暴走したら止めないといけませんねぇ。
では、本編どぞー。
「ちょっ、ちょっとアベルやめてっ! 頭なんて殴るものじゃないよ!?」
「僕はっ……! アリアと居るとっ……! そんなことばかり考えてるんだ……!!」
ゴッ、ゴッ……!
――アリアが欲しい……!!
アベルは喋りながら何度も何度も自分の頭を殴りつける。
それは次第に頬にも入るようになっていった。
何度殴りつけても、アリアを抱きたい想いは消えていかなかった。
「っ……、アベルぅ、血、血が……!」
ゴッ、ゴッ……!
アリアが心配する中アベルは自己を殴り続ける。
「っ、この頭の中の煩悩さえ消えれば、君を傷付けなくて済むよね……!!」
ゴッ、ゴッ……!
アベルの頬が切れ、紅く血が滲んでいく。
「うぅっ……!!(アベルっ!)」
ゴッ、ゴッ……!
ゴッ、ゴッ……!
ゴッ、ゴッ……!
ゴッ、ゴッ……!
――これ、いつまで続くのっ……!?
アベルの自罰的行為にアリアの瞳は揺れ、涙が溢れ出した。
「やめてアベルっ! 自分のこと殴らないで……っ!!」
――いい男が台無しになっちゃうっ……!!
アリアは身体を起こし慌ててアベルの手を取り血が付着した拳を両手で包む。
すると、アベルは直ぐに動きを止めた。
「……………………止めていいの……?」
「え……」
「…………まだ煩悩が消えてない。僕、また君を襲うかもしれないよ……?」
「っ……、でもアベル、顔が血だらけで……(酷い顔……)」
目蓋を腫らし顔面を自ら ぼこぼこにしたアベルがアリアを見下ろすと、彼女は眉を下げて留めた彼の拳に ぎゅっと力を込める。
「………………………………僕のこと嫌いになった……?」
――アリア、僕のこと嫌になったよね……?
アベルは暴走してしまった自覚があり、自らの拳を包み込むアリアの手を見て訊ねていた。
「え? ううん……全然? ……好きだよ?」
「えっ……そ、そうなの……?(あれ? 嫌だったわけじゃないってこと……?)」
「ん、うん……」
アリアの返事は意外にも好意的なままだった。
「…………っ、アリア、君ってお人好しだね……」
「……お人好し……? そうかな……?」
アベルが苦笑するとアリアは首を傾げる。
「…………ねえアリア。僕は君が欲しい」
「っ……な、……す、ストレートだね……」
アベルのあまりのストレートな物言いにアリアは息を呑んだ。
そういえば昔からアベルはそういう素直な所があった気がするな、と気付くが真っ直ぐに見つめられて言われると、なんだか恥ずかしい。
――なんで そんなにしたいのかな……?
自分はアベルと居られるだけで、楽しくて幸せ。キスだけで充分。
それ以上求めたら後戻り出来なくなってしまうのに。
アリアはアベルの熱い視線に俯いてしまう。
「…………アリアは怖いの?」
「え? …………あ、あぁ……、えと……(怖い……? ある意味そうか……な?)」
アベルに問われて、アリアは上手く答えられなかった。
――アベルに抱かれるのが怖い……。
初めては痛いからとか、そういうことじゃなく その後が怖い。
したくないんじゃない。
したら多分、取り返しがつかない。
アベルが自分と結ばれたら、ビアンカやフローラはどうなる?
アベルの相手はビアンカかフローラだと決まっているのだ。
どちらかの相手と結婚することによって、未来がどうなっていくのかはわからないが、
でも アベルがそんなに私が欲しいならあげたい気もする。
別れる前に思い出に一度だけでも……?
いやいや、ダメ。アベルを綺麗なまま送り出してやらないと……!
いやいや、一回くらい寝てもいいんじゃない……?
いやいや、それは不義理でしょ?
