アベルの本気……マジっすか!
では、本編どぞ。
――ふっざけんなぁっ! 僕とアリアの邪魔をするなぁあああっっ!!
現れた魔物は【キラーパンサー】一体と【パペットマン】二体だ。
アベルは怒りに満ちた殺気だった瞳で魔物の群れに切り掛かって行く。
かなりのお怒りモードである。
アベルは一太刀で野生の【キラーパンサー】を倒してしまった。
出た、会心の一撃!
……なのである。
斬る際に「プックルめぇっ!」と聞こえた気がしたが、気の所為だろう。
もしや、アベルはアリアの布団代わりになることが多かったプックルに腹を立てていたのか……?
馬車から戦闘の様子を見ていたプックルが、ビクッと背筋を伸ばした後で震えた。
(わ、我、主に何かしたか……?)
アベルの鬼の形相にプックルは、しばらくアベルには近付かないようにしようと誓う。
「すごい……! 会心の一撃ね!(アベル格好いい~!!)」
アベルの
……アベルが心配しなくとも、アリアはアベルにしっかり惚れているのである。
「はぁっ……アリアっ、バギマ打てる!? 残り二体にバギマを!」
「はいっ! ……バギマッ!」
アベルの指示の下、アリアは残った魔物【パペットマン】二体に【バギマ】を放った。
アリアの呪文に【パペットマン】一体が倒れ、魔物の群れの残りはあと一体。
今回の彼女の呪文は単発だ。
今日は昨夜アベルが予想した通り呪いの発現日である。魔力低下のためアリアお得意の二連続呪文が放てない。
「ピエール とどめを頼む!」
「そりゃっ! うりゃっ!」
残った【パペットマン】一体をピエールの【はがねのつるぎ】が貫き魔物の群れは一掃された。
これでまた一つ経験を得られてアベル達のレベルが上がった気がする。
「…………はぁ…………」
戦闘を終えると、ふりだしに戻る。
アベルは溜息を吐いて、その場に座り込むとぼんやりと遠くを見つめた。
そんなアベルの元にアリアがやって来る。
「……アベル……、最近溜息ばっかりだね?」
アリアはアベルの隣にやって来るとアベルと同じようにしゃがみ込んだ。
「あ、アリア……」
「どうしたの?」
「……っ……何でもない……」
――っ、抱きしめたいけど、勢い余って押し倒しそうだ……!!
アベルは久しぶりに触れられる距離にいるアリアに瞳を揺らす。
「……アベル……?(何か、泣きそうな顔してる……)」
――どうしたんだろう……、何かあったのかな……?
アベルの様子がおかしい気がして、アリアはそっとアベルの頬に触れようと手を伸ばした。
だがアリアの手がアベルに触れることは無かった。
「ぁ……」
「ぁっ、違っ、アリアごめ……」
アリアの手が触れる寸前、アベルはつい避けてしまっていたのだ。
アベルのそんな態度にアリアは瞳をぱちぱちと大きく瞬かせる。
「ぁっ、ううん、私こそごめん……触られるの嫌だった……?」
「っ、違う。けど……今はその……、触らないで欲しいかな……」
「えっ」
(君に噛みついてしまいそうだから……。)
瞳を瞬かせるアリアにアベルは触れたい衝動に駆られていることを言い出せなかった。
今アリアに触れられたらアリアが嫌がる、仲魔達の
アリア不足は否めないが、せめて戦闘後の興奮が落ち着くまではそっとしておいて欲しいアベルだった。
「……そ、そっか……、じゃ、じゃあ私……向こうに行ってるね……。もう触らないから許してね……」
――アベル、もう私に飽きちゃったのかな……ちょっと悲しいけど……傷は浅い内がいいっていうし……。
アリアはアベルの一言がショックだったのかフラフラと立ち上がってピエール達の元へと歩いて行く。
「…………え? もう触らないって…………あっ、アリア……!?」
彼女の残した言葉にハッとして、アベルは立ち去ったアリアの背に問い掛ける。
――えっ、ちょ、今、アリア何か誤解してった……!?
