ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

一泊って……まだ昼間ですよ……!

では、本編どぞ。



第三百六十一話 今夜は一泊しませんか?

 

「ねえ、アベル?」

 

「ん~?」

 

「……そんな片っ端から客室の扉開けて……お部屋チェックでもしてるの?」

 

「えっ!? あっ違っ、えと、何か無いかなって……(アリア鋭いっ!)」

 

 

 吟遊詩人の部屋を後にしてもアベルは各客室の扉を開き、一つ一つチェックしていた。

 そんなアベルにアリアが不思議そうに訊ねるわけだが、アベルは一瞬目を剥いて彼女から目を逸らす。

 

 

「ふーん、そっか。タンス気になっちゃうもんね?」

 

「そうそう! ここ、結構いい部屋だね!(よし、二人部屋!)」

 

 

 新たな扉を開いた先にはベッドが二つあり、二人部屋だとわかった。

 これまでの部屋とは違い、赤い絨毯が敷き詰められていて他の部屋よりグレードが高そうに見える。

 

 アリアは“しょうがないなぁ”とアベルの後ろで微笑んでいた。

 

 

 ――この部屋なら、二人きりになれる……!?

 

 

 二人部屋には勿論タンスも置いてある。

 アベルはタンスチェックも欠かさないが、今はアリアと二人きりになれる部屋を探しているのだ。

 

 なにせキャンプ中は仲魔達に阻まれ物理的にアリアに近付けない。

 近付けるとしたらアリアが眠った後で、それでは話が出来ないではないか。

 

 唯一確実に二人きりになれるのは宿屋のみ。

 

 

(僕はもっと、君と語らいたいんだ……!)

 

 

 アベルは部屋のタンスを調べつつ、横目で中を見渡すアリアを盗み見る。

 次第に彼女は「あ、森が見えるね!」と部屋の奥、窓の外を見ていた。

 

 

 アリアと物理的な距離も もちろん縮めたいのだが、それよりも先ずは心の距離を近付けたい。

 

 一昨日の夜のように酒場に行って少しのお酒でも飲んで、他愛のない話が出来たなら……。

 そしてあわよくばスキンシップも取れたらいい。口付けとその先も期待したりなんかして……。

 

 【ルラムーン草】を採って戻って来るには日数が掛かる。

 

 それまで二人きりになれないのは辛過ぎる気がして、今日はルラフェンで一泊し、アリアと少しでも距離を縮めたいとアベルは思っていた。

 

 ところが、アリアはそんなアベルの気持ちなど知りもしないわけで。

 

 

「今夜はここに泊まろうよ」

 

 

 アベルは宿泊の予約をしようと提案するのだが……。

 

 

「え? ねえ、アベル……」

 

「う、ん?」

 

「まだ宿を取るには早くない?」

 

 

 ――まだお昼過ぎで、今から移動すればその分早く戻れると思うんだけど……。

 

 

 ベネットおじいさんも待ってるのに……と、アリアは【ルラムーン草】採取に早く行きたい様子である。

 

 

「そうかなぁ……こういうのは早めに取っておいた方が……」

 

 

 ――アリアは僕と二人きりになりたくないのか……? ……なわけないよね……?

 

 

 勇者の情報を探してはいるが、そんなすぐに手に入る情報ではないことくらいわかっている。

 つまり、特に急ぐ旅でもないわけだ。ベネットなど多少待たせても問題ない。

 

 アベルは、今はそんなことよりアリアと一緒に過ごす方が大事だと肩書である【恋のドレイ】としての本分を発揮していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 アベル達は二人部屋を後にすると、一階へと下りて行く(途中廊下にツボも置いてあったが、しっかり割って【ちいさなメダル】をゲットである)。

 

 

 一階に下りた途端、キィキィという金切り声が聞こえて来た。

 その声の方へと目をやれば、フロントで貴族のようなドレス姿の女性と、その女性の従者らしき気弱そうな男性が宿屋の男性スタッフになにやら言い募っている。

 

 

「すいません……。その……。あの……。オラと奥さまは……。だから部屋はその……。もごもご……」

 

「ええと……ではお部屋ですが、お一人様用でございますか、それともお二人部屋で……」

 

 

 気弱な男性が男性スタッフに もごもごと小さな声で告げるのだが、男性スタッフにはよく聞き取れず、耳に手を当て音を拾おうとしていた。

 その隣でドレス姿の女性が気弱な男性に向け、キィキィと怒鳴っている。

 えらく気の強そうな女性だ。

 

 

「ざあましょ! ざあましょ! だから私に相応しい部屋に……! ほらっ! はっきり言うざあますよ!」

 

「その……。あの……。オラと奥さまは……」

 

 