いやいや、……………………
アリアの中の天使と悪魔が葛藤する。
そんな風にアリアが考えあぐねていると、アベルがおずおずと口を開いた。
「…………す、少しずつなら、平気……?」
――アリアが怖いなら、徐々に触って慣れていってもらえばいいかな……。
今すぐじゃなくていい。
彼女のタイミングを待って結ばれたい。
けれどスキンシップはしたい。
でないと、我慢できなくなる……!
アベルはアベルでどうにかしてアリアを手に入れたいのだ。
仲魔の前でも少しずつスキンシップを増やしていけば、アリアも徐々に慣れて気にならなくなるだろうし……と、アベルはアリアをじっと見つめる。
「少しずつ……?」
「…………この一週間と少しの間、君と触れ合えなかったから欲求不満だったみたいだ。それで暴走した。だから、毎日少しずつ触れさせてくれないか……?」
アベルの言葉に首を傾げたアリア。
アベルは自分の素直な気持ちと要望を伝えていた。
「っ……毎日……」
コクリ。とアリアは唾を飲み込む。
――たった一週間あまりで欲求不満になっちゃうの……?? だ、大丈夫かな……。
アベルのお願いにアリアの顔には戸惑いの表情が浮かんだ。
「うん、毎日触れてたら安心するし、ムラッとはすると思うけど、君がいいって言うまで我慢するからさ」
「っ……アベル……」
「君が僕を欲しいって言ってくれるまで僕は待つ。だから、少しだけ触れるのを許して欲しい………………、…………ダメかな…………?」
アベルは自分の手を包むアリアの手の上に片手をのせ、弱り目で口角だけ上げていた。
――断られたら僕は絶望してしまう……。
先程まで荒々しかったアベルが、何だかしおらしいような……、可愛い大きなイヌを連想させる瞳でアリアを見つめている。
クゥン……。
アベルから か弱い鳴き声が聞こえて来そうである。
そんなアベルを見てしまうと、当然。
「っ………………アベルずるい」
「え……?」
「……っ…………、私、アベルにその顔されると断れないのよ……?」
――アベルっ、捨てられた犬みたい……! カワイイ……!!
くっ……!
アリアは目蓋を閉じて眉を顰めた。
ダメだとわかっているのに ついアベルには甘くなってしまうのは惚れた弱みかもしれない。
アベルは知らないが、アリアは最終的にアベルには逆らえないのである。
「ぁ……じゃあ……!」
アリアの返答にアベルの顔がパッと一気に明るくなった。
「っ、最後まではしないんだからね……! 約束して?」
「うんっ! しない!(今はまだね!)けど、キスはしてもいい?」
「っ…………、ふ、触れるだけのやつならいいよ……?」
「ぇー……」
アリアに触れるだけのキスまでならと云われて、アベルはつまらなそうな声を出し口をへの字にする。
「っ、舌入れちゃダメ。おっぱいも揉んじゃダメ! アレされると、私感じ…………ってダメっ! とにかくダメっ!!」
おっと、私は何を口走っているの!? とアリアはハッとして慌てて舌入れと胸揉みは禁止とした。
「……………………へぇ……」
「っ!? な、何が“へぇ”?」
アリアの自爆を聞いていたアベルは一瞬ニヤッとしてからアリアを見下ろす。
彼女は聞き流してくれていますようにと笑顔を取り繕っていた。
そんなアリアの笑顔にアベルも笑みを返す。
「ううん、何でもないよ。…………ははっ、少しずつ進めていこうね」
「ひゃっ!」
アベルはアリアに近付き彼女の頬に軽く口づけると、直ぐに離れた。
「アベル……。ん、ゆっくりね……。私、びっくりしちゃうから……」
「ゆっくりね、うん。ゆっくり進んで行こうね」
――様子を見ながら進めればいいよね。
アリアはいつか自分の奥さんになる
大事にしていかないと……。
アベルはアリアを尊重しつつ、自分の欲求も少しずつ満たして行こうと決め、目を細める。
そっと彼女の頭を優しく撫でたのだった。
アベルは諦めません。
アリアは諦めています。
どっちが勝利を収めるのでしょうかね。
アベルメンヘラ化とか……w
ループし過ぎで基本精神病んでるからありっちゃありかなぁ……。
----------------------------------------------------------------------
読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!