で下ろす。

 

 

「抜けてるって失礼な……」

 

 

 ――アベルって昔からちょいちょい私が出来ない子みたいに言うよね……。

 

 

 私、そんなに抜けてたかな。

 自分ではしっかりしてる方だと思うのだけど……。

 

 

 アベルの心配は嬉しいが、出来ない子認定されていることがアリアはちょっぴり悲しかった。

 

 

 ……結局、井戸で猫が助けを呼んでいたわけではないので、アベル達は地上に戻ることに。

 

 

「よっと……」

 

 

 アベルが井戸から出て来ると、先に地上に戻っていたアリアがアベルの手を引いてくれる。

 

 

「……アベル、ぱんつ見た?」

 

「っっ!? み、見てないけどっ!?」

 

 

 ――ちょっとだけねっ!

 

 

 あまり まじまじ見ると洒落にならないので、アベルはチラ見だけしてアリアが無事上り切ったのを見届けてからロープを上っていた。

 じっくり見たいのは山々だが じっくり観察後、しばらく行動不能になったサンタローズの二の舞は演じたくないものである。

 

 アリアにじっと見られ、はっきりと訊かれてしまったアベルは気まずさに彼女から目を逸らしていた。

 

 

「あ、その反応……、やっぱり見たのね!? ……も~……アベルったら えっちなんだから」

 

 

 アベルの嘘は一瞬でばれてしまう。

 アリアは眉根を寄せてちょっぴり不満顔だった。

 

 だが声は怒っているというよりは呆れた様子で「しょうがないなぁ……」と最終的には微笑んでいた。

 

 

「っ……、アリアがそんな格好してるのが悪いんだよ……。スカート短いしさ……」

 

 

 アベルは彼女から瞳を逸らしたまま、彼女の所為にする。

 

 

 ――好きな女の子なんだから当然見るに決まってるでしょ! 見たら興奮しちゃうでしょ!

 

 

 アベルの気持ちなどアリアには到底わかるはずもない。

 彼女は愛らしい瞳をぱちぱちと瞬かせていた。

 

 

「っ、ほら、ベネットじいさんの家はもうすぐだ! 行くよ」

 

「あっ、アベル待って!」

 

 

 アベルは再び歩き出し、目と鼻の先のベネットの家へと向かう。

 アリアとピエール、キャシーも後ろに続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ベネット宅に入ると、まず目についたのは巨大なツボだった。大きさはアベルの三倍以上はあるかもしれない。

 そのツボの中からコポコポと茹るような音が僅かに聞こえ、白い煙が次から次へモクモクと発生し、その煙が天井の煙突へと昇っている。

 

 これが恐らく町の人が煙いと言っていた原因だ。

 

 

「ツ・ボ!!」

 

 

 アベルは大きなツボを目にし、声を上げた。

 

 

「投げちゃダメだよ?」

 

「っ、投げないよっ!」

 

 

 アリアが即座にツッコんで来たのでアベルは否定する。

 自分よりも大きなツボはさすがに投げられない。

 

 というか このツボ、よく見れば取っ手がついているではないか。

 ツボではなく、巨大な鍋である。

 

 

「ベネットさんはどこかしら?」

 

「アリア、ちょっと待ってて」

 

「へ?」

 

 

 アベルはアリアに一言残し、ベネット宅の奥にあった普通サイズのツボを割りに行ってしまった。

 ツボは三つあり、そのうち一つに【やくそう】が入っていたようで、手に入れると【ふくろ】に詰める。

 ついでに部屋にあった本棚も調べ、ふむふむ、と興味深い本でも見つけたのだろう、真剣な顔で読み込んだ。

 

 それが終わると扉の前で待つアリアの傍に戻って来たのだが、今度は壁際にタル二つを見つけ、それも破壊。

 その一つに【魔法の聖水】が入っていたので、アリアに渡そうと持って来たのだった。

 

 

「アリアお待たせ。これ、アリアに」

 

「アベル…………あり……っ(ごめんねアベル……)」

 

 

 アベルが【魔法の聖水】を差し出すと、アリアはそれを受け取る。

 

 

 ――わ、笑っちゃいけないんだけどっ、笑っちゃいそう……! やっぱりツボとタルがあると壊したくなるのね……!!

 

 

 部屋の調べが終わり、妙にすっきりした顔のアベルにアリアは笑みが零れそうになる。

 ……が、何とか堪えた。

 

 盲目にツボとタルを壊すアベルの姿はなんともシュールなのだ。

 

 その様子を巨大鍋の陰から杖を突いた白髪の老人男性が目を見開き凝視している。

 恐らく彼が【ベネットじいさん】なのだろう。

 アベルはアリアに【魔法の聖水】を渡し終えるとベネットに振り返った。

 




名産博物館が後に出て来る予定なので、ネコちゃんとは話す必要があったわけです。

そして、漸くベネットじいさん宅までやって来ましたね!

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読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!
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