 ドレス姿の女性が口篭もる気弱な男性を睨み付け はっきり言うよう発破をかけるのだが、気弱な男性はやっぱりはっきり言えずに もごもご。

 その様子にドレス姿の女性はまたキィキィと怒鳴り始めてしまった。

 

 

「お客さま、落ち着いて下さい。こちらでお部屋をお取りしましょうか?」

 

「なんてことざあましょ! この私に自分で部屋を取れと!? なんてことざあましょ!」

 

 

 フロントには二人男性スタッフがいたのだが、一人は気弱な男性に掛かり切りで先程からあの調子である。

 もう一人の男性スタッフが気を利かせ、ドレス姿の女性に直接部屋の話を持ち掛けたのだが、気に入らなかったのか態度は変わらず……。

 

 

「まったく何をしているのざあましょ! 宿も満足にとれないなんてトロくさいったら ないざあますわ!」

 

 

 ドレス姿の女性は不機嫌を露わに腕組みをし、顎を突き出して気弱な男性を睨み付けていた。

 宿屋の男性スタッフ二人が困った様子で二人の相手をしているため、今は宿の受付を出来そうにない。

 

 

 二階から下りて来たアベル達はしばらく様子を見ていたわけだが、同じことの繰り返しで順番が回って来ることはなかった。

 

 

「……なんだか、お取込み中みたい……。ねえアベル、戻って来た時に泊まればいいんじゃない?」

 

「……っ……そんな……」

 

 

 ――宿屋に泊まれないなんてことある!?

 

 

 アリアに「町を出よう?」と促され、アベルはショックを受けたような顔をする。

 

 

「アベル……もう疲れちゃった? そんなに休みたかったの……?」

 

「っ、そうじゃないけど……」

 

 

 ――町を出たら、しばらく二人きりになれないんだよ!?

 

 

 アリアが きょとんとした顔で訊ねるので、アベルは自分ばかりが二人きりになりたがってるように思えて上手く言えずに彼女から顔を逸らした。

 

 すると、アリアはアベルの頬を両手でそっと挟んで、自分に向ける。

 

 

「アベル……?」

 

「っ、ぁ……えと……」

 

 

 アベルはアリアを真っ直ぐ見下ろし、彼女と目を合わせていた。

 そして彼女の神秘的な宝石の瞳に釘付けになってしまう。

 

 

 ――あぁ……可愛い……手が気持ちいい……。

 

 

「ね、アベル。目、逸らさないで? 何か言いたいことがあるなら言っていいんだよ?」

 

「えっ? あ、うん……大丈夫だよ……」

 

 

 アリアが心配そうに訊ねて来るので、アベルは彼女の両手に触れて口角を上げた。

 

 

 ――アリア、僕の心配をしてくれたんだね……。

 

 

 そう思った途端、指先にふれた滑らかな肌の感触も相まって、アベルの胸が火が灯ったように熱くなる。

 

 

 アリアが自分を想ってくれている。

 そう思うだけでアベルは満たされていく気がした。

 

 

「そう? 何かあったら言ってね? じゃあ【ルラムーン草】を採りに行こうよっ!」

 

「あっ、アリア……!」

 

 

 アベルの返事を聞くとアリアは明るく微笑んで、アベルから手を放し宿屋から出て行ってしまう。

 

 

 ――二人きりはしばらくお預けか……、まあ……ずっと一緒だし、これ以上は我儘なのかな……?

 

 

 自分ばかり想いが膨らんでいる気がして少し淋しいが、仕方ない。

 アベルはアリアを追い掛けるように歩き出した。

 

 と、アベルの後ろに続くピエールとキャシーが声を掛けて来る。

 

 

「主殿。何をお考えなのかはわかりませんが……、アリア嬢はいつも主殿を想っておられますよ」

 

「そぉよン。あの子、ちょーっと解り辛いとこもあるケド、アベルんのことホント大好きなんだカラ」

 

 

 “アベルんはもうちょっとアリアを信じてあげないト!”

 

 

 キャシーが「アタシが居るのは次の仲魔が出来るまでなんダカラ、しっかりしてよネン」とアベルの腕をポンポンと叩いた。

 

 

「っ……、そ、そう……?」

 

「「そうそう!」」

 

 

 落ち込んでいるように見えたのだろう、アベルはピエールとキャシーに励まされ、照れたように頭の後ろを掻く。

 

 仲魔達に心配させたことを申し訳なく思いつつ、アベルは宿屋を後にし、外で待っていたアリアに微笑み掛けると、彼女は満面の笑みでアベルに手を振っていた。

 

 

「行こうか!」

 

 

 アベルは気持ちを切り替えルラフェンの町を後にするのだった……。

 




アベルは先に一泊してイチャイチャしたかったようですが、まだ真昼間。
どの道キャンプするので、先に進んだ方が良さそうです。

漸く出発ですね~。

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読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!
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