「……ふふっ、アベルって飽きるの早いんだね」
アベルの問い掛けにアリアは振り返って優しく微笑んだ。
「飽きる……? 何……?」
「…………ははっ、大丈夫大丈夫! 私はほらっ、元々繋ぎだからさっ」
「アリア何……? 繋ぎって何のこと……?」
「ちょっと休憩したら行こっ? 目的地、もうすぐだよね!」
話の噛み合わないアリアにアベルは何度も問い掛けるが、アリアは何を勘違いしているのか一言残してピエール達の元へと走って行く。
「アリアッ! 待って! 待ってくれっ……!!」
――何? 意味がわからない……! けど、何か誤解してる……!!
アベルはアリアを追い掛ける。
そして、すぐに彼女の手首を掴んで振り返らせた。
「アリアッ! 今、何考えてた!?」
「っ、えっ?」
――わっ、アベルが近いっ!!
アベルに引き寄せられ真っ直ぐ覗き込まれると、アリアは目を見開く。
怒っているのか、アベルの眉間には
「何考えてたの!?」
「っ……、ぁ、えと……」
「教えてくれっ!」
「……ぁ……アベルが私に飽きたのかと……」
「はぁっ!? 何で!? ついこの間好きって言ったばかりなのに!?」
「っ……だって……」
アベルの追及にアリアは口篭る。
――だってアベル、最近好きって……言ってくれなくなったから……。
なんて……アリアは恥ずかしくて言えなかった。
「アリアっ!?」
「っ……! わ、私……、っ、ごめんなさい……。えと……、飽きてないの……?」
アベルの怒ったような大きな声にアリアは肩を揺らす。
大声を上げられ委縮した様子で彼女は目を伏せてしまった。前世のトラウマなのだろうか、男性の大声が苦手なようだ。
「飽きてないよ! 飽きるどころか、沼ってるし!」
「ぬ、沼……?」
――私に……ハマってるってこと……?
アベルが少し声のボリュームを下げると、アリアはチラッとアベルを見上げる。
すると、アベルの腕がアリアの腰に回されていく。
「…………はぁ……。アリア、僕達お互いのこともっと知った方がいい気がする」
「う、ん……?(あっ、こ、腰が引き寄せられ……)」
――わわっ!! アベルのおでこが……!!
抱く様に腰を引き寄せられたアリアの額にアベルが自分の額をくっ付ける。
鼻先が触れそうに近い。
「……アリア、僕は君に飽きたりしないよ。まだお互い若いから、君が僕を信じられないのもわかる気もするけど……。僕は本気だからね」
「ほ、本気……?」
間近で真っ直ぐ見つめて来るアベルの吐息が唇に触れ、アリアは小さく声を発した。
「……アリア。君は僕が望む未来を勝ち取れるように協力してくれるんだったよね?」
「あ……、うん……」
「……アリアが本気になってくれないと未来は変わらない気がする。僕は未来を変えるよ。……僕はもう、運命に翻弄されてた子どもじゃないから……」
「未来を変える……」
――大筋は変わらない……のに……?
アベルの真剣な眼差しにアリアは再び目を伏せてしまう。
これまでも多少何かが変わることはあったのだろう。
けれど大きな流れはきっと変わらない。
それはアベルがどれだけ自分を想ってくれていても、自分がアベルをどれだけ想っていても……二人の気持ちなど関係ない気がしてならなかった。
それでも、アベルは未来を変えるという……。
アベルはこれからも未来を変えるために努力していくことにしたようです。
そのためにはイレギュラーなアリアの協力が欠かせないわけで。
しばらくいちゃいちゃが続きます。
エチケット袋必要ですかね。
----------------------------------------------------------------------
読